
先生、オレも素粒子知っとるで!
アップ牛助とダウン牛助やろ?

そ、それは…
明らかに違いそうなんですけど…

やっぱりアップ牛助は元気系で、
ダウン牛助は眠たい系やな!


ちがうよ牛助…。
アップとダウンは“クォークの種類”のことなんだよ。
「素粒子」「クォーク」…名前を聞いただけで、難解そうに感じる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、素粒子の中でも国試でよく出る「クォーク」と「レプトン」を整理し、最低限押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。
アップクォークとダウンクォークの組み合わせ、電子やニュートリノの位置づけなど、試験に直結する部分にしぼって説明します。
素粒子物理の世界は奥深いですが、国試で問われるのはごく一部。
必要な範囲だけを整理すれば、十分に対応できます。
さっそく解答例
「初学 放射線物理学 ワークブック」検索番号 A19 の穴埋め解答例と解説です。
先に自分で穴を埋めてみてからの答え合わせでも良いですし、解答例を写してから覚えていっても良いです。ご自分に合ったスタイルで取り組んでください。

素粒子とはどんなもの?まずは大きな分類から
ここは素粒子についてみていきましょう。
素粒子とは、物質や力をつくる最小の単位であり、これ以上分けることができない基本的な粒子のことを指します。
私たちの体を構成する原子、原子を構成する原子核、そのさらに奥にある陽子・中性子まで分解していくと、最終的に素粒子にたどり着きます。
素粒子は非常に多くの種類がありますが、大きく フェルミ粒子 と ボース粒子 の2つに分類されます。
ほんま、分類とか出てきたらもう頭パンクするで。

フェルミ粒子とボース粒子
フェルミ粒子
物質そのものを構成する粒子です。
陽子や中性子をつくる「クォーク」、電子やニュートリノといった「レプトン」が含まれます。
これらは「物質の部品」とイメージするとわかりやすいでしょう。
ボース粒子
力を伝える役割を担う粒子です。
電磁相互作用を伝える「光子」、強い相互作用を担う「グルーオン」などが代表です。
ボース粒子は、物質そのものというより「力の仲介役」として働きます。
役割が違うんですね。


そう。
フェルミ粒子は部品そのもの。
ボース粒子は接着剤みたいなものだよ。
国試で注目すべきはこの2つのグループ
素粒子物理学には多くの粒子が登場しますが、診療放射線技師国家試験で必要とされるのはごく一部に限られています。
- フェルミ粒子では
- アップクォーク(u)
- ダウンクォーク(d)
- 電子
- ニュートリノ
この4種類が中心です。
- ボース粒子では
- 光子(電磁相互作用を媒介)
- グルーオン(強い相互作用を媒介)
が出題範囲となります。
試験では「名前」「分類」「代表的な役割」を押さえていれば十分です。たとえば「陽子はu u d」「電子は安定して存在」「ニュートリノは電荷を持たない」など、キーワードを整理して覚えることが得点につながります。
出題範囲が絞られていると安心しますね


ただ、他が出ないわけではないから油断は禁物だね。
そろそろ「ヒッグス粒子」が出題されそうな気がするけど・・・
まぁ心配しなくて大丈夫だよ。
それぞれがなんなのか、どの話題のときに登場するのかを把握していれば、大丈夫です。
それ以上は放射線技師の物理を超えています。
素粒子物理学をやりたい方に任せておけば良いでしょう。
我々の目指すところは、放射線技師であって、物理の専門家ではありませんからね。
反粒子の存在も押さえておこう
また、クォークなどを含む全て粒子には必ず「反粒子」なるものがあります。
反粒子は質量や寿命などの基本的な性質は同じですが、電荷などの一部が逆になっています。
- 電子に対する反粒子 → 陽電子
- ニュートリノに対する反粒子 → 反ニュートリノ
例外もあります。
たとえば光子や中間子の一部は、それ自体が反粒子の性質も兼ねています。
「反粒子がない」のではなく「自分自身が反粒子も担っている」という点に注意しましょう。
オレの他にも反牛助がおるんか?
会うてみたいわ~。

フェルミ粒子の仲間たち
クォーク
クォークは陽子や中性子をつくる材料となる粒子です。
6種類(アップ・ダウン・チャーム・ストレンジ・トップ・ボトム)のうち、国試で重要なのは アップクォーク(u) と ダウンクォーク(d) の2種類です。
- 陽子は「u u d」で構成され、電荷は +1e
- 中性子は「u d d」で構成され、電荷は 0
この2つをしっかり押さえておけば、計算問題や記述で対応できます。

クォークにも反粒子が存在しますが、国試では名前と組み合わせさえ理解できれば十分です。
ハドロンの構成
複合粒子であるハドロンのクォーク構成は国試で頻出されます。
必ず押さえておきたい内容です。
「核子」(陽子と中性子の総称)を構成する因子がアップクォークとダウンクォークです。
核子の他に、「中間子」を構成するのもアップクォークとダウンクォークです。
ちなみに、核子も中間子も素粒子を複数個組み合わせているので、「複合粒子」に分類されます。
アップクォークは素電荷量eに対して、2/3eの電荷をもちます。
ダウンクォークは-1/3eの電荷をもちます。
このアップクォークとダウンクォークを3つ組み合わせてみましょう。

例えばuud
電荷で考えると、このようになります。
最終的に+eの電荷が残りますので、uudのクォーク構造は陽子を示すことになります。

続いてudd
電荷で考えるとこのように0になります。
つまり電荷のない状態。
したがって、uddのクォーク構造は電荷を持たない中性子を示すことになります。
今度はアップクォークとダウンクォークを2つ組み合わせてみましょう。

