D04 壊変図

放射性核種が壊変するとき、どのような放射線が放出され、どのような核種へ変化するのでしょうか。

こうした壊変の過程を図で表したものを「壊変図」といいます。
壊変図には、半減期や壊変形式、放出される放射線のエネルギーなど、さまざまな情報が記載されています。

今回は、壊変図の基本的な読み方を確認し、代表的な核種の壊変図を実際に見ていきましょう。

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壊変図とは

放射性核種が壊変するときには、どの核種がどのような放射線を出し、どの核種へ変化するのかという情報が関係してきます。

こうした壊変のようすを図で表したものが壊変図です。
壊変図は壊変図式、または崩壊図とよばれることもあります。

文字だけで覚えようとすると分かりにくい内容でも、壊変図を見ると「どこからどこへ移るのか」「どの放射線が出るのか」がひと目でつかみやすくなります。
放射性核種の特徴を整理するときに、とても便利な図といえます。

壊変図に記載される情報

壊変図には、放射性核種の壊変に関するいくつかの情報がまとめて示されています。
まずは、どのような情報が記載されているのかを整理しておきましょう。

壊変図に記載される主な情報は、次の5つです。

・親核種と娘核種の元素記号および質量数
・親核種の半減期
・親核種の壊変形式と壊変割合(分岐比)
・放射線の種類とエネルギー
・娘核種の励起状態のときのエネルギー準位

親核種とは、これから壊変するもとの核種のことです。
反対に、壊変によって新しく生じる核種を娘核種といいます。

また、親核種の近くには半減期が記載されます。
半減期は、その放射性核種の数が半分に減るまでの時間でしたね。

壊変図には、どのような壊変形式で壊変するかも書かれています。
たとえば、β⁻壊変、β⁺壊変、軌道電子捕獲(EC)などです。
さらに、それぞれの壊変がどのくらいの割合で起こるかという壊変割合も示されます。
これは分岐比とよばれることもあります。

放射線の種類とエネルギーも重要です。
特にγ線については、何keVのγ線が出るのか、またそのγ線がどのくらいの割合で放出されるのかが記載されます。

さらに、娘核種が励起状態を経る場合には、それぞれのエネルギー準位もkeVで示されます。
この情報を見ることで、どの準位からどの準位へ遷移したのかが分かります。

なお、壊変図には核スピンやパリティが書かれていることもありますが、ここでは省略しています。
ここでは、よく使う基本的な情報にしぼって見ていきましょう。

壊変図の基本的な読み方

壊変図では、横軸が原子番号、縦軸がエネルギーを表しています。

横軸は右へ進むほど原子番号が大きくなり、縦軸は上へ進むほどエネルギーが高くなります。

そのため、β⁻壊変は右下方向、β⁺壊変や軌道電子捕獲(EC)は左下方向の矢印で表されます。
一方、γ線の放出では原子番号が変化しないため、矢印は真下に向かいます。

壊変図を読むときは、まず親核種を見るところから始めます。
図の上側に親核種が書かれていることが多く、そこから壊変が進んでいきます。

次に、その親核種がどのような壊変形式をとるかを確認します。
β⁻壊変なのか、β⁺壊変なのか、あるいは軌道電子捕獲なのかを見ることで、どのように核種が変化するのかが分かります。

あわせて、壊変割合にも注目します。
1つの核種が1通りだけで壊変するとは限らず、複数の壊変形式をもつこともあります。
そのため、「どの壊変が主なのか」を割合で確認することが大切です。

そのあとに、娘核種のエネルギー準位を見ます。
準位が複数ある場合は、励起状態を経てから基底状態へ移ることがあります。
このとき、上の準位から下の準位へ遷移するとγ線が放出されます。

γ線の表示では、エネルギーはkeV、放出割合は%で示されます。
つまり、keVと書かれていればエネルギー、%と書かれていれば放出割合だと判断できます。
数字が並んでいても、単位を見ると見分けやすくなります。

このように、壊変図は「親核種を見る」「壊変形式と割合を見る」「娘核種とエネルギー準位を見る」という順で読むと整理しやすいです。
最初は難しそうに見えるかもしれませんが、見る場所を順番に決めておくと読み取りやすくなります。

代表的な核種の壊変図

壊変図の基本的な読み方が分かったところで、実際の放射性核種の壊変図を見ていきましょう。

ここでは、代表的な核種であるコバルト60(⁶⁰Co)とセシウム137(¹³⁷Cs)、さらに複数の壊変形式をもつ銅64(⁶⁴Cu)を紹介します。

コバルト60(⁶⁰Co)の壊変図

コバルト60(⁶⁰Co)は、半減期が約5.27年の放射性核種です。

⁶⁰Coはβ⁻壊変によってニッケル60(⁶⁰Ni)へ変化します。
このとき、約99.9%は⁶⁰Niの励起状態へ壊変します。

励起状態となった⁶⁰Niは、2段階の遷移によって基底状態へ移ります。
その際、約1173 keVと約1332 keVのγ線が順番に放出されます。

つまり、⁶⁰Coはβ⁻壊変を起こし、その後に2本のγ線を放出するのが代表的な壊変の流れです。

コレ知ってんで!
メッチャ有名なやつやろ?

