X線は物質を通過すると、光電効果やコンプトン散乱によって少しずつ減弱していきます。
その減弱の程度は、物質の原子番号や密度、X線が通過する距離によって変わります。
今回は、X線束が減弱する条件と、X線の線質を表す半価層、さらに半価層の測定方法について見ていきましょう。
X線の減弱
X線が物質を通過するとき、X線は物質中の原子や電子と相互作用します。
その結果、X線の一部が吸収されたり、進む方向を変えたりするため、通過するX線の量は少しずつ減っていきます。
このように、物質を通過することでX線の強度が小さくなることを「X線の減弱」といいます。
人体で起こる主な相互作用は、光電効果とコンプトン散乱です。
光電効果ではX線のエネルギーが物質に吸収され、コンプトン散乱ではX線の一部が散乱線として別の方向へ進みます。
どちらも、もとの方向へ進むX線を減らす原因になります。
X線がどのくらい減弱するかは、X線が通過する物質によって変わります。
特に注目したいのが、「原子番号」「密度」「X線が通過する距離」の3つです。
原子番号が高い物質ほど減弱しやすい
物質を構成する原子の原子番号が高いほど、X線は減弱しやすくなります。
原子番号が高い原子ほど多くの電子を持っているため、X線と相互作用する機会が増えます。
特に光電効果は原子番号の影響を強く受けるため、原子番号の高い物質ではX線が吸収されやすくなります。
たとえば、骨にはカルシウムが多く含まれているため、周囲の軟部組織よりもX線が減弱しやすくなります。
密度が高い物質ほど減弱しやすい
同じ大きさの物質で比べると、密度が高い物質ほどX線は減弱しやすくなります。
密度が高いということは、一定の体積の中により多くの原子や電子が存在しているということです。
そのため、X線が物質中を進むときに原子や電子と相互作用する機会が多くなり、減弱しやすくなります。
X線が通過する距離が長いほど減弱しやすい
X線が物質の中を通過する距離が長いほど、X線は減弱しやすくなります。
通過する距離が長くなると、それだけ多くの原子や電子の近くを通ることになります。
そのため、光電効果やコンプトン散乱が起こる機会が増え、物質を通過したあとのX線強度は小さくなります。
つまり、X線は「原子番号が高い」「密度が高い」「通過する距離が長い」ほど減弱しやすくなるということです。

そうか!
「軌道電子にぶつかりやすいか」
で判断すりゃえぇんやな!

その通りだよ。
半価層
X線の減弱しやすさは、X線そのもののエネルギーによっても変わります。
エネルギーが高く透過力の大きいX線ほど物質を通過しやすく、反対にエネルギーが低いX線ほど減弱しやすくなります。
そこで、X線の透過力を表す指標として使われるのが「半価層」です。
半価層とは
半価層とは、入射X線強度を半分に減らすために必要な吸収体の厚さです。
たとえば、ある厚さのアルミニウムを通過させたときにX線強度が入射時の50%になったとします。
このとき、そのアルミニウムの厚さが半価層になります。
半価層はX線の線質を表す指標のひとつです。
透過力の大きいX線ほど半分まで減弱させるために厚い吸収体が必要になるため、半価層は大きくなります。
反対に、透過力の小さいX線は薄い吸収体でも半分まで減弱するため、半価層は小さくなります。
つまり、半価層が大きいほど透過力の大きいX線、半価層が小さいほど透過力の小さいX線と考えることができます。
半価層の単位と表し方
半価層は吸収体の「厚さ」を表す物理量なので、単位は長さの単位であるmです。
ただし、実際に半価層を表すときは、使用した吸収体の材質と厚さを組み合わせて表します。
銅を使用した場合はmmCu、アルミニウムを使用した場合はmmAlと表します。
たとえば「2 mmAl」であれば、アルミニウム2 mmの厚さに相当する半価層という意味です。
半価層の値を見るときは、数値だけではなく「どの材質を使って測定したのか」まで確認することが大切です。

ちなみに・・・
[mmAl]は
「ミリメートルアルミニウム」
って読むのよ。
放射線の分野では、ある物質と同じ効果を示す厚さを、基準となる物質の厚さに置き換えて「○○当量」と表すこともあります。
たとえば、放射線防護衣に「0.25 mmPb」と表示されている場合、必ずしも0.25 mmの鉛が使われているという意味ではありません。
「0.25 mmの鉛と同じ程度の遮蔽効果をもつ」という意味で、このような表し方を鉛当量といいます。

こういうときは
ミリメートル鉛当量(とうりょう)
って読むのよ。

ややこしいわ・・・

ちょっと解説しようか。
たとえば、同じX線発生条件で半価層を測定したとしよう。
アルミニウムを使ったとき、仮に3 mmの厚さでX線強度が半分になったとする。
このときの半価層は3 mmAlだね。
次に、同じX線発生条件のまま、吸収体を別の材質に変えてみよう。
その材質がある厚さのときに、同じようにX線強度が半分になったとする。
この2つは、材質や厚さは違っていても、このX線に対して同じ程度の減弱効果をもっていることになるよね。
そこで、別の材質の効果をアルミニウムの厚さに置き換えて表すことができる。
今回の例なら「3 mmのアルミニウムと同じ程度の減弱効果をもつ」という意味で、3 mmAl当量と表せるんだ。
つまり「○○当量」は、実際にその物質が使われているという意味ではなく、「○○と同じ程度の効果をもつ」という意味なんだ。