まずはアップクォークと反ダウンクォークの組み合わせ。
電荷で考えると、+eの電荷になりますので、π+中間子と考えます。

続いて反アップクォークとダウンクォークの組み合わせ。
電荷で考えると、-eの電荷になりますので、π-中間子と考えます。

本当は異なる式構成をしているのですが、電荷的にこちらのほうが理解しやすいので、この式で見ていってください。
素粒子とそれ自身の反粒子で構成されるパターンです。
アップクォークと反アップクォーク、またはダウンクォークと反ダウンクォークの組合せです。
どちらの場合も電荷は0になりますので、π0中間子という認識でOKです。
ちなみに、本来のπ0中間子はこんな構造です。

中間子にはπ中間子以外にもいろいろあります。
K中間子、D中間子、B中間子などありますが、国試で登場するのは今のところπ中間子だけです。
レプトン(電子とニュートリノ)
レプトンの中で注目すべきは 電子 と ニュートリノ です。
- 電子:負の電荷をもつ安定した粒子。原子の外殻を回り、化学結合や電流の担い手となる。
- ニュートリノ:電荷をもたない粒子。質量はほぼゼロで、β崩壊など弱い相互作用に登場する。
国試では「電子=安定した存在」「ニュートリノ=電荷なし・質量ほぼゼロ」というキーワードを押さえておくと安心です。

ニュートリノの性質は直接問われることは少ないけど、主任者では問われることがあるよ。
(陰電子)と陽電子
- 陰電子(通常の電子):負の電荷(−e)をもつ安定した粒子。原子の外殻を回り、化学結合や電気の流れを担う。
- 陽電子:電子の反粒子。質量は同じで、電荷が正(+e)。医療分野ではPET検査で登場する。
電子と陽電子はお互いの持つ電荷の符号が異なります。
電荷の大きさはどちらも1.6×10-19[C]で同一です。
正の電荷か負の電荷かで異なります。
当然、陽電子が正、陰電子が負です。
それ以外の質量などの性質も同じです。
異なる点はもう一つ。
安定性です。
電子(陰電子)は安定した粒子であるのに対して、陽電子は不安定な粒子です。
この辺りは消滅放射線の発生で詳しく見ていきましょう。
ニュートリノと反ニュートリノ
- ニュートリノ:電荷を持たない、非常に軽い粒子。β崩壊や弱い相互作用に関与。
- 反ニュートリノ:ニュートリノの反粒子。同じく電荷はゼロ。
ニュートリノと反ニュートリノはβ壊変の際に登場する素粒子です。
「4つの力」もご参照ください。

β壊変系に密接に関係するニュートリノですが、深く問われることはないでしょう。
素粒子としてニュートリノに関することは出題されないかと思います。
β-壊変では「反ニュートリノ」、β+壊変では「ニュートリノ」、EC(軌道電子捕獲)では「ニュートリノ」が放出されることが分かっていれば問題ないです。
ボース粒子の仲間たち
ボース粒子は「力を伝える役割」を担う粒子です。
フェルミ粒子が「物質そのものの部品」だとすると、ボース粒子はその間をつなぐ 接着剤や仲介役 のような存在です。
光子と電磁相互作用
- 光子は電磁相互作用を担う粒子です。
- 電磁波(光、X線、γ線など)の正体は光子と考えてOK。
- 医療分野では放射線の理解に直結します。

国試では「光子の役割=電磁相互作用の媒介粒子」として整理しておきましょう。
グルーオンと強い力
- グルーオンは「強い相互作用」を担う粒子です。
- 陽子や中性子の中でクォーク同士を結びつけ、原子核を成り立たせています。
- 「クォーク同士を糊付けする接着剤のような粒子」とイメージすると理解しやすいです。
試験での出題範囲はごく限られる
ボース粒子は他にも「Wボソン」「Zボソン」「ヒッグス粒子」などがありますが、診療放射線技師国家試験ではまず出題されません。
国試で覚えるべきは 光子とグルーオン の2種類に絞って大丈夫です。
接着剤ってたとえがわかりやすいですね!

オレは瞬間接着剤より木工用ボンド派やで!


まぁ種類はどうでもいいけど、ボース粒子は“つなぎ役”ってことね。
実際の問題を見ていきましょう。

いかがでしょうか?
クォークだけについて出題しているものは見つけられませんでした。
5枝のうち2枝でクォークに関係しているこの問題を選んでみましたが、解けましたか?
医療現場でこの知識がどう役立つの?
アップクォークやダウンクォークのような素粒子は、直接的に医療で使われるわけではありません。
けれども、「物質の最小単位にまで分けて考える視点」は、放射線医学にとって欠かせない考え方です。
たとえば陽子線治療や重粒子線治療で扱う「陽子」や「炭素イオン」は、最終的にはアップクォークやダウンクォークの組み合わせで成り立っています。
普段の臨床で「クォークを意識する」ことはありませんが、物質の根源にある仕組みを知っておくことで、放射線がなぜエネルギーを持つのか、どのように物質と相互作用するのかを、より深い理解で捉えることができます。
まとめ

放射線技師にクォークまでの知識が本当に必要か?と疑問に思うかもしれません。
しかし国家試験で出題される以上、諦めて覚えてしまうのが得策です。
とくに重要なのは、
・アップクォークとダウンクォークの電荷
・陽子と中性子のクォーク構成
この2点は必ず押さえておきましょう。
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ほれ、ここまで読んだんなら、次はこのあたりを見ておくとえぇぞい。
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