Home » ワークブック解答 » A06 等速円運動と角速度を完全攻略!診療放射線技師のためのやさしい物理
図1 牛助、等速円運動を実践する

先生、牛助が体育館の隅っこでずっとグルグル回ってますけど…迷子ですか?

たまのすけ
たまのすけ

ちゃうちゃう!これは“等速円運動”の実践や!オレの体は今、加速度感じてるで!

牛助
牛助
たなまる
たなまる

そうか、加速度の向きまで分かってきたら本物だな。
あとは壁にぶつかった瞬間、「外向き」って叫ぶだけだ。

学ぶって…痛みをともなうんですね……。

たまのすけ
たまのすけ
たなまる
たなまる

よし、じゃあ今回は、牛助の回転に敬意を表して――
等速円運動の基本、いってみようか。

こんにちは。たなまるです。

等速円運動、苦手な方って意外と多いんです。
直線運動なら何となくわかるのに、円を描く動きになると「急にわからなくなる」という声はよく聞きます。

このページでは、そんな「円運動の?」を解消するために、等速円運動の基本から丁寧に解説していきます。
特に、放射線物理でよく出題される「円形加速器(サイクロトロン)」の理解につながるポイントをしっかり押さえていきます。

この記事を読み終える頃には、あれ!?サイクロトロンの問題が得点源になるかも!って感じてもらえるはずです。

これまで600人以上の学生を診療放射線技師へと導いた勉強法を伝授します。

さて、さっそく解説していきますが、ポイントは角速度かなと思います。
その辺りを踏まえつつ、全体的に見ていきます。

まずは等速円運動とは・・・

等速円運動

等速円運動は、「速さは同じだけど、向きがどんどん変わる」運動です。
名前の通り、同じ速さでぐるぐる円を描くように動くことを指します。

身近な例としては、遊園地のコーヒーカップやメリーゴーラウンド、月が地球の周りを回っていることなどがあります。

図3 牛助はコーヒーカップがお気に入り

遊園地のコーヒーカップでぐるぐる回されたとき、外に放り出されそうになった!あれも等速円運動なのかな?

たまのすけ
たまのすけ
たなまる
たなまる

そうそう!スピードが一定なら、まさにそのとおりだよ。

加速度

加速度って聞くと、「スピードが変わることでしょ?」って思いますよね。
アクセルを踏んだときとか、ブレーキをかけたときとかに感じやすいですね。

でも、実はスピードが変わっていないときでも加速度が加わっているんです。

運動の向きが変わるだけ」でもかかっているのです。

等速円運動は「向きがずっと変わり続けている」

円運動はずーっと進行方向がカーブしてると考えることができます。
だから「速さ」は変わらなくても、「向き」はずっと変わってるってことになります。

つまり、等速円運動には「向きを変えるための加速度」が常にかかているということなのです。

加速度の向きは?中心向き

円運動の加速度が常に中心方向(①)であることを示すベクトル図
図4 円運動の加速度の向き

円運動の際の加速度は円の回転中心を向いています。
図4では①の矢印が示しています。

加速度の大きさは以下の式で表します。

速度vで等速円運動する物体の加速度aを表す式。  
a = v² / r
  • a:加速度
  • v:等速円運動の速さ
  • r:円の半径

中央に向かってずっと引っぱられてるような感じで加速度を受けていることになります。

これを 向心加速度 といいます。
中心に向かっていることを上手く表しているネーミングですよね。

コーヒーカップでグルグルされて目が回ったけど、あれが加速度だったんですか?

たまのすけ
たまのすけ
たなまる
たなまる

そう!しかも速く回れば回るほど(v2半径が小さければ小さいほど、加速度は大きくなるんだよ。

加速度があるってことは力もある

ちょっと復習してみましょう。

加速度は「運動の変化(向きの変化)を生むもの」でしたよね。

そして、円運動をしているということは「常に向心加速度がかかっている」ということだったよね。

では、加速度を生み出す原因はなんでしょうか?
それがなんです。

向心加速度を生み出す力なので、向心力といいます。

力と加速度を向きを考慮したベクトルで表すとこうなります。

力の大きさと向きを表す運動方程式。力F(ベクトル)は、質量mと加速度a(ベクトル)の積で表される。
  • F:力(円運動なので向心力)
  • m:運動する物体の質量
  • a :加速度(円運動なので向心加速度)

懐かしいですね。これが有名な運動方程式です。

たなまる
たなまる

ん~懐かしい。〇十年前を思い出します。
あの頃は良く分かってなかったな~。笑

えっ?
先生も学生の頃は分かってなかったってこと?

たまのすけ
たまのすけ
たなまる
たなまる

そうだよ。
なんてったって、勉強は嫌いだったからね。特に物理は。
このサイトのタイトルにもあるでしょ?
勉強嫌い」って。

この運動方程式に向心加速度を代入するとこうなります。

円運動における力の式。力F(ベクトル)は、質量mと加速度a(ベクトル)の積に等しく、aをv²/rで表すと、F = mv² / r となる。

この式変形の結果はすごく大切です。
国試や主任者試験でも頻繁に出題されますので、必ず覚えましょう。

角速度って?

円運動における角速度の図。角速度ωは角度θを時間tで割ったもので、ω = θ / t。速さvは半径rと角速度ωの積で表され、v = rω。図中には「どれだけ回ったか ÷ 時間」という吹き出しがあり、1周が2πラジアンであることも示されている。
図5 角速度って理解しにくいよね

次のポイントは角速度です。

まず、直線運動でいう「速さ」は「1秒間にどれだけ進んだか」でしたよね。

じゃあ、回転の動き(円運動)ではどうでしょう?

