原子とは何か?中には何が入ってるのか?
陽子とか電子とか、なんとなく聞いたことはあるけど、いざ説明となると「はて?どう説明すれば良いんだ?」となる人も多いはず。
この記事では、原子の基本構造から、原子核の中身、さらには核力や安定性の話まで、順を追って解説していきます。
読み終えるころには、「原子=よくわからん小さいやつ」から、「原子=超基本でめっちゃ大事なやつ」へと印象が変わること、間違いなしです。
まずは基本のおさらい
まず、初めて学習する方はここを注意しましょう。
「原子」と「原子核」はまったくの別物!
「原子」と「原子核」は似てはいますが、別物です。
一文字あるかないかで全然違うものです。
まずはそこをしっかりと認識してください。
文章を読むときも、「原子」なのか「原子核」なのか注意してみてください。
ちょっと理解が深まるはずです。
原子とは?構造を図でざっくり理解しよう
私たちの身の回りにあるすべての物質は、「原子」という粒からできています。
原子はあまりにも小さくて、目で見ることはできませんが、構造自体はとてもシンプルです。
まずはこちらの図をご覧ください。
![中心に「原子核」があり、その周囲に複数の「軌道電子」が円軌道上に描かれている原子の模式図。原子核の大きさは 10^(−15)〜10^(−14)[m]、原子全体の大きさは
10^(−10)[m] と示されており、原子核と軌道電子のスケールの違いが視覚的に強調されている。](https://houbutsu.net/wp-content/uploads/2025/11/A11-原子核の構造(サイズ)-865x1024.png)
原子は大きく分けて、中心にある「原子核」と、そのまわりを回っている「(軌道)電子」からできています。
- 原子核の中には、陽子(+eの電気をもつ)と中性子(電気をもたない)がギュッと集まっています。
- 電子(-eの電気をもつ)は、その原子核のまわりをぐるぐる回っています。
- 「e」は素電荷といって、電荷の最小量を表すものです。その電荷は $\color{#B22222}{\pmb{1.6\times10^{-19}}} $ [C] です。
原子全体を見たときに、電気的な偏りのない原子を中性原子といい、陽子と軌道電子の数が等しくなります。
※電気的な偏りが生じるとイオンになります。
また、原子核は球体のかたちをしていると考えられていて、その体積は、球の体積と同じように計算できます。
原子核の大きさは$\color{#B22222}{\pmb{10^{-15}}}$m程度で、その半径は質量数の$\color{#B22222}{\pmb{\frac{1}{3}}}$乗に比例します。
したがって、原子核の体積は質量数に比例することになります。
詳細な式変形は後ほどご紹介しましょう。
原子の大きさは$\color{#B22222}{\pmb{10^{-10}}}$m程度であり、これは約1[Å(オングストローム)]となる。
「原子」とは何か?言葉の定義を確認しよう
「原子」というのは全体のことを指しています。
その原子の中心にあるのが「原子核」です。
原子核の周りには「軌道電子」が存在します。
「原子核」と「軌道電子」を合わせて「原子」となります。
原子=原子核+軌道電子
という感じです。
陽子・中性子・電子のちがいを確認!
| 粒子 | 電気の性質 | どこにある? | 質量の大きさ |
|---|---|---|---|
| 陽子 | +の電気 | 原子核の中 | 中性子とほぼ同じ (重い) |
| 中性子 | 電気なし | 原子核の中 | 陽子とほぼ同じ (重い) |
| 電子 | -の電気 | 原子核のまわり | とても小さい (軽い) |
このように、原子を構成する3つの粒子は、
「どこにあるか」「電気の性質」「質量」で大きな違いがあります。
それでは、原子の中心にある「原子核」に注目して見ていきましょう。
原子核の構造とその特徴

原子核の中には、陽子と中性子が詰まっています。
この2つはまとめて「核子(かくし)」と呼ばれます。
また、原子核は球体のかたちをしていると考えられていて、その体積は、球の体積と同じように計算できます。
陽子の数は軌道電子の数と同じです。
つまり、「原子核の陽子数=原子の電気的な性質を決めるもの」でもあるんです。
国家試験でのポイント:主任者向けに覚えておきたい式
放射線主任者試験などでは、原子核の体積と質量数の関係式が問われることがあります。
そのときに使うのが、こちらの式です。
$$\color{#B22222}{
\pmb{
\begin{aligned}
r&=r_0 A^{\frac{1}{3}}\\[12pt]
V&=\frac{4}{3} πr^3\\[12pt]
&=\frac{4}{3} π(r_0 A^{\frac{1}{3}})^3\\[12pt]
&=\frac{4}{3} π{r_0}^3 A^{\frac{3}{3}}\\[12pt]
&=\frac{4}{3} π{r_0}^3 A\\[12pt]
\end{aligned}
}}$$
- r:原子核の半径
- r0:定数 (1.2~1.4)×10-10 m
- V:原子核の体積
- A:質量数
原子核の半径は質量数の1/3乗に比例する。
これは国家試験の常連枝です。
そして、原子核の体積は質量数に比例します。
こちらも最近問われ出しています。

