A19

 「初学 放射線物理学 ワークブック」検索番号 A19 の穴埋め解答例と解説です。
 先に自分で穴を埋めてみてからの答え合わせでも良いですし、解答例を写してから覚えていっても良いです。ご自分に合ったスタイルで取り組んでください。

さっそく解答例

ワークブック A19の解答例

解説

ここは素粒子についてみていきましょう。

素粒子というのは、粒子の最小単位の概念です。
万物を細かくしていくと、これ以上細かくできないところにぶつかります。
それが素粒子です。

素粒子を簡単に分類すると、上記解答例の表のようになります。

まず素粒子はフェルミ粒子とボース粒子(書籍によってはボーズ粒子)とに分けられます。

フェルミ粒子はさらにクォークとレプトンに分かれます。

国家試験に出題されるのは以下のものです。

  • アップクォーク
  • ダウンウォーク
  • 電子(陰電子)と陽電子
  • ニュートリノと反ニュートリノ
  • 光子
  • グルーオン

それぞれがなんなのか、どの話題のときに登場するのかを把握していれば、大丈夫です。
それ以上は放射線技師の物理を超えています。
素粒子物理学をやりたい方に任せておけば良いでしょう。
我々の目指すところは、放射線技師であって、物理の専門家ではありませんからね。

また、クォークなどを含む全て粒子には必ず「反粒子」なるものがあります。

反粒子は質量などの基本的な部分は同じだけれど、ところどころ性質が逆になっているもの同士です。
電子に対する陽電子やニュートリノに対する反ニュートリノなどがあげられます。

名称の前に「反」がついているものはわかりやすいですが、例外もあります。

光子やπ0中間子などはそれ自身が反粒子を兼ねています。
反粒子を「兼ねている」のであって、反粒子が「ない」のではないのでご注意を。

それでは、重要なところだけ掻い摘んでみていきましょう。

アップクォークとダウンクォーク

ここは2つを同時に見ていきましょう。
アップクォークとダウンクォークはセットです。

核子」(陽子と中性子の総称)を構成する因子がアップクォークとダウンクォークです。
核子の他に、「中間子」を構成するのもアップクォークとダウンクォークです。

ちなみに、核子も中間子も素粒子を複数個組み合わせているので、「複合粒子」に分類されます。

アップクォークは素電荷量eに対して、2/3eの電荷をもちます。
ダウンクォークは-1/3eの電荷をもちます。

このアップクォークとダウンクォークを3つ組み合わせてみましょう。

陽子のクォーク構造

例えばuud

電荷で考えると、このようになります。

最終的に+eの電荷が残りますので、uudのクォーク構造は陽子を示すことになります。

中性子のクォーク構造

続いてudd

電荷で考えるとこのように0になります。
つまり電荷のない状態。

したがって、uddのクォーク構造は電荷を持たない中性子を示すことになります。

今度はアップクォークとダウンクォークを2つ組み合わせてみましょう。

π+中間子の構成

まずはアップクォークと反ダウンクォークの組み合わせ。

電荷で考えると、+eの電荷になりますので、π中間子と考えます。

π-中間子の構成

続いて反アップクォークとダウンクォークの組み合わせ。

電荷で考えると、-eの電荷になりますので、π中間子と考えます。

π0中間子の構成 簡略化

本当は異なる式構成をしているのですが、電荷的にこちらのほうが理解しやすいので、この式で見ていってください。

素粒子とそれ自身の反粒子で構成されるパターンです。

アップクォークと反アップクォーク、またはダウンクォークと反ダウンクォークの組合せです。

どちらの場合も電荷は0になりますので、π0中間子という認識でOKです。

ちなみに、本来のπ0中間子はこんな構造です。

A19 π0 実際の構成

中間子にはπ中間子以外にもいろいろあります。
K中間子、D中間子、B中間子などありますが、国試で登場するのは今のところπ中間子だけです。

電子(陰電子)と陽電子

電子と陽電子はお互いの持つ電荷の符号が異なります。
電荷の大きさはどちらも1.6×10-19[C]で同一です。
正の電荷か負の電荷かで異なります。
当然、陽電子が正、陰電子が負です。
それ以外の質量などの性質も同じです。

異なる点はもう一つ。

安定性です。

電子(陰電子)は安定した粒子であるのに対して、陽電子は不安定な粒子です。

この辺りは消滅放射線の発生で詳しく見ていきましょう。

ニュートリノと反ニュートリノ

ニュートリノと反ニュートリノはβ壊変の際に登場する素粒子です。

4つの力」もご参照ください。

title 4つの力

β壊変系に密接に関係するニュートリノですが、深く問われることはないでしょう。
素粒子としてニュートリノに関することは出題されないかと思います。

β壊変では「反ニュートリノ」、β壊変では「ニュートリノ」、EC(軌道電子捕獲)では「ニュートリノ」が放出されることが分かっていれば問題ないです。

光子

光子は電磁気力を媒介する因子です。
ただ、その点に関しては出題されないかと思います。
光子と言えば、我々が撮影で扱うX線や核医学で用いるγ線だと認識していれば大丈夫です。

グルーオン

グルーオンは「強い力」を媒介する因子です。

核子間やクォーク間で働き、お互いを結合させるのに一役買っています。

光子やウィークボソンと並んでボース粒子に数えられますが、そこを問われることはないでしょう。

実際の問題を見ていきましょう。

国家試験 第66回 問43

いかがでしょうか?

クォークだけについて出題しているものは見つけられませんでした。
5枝のうち2枝でクォークに関係しているこの問題を選んでみましたが、解けましたか?

解答を確認する。

答えは 4 です。

解説

今回、正解の枝は核子1個あたりのエネルギーについてです。
正しくは8MeVでしたね。

覚えてましたか?
忘れてしまった方は、コチラでおさらいしておいてくださいね。

A15 原子核の結合エネルギーと質量欠損

まとめ

管理人
管理人

放射線技師にクォークまでの知識は要るのだろうか・・・
とはいえ、出題されてしまいますので、諦めて覚えましょう。
アップクォークとダウンクォークの電荷、陽子と中性子のクォーク構成は必ず抑えておきましょう。

お願い

本サイトに掲載されている図やイラストの著作権は管理人にあります。
無断掲載や転載はお断りさせていただきます。

また、リンクフリーではありますが、画像などへの直リンクはお控えください。

By H.Tanaka

1984年生まれの放射線技師です。 放射線技師養成校で核医学・物理・電気の講義を担当しています。 放射線技師の割に、不思議なことに現場科目より基礎科目の方を多く持っています。そのせいか、学生からは技師じゃないと思われている節があります。 専門知識よりは、学生が理解しやすい表現を心がけています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA



reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。