毎年どんな問題が出題されるのか、受験生以上にドキドキしてます。
目次
AM
さて、今年はどんな問題からスタートするんでしょうか。
AM70

いきなり計算問題からのスタートですね。
統一原子質量の計算問題です。
質量欠損を求めてから、エネルギーに換算する定番の問題。
これは必ず解けるようになっておく必要がありますね。
統一原子質量の計算問題は、質量欠損か核反応です。
解説を見る。
答えは 2 です。
まず、質量欠損⊿Mを算出し、その値をエネルギーに換算していきます。
エネルギーへの換算は質量エネルギーを利用します。

どうでしょうか?
頻繁に出題される定型問題のようなものです。
必ず解けるように準備しましょう。
※2025年現在、統一原子質量の単位は [ u ] (読み:ユニット)から [ Da ](読み:ダルトン) に変更されました。意味合い的には同じです。表記の違いだけと捉えて問題ありません。
AM71

近年グラフから読み取る出題が増えてきました。
特にX線のエネルギースペクトルのグラフはよく見かけます。
抑えておきましょう。
解説を見る。
答えは 4 ですね。
各枝を見ていきます。
- 管電圧はグラフの最右端です。下図を参照してください。つまり80kVであることが分かります。
- 付加フィルタによる波形の変化は観察できません。見られるのは固有フィルタによる変化です。また、付加フィルタの種類(材質)が指定されていないことから、どのエネルギー領域に変化が見られるのか見当がつきません。
- 2つ見られる特性X線のピークは両方ともK特性X線です。右側がKβ、左側がKαです。LX線が観測されるときは10keV付近です。
- 特性X線のエネルギーからターゲットの材質が特定できます。Kβが67.8keV、Kαが59keVのタングステンがターゲットに使われていることが分かります。
- 全体的に見ると、連続スペクトルの方が多いです。管電圧80kVでは特性X線は10%、制動放射線は90%程度となります。

AM72

こちらも定番の質量阻止能ですね。
解説を見る。
答えは 5 です。
質量阻止能の式を覚えていれば、簡単に比較できますね。

各文字の定義はこちら。
- (S/ρ)col 質量衝突阻止能
- m 粒子の質量
- zi 粒子の電荷数
- E 粒子のエネルギー
- v 粒子の速度
それぞれの質量衝突阻止能を算出していきましょう。

大きい順に並び替えると・・・
5>1>2>3>4
となります。
AM73

具体的な数字は出ないものの、式だけは出題されるケースですね。
中性子の弾性散乱の式は、このパターンでの出題がありますね。
解説を見る。
答は 3 です。
シチュエーションを図で把握しましょう。

反跳原子核の運動エネルギーを求めれば良い訳ですが・・・
これは式を覚えておくしかないですね。
AM74
医療物理につき、申し訳ありませんがパスです。
悪しからず。
PM
引き続き、午後も見ていきましょう。
PM70

内部転換のみにスポットを当てた珍しい出題ですね。
とはいえ、内部転換自体は比較的よく出題されますので、大丈夫でしょう。
解説を見る。
答えは 3 です。
- 内部転換は原子核の励起エネルギーが電磁波の形で放出される代わりに、軌道電子を放出することで低エネルギー準位へと向かう現象です。原子核の内部構造に変化はありませんので、原子番号に変化はありません。
- 原子から飛び出やすい位置にある最外殻が放出されやすいかと思いきや、内殻ほど放出されやすいです。これは原子核から近いので、エネルギーをもらいやすいからと把握しておいてください。
- 正しいです。1回の現象でγ線もしくは内部転換電子のみしか放出されませんので、線スペクトルになります。※1回の現象で複数が同時放出されるものは連続スペクトルです。(消滅放射線は例外)
- 内部転換係数は内部転換の起こりやすさを示す指標です。内部転換係数は原子番号のほぼ3乗に比例しますので、核種に依存します。
- ニュートリノはβ壊変系で登場する粒子です。内部転換とは関係ありません。
PM71

グラフ、2問目ですね。
やはり増加傾向にありますね。
解説を見る。
答は 4 です。
5MeVの電子の質量阻止能をグラフから読み取りましょう。

グラフから、質量放射阻止能は影響しないことが分かりますね。
質量衝突阻止能だけ考えればOKです。
グラフを読み取ると、5MeVの電子の場合の質量衝突阻止能は 2 [MeV・cm2/g] であることが分かります。
問われているのは、エネルギー損失[MeV]ですから、まだ単位が合っていません。
マッチング(単位の整合性)をとっていきます。
質量衝突阻止能に密度 [ g/cm3 ] を乗じることで「線衝突阻止能 [ MeV/cm ] 」に変換します。
そこに水の厚さを乗じて「エネルギー損失 [ MeV ] 」を求めます。
単位的にはこういった変換になります。

では、実際に数字を入れて、質量衝突阻止能からエネルギー損失:E [ MeV ] を求めてみましょう。
※水の密度は 1 [ g/cm3 ] ですよ。

いかがでしょう?
グラフを読み取っただけでは正解とはなりません。
この問題は物質が1cmの水でしたので、厚さも密度も1となり、結果的にグラフの読み値と一致しただけです。
厚さや密度を変えられても解けるように準備しておきたいですね。
PM72

ご馳走様!と言わんばかりのサービス問題ですね。
これは取りこぼしてはいけません。
解説を見る。
答えは 2 です。
やはり図で状況を確認しましょう。

光電子の運動エネルギー:Ee は入射光子のエネルギーと軌道電子の結合エネルギーとの差でしたね。

ケアレスミスさえしなければ、サービス問題でしたね。
PM73
医療物理にとき、申し訳ありませんがパスです。
悪しからず。
PM74

これは確実に得点したいですね。
解説を見る。
答えは 2 です。
直接電離放射線ということは、荷電粒子線であるδ線を選べばOKですね。
δ線:荷電粒子によって電離された二次電子のうち、電離能力を持つもの(電離できるくらいエネルギーの大きいもの)を指します。
※非荷電粒子線である光子によって電離された二次電子はδ線には該当しません。
第75回 放物 総評
いかがだったでしょうか。
今年は解きやすい出題が多く、悩ましい選択肢もなく、理想的な出題でしたね。
毎回こんな感じが良いですね。