こんにちは。たなまるです。
学生から稀にもらう質問でこんなのがあります。
「E=mc²でエネルギーが出せるって話は知ってるけど、光速に近づくとエネルギーが異常に増えるってどういうこと?」
そう、「普通に増える」のではなく、「異常に増える」のです。
ここでは、ローレンツ因子( $\pmb{γ}$ )を使ったエネルギーの計算方法をみていきます。
式の意味や使い方を整理しながら、実際に数値を使って「どれくらいエネルギーが増えるのか」計算していきましょう。
国家試験では「ローレンツ因子を使ったエネルギー計算」が問われます。
しっかり理解して、確実に得点できるようにしていきましょう!
ローレンツ因子って、どう使うの?
ローレンツ因子( $γ$ )の意味や成り立ちについては、前の記事(A08:相対論の入口をのぞいてみよう|質量とエネルギーの関係をやさしく解説・A09:相対論領域の運動量とエネルギーとは? “遅い世界”との違いをわかりやすく解説!)で詳しく紹介しました。
ここでは、計算に必要な最低限のポイントだけ簡単におさらいしておきましょう。


ローレンツ因子の式はこれ!
一見「えっ!?これ覚えるの?」ってなりますが、何回か問題を解いているうちに、覚えられるかと思います。
常日頃から、記憶力が全くないと自負している私でも、この式は覚えてますから、皆さんも大丈夫なハズです。
$$
\color{#B22222}{\pmb{
γ=\frac{1}{\sqrt{1-(\frac{v}{c})^2}}
}}$$
$$
\begin{aligned}
{v} & : \text{物体の速度} \\
{c} & : \text{光の速度(約 }3.0 × 10^8 \text{ m/s )}
\end{aligned}
$$
この式を見ると分かるように、v が c に近づくほど分母が小さくなり、 $\pmb{γ}$ が大きくなっていきます。
つまりどうなる?
速度が遅いとき(v ≪ c)→ $\pmb{γ}≒1$(ほぼ影響なし)
速度が速いとき(v → c)→ $\pmb{γ}$ は急激に増大!
この「 $\pmb{γ}$ の増大」が、エネルギーが異常に増える正体なのです。
だから「$E=mc^2$ だけでは足りない」って話になるんですね。
ローレンツ因子を用いた計算問題は出題傾向は高くないものの、昔から出題される定番の問題です。
ポイントは、国試でローレンツ因子を使うシチュエーションは、電子を扱ったときだけということ。
相対論領域の速度で運動する電子はローレンツ因子を用いて考えなければなりません。
次はこのローレンツ因子を使って、実際にエネルギーの値を計算してみましょう!
ローレンツ因子を使ったエネルギーの式
なんかちょっと難しそうな予感がします・・・


大丈夫。
ひとつずつおさえていこう。
それに出題はパターン化してるから、流れをしっかり覚えれば怖くないよ。
相対論的なエネルギーの式はこれ!
相対論領域でエネルギーを考える際は、先ほどご紹介したローレンツ因子を用いて考えていきます。
単純に言ってしまえば、 $E=mc^2$ にローレンツ因子 $γ$ を乗じれば良いのです。
$$
\color{#B22222}{\pmb{
\begin{aligned}
E&=γ \cdot mc^2\\[12pt]
&=\frac{1}{\sqrt{1-(\frac{v}{c})^2}}\cdot mc^2
\end{aligned}
}}$$
$$
\begin{aligned}
{E} & : \text{相対論的なエネルギー(=速さの影響を含めたエネルギー)} \\
{m} & : \text{静止質量} \\
{c} & : \text{光の速度} \\
{\gamma} & : \text{ローレンツ因子(速度によって変わる)} \\
{v} & : \text{粒子の速度}
\end{aligned}
$$
「$E=mc^2$」は $\pmb{γ} = 1$ のときだけ!
ローレンツ因子 $\pmb{γ}$ が 1 のとき、つまり $\pmb{v=0}$ で物体が止まっているときに限って $\pmb{E=mc^2}$ になります。
でも物体が光速に近づいて動いているときは、$\pmb{γ > 1 }$ なので $\pmb{E=γ \cdot mc^2}$ になるというわけです!
どんなときに差が出る?
速度が遅いとき(たとえば 1000 m/s)は、$\pmb{γ\simeq1}$ なのでほぼ差は出ません。
速度が光速の90%、99%、99.9%…となっていくと、$\pmb{γ}$ はどんどん大きくなり、
E は mc² をはるかに超える値になります!

