Home » ワークブック解答 » A13 原子数と電子数の関係と計算式を図で整理|密度・原子量・アボガドロ数の使い方

先生、この物質に含まれる電子の数って、どうやって調べるんですか?

たまのすけ
たまのすけ

たぶん…1個ずつ呼びかけたら
返事してくれるんじゃないかなぁ
うちの電子たち、レスポンスいいよ〜

原子くん
原子くん

呼びかけ!?
そんなに素直な電子ばっかりじゃないですよ!

たまのすけ
たまのすけ

いやいやオレはな、電子の気持ちになって考えるタイプやから、
そろそろ何個か見えてきたで!!

牛助
牛助

見えません!数えるんじゃなくて、
ちゃんと式で求めたいんです!

たまのすけ
たまのすけ
たなまる
たなまる

はいはい。じゃあ今日は、どうやって“数えることなく”電子数を出すか、説明していきましょう。

「この物質に含まれる電子って、いったい何個あるの?」
放射線やX線の挙動を学ぶうえで、「電子の数」が重要になる場面はたくさんあります。ですが、実際に数を数えるわけにもいかず、どうやって求めればいいのか困ってしまう人も多いのではないでしょうか。

この記事では、「電子の数」を式で求める方法をわかりやすく解説します。
その過程で「原子の数」も求められるようになります。

電子の数を出すには、密度・体積・原子量・アボガドロ数などの情報をもとに、いくつかの手順を踏んで計算します。式の立て方がわかれば、問題ごとに応用することもできるようになりますよ。

放射線技師国家試験でも頻出の「電子数の計算」ですが、公式を暗記するだけではなかなか身につきません。この記事では、計算の意味から丁寧に整理していくので、しっかり理解して使いこなせるようになります。

これまで600人以上の学生を診療放射線技師へと導いた経験から、わかりやすくお伝えしていきます。

解説

ここは学生からも質問の多い分野です。
中学校で習う知識もチョコっと使ってます。
でも大丈夫。
単位を考えていけば組み立てられますよ。

それでは、イってみましょう。

このページで使う記号と物理量を確認しよう

まずは文字の定義から

ここで登場する文字を一気に定義付けしていきましょう。
順不同です。思いついたものからあげていきます。

  • NA:アボガドロ数 [1/mol]
  • ρ:物質の密度 [g/cm3]
  • V:物質の体積 [cm3]
  • A:質量数
  • Z:原子番号

馴染みのない方の為にちょっと用語の解説を挟んでおきましょう。

アボガドロ数

単位をよく見て下さい。
アボガドロ数の単位は [1/mol] です。1の部分を個にして [個/mol] としても良いです。
(単位の世界で「1」は「個数」や「回数」を表すときに使われます。)
これは、「物質が1mol集まったら、そこには何個の原子がありますよ」ということを示しています。
数字で表すと、6.02×1023個です。

つまり、物質が1molあると、その物質の中に原子が6.02×1023個入っているということになります。

物質の密度

こちらも単位をよく見て下さい。
密度の単位は [g/cm3] です。
これは1cm3体積あたりの質量を示しています。
SI基本単位で示すと[kg/m3]となりますが、常用されるのは[g/cm3]です。

要は、どれだけギュッと詰まっているかを示しています。

当然、密度が高ければギュッと詰まっていて、密度が低ければスカスカということになります。
見かけ以上に重たいなってものは高密度です。鉛なんかが良い例ですね。
反対に大きくても軽い発泡スチロールは低密度と言えますね。

物質の体積

体積のモデルです。この場合は立方体。

物質(物体)の大きさを示したものですね。
単位をみると、 [m3] となっています。
これは [m] を3回掛け算してねという意味でしたよね。
つまり、長さを3回掛ければOKですね。
サイコロ状の物体であれば、「縦」×「横」×「高さ」ですね。

質量数と原子番号

原子核

説明の必要はないかもしれませんが、念のため。
質量数は原子核の中にある核子の総数です。
簡単に言うと、「陽子」と「中性子」の合計数です。

それに対して原子番号は「陽子」の数です。

「原子数」や「電子数」はどうやって求めるの?

原子数を求めてから、電子数を求めることになります。

まずは質量を確認しよう。

問題文中に質量が明記されていれば問題ありません。
その数字や文字を使ってください。
だいたい「m」が充てられることが多い印象です。

問題は明記のない場合です。

質量の明記がない場合は、何とかして質量を表現しなくてはなりません。
ここでも単位が役に立ちます。
質量の単位は [kg] ですが、原子のような小さいものの場合は [g] で良いでしょう。

先ほど定義した文字の中から、単位をよく見て組み合わせれば、質量が表現できそうではないですか?

えっ?できない?