実際の材質と違うときに「当量」が出てくるんやな。
半価層の測定方法

半価層を測定するときは、半価層測定フィルタの厚さを少しずつ変えながらX線強度を測定し、フィルタを入れていないときの半分になる厚さを求めます。
ただし、測定器に散乱線が入ってしまうと、半価層を正しく測定できません。
そこで、半価層の測定では散乱線の影響をできるだけ小さくするための測定ジオメトリが重要になります。
図のように、X線管球から半価層測定フィルタまでの距離を50 cm未満、半価層測定フィルタから測定器までの距離を50 cm以上とします。
さらに、コリメータで照射野を絞り、細い線束を作って測定します。
散乱線を抑えるために細い線束を使う
半価層の測定では、散乱線の発生を抑えるために細い線束を使います。
照射野が広くなるほど、半価層測定フィルタに入射するX線の範囲も広くなり、フィルタから発生する散乱線が増えてしまいます。
そこで、コリメータを使って照射野を10 cm×10 cm程度まで絞ります。
照射野を小さくすることで散乱線の発生を抑え、測定器にできるだけ一次X線だけが入るようにします。
フィルタと電離箱線量計を離して配置する
散乱線の影響をさらに小さくするため、半価層測定フィルタと電離箱線量計は離して配置します。
半価層測定フィルタから発生した散乱線は、さまざまな方向へ広がって進みます。
そのため、フィルタと電離箱線量計の距離を離すほど、散乱線は電離箱線量計に入りにくくなります。
このように、散乱体と測定器の間に距離をとることで散乱線の影響を減らすことを「グレーデル効果」といいます。

撮影法だと
エアギャップ法
って言われる手法だね。
半価層の測定では、「細い線束を使う」「フィルタと電離箱線量計を離す」という2つの方法によって、散乱線の影響をできるだけ小さくしているのです。
実際の過去問を見てみよう
ちょっと(いや、かなり)古いですが、放物で出題された半価層測定に関するものは少ないのでご容赦下さい。
1998年に実施された第50回国家試験から問19のご紹介。
第50回 1998年 問19
半価層について正しいのはどれか。
- 物質中の吸収線量の測定によって求められる。
- 照射野は出来るだけ大きくして測定する。
- 制動放射エックス線の場合、第1半価層は第2半価層より大きい。
- 特性エックス線の場合、均質係数(均等度)は1に近い。
- 散乱線の寄与も測定値に含まれるよう考慮して決定する。
答えを確認する。
正解は 4 です。
できましたか?
ここでは2と5が判断できればOKです。
他の枝は別記事で学習しましょう。
- 誤り。
照射線量測定します。 - 誤り。
照射野は10cm×10cmです。 - 誤り。
制動放射線の場合、第2半価層の方が大きくなります。 - 正解。
特性X線の場合は減弱が均等に起こりますので、均質係数は1に近付きます。 - 誤り。
散乱線はできるだけ除去します。
医療現場でのかかわり
半価層は、X線装置から発生するX線の線質を確認するときに使われます。
診断用X線装置では、患者さんに必要のない低エネルギーのX線をできるだけ取り除くため、X線管にフィルタが取り付けられています。
低エネルギーのX線は患者さんの体内で吸収されやすく、画像形成への寄与が少ないまま被ばくを増やす原因になります。
そこで半価層を測定することで、X線が適切にろ過され、必要な線質が保たれているかを確認できます。
つまり半価層の測定は、単にX線の透過力を調べるだけではなく、X線装置の品質管理や患者さんの被ばく低減にもつながっているのです。
まとめ
今回は、X線の減弱と半価層、半価層の測定方法について見てきました。
最後に、ポイントを振り返っておきましょう。
- 人体では、主に光電効果とコンプトン散乱によってX線が減弱する
- 原子番号が高い物質ほど、X線は減弱しやすい
- 密度が高い物質ほど、X線は減弱しやすい
- X線が物質中を通過する距離が長いほど、X線は減弱しやすい
- 半価層とは、X線強度を半分にするために必要な吸収体の厚さ
- 半価層が大きいほど、透過力の大きいX線である
- 半価層はmmAlやmmCuなどで表す
- 半価層の測定では、散乱線の影響を抑えるために細い線束を使う
- 半価層測定フィルタと電離箱線量計の距離を離し、散乱線が測定器に入りにくくする
- 半価層が小さすぎる場合は、低エネルギー成分が十分に除去されていない可能性がある

半価層は数字だけ覚えるんじゃなくて、『X線の透過力を表している』ってところを押さえておこう!
次に読むならコレ!レントゲン博士のおすすめ内部リンク

次はこの辺りも参考になるかもよ。
- C25:半価層の変化
- C26:半価層のグラフ
この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら
診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。
都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。
国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。
保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有


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