C25 半価層の変化

半価層は、X線の線質を表す代表的な指標のひとつです。
ただし、測定条件が変わると半価層の測定値も変化します。
今回は、散乱線や照射野、管電圧、管電流などが半価層にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

半価層の測定値が変化する条件

半価層はX線の線質を表す値ですが、測定するときの条件によって測定値が変化することがあります。
ここでは、散乱線、照射野、管電圧が半価層の測定値にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。

散乱線が入ると半価層は大きくなる

半価層を測定するときに散乱線が入ると、半価層測定値は大きくなります。

半価層は、吸収体を入れてX線の強度がもとの半分になる厚さを測定したものです。
ところが、測定器に散乱線が入ると、吸収体を透過したX線だけでなく散乱線も一緒に測定されます。

そのため、測定されるX線の強度は本来よりも大きくなり、半分の強度になるまでに、より厚い吸収体が必要になります。
結果として、半価層測定値は大きくなります。

つまり、散乱線は半価層を実際よりも大きく測定する原因になります。

ちょっと何言っているか分からない。

サンドウィッチマンか。
博士に説明してもらおうか。

いいよ。
じゃ、少し数字を使って考えてみようか。

吸収体に入るX線の強度を100とするね。
半価層は、この強度が半分の50になるときの吸収体の厚さだったよね。

散乱線が入らなければ、透過したX線の強度が50になったところで半価層を測定できる。

でも、ここに散乱線が入ってきたらどうなるかな?

例えば、透過したX線の強度が50でも、散乱線の強度が20加わると、測定器では

50+20=70

と測定されてしまうんだ。

これだと、まだ強度が半分の50まで減っていないよね。

そこで、測定値を50まで下げるためには、吸収体をさらに厚くして、透過するX線をもっと減らす必要がある。

だから、散乱線が入ると半価層測定値は大きくなるんだ。

ポイントは、散乱線が入ったことでX線の線質そのものが硬くなったわけではないということ。
散乱線まで一緒に測定してしまうことで、半価層測定値が大きくなるんだよ。

照射野を大きくすると半価層は大きくなる

照射野を大きくすると、半価層測定値は大きくなります。

照射野が大きくなるほど、X線が当たる範囲が広くなり、吸収体などから発生する散乱線も増加します。
散乱線が測定器に入ると、測定されるX線の強度が本来よりも大きくなるため、半分の強度になるまでに必要な吸収体の厚さも大きくなります。

したがって、照射野を大きくすると半価層測定値は大きくなります。

ここでは「照射野を大きくする → 散乱線が増える → 半価層測定値が大きくなる」というつながりで覚えておきましょう。

散乱線がどうなるかを考えると判断しやすいんじゃないかな?
散乱線が増えれば、半価層は厚くなるんだ。

管電圧を高くすると半価層は大きくなる

管電圧を高くすると、半価層測定値は大きくなります。

管電圧を高くすると、発生するX線のエネルギーが全体として高くなり、X線の透過力が増します。
つまり、X線の線質が硬くなります。

透過力の高いX線を半分まで減弱させるためには、より厚い吸収体が必要です。
そのため、管電圧を高くすると半価層は大きくなります。

半価層はX線の線質を表す指標なので、「管電圧が高い → X線の透過力が高い → 半価層が大きい」という関係を押さえておきましょう。

ちなみに・・・
一般撮影の領域では、管電圧を上げると、主な相互作用も光電効果からコンプトン効果に寄ってくるから、散乱線も増えるんだ。
メインは透過力の上昇だけど、実は散乱線の増加も起こっているんだよ。

半価層が変化しない条件

ここまでは、半価層測定値が大きくなる条件を見てきました。
一方で、X線の量を増やしても、半価層が変化しない場合があります。

ここでは、管電流と半価層の関係を見ていきましょう。

管電流を大きくしても半価層は変化しない

管電流を大きくしても半価層測定値は変化しません。

管電流を大きくすると、X線管内を流れる電子の数が増えるため、発生するX線の量は増加します。
しかし、発生するX線のエネルギーが高くなるわけではありません。

つまり、管電流を変えてもX線の線質は変化しないということです。

半価層はX線の線質を表す指標なので、X線の量だけが増えても半価層は変化しません。

例えば、管電流を大きくして入射するX線の強度が2倍になったとしても、半分まで減弱するために必要な吸収体の厚さは同じです。

ここでは、

「管電流が大きい → X線の量は増える → 線質は変わらない → 半価層も変化しない」

という関係を押さえておきましょう。

吸収体による半価層の変化

半価層を測定するときは、使用する吸収体の性質も測定値に影響します。
特に、半価層測定フィルタに不純物が混ざっている場合は、その不純物の原子番号によって半価層測定値が変化します。

