

今日は「磁場で円運動になる理由」を説明しようと思うんだけど…
磁場の中って、まっすぐ進めないんですか?
荷電粒子は何に押されて曲がるんですか?

ワシは直進しかできへん軽トラ仕様やで。
カーブとか無理やわ。


いやいや、磁場が“強制カーブレール”みたいなもんなんだよ。
なるほど……つまり、磁場によって進路が強制的に変わるってことですね。

ローレンツ力ってやつやろ?
運命のいたずら的なアレやろ?


いや“物理法則”だから。
ロマンにしないで。
こんにちは。たなまるです。
磁場の中に入った荷電粒子が、なぜ直進せずに円を描くように動くのか。
「ローレンツ力がはたらくから」と聞いても、いまいちピンとこない、イメージしづらい……そんな声をよく耳にします。
この記事では、ローレンツ力の働き方と、それがどうして円運動を生み出すのかを、図を交えてわかりやすく解説していきます。
力の向き・速度・運動の変化を一つずつ整理しながら、荷電粒子の動きが自然に理解できるように進めていきます。
物理がちょっと苦手な方でも、図を見ながら順を追って学べば、磁場中の運動がしっかり頭に入ってくるはずです。
一緒にローレンツ力のイメージをクリアにしていきましょう。
これまで600人以上の学生を診療放射線技師へと導いた勉強法を伝授します。
目次
さっそく解答例
「初学 放射線物理学 ワークブック」検索番号 A07 の穴埋め解答例と解説です。
先に自分で穴を埋めてみてからの答え合わせでも良いですし、解答例を写してから覚えていっても良いです。ご自分に合ったスタイルで取り組んでください。

解説
ここのポイントは電流によって発生する磁界とローレンツ力ですね。
紛らわしい法則が飛び交いますが、落ち着いてひとつずつ見ていきましょう。
電流が流れると、なぜ磁場ができるのか?
磁場というと、まず思い浮かぶのは「磁石」かもしれませんが、
実は電流が流れると、そのまわりにも磁場が生まれます。
この現象は「アンペールの法則」として知られ、
たとえば導線に電流が流れると、その周囲をぐるりと磁力線が取り囲むように発生します。
磁場というのは「磁力がはたらく空間」のこと。
電流が作る磁場も、磁石のまわりの磁場と性質は同じで、
S極を引き寄せ、N極を押し出すような力を持っています。
この磁場の巻き方は、右手の親指を電流の向きに向けたとき、
指の曲がる向きに磁場が回る――という「アンペールの右ねじの法則」で確認できます。
下の図を見て、指のイメージを思い浮かべてみましょう。

※図中では「磁界」と表記していますが、「磁場」と同じ意味で使われています。
この記事では表記を「磁場」に統一しています。
指のイメージはこうなります。

この図は、「アンペール右ねじの法則」を使って、
電流が流れるときに、そのまわりにどの向きの磁界(磁場)ができるのかを示しています。
- 親指は「電流の向き(正の電流の流れる方向)」を表します。
- 4本の指(人差し指〜小指)は「磁界の巻き方向(磁力線の向き)」を示します。
つまり、
親指を電流の向きに向けると、指のカーブが磁界の方向になる
というのがこの法則のポイントです。
この図では、電流が上向きに流れているので、
磁界は反時計回りに生じていることがわかります。
この法則は、導線のまわりの磁場の向きを判断するときに非常に便利で、
フレミング左手の法則と並んで、磁場・電流・力の関係を理解するうえで重要な基礎になります。


牛助・・・
立てる指が違うよ・・・
電流と磁場の向きを図で確認!矢じりマークの読み解き方

立体的な運動や流れを紙の上(平面)で表すときには、
「自分の方に向かってくるか」「奥に進んでいくか」を記号で示す必要があります。
そのときに使われるのが、
●(ドット)マークと×(クロス)マークです。
- ●マーク(矢の先端)は、電流が紙の裏から飛び出してくる向きを表します。
- ×マーク(羽の部分)は、電流が紙の表から裏へ向かって進んでいる向きを表します。
この記号を使えば、電流の「奥行き方向の流れ」がわかりやすく表現できます。
次の章では、この電流の流れがどんな磁場を生み出すのかを見ていきましょう。
一様磁場で働くローレンツ力と磁場の強弱のひみつ

「一様磁場」というのは、向きも強さもそろった磁場のことです。
たとえば、図7のように下から上へ同じ強さでピシッと並んだ磁力線があるようなイメージですね。
この一様磁場の中に、電流(=運動する荷電粒子)が飛び込んでくると、
その電流自身も、まわりに磁場をつくり出します。
つまり、
もともとあった磁場と、新しく加わった電流の磁場が「合成」されることになります。
その結果として:
- 図7のアのように一様な磁場と電流の磁場の向きが同じ場所では、磁場が強まる
- 図7のウのように一様な磁場と電流の磁場の向きが反対の場所では、磁場が打ち消されて弱まる
このように、磁場が“ちょっとだけ非対称”になることで、ローレンツ力がはたらく準備が整うのです。
ローレンツ力の向きはこう覚える!アンペール&フレミングの法則解説
電流(あるいは荷電粒子)が磁場の中を運動するとき、
その進行方向を横向きにねじ曲げるような力がはたらきます。
これが、ローレンツ力(磁場による力)です。
なぜ力が曲がる方向に?
前の章で見たように、
電流のまわりにも磁場ができることで、
もともとの一様磁場とぶつかり合って、場所によって強さに差が生まれます。
図7のアとイの部分です。
この差によって、
磁場が弱くなった側(イの方向)へと押し出すような力が働きます。
つまり、ローレンツ力は「磁場が弱い方」に向かってはたらくのです。
図7のイの方向に受ける力Fがローレンツ力です。
一様磁場Bの中をqという電荷が速度vで進むと、ローレンツ力Fはこうなります。