角速度の定義

角速度(ω) は、
「1秒間にどれだけ角度が変わったか」を表す量です。

数式で書くとこうなります。

角速度ωは角度θを時間tで割ったもので、ω = θ / t。
  • ω(オメガ):角速度
  • θ(シータ):回転した角度
  • t:時間

角度の単位は「ラジアン(rad)」!

「度(°)」ではなく、物理ではラジアン(rad)という単位を使います。
1周=360°=2π rad です。

えっ、でもちょっと待って。ラジアンって単位なの?

ここが大事なポイント!

ラジアンは「弧の長さ ÷ 半径」で定義されるので、

[rad] = [m] / [m] = 1(無次元)

つまり、ラジアンは“単位みたいに見えるけど、実は単なる数値扱い”なんです。

じゃあ、角速度の単位は?

試験や教科書では:

ω の単位 = [rad] / [s] = [rad/s]

と書かれます。
でも実は「rad は無次元」なので、本質的には 1/s と同じなんです。

ん?結局のところどっちなんだ?
使い分ける場面なんてあるのかな?

たまのすけ
たまのすけ
たなまる
たなまる

角速度の単位、基本は「rad/s」って覚えてOKだよ!
でも、radが無次元だってことも、頭の片隅に置いておくと理解が深まるよ。

角速度と速度の関係性

ここまでで、「角速度 ω は回転の速さ」ってことはバッチリですね。
でも実際に円を回る物体には、“速さ”=v(m/s) もあります。

じゃあ、vとωはどうつながるのか見ていきましょう。

v = rω という関係式!

この式は超重要です。
「円運動における速さ v は、半径 r と角速度 ω をかけたもの」になります。

速度は回転半径と角速度の積です。

なんでこうなるの?

円周上で速度ベクトルが接線方向であることを示す牛助の図
図5 牛助の円運動

図で見ていきましょう。
図5の牛助の円運動を見て下さい。

※ちなみに、等速円運動における速度ベクトルは常に円の接線方向を向いています。進行方向が常に変わっていることが、加速度が発生する理由でもあります。

物体が円の周りを動くとき、1秒間に回った角度がθ[rad]

半径が r のとき、その角度分に対応する弧の長さ(= 実際に動いた距離)lはこのように表します。

円弧は回転半径と回転角度の積です。

したがって、1秒間に動いた距離(速度v)はこうなります。
※時間をtで表します。

v = l / t  
  = rθ / t  
  = r (θ / t)  
  = rω

念のため、単位も確認しておきましょう。

[m/s] = [m] [rad/s]  
      = [m/s] (radは無次元なので、rad/sは1/sに変換できる)

radは無次元なので、m/sの辻褄がちゃんと合ってますね。

こうやって単位を確認することで、式の整合性を確認することができます。
単位って大事でしょ?

そう思ったら、コチラもチェックしておいてください。


放射線技師と角速度(円運動)

放物でいつ角速度が出てくるのか?
放物に限らず、放射線技師に円運動って関係あるのか?

わかります。
この「技師に必要じゃないんじゃね?」という感覚。
逆に関係あるものがパッと浮かんだ方はスゴイです。

関係のあるものは・・・

答えをめくる。

 加速器です。
 思いつきましたか?

 

円運動する加速器

特にサイクロトロンの問題で問われます。
詳細は検索番号F06(円形加速器 サイクロトロン)、F07(円形加速器 サイクロトロン 式変形)を参照してください。※F6とF7記事は現在執筆中です。

実際の問題を見ていきましょう。

先生ー! もうそろそろ問題とか解いてみたくなってきたんですけどっ!

たまのすけ
たまのすけ

えっ!? 問題って…“遊園地の入場料+飲食費×人数”とかか? ワイ、暗算無理やで…

牛助
牛助

なんで急に経理の話してるんですか!? 物理の問題です、物理!

たまのすけ
たまのすけ

な〜んや、てっきり遠足の予算でも出すんかと…

牛助
牛助
たなまる
たなまる

まぁまぁ落ち着いて。
「v = rω」や「ω = qB/m」の式を使って、実際に問題を解いてみたいところだけど――
ちょっと待って!
この式の背景には、“ローレンツ力と向心力が釣り合っている”っていう超重要な物理法則が隠れてるんだ。
このあたりをちゃんと理解しておかないと、問題の“意味”がわからないまま暗記になっちゃうからね。
その「ローレンツ力」については、次回 A07 の記事でしっかり解説していくよ。
まずはそっちで土台を作ってから、一緒に問題演習にチャレンジしよう!

医療現場での関わり

こちらもA07の最後でご紹介していきますね。

まとめ

たなまる
たなまる

等速円運動とは、「速さは一定、でも常に向きが変わる」特殊な運動!
速度ベクトルは接線方向、加速度ベクトルは常に中心方向(=向心加速度)
角速度(ω)と速度(v)は、v = rω で結ばれている
角速度の単位 rad/s は、実は「無次元のrad」で1/sと同じ扱いになるよ
このあたりをしっかり理解すれば、次回A07で登場する「ローレンツ力」の理解がグッとラクになります!

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単位を基礎から学びたい方はこちら。

外部リンク

By たなまる

1984年生まれの放射線技師です。 放射線技師養成校で核医学・物理・電気の講義を担当しています。 放射線技師の割に、不思議なことに現場科目より基礎科目の方を多く持っています。そのせいか、学生からは技師じゃないと思われている節があります。 専門知識よりは、学生が理解しやすい表現を心がけています。

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