高原子番号の不純物が混ざると半価層は小さくなる

半価層測定フィルタに高原子番号の不純物が混ざると透過しにくくなるため、半価層測定値は小さくなります。

高原子番号の不純物が混ざると、純粋な吸収体と比べてX線を減弱させる作用が大きくなります。
そのため、同じ厚さの吸収体でも、より多くのX線が減弱します。

すると、X線の強度を半分まで減弱させるために必要な吸収体の厚さが小さくなります。

つまり、

「高原子番号の不純物が混ざる → X線を透過しにくくなる → 少ない厚さで半分まで減弱する → 半価層測定値が小さくなる」

という関係です。

低原子番号の不純物が混ざると半価層は大きくなる

反対に、半価層測定フィルタに低原子番号の不純物が混ざると透過しやすくなるため、半価層測定値は大きくなります。

低原子番号の不純物が混ざると、純粋な吸収体と比べてX線を減弱させる作用が小さくなります。
そのため、同じ厚さの吸収体ではX線が十分に減弱しません。

X線の強度を半分まで減弱させるためには、より厚い吸収体が必要になります。

つまり、

「低原子番号の不純物が混ざる → X線を透過しやすくなる → 半分まで減弱させるために、より厚い吸収体が必要になる → 半価層測定値が大きくなる」

という関係です。

高原子番号と低原子番号では半価層の変化が逆になるので、セットで押さえておきましょう。

ここで言う高原子番号とか低原子番号って言うのは、
吸収体の原子番号を基準にして考えてね。

X線の透過率

X線が物質を通過すると、その一部は吸収や散乱によって減弱し、残ったX線が物質を透過します。
ここでは、入射したX線に対して、どのくらいのX線が透過したのかを数式で表してみましょう。

X線の減弱と透過率

厚さxの吸収体に強度I₀のX線が入射し、透過したX線の強度をIとします。

このとき、X線の減弱は次の式で表されます。

$I=I_0e^{-μx}$

I₀は入射X線の強度、Iは透過X線の強度、μは線減弱係数、xは吸収体の厚さです。

この式を変形して、入射X線の強度I₀に対する透過X線の強度Iの割合を求めると、

$\frac{I}{I_0}=e^{-μx}$

となります。

この$\frac{I}{I_0}$を透過率といいます。

例えば、入射X線の強度が100で、透過したX線の強度が40なら、透過率は0.4、つまり40%です。

吸収体が厚くなるほどX線は多く減弱するため、透過率は小さくなります。

半価層を使った透過率の表し方

半価層は、X線の強度を半分にする吸収体の厚さです。

そのため、吸収体の厚さが半価層1枚分なら、透過率は1/2になります。
半価層2枚分なら1/4、3枚分なら1/8というように、半価層が1枚増えるごとに透過率は半分になります。

この関係を式で表すと、

$\frac{I}{I_0}=\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{x}{HVL}}$

となります。

xは吸収体の厚さ、HVLは半価層です。

ここで注目したいのが、指数になっている$\frac{x}{HVL}$です。
xとHVLはどちらも長さの単位をもつため、割り算をすると単位が消えます。

つまり、$\frac{x}{HVL}$は「吸収体の厚さが半価層何枚分に相当するか」を表しています。

例えば、

x=HVLなら透過率は1/2

x=2HVLなら透過率は1/4

x=3HVLなら透過率は1/8

となります。

半価層を使うと、線減弱係数を使わなくても、吸収体の厚さからX線の透過率を求めることができます。

実際の過去問を見てみよう

と思いましたが、C26:半価層のグラフでまとめてご紹介します。

医療現場でのかかわり

半価層は、X線装置から発生するX線の線質を確認するために使われます。
線質が変化すると、患者さんを透過するX線の割合や被ばく線量、画像のコントラストなどにも影響します。

例えば、管電圧を高くするとX線の透過力が増し、半価層も大きくなります。
一方で、半価層を正しく測定するためには、散乱線が測定器に入らないようにすることも重要です。

散乱線が入ると、実際よりも半価層測定値が大きくなってしまいます。
そのため、半価層の測定では照射野を必要以上に大きくせず、測定条件を適切に整える必要があります。

半価層は単なる計算上の値ではなく、X線装置の線質を確認し、適切なX線を使用するための重要な指標なんです。

まとめ

今回は、半価層の測定値が変化する条件と、X線の透過率について見てきました。
最後に、重要なポイントを振り返っておきましょう。

  • 散乱線が入ると、半価層測定値は大きくなる。
  • 照射野を大きくすると散乱線が増え、半価層測定値は大きくなる。
  • 管電圧を高くするとX線の透過力が増し、半価層は大きくなる。
  • 管電流を大きくしてもX線の線質は変化しないため、半価層は変化しない。
  • 半価層測定フィルタに高原子番号の不純物が混ざると、半価層測定値は小さくなる。
  • 半価層測定フィルタに低原子番号の不純物が混ざると、半価層測定値は大きくなる。
  • X線の透過率は、入射X線の強度に対する透過X線の強度の割合で表される。
  • 半価層を使うと、吸収体の厚さが半価層何枚分かによって透過率を表すことができる。

半価層は、単に「X線を半分にする厚さ」と覚えるだけではなく、どの条件で大きくなり、どの条件で小さくなるのかまでつなげて押さえておこう!

次に読むならコレ!レントゲン博士のおすすめ内部リンク

次はこの辺りも参考になるかもよ。

  • C26:半価層のグラフ
  • C28:半価層の計算問題に挑戦

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

コメント