そうだね。
エネルギーも覚えておこうね。

セシウム137(¹³⁷Cs)の壊変図

セシウム137(¹³⁷Cs)は、半減期が約30.17年の放射性核種です。

¹³⁷Csはβ⁻壊変によってバリウム137(¹³⁷Ba)へ変化します。
このとき、約94.4%は¹³⁷Baの準安定状態(¹³⁷ᵐBa)へ壊変し、残りの約5.6%は基底状態へ直接壊変します。

準安定状態となった¹³⁷ᵐBaは、核異性体転移(IT)によって基底状態へ移ります。
この際、約662 keVのγ線が放出されます。

ただし、核異性体転移ではγ線の放出だけでなく、内部転換も起こります。
そのため、662 keVのγ線の放出割合は約85%となります。
※図中の100%は転移割合です。

¹³⁷Csは、約662 keVのγ線を放出する核種として覚えておきましょう。

これは主任者試験でよく出てくるやつです。
内部転換係数の問題でよく登場しますよ。

銅64(⁶⁴Cu)の壊変図

銅64(⁶⁴Cu)は、半減期が約12.7時間の放射性核種です。

⁶⁴Cuの特徴は、1つの核種で複数の壊変形式を起こすことです。

⁶⁴Cuは、β⁻壊変によって亜鉛64(⁶⁴Zn)へ変化します。
一方、β⁺壊変や軌道電子捕獲(EC)によってニッケル64(⁶⁴Ni)へ変化することもあります。

つまり、同じ親核種であっても、壊変形式によって異なる娘核種が生成されるのです。

さらに、軌道電子捕獲によって⁶⁴Niの励起状態が生成される場合もあります。
この励起状態から基底状態へ遷移するときには、約1346 keVのγ線が放出されます。

このように、⁶⁴Cuはβ⁻壊変、β⁺壊変、軌道電子捕獲という3種類の壊変形式をもつ核種です。

α壊変や核分裂を除く代表的な壊変形式が、1つの壊変図に登場する例として覚えておきましょう。

壊変のデパートみたいなヤツやなぁ。

その通りなんだよ。
色んな壊変を起こす代表ってことを覚えておくといいよ。

実際の過去問を見てみよう

2007年に実施された第59回国家試験から問44のご紹介。

壊変図(赤線)が示す壊変はどれか。2つ選べ。

  1. α
  2. β⁻
  3. β⁺
  4. EC
  5. γ
答えを確認する。


正解は 3と4 です。

できましたか?

壊変図では、矢印は左下に向かっています。
つまり、原子番号が下がる(1つ)側の壊変です。
そして、質量数に変化はありません。

したがって、β+壊変とECになります。

医療現場でのかかわり

壊変図は、放射性核種から放出される放射線の種類やエネルギーを知るために役立ちます。

例えば、コバルト60(⁶⁰Co)は、かつて放射線治療装置の線源として広く使用されていました。
⁶⁰Coの壊変図を見ると、約1173 keVと約1332 keVのγ線が放出されることが分かります。
これらのγ線を利用して、がん細胞に放射線を照射していたのです。

また、セシウム137(¹³⁷Cs)は、放射線測定器の校正などに利用されています。
¹³⁷Csは約662 keVのγ線を放出するため、測定器の指示値が正しいかどうかを確認する際に役立ちます。

このように、壊変図に記載されている放射線の種類やエネルギーは、放射線治療や放射線計測など、医療現場で放射線を安全かつ適切に利用するための重要な情報となります。

まとめ

今回は、壊変図に記載されている情報と、その基本的な読み方について学びました。
最後に、重要なポイントを振り返っておきましょう。

  • 壊変図(壊変図式・崩壊図)は、放射性核種の壊変の状態を表した図である。
  • 壊変図には、親核種と娘核種の元素記号・質量数、半減期、壊変形式、壊変割合、放射線の種類・エネルギー、娘核種のエネルギー準位などが記載されている。
  • 壊変図の横軸は原子番号、縦軸はエネルギーを表す。
  • β⁻壊変は右下方向、β⁺壊変と軌道電子捕獲(EC)は左下方向の矢印で表される。
  • γ線の放出は、真下方向の矢印で表される。
  • ⁶⁰Coは約1173 keVと約1332 keV、¹³⁷Csは約662 keVのγ線を放出する。
  • ⁶⁴Cuは、β⁻壊変、β⁺壊変、軌道電子捕獲(EC)の3種類の壊変形式をもつ。

壊変図は、矢印の向きとエネルギー準位に注目するのがポイントだよ。まずは⁶⁰Co、¹³⁷Cs、⁶⁴Cuの3つを覚えておこう!

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次はこの辺りも参考になるかもよ。

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

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