A16タイトル

解説

A15で触れたグラフを紐解いていきましょう。
A15を見ていない方はそちらもチェックしてください。

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核子1個あたりの結合エネルギー

核子1個あたりの結合エネルギー

横軸に質量数、縦軸に核子1個あたりの結合エネルギーをとったグラフを見ていきましょう。

と、その前に「核子1個あたりの結合エネルギー」の意味は分かりますか?

例えば、質量数4の原子核を例にとって考えてみます。
この原子核の結合エネルギーの合計が10MeVだとしましょう。
核子の数は質量数と同じですから4つです。
10MeVを4つで分け合うと考えればOKです。
つまり、この場合の核子1個あたりの結合エネルギーは2.5MeVとなります。

話を戻しまして。

核子1個あたりのエネルギーは上のグラフのような変化を辿ります。
比例のような一辺倒な変化ではなく、なんだか複雑に変化しています。
この不規則に見える変化の特徴を見出していきます。

  • 質量数の小さなところでは、質量数の増加とともに急激に結合エネルギーが上昇する。
  • 質量数12以降では平均8MeVになる。
  • 質量数56で最大8.8MeVになる。
  • 質量数56以降は徐々に減少する。
  • 偶々核の4He、12C、16Oはその他に比べて結合エネルギーが少し大きい。

質量数の小さなところでは、質量数の増加とともに急激に結合エネルギーが上昇する。

核子1個あたりの結合エネルギー 低質量数エリア

図の赤〇の部分のお話。

この領域では、質量数が大きくなるにつれ、核子1個あたりの結合エネルギーは急激に大きくなります。(グラフの立ち上がりが急峻になります。)

これは 表面効果 が原因です。
表面効果は後ほど説明します。

質量数12以降では平均8MeVになる。

核子1個あたりの結合エネルギー 質量数12以降

図の青〇の部分のお話。

この領域では核子1個あたりの結合エネルギーの平均値が 8.0MeV になります。

※図は管理人の自作図です。キチンと測って平均値など出さないで下さいね。多少のズレはご愛嬌ってことで。

質量数56で最大8.8MeVになる。

核子1個あたりの結合エネルギー 最大エネルギー

質量数が約60(厳密には56Fe)のところで核子1個あたりの結合エネルギーの最大値が 8.8MeV になります。

平均値と値が近いので、間違えないようにしてください。出てくる数字は「8」ばっかりです。

質量数56以降は徐々に減少する。

核子1個あたりの結合エネルギー 緑〇

図の緑〇の部分のお話。

56Feを境に徐々に減少していきます。

ここは クーロン効果 が働きます。
質量数が増えるということは、陽子の数も増え、クーロン斥力も増加してしまいます。
斥力は結合とは逆の属性になりますので、核子1個あたりの結合エネルギーは減少してしまいます。

偶々核の4He、12C、16Oはその他に比べて結合エネルギーが少し大きい。

核子1個あたりの結合エネルギー 紫〇

図の紫〇の部分のお話。

低原子番号(低質量数)の核種の場合、陽子数と中性子数の等しい原子核は他のものよりちょっとだけ強く結合します。

グラフはノコギリの歯のようにギザギザします。

表面効果

表面効果

質量数の小さな核種(図の左側)では原子核の表面になる割合が高くなります。
図の場合、4つの核子のうち4つすべてが表面にきています。

質量数の大きな核種(図の右側)では中央に存在する核子が出てきます。
図の場合、7つの核子のうち1つが中央で6つが表面更にる感じです。

質量数が更に大きくなれば、中央になる割合が増えていきます。

左の場合、表面の核子はその他2つと結合しています。
それに対し右の場合、中央の核子はその他6つと結合しています。
中央の核子の方が結合数が多いので、結合エネルギーの総合値が高くなります。
逆に言えば、表面になると結合エネルギーが小さくなります。

まとめると、質量数が小さい核種は表面になってしまう核子の割合が高くなり、結合エネルギーが小さくなります

<補足>
表面張力は表面積に比例します。つまり質量数の2/3乗に比例します。

その他の〇〇効果

表面効果の他にも体積効果やクーロン効果などありますが、出題傾向はないので割愛します。

実際の問題を見ていきましょう。

と思いましたが、残念ながらドンピシャで該当するような出題は見つけれらませんでした。
A15で既にご紹介したものくらいです。

放物を理解する上では大切な知識ですが、ダイレクトに出題に繋がる分野とは言い難いです。

まとめ

管理人
管理人

直接問われることは少ないけれど、余裕がある方はちゃんと取り組んでおいてくださいね。

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By H.Tanaka

1984年生まれの放射線技師です。 放射線技師養成校で核医学・物理・電気の講義を担当しています。 放射線技師の割に、不思議なことに現場科目より基礎科目の方を多く持っています。そのせいか、学生からは技師じゃないと思われている節があります。 専門知識よりは、学生が理解しやすい表現を心がけています。

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