A18 核力と荷電独立性

 「初学 放射線物理学 ワークブック」検索番号 A18 の穴埋め解答例と解説です。
 先に自分で穴を埋めてみてからの答え合わせでも良いですし、解答例を写してから覚えていっても良いです。ご自分に合ったスタイルで取り組んでください。

さっそく解答例

ワークブック A18の解答例

解説

いきなり核力に触れる前に、「4つの力」を覚えていますか?
忘れてしまった方はコチラで復習を。

4つの力

核力は4つの力のうち、「強い力」と言われるものでしたね。

原子核の中の話ですから、関係するのは「陽子」と「中性子」ですね。
ときどき軌道電子が原子核の中にあると思い込んでいる方を見かけますが、軌道電子は原子核の周りを周回している電子ですから、原子核の中には存在しませんので、ご注意を。

では、原子核内の核子結合の組み合わせを考えてみましょう。

  • 陽子と陽子
  • 陽子と中性子
  • 中性子と中性子

この3パターンです。

陽子と陽子の組み合わせ

陽子同士の結合

陽子同士の結合の場合、お互いに引き合う「核力」(図中の白矢印)のほかに離れあおうとする電磁気力の一種である「クーロン斥力」(図中の黒玉矢印)が働きます。

陽子と中性子の組み合わせ

陽子と中性子の結合

陽子と中性子の結合の場合、「核力」のみが働きます。

中性子と中性子の組み合わせ

中性子同士の結合

中性子同士の結合の場合、「核力」のみが働きます。

荷電独立性

核子のどんな組み合わせでも核力の大きさに違いはありません。

「陽子と陽子」でも「陽子と中性子」でも「中性子と中性子」でもすべて核力の大きさは同じです。

核力の大きさは核子の組み合わせで変化しないことを「荷電独立性」といいます。

結合の合計値という意味では、「陽子と陽子」ではクーロン斥力の分だけ結合は弱くなりますが、「核力の大きさ」自体は、変わりません。

核力の有効範囲

核力の有効範囲

核力には有効範囲があります。
その特徴も少し変わっています。

クーロン力であれば、近ければ強く、離れれば弱くなります。
X線の線量も同様です。
距離の逆二乗則でしたね。

核力の場合は、大げさな図で示したように、近いとそんなに強く働きません。
遠いほうが強く働きます。

この時点でクーロン力などとは逆の性質を持っています。

さらに、核力には有効範囲が設定されています。

有効範囲を超えてしまうと、途端に「0」になってしまいます。

まとめると、「核力は有効範囲内では離れるほど強くなり、有効範囲を超えるとゼロになる。」という特徴があります。

実際の問題を見ていきましょう。

国家試験 第57回 PM41

ちょっと古い問題ですが、いかがでしょうか?

解答を確認する。

答えは 4 です。

解説

クーロン力とは異なる性質の力でしたね。
有効範囲の有無などを考えてもらうと、違う性質であることが分かるかと思います。

まとめ

管理人
管理人

近年、核力だけを問う出題はあまり多くありませんが、枝の一つとしては十分に出題の可能性があります。
核力と距離との関係性が特殊ですので、そこを間違えないようにしましょう。

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By H.Tanaka

1984年生まれの放射線技師です。 放射線技師養成校で核医学・物理・電気の講義を担当しています。 放射線技師の割に、不思議なことに現場科目より基礎科目の方を多く持っています。そのせいか、学生からは技師じゃないと思われている節があります。 専門知識よりは、学生が理解しやすい表現を心がけています。

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