速度が速ければ速いほど、差が付いてくるということですね。
試験に出る!ローレンツ因子を使った計算の解き方
光速の80%(v = 0.8c)のとき
ワタクシたなまるの講義では、このパターンで練習していただいてます。
その理由は・・・

手計算でもスッキリした値になるから。
へぇ~。意外と考えてるんやな。


失礼な。
とまぁ、冗談はさておき、出題傾向があるからってのが最大の理由です。
さっそく見ていきましょう。
問題文はこんな感じ。
光速の80%の速度で運動する電子の総エネルギーは質量エネルギーの何倍か求めなさい。
結局のところ、ローレンツ因子を計算すれば良いだけです。
$$
\color{#B22222}{
\pmb{
\begin{aligned}
\frac{E}{mc^2} &= \gamma \\[12pt]
&=\frac{1}{\sqrt{1 – \left( \frac{v}{c} \right)^2}} \\[12pt]
&= \frac{1}{\sqrt{1 – \left( \frac{0.8c}{c} \right)^2}} \\[12pt]
&= \frac{1}{\sqrt{1 – 0.64}} \\[12pt]
&= \frac{1}{\sqrt{0.36}} \\[12pt]
&= \frac{1}{0.6} \\[12pt]
&= 1.67
\end{aligned}
}}
$$
つまり、$\pmb{E=γ\,mc^2≒1.67mc^2}$
エネルギーが1.67倍になっていることが分かります。
光速の60%(v = 0.6c)のとき
こちらも国家試験での出題が見られるケース。
理由はやっぱり、手計算しやすいからですね。
$$
\color{#B22222}{
\pmb{
\begin{aligned}
\frac{E}{mc^2} &= \gamma \\[12pt]
&=\frac{1}{\sqrt{1 – \left( \frac{v}{c} \right)^2}} \\[12pt]
&= \frac{1}{\sqrt{1 – \left( \frac{0.6c}{c} \right)^2}} \\[12pt]
&= \frac{1}{\sqrt{1 – 0.36}} \\[12pt]
&= \frac{1}{\sqrt{0.64}} \\[12pt]
&= \frac{1}{0.8} \\[12pt]
&= 1.25
\end{aligned}
}}
$$
つまり、$\pmb{E=γ\,mc^2≒1.25mc^2}$
エネルギーは1.25倍になるってことですね。
このように、「速くなるほどエネルギーが増える」ことがローレンツ因子 $pmb{γ}$を用いることで計算できます。
後ほど、国家試験で実際にどう出題されているのかを確認していきましょう。
国家試験でここが狙われる!
ローレンツ因子を用いた計算問題には何種類かのパターンがありますが、
すべて電子の運動に関する出題です。
したがって、電子の速度が登場したら、
もしかしてローレンツ因子を使うかも?
と疑ってみてください。
たいていの場合、電子の運動速度が「○×10⁸ m/s」として明示されています。
その速度が真空中の光速(3.0×10⁸ m/s)に対してどれくらいの割合か?
つまり「何%の速さなのか?」を見抜けるかがポイントです。
その比率が光速の60%や80%であれば、ローレンツ因子を使ってエネルギーを求める問題である可能性が高くなります。
放射線技師の国家試験では、答えが綺麗な数字になるように調整されていることが多く、
実際には光速の60%(v = 0.6c)や80%(v = 0.8c)といった値がよく使われています。
これらの速度ではローレンツ因子の値($\pmb{γ}$)が小数第1位までの計算で済むため、手計算での処理がしやすく、受験者にとっても親切な設定です。
ただし、主任技師試験ではあえてキレイに割り切れない数値を出してくることもあります。
その場合、計算結果が自分の出した値とピタリと一致しないこともありますが、焦らず近い値を選べばOKです。
試験問題における計算のしやすさは「運」にも左右されます。
できれば光速の60%とか80%のような優しい数字が出ることを祈りつつ、どんな速度でもローレンツ因子が使えるように練習しておきましょう!
実際の問題を見ていきましょう。
少し古いですが、2000年(第52回)に出題された問題15をご紹介します。
第52回 2000年 問15
速さが $1.8\times 10^8\,\mathrm{m/s}$ の 電子の運動エネルギーは電子の静止質量の何倍か。
- 0.25
- 0.5
- 0.75
- 1
- 1.25
いかがでしょうか?
解答を確認する。
答えは 5 です。
やはり、ローレンツ因子を使う問題は毎年多くの学生さんから質問をもらいます。
純粋に内容を質問してくれることもありますし、「このジャンル、捨ててもいいですか?」なんて問われることもあります。
やり方さえ覚えてしまえば難しくないので、「捨てて」しまうのはもったいない気がします。
これ系の問題を見ると蕁麻疹が・・・と言うなら仕方ありませんけどね。
さて、気を取り直して。
ここでのポイントは「与えられた電子の速度が真空中の光速度の何%に相当するか」が分かるかどうかです。
今回は1.8×108m/sとありますので、真空中の光速度3.0×108m/sの60%であることが簡単に判明します。
あとの計算過程は、本編解説と同じです。
▶ 本編の「v = 0.6c」の計算過程を見たい方はこちら
→ 計算過程にジャンプ
医療現場でこの知識がどう役立つの?
診療放射線技師が仕事中にローレンツ因子を意識する場面はそう多くはありません。
ただ、まったく無関係かと言えばそうでもなく、実際は目立たないけれども関与しています。
国試で扱うのは“電子”だけ。でも、実際は…
ローレンツ因子を使ったエネルギー計算は、国家試験では電子に限って出題されます。
これは、試験範囲として「相対論領域に達するのは電子だけ」と教科書的に決まっているからです。
しかし実際の医療現場、とくに放射線治療の分野(陽子線や重粒子線など)では、電子以外の粒子でもローレンツ因子を考慮した計算が日常的に行われています。