2文字組み合わせると・・・

密度と体積の単位を組み合わせて見て下さい。

ρ[g/cm3] と V[cm3] です。

掛け算してみると、 [g] になりますよね。

質量は密度と体積の積で表すことができます。

続いて mol 数を求める(密度・体積・原子量)

厳密にいえば「モル質量」ということになりますが、放物では「モル数」で差支えないでしょう。
また、本来は「原子量」に当たる部分も「質量数」で考えて差し支えありません。

放物でだけですよ。

従いまして、物質に含まれるモル数は「質量」mを「質量数」Aで除せば求められます。
質量が定義・明記されていない場合は、密度と体積を駆使して表現します。

モル数の式の変形を表す数式。

モル数 = 質量 ÷ 質量数
   =(密度 × 体積)÷ 質量数
   = ρV / A

※ここで ρ(ロー)は密度、V は体積、A は質量数を表す。

こちらの知恵袋も参考になります。
是非ご一読ください。

アボガドロ定数で「個数」に変換する

原子数はモル数とアボガドロ数の積で表現することができます。

モル数は物質の中に何mol入っているか。
アボガドロ数は1molあたりに原子がいくつ入っているかを示していましたね。

したがって、この2つを掛け合わせることによって、物資中に含まれる原子の数を表すことができるようになります。

物質に含まれる原子数

電子数は「原子数 × Z」で出せる!

原子モデル
原子核

原子の構造を思い出してください。
原子の中心には原子核があり、その中に陽子が入っています。
原子核の周りを軌道電子が周回しています。

電気的に偏りのない中性原子においては、陽子と軌道電子の数は等しいんでしたよね?
(特にイオン化しているなどの断りがない限りは中性原子として扱います。)

詳しくはこちらの記事もご参照ください。

ひとつの原子の中で陽子数を表すものがありましたね?
覚えてますか?

そう、原子番号でしたね。

つまり、1つの原子に含まれている陽子数は軌道電子の数と等しく、それは原子番号で表すことができます。

物質に含まれる陽子数と電子数

最終的にコレが求めたいのです。
物質の中にいったい何個の電子や原子が含まれているのか?

すでに物質中に含まれる原子の数は表せますね?

念のために確認する
物質に含まれる原子数の式

そこにもう1つ! 原子の中に含まれる電子数の表現を加味すれば・・・

物質に含まれる電子数

となります。

試験に出るのは「計算」より「概念」

国試では「式のかたち」が問われやすい

国家試験では、いきなり計算をさせるというよりも、
「この式の構造を正しく理解しているか?」という観点で問われることが多くなっています。

たとえば次のような選択肢が並ぶ問題で、
どれが正しい式かを選ばせるタイプの出題がよく見られます。

  • 質量×アボガドロ数 ÷ 原子量 × Z
  • 密度×体積 ÷ 原子量 × Z × アボガドロ数
  • 原子量 ÷ 質量 × アボガドロ数 × Z

一見どれももっともらしく見えるため、
「なんとなくZがあればいいでしょ」と思って選ぶと、まんまと引っかかってしまいます。

よくある引っかけ選択肢に注意!

特に注意したいのが、「原子量(=実際には質量数として扱う)とアボガドロ数の関係」に関する理解不足によるミス。

原子量の意味を「1個の原子の重さ」と思い込んでいると、式の組み立てが破綻してしまいます。

大切なのは、「式の意味」を分かって使うこと。
ちゃんと理解していれば、多少ひねった選択肢にも冷静に対応できますよ。

※本来は「原子量」という用語を用いるのが正解ですが、国家試験ではこの2つが混在して使われることがあります。
それは、実際の計算では原子量を整数化した「質量数」で近似することが多く、この方が式がシンプルになるからです。
当然、計算値も綺麗になりますよ。

実際の過去問を見てみよう。

国家試験 第66回 問42

2014年に実施された第66回国家試験からのご紹介。

いきなり電子数を問われると、「えっ?分かんない・・・」ってなってしまいがち。
でも大丈夫。いままでのプロセスをたどって考えていけば解けます。

答えを確認する。

正解は 4 です。

できましたか?

物質の中に含まれる電子数を問われていますから、物質中の原子数と原子番号の積で表現できます。

この問題では体積が1cm3となっているのがひっかけ要素ですね。

物質に含まれる電子数を表す式

上式のVに1を代入して表せばOKです。

まとめ

たなまる
たなまる

“1個の重さ”じゃなくて、“全体の中の割合”として考えるのがコツだよ!

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電爺
電爺

ほれ、ここまで読んだんなら、次はこのあたりを見ておくとえぇぞい。

原子と原子核のちがいがあやふやじゃ、計算の意味もピンとこんからのう。ここで基本の構造をきっちり整理しておくとええぞい!

「原子量」や「質量数」の話を深う理解するには、粒子の質量と電荷の知識も土台になるんじゃ。忘れとったら、ここでおさらいじゃ!

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たまのすけ
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ここまで読んできた皆さんなら、もう一歩踏み込んだ知識に触れてみたくなるはずです。そんな方におすすめの外部リンクを紹介しますね。

「高校化学基礎 5分でわかる!アボガドロの法則」|Try IT
 アボガドロの法則って何?って思ったら、ここで図と動画でサクッと理解できますよ!

「アボガドロ定数とは?原子量・分子量・モルとの関係」|受験の味方
 質量数やモル、原子量の違いをごっちゃにしやすいんですが、このページは図解が豊富で超親切です!

By たなまる

1984年生まれの放射線技師です。 放射線技師養成校で核医学・物理・電気の講義を担当しています。 放射線技師の割に、不思議なことに現場科目より基礎科目の方を多く持っています。そのせいか、学生からは技師じゃないと思われている節があります。 専門知識よりは、学生が理解しやすい表現を心がけています。

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