このあたり、国家試験でも出題されることが増えていて、特に放射線主任者試験では定番の内容です。
「原子核の体積 ∝ 質量数」や「半径 ∝ 質量数の3乗根」の関係は、式とあわせてしっかり押さえておきましょう。
原子核の中をのぞくと?陽子と中性子の世界
ここまでで、原子の中心には「原子核」があり、その中に陽子と中性子が入っていることを見てきました。
このふたつは、まとめて「核子(かくし)」と呼ばれることもあります。
陽子と中性子の数のバランス
原子によって、陽子と中性子の数のバランスは異なります。
- 陽子の数=原子番号に一致し、「その原子が何か(=元素の種類)」を決める。
- 中性子の数は一定ではなく、同じ元素でも数が異なることがあります。
このような、「陽子の数は同じだけど中性子の数が違う原子」のことを、「同位体(アイソトープ)」と呼びます。
例:酸素には、酸素16(陽子8+中性子8)や酸素18(陽子8+中性子10)などがあります。
陽子と中性子の違い、もう少しだけ
| 核子 | 電気の性質 | 役割 |
|---|---|---|
| 陽子 | +の電気 | 原子の性質(元素の種類)を決める |
| 中性子 | 電気なし | 原子核を安定させるために必要 |
原子核の中では、陽子同士が+同士で反発し合うため、その反発を中性子が緩衝材のように緩和してくれているんです。
つまり、中性子がいないと原子核がバラバラに壊れてしまう…そんなこともあるんです。
このように、陽子と中性子の数とバランスが、原子核の安定性に大きく関わっています。
次はその「安定・不安定」の理由を深掘りしてみましょう!
原子核がバラバラにならない理由=“核力”
あの…先生……原子核の中って、陽子がいっぱい入ってるんですよね?
+と+って反発するんじゃ……?え、ケンカしてません?


いい質問だね。
陽子たちは確かに反発しあうんだ。
けど、強力な仲裁役がいるんだ。
オレが仲裁したろか?
任せしてみぃ!


余計揉めそうだから静かにしていようね。笑
前のセクションで、原子核の中には陽子と中性子が詰まっていることを学びました。
でも、陽子って+の電気を持っていて、お互いに反発し合うはずですよね。
それなのに原子核がバラバラにならないのは、それを抑える別の力があるからなんです。
陽子は電気的に反発している
同じ正の電荷(+)をもつ陽子同士は、クーロン力によって強く反発しています。
「集まっていること自体おかしいじゃん?」と思って当然。
でもこの電気的な反発に対抗する、とてつもなく強い力があるんです。
それが「強い核力」
原子核の中で働く、陽子と中性子をまとめる力。
それが「強い核力(または強い相互作用)」です。
- とても強い力だけど、ごく短い距離(約1 fm)でしか働かない
- 陽子・中性子のあいだで作用して、原子核をひとまとまりにしている
イメージ的には、「反発しあう陽子たちを、超強力なマジックテープで中性子がまとめてる」感じです。
核力についてはA18:核力ってなに?荷電独立性までやさしく解説をご参照ください。

不安定になるとどうなる?
核力のバランスが崩れると、原子核は不安定になります。
- 中性子が少なすぎたり
- 陽子が多すぎたり
すると、核が自分で安定しようとして、放射線を出して変化(崩壊)します。
これが、放射性崩壊と呼ばれる現象です。
原子核の「安定」は力のせめぎあい
- クーロン力(陽子同士の反発)
- 強い核力(核子同士を引きつける)
この二つの力のバランスで、原子核の安定性が決まります。
軌道電子の動きとその特徴
原子核のまわりを取り囲んでいる軌道電子は、「どこにいるか」がハッキリしないふるまいをします。
これは量子力学的な制約によるもので、古典的な「回っている」というイメージでは捉えきれません。
それでも、ある程度モデル化して理解することはできます。
たとえば、軌道電子のまわる道のり(軌道の周長)は、ド・ブロイ波長の整数倍になっていなければ安定しません。
これは波としての性質を持つ電子にとって、重要な制約です。
また、最も内側の軌道(K殻)において、その半径はボーア半径と呼ばれ、約 5.3 × 10⁻¹¹ m になります。
このボーア半径は、軌道電子の存在範囲の目安としてよく使われます。
軌道電子についてはA20:自由電子と軌道電子のちがいを理解しようも参考になります。

