
みなさん、こんにちは。
さて、放射線技師を目指すみなさんは「エネルギー」と聞いてどんな単位を思い浮かべますか?
高校で物理を学んだ方は [ J ] ですかね?
ダイエットの経験がある方は [Cal] でしょうか?
電気に明るい方は [Wh] を思い浮かべた方もいるのでは?
放物の勉強が進んできた方は [eV] が思い浮かぶでしょうか?
そう、一口に「エネルギー」と言われてもどれだ?ってなってしまいます。
今回は放物で主に扱うエネルギーの単位2種類をご紹介するとともに、答えるべき単位の見極め方を覚えていってもらいます。
これが分かると、吸収線量や阻止能などエネルギーを代入する計算問題でも苦手意識がなくなり、得点アップ間違いなしです。
600人の放射線技師を育成した放物の学習法、伝授していきます。
目次
さっそく解答例
「初学 放射線物理学 ワークブック」検索番号 A03 の穴埋め解答例と解説です。
先に自分で穴を埋めてみてからの答え合わせでも良いですし、解答例を写してから覚えていっても良いです。ご自分に合ったスタイルで取り組んでください。

解説
このページの序文でエネルギーの単位を4つほどあげました。
[ J ]、[Cal]、[Wh]、[eV]の4つでしたね。
その他にもエネルギーを表す単位はありますが、放物で頻繁に扱うものは [ J ] と [eV] です。
この2種類を適切に使いこなせるようになれば、得点アップ間違いなしです。
JとeVの使い分け
エネルギーの単位が違うだけですが、慣れるまではゴチャゴチャになりがちです。
「Jで定義されているところにeVの数字をそのまま使ってしまって間違える」なんてのはよくある話です。
はい。今でこそ管理人なんてやっている私も学生時代はやらかしてました。
いやはやお恥ずかしい・・・
対策は エネルギーの単位を意識すること! これに尽きます。
加速器で得られる運動エネルギー
加速器で荷電粒子を加速したときに得られる運動エネルギーについて考えてみましょう。

電子を加速する場合とその他の荷電粒子を加速する場合で別々に紹介されることもありますが、基本的には同様に考えていきます。
ワークの問題にしたがって、α粒子の加速について考えてみましょう。
J で問われた場合
J で問われた場合は、加速する粒子の電荷 [C] に加速する電圧 [V] を乗じればOKです。
指数が絡んで数字的にはゴチャゴチャしますが、数式の構造的には
|電荷|×電圧 ですので、非常に簡単ですね。
ワークの練習問題でいうと、加速粒子はα粒子ですから、その電荷3.2×10-19 [C] に加速電圧の3×106 [V] を乗じて、9.6×10-13 [J] とすればOKです。
eV で問われた場合
eV で問われた場合は、加速する粒子の電荷が素電荷量(電気素量)の何倍なのかを考えます。
つまり、加速したい粒子の電荷を電子の電荷で除してあげれば良いんです。
何倍なのか判明したら、それに加速電圧を乗じればOKです。
数式の構造的には
(素電荷量の何倍か×電圧) となります。
ワークの練習問題でいうと、加速粒子であるα粒子の電荷3.2×10-19 [C] は素電荷量 1.6×10-19 [C] の2倍ですね。それに加速電圧の3×106 [V] を乗じて、6×106 [eV] とすればOKです。
ここまでを小まとめ
同じ「α粒子を3MVで加速する」という現象でしたが、問われる単位が変わると数字の部分も全然違うものになりましたね。
もし皆さんがエネルギーを求める計算問題で、模範解答と違う数字になってしまうときは、エネルギーの単位の違いを確認すると解決できるかもしれませんよ。
エネルギー換算が必要な計算問題
でも、もう2つ別の計算問題の例をご紹介しましょう。
JとeVの換算はこちらも参考になります。

Jで定義された計算問題
・60kgの水に120MeVの放射線を照射しました。放射線のエネルギーがすべて水に与えられた場合の吸収線量[Gy]はいくらになるか求めなさい。
なんて問題が出たとしましょう。
吸収線量の単位は [Gy] と書いて「グレイ」と読むものですが、
放射線の照射によって単位質量あたりの物質が吸収するエネルギー量
として定義されています。
その単位 [Gy] は [J/kg] と同義となり、1 Gy = 1 J/kg です。
ここでポイントとなるのは、問題文中のエネルギーが [MeV] 単位で与えられているところです。
吸収線量の定義としては、エネルギーは [ J ] ですので、[MeV]→[ J ]の単位変換が必要になります。
実際の手順はこちら。

MeVに106を乗じてeVにします。
それに1.6×10-19を乗じてeVをJに変換します。
この「エネルギー変換の一手間を忘れてしまい、計算問題が解けない」というのが陥りがちなあるあるパターンです。
eVで定義された計算問題
出題傾向はないですが、JをeVに換算するパターンもご紹介しておきましょう。
最近の国試はネタ切れのせいもあってか「こんとこ出すんかいっ!」と突っ込みたくなるような出題もありますからね。
対策しておくに越したことはありません。優先度は低めですが。
・3.2×10-13 Jの電子線の水中での飛程(外挿飛程)[cm]を求めなさい。
こんな問題が出たとして見ていきましょう。
電子線の飛程に関する問題ですね。主任者も国試も大好きなジャンルです。
飛程をR、エネルギーをEとすると、使用する関係式はコチラです。
R=0.52E-0.3
この場合、飛程Rは[cm]で定義された線飛程で、エネルギーEは[MeV]で定義されています。
計算手順はこうなります。

ここまでを小まとめ2
2パターンも問題を見ていただきました。
エネルギーを単位変換する場合は
- eVをJに変換するなら・・・1.6×10-19で除す(割る)
- JをeVに変換するなら・・・1.6×10-19を乗じる(かける)
と覚えておきましょう。
実際の問題を見ていきましょう

2014年に実施された第66回からのご紹介。
解答を確認する。
正解は 4 です。

医療現場での関わり

医療現場でJとeVを変換している状況ってなかなか想像しにくいですよね?
でもちゃんとあります。
それは、放射線治療です。
放射線治療ではX線はMVの電圧設定、電子線ではMeVのエネルギー設定で照射する放射線を選択します。
両方とも直感的にMeVが使いやすい状況です。
しかし、治療の照射録にはGyで記録されます。
「本日の線量は2Gy」というように。
Gy は J/kg ですから、エネルギーの部分は J で扱っています。
医療現場ではコンピュータが自動的に単位変換してくれていますので、手間はありませんけどね。
と、現場の技師さんは意識はしていないと思いますが、こんなところに活用されている知識でした。
まとめ

・問題文をよく見て、問われている単位に沿って回答しましょう。
・エネルギーが含まれる計算問題では、数式に含まれるエネルギーがJで定義されているか、eVで定義されているか確認しましょう。
・JとeVの変換は必ずできるように練習しておきましょう。
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