自動的に計算されているから、現場の技師さんでも気付かないよね。
粒子のエネルギーと速度の関係を扱う上で、ローレンツ因子は欠かせない
陽子線治療では、陽子が光速の60〜70%ほどに達することもあります。
このような相対論的速度域では、古典的な運動エネルギーの式( $\pmb{\frac{1}{2}mv^2}$ )が通用しなくなるため、ローレンツ因子を使って正確にエネルギーや運動量を算出する必要があります。
これは、治療計画の精度に直結する重要なポイント。
患者に与える線量や到達深度(ブラッグピーク)を正確にコントロールするためにも、ローレンツ因子を使ったモデルが必要不可欠なのです。
計算はコンピュータ。でも理屈は頭に入れておこう。
もちろん、これらの計算は治療計画装置(TPS)が自動でやってくれます。
だからと言って知らなくても良い理由にはなりませんよね。
実務上、自分で計算するわけではありませんが、理屈は覚えておきましょう。
まとめ
ローレンツ因子の計算は実務では自動化されていますが、国家試験や主任者試験では出題されることがあります。
計算は光速の80%か60%が多く出題されます。

ローレンツ因子の計算は難しそうに見えて、実はパターン化されています。
何度も練習して、計算できるようになりましょう。
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ほれ、今回の計算がちとむずかしかったと思うたら、こっちも見ておくとええぞい。
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僕が厳選したリンクを紹介するよ!
KEK(高エネルギー加速器研究機構)|加速器って
→ 光速に近づくって、実際どういうこと?加速器の中でローレンツ因子が活躍しているよ!
放射線医学総合研究所(QST)|放射線治療の基礎知識
→ 医療現場でローレンツ因子がどう使われているか、リアルな視点で学べるんだ!



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