ローレンツ力は必ず覚えておきましょう。
サイクロトロンの式変形の問題では必ず使う知識です。
A06で出てきた遠心力とローレンツ力は等しくなります。
※詳しくは加速器でやりましょうね。
磁場の向きはどう決める?アンペール右ねじ!
まず、電流によって生じる磁場の「巻き方」は、
アンペール右ねじの法則で決めることができます。
- 親指: 電流の向き
- 4本の指: その周囲を巻く磁場の向き
この法則を使えば、電流がどちら側にどんな磁場をつくるのかが簡単にわかります。
ローレンツ力の向きは?フレミング左手で判断!
次に、ローレンツ力の向きそのものは、
フレミング左手の法則を使って判断します。

- 人差し指:磁場の向き(N→S)
- 中指:電流の向き(=正の電荷の運動方向)
- 親指:力の向き(=ローレンツ力)
この3つの関係を覚えておけば、
荷電粒子がどちらに曲がるかを即座に判断できます。
ここで気を付けなければならないことは、「電流の向き」です。
ここで言う電流とは、正電荷のことを指しています。
つまり、電子の場合は負電荷ですから、向きの概念が逆になります。
電子の向き=電流の向きの逆
となります。
円運動を生むローレンツ力と進行方向の関係
荷電粒子が磁場の中に入ると、ローレンツ力によって進行方向が絶えず曲げられます。
このとき、力の向きは常に粒子の進行方向に対して直角になっており、「円を描くように曲げ続ける力」になります。
これは、A06の記事で紹介した「向心力」とまさに同じ性質をもっています。
向心力は「進行方向を曲げ続けて円運動を起こす力」。ローレンツ力も、磁場中を運動する荷電粒子にとっては、まさにそれと等しい働きをするのです。
先生、さっきから「進行方向を曲げる力」って言ってるけど、なんで曲がると円になるんですか?


いい質問!例えば、進んでいる向きに対して常に直角に力がかかってるとしたら、どうなると思う?
ん〜… まっすぐ行きたいのに、いつも横から押されてるって感じ?


そうそう。その状態が続くと、前には進めず、だんだん進行方向が曲がっていく。
その曲がり方がずーっと続くと…結果的にぐるっと円を描くことになるんだよ。
つまり、ずっと曲げられ続ける=円運動になるってことですね!

あれや、遊園地の回るカップ!グルグルさせるには、進行方向をずっと変え続ける必要がある!


まさにそれ!そしてこの「進行方向を曲げ続ける力」こそが、A06で出てきた向心力なんだ。
つまり、磁場中で働くローレンツ力は、向心力と同じ性質を持ってるんだよ。

ローレンツ力=向心力?数式で解き明かす磁場中の円運動
荷電粒子が磁場の中で円運動をするとき、働いているのはローレンツ力です。
でも実は、そのローレンツ力は「向心力」として機能しているんです。
具体的な式で見てみよう
磁場中で運動する荷電粒子に働くローレンツ力の大きさは、

ここで、
- F:ローレンツ力の大きさ
- q:荷電粒子の電荷
- v:速度
- B:磁場の強さ
一方、円運動している物体に働く向心力は、次の式で表されます

ここで、
- m:粒子の質量
- v:速度(同じだね)
- r:円運動の半径
式をつなげてみると・・・
円運動の原因がローレンツ力であるなら、
この2つの力の大きさが等しいはず!
よって、

これを整理すると、円運動の半径 r は

つまり・・・
- ローレンツ力は、向心力と等価な力として粒子を曲げている
- この関係を数式で確認することで、「なぜ円運動になるのか」がより明確になる
実際の問題を見ていきましょう

2003年に実施された第55回からのご紹介。
解答を確認する。
正解は 4 です。
サイクロトロンの定番、式変形の問題です。
これは出題頻度も高いので、是非マスターしておきたいところです。
ポイントは問題文で定義されていない文字をどうやって消していくかです。
式変形のプロセスを示しておきます。
2~3回練習すれば、解けるようになると思います。

ローレンツ力とサイクロトロン:医療現場での円運動の応

ローレンツ力や磁場による円運動――この現象、実は医療の現場でも活かされています。
その代表例が、サイクロトロンやシンクロトロンといった粒子加速装置。
PET(陽電子放出断層撮影)に使われる放射性同位元素(RI)の多くは、これらの装置で人工的に作られています。
サイクロトロンの仕組み
サイクロトロンでは、磁場中で荷電粒子をぐるぐる回転させながら加速していきます。
この回転運動を支えているのが、まさにローレンツ力による円運動です。
- 粒子に電圧をかけて加速
- 磁場の中で円運動しながらエネルギーを増す
- 高速になった粒子を標的にぶつけてRIを生成
この流れの中に、ココで学んだ「ローレンツ力」がしっかり組み込まれています。
普段の勉強では「なんでこんなの学ぶんだろう…」と思いがちな放物ですが、
医療の最先端ではこうして役に立っていることが分かると、少し見え方が変わってきませんか?
まとめ

・磁場中の荷電粒子は、ローレンツ力で進行方向を曲げられて円運動します。
・ローレンツ力は「vBq(バーベキュー)」で楽しく覚えましょう!
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