原子の構造を理解することで見える世界
ここまで、原子の基本構造から始まり、原子核の中身やそれを支える力の話まで見てきました。
ポイントをおさらいしましょう。
今回のまとめポイント
- 原子は、「原子核」と「軌道電子」からできている。
- 原子核の中には、陽子(+)と中性子(0)が入っていて、「核子」と呼ばれる。
- 電子は決まった殻(電子殻)に収まっており、その配置が原子の性質に影響する。
- 陽子同士の反発を強い核力が抑えているため、原子核はまとまっていられる。
- このバランスが崩れると、放射線を出して安定化しようとする=放射性崩壊が起こる。
原子構造がわかると、放射線が「なぜ出るのか」が見えてくる!
放射線は、突然降って湧いた謎のビームではありません。
原子核の構造、そこに働く力のバランスを知れば、
「あぁ、不安定だから放射線を出したのか」
「中性子の数が多かったから崩壊しやすかったのか」
というように、理由がちゃんと見えるようになります。
これがわかってくると、次に学ぶ「放射線の種類」や「エネルギー」についても、理解しやすくなるんです。
実際の問題を見ていきましょう
2012年に実施された第64回からの1問をご紹介しましょう。
第64回 2012年 問42
正しいのはどれか。
- 原子番号は陽子数と等しい。
- 鉛の同位体は2種類である。
- M殻の最大電子数は8個である。
- 中性子の質量は陽子よりも小さい。
- 天然に存在する元素は106種類である。
解答を確認する。
正解は 1 です。
- 原子番号は陽子の数と等しいです。ちなみに中性原子の場合、軌道電子の数とも等しくなります。
- 自然界には鉛の同位体は4種類確認されています。(Pb-204, 206, 207, 208)
- M殻は最大で18個の軌道電子が入ります。
- 中性子のほうがわずかに重いです。電子の質量を基準に覚えてみるのはいかがでしょう?中性子の質量は電子の1839倍、陽子の質量は電子の1836倍です。
- 天然元素は現在約90種類が確認されています。ちなみに核医学で有名なTcは人工核種です。
医療現場での活用例:PET検査と原子核の知識

「いまやってる“原子核の構造”なんて将来いらないでしょ…」
──そう思いたくなる気持ちもわかります。ですが、実際の医療現場ではこの知識が超・超・超重要です。
原子核の理解は、放射線検査や治療の「根幹」に関わる基礎知識です。
国家試験対策はもちろん、現場での判断力や、患者さんへの説明力にも直結します。
たとえば私が震災直後、核医学検査に従事していたときの話。
放射線に対する不安から、検査当日の注射直前にキャンセルされることも少なくありませんでした。
放射性同位元素(RI)は一度キャンセルされると高額なコストが丸々無駄になることも…。
そんなとき、原子核や放射性物質についてしっかり理解し、
正確に説明して患者さんを安心させられる技師がいれば、状況はまったく違ってきます。
病院にも患者さんにもWin-Winな関係を築ける。
それを可能にするのが、まさに「いま学んでいる基礎知識」なんです。
まとめ
- 「原子」は、「原子核」と「軌道電子」からできています。
- 原子核の中には、陽子(+の電気をもつ)と中性子(電気なし)が詰まっています。
- 軌道電子は原子核のまわりを取り囲んでいて、原子の性質を左右する存在です。
- 陽子どうしは反発しますが、それを強い核力がつなぎとめて、原子核の形を保っています。
- 陽子と中性子の数のバランスが崩れると、原子核は不安定になり、放射線を出して安定しようとします。
- だからこそ、原子の構造を知ることが、放射線のしくみを理解する土台になります。

原子って、小さいけれど奥が深いんです。
「何がどこにあって、どう関係しているのか」…
そこをおさえると、これからの話も理解しやすくなりますよ。
漫言放語(まんげんほうご)

先生、原子って……正直、何なんですか?
すごい小さいのは知ってますけど、イマイチ見えてこないっていうか……


そうだね。原子は小さすぎて見えないんだ。
つまり、我々の想像力が試される存在ってことさ!
想像力っちゅうか……
見えないなら別に知らんでもええんちゃうか?


そのセリフ、20年前の私が言ってたやつだ……
牛助レベルだったのか……泣
お願い
本サイトに掲載されている図やイラストの著作権は管理人にあります。
無断掲載や転載はお断りさせていただきます。
また、リンクフリーではありますが、画像などへの直リンクはお控えください。
次に読むならコレ!おすすめ内部リンク

ほれ、ここまで読んだんなら、次はこのあたりを見ておくとえぇぞい。
外部リンク

ここまで読んできた皆さんなら、もう一歩踏み込んだ知識に触れてみたくなるはずです。そんな方におすすめの外部リンクを紹介しますね。



コメント