「初学 放射線物理学 ワークブック」検索番号 A9 の穴埋め解答例と解説です。
先に自分で穴を埋めてみてからの答え合わせでも良いですし、解答例を写してから覚えていっても良いです。ご自分に合ったスタイルで取り組んでください。
目次
さっそく解答例

解説
光の速度に近い速度領域を相対論領域といいます。
それに対して、我々が歩いたり走ったりする程度の速度領域は非相対論領域といいます。
相対論領域では我々の慣れ親しんでいる非相対論領域とは事情が異なります。
本来であれば、特殊相対性理論を理解しないといけないのですが、我々放射線技師にそこまでの物理学の知識は必要ないと思っています。
ザックリ分かっていればいいじゃん!派です。
このあたりが物理屋さんではなく、技師が物理学を教える意義ではないでしょうか。
いや、決して理解していないわけではないんですよ~。汗
我々が把握しておいた方が良い特殊相対性理論をザックリとみていきましょう。
結局は国家試験に出る部分だけ判断できれば良いのです。
特殊相対性理論
出題されるのは・・・
特殊相対性理論に関係(ある/ない)のはどれか。
です。そこで出てくるラインナップをそれぞれ説明していきましょう。
その前に、実際の国試問題も載せておきましょう。


いかがでしょう?第58回は私が受けた年ですね。
合格率62.6%という、ここ20年で最も合格率の低い年です。
いや~、不甲斐ない。笑
この2問から関係する項目をリストアップしていきましょう。
- 慣性系
- 光速度不変
- 質量エネルギー
- ローレンツ変換
この4つが関係のある項目となります。
「黒体輻射」は関係ありませんので、ご注意ください。
慣性系
ここも、得意なwikiからの引用をご紹介しましょう。
慣性系(かんせいけい、ガリレイ系とも、英語: inertial frame of reference)は、慣性の法則(運動の第1法則)が成立する座標系である[1]。物理学全般に関係する概念であるが、ニュートン力学および特殊相対性理論において特によく注目される。
力がはたらかないか、はたらいている力の和(合力)が 0 である物体がする運動を慣性運動といい、慣性系とは慣性運動をする物体と、それと共に運動する時計と物差しで測る時間・空間とをひとまとめにした概念である[2]。慣性の法則により慣性運動は等速直線運動であるため、慣性系は直線座標系となる。 したがって慣性系によって物体の運動状態を記述するとき、その物体は外力を受けない限り等速直線運動を行う。
ある慣性系 S1 に対して等速直線運動する座標系 S2 から見ると物体は外力を受けない限り等速直線運動を行うので、S2 は慣性系である。また、 S1 に対して減速している車に固定した座標系 S3 においては物体は外力を受けていなくても前向きの加速運動を行い、慣性の法則が成立しないので S3 は慣性系ではない。
wikiより
さて、この説明で慣性系が何なのか分かりますか?
安心してください。
私も良く分かりません。
でも、技師免許持ってます。
しかも、自分の受けた国家試験で特殊相対性理論の問題出てます。
正解できたかどうかは忘れましたが、その年の国試で受かってますから問題ないでしょう。
まぁ、技師になってから特殊相対性理論を意識して仕事をしたことはありませんので、大丈夫です。
もう一つの説明をご紹介しましょう。
1つの座標系と、それに対して大きさも方向も一定の速度で動いているもう一つの座標系とを区別することは不可能である。このような座標系を慣性系と呼ぶ。
西臺武弘先生の「放射線医学物理学 第3版 増補」より
うん。この説明なら少し分かりやすかろうと思います。
さすが西臺先生。文字だけでここまで表現できるなんて。
さて、こちらのサイト様の説明は動きがあって、更に分かりやすいです。
私が解説するよりも、お任せした方が良いでしょう。
西臺先生の説明文と合わせて見ていただけると理解しやすいかと思いますよ。
慣性系というのは、「慣性系座標で考えてくださいね」ということです。
こんな感じで、同じものを説明するのに何種類も説明の方法があります。
自分が理解しやすいもので覚えてしまって構いません。
光速度不変(光速度不変の法則)

これはちょっと勘違いを呼ぶ名称です。
「光の速度は変わらない」と捉えてしまうと少々語弊があります。
正しくは、「光源の運動に関わらず、光の速度は変わらない」が正解です。
真空中の光の速度はc0=3.0×108m/sで一定です。
※このことを光速度不変の法則とすることもあります。
なおかつ、最も早い速度です。光以上に早いものは存在しません。
光より早いのは私の「記憶の喪失」と「給料の使い方」くらいでしょうか・・・
真空中であれば、光の速度は一定です。
しかし、物質に入ると事情は異なります。
物質に入射した光は、物質の 1/屈折率 の速度になります。
したがって、「光速度不変」は光の速度が変わらないということではないのです。
では、速度の合成則も考えてみましょう。

近年、大谷選手をはじめ、投手の球速はどんどん上がり、コンスタントに150km/hを記録するようになりましたね。
それはさておき、150km/hの速球を投げる投手が、50km/hで走行するトラックの荷台から逆向きに投げたとします。
このとき、投手の球速はどうなるか分かりますか?
v=150-50=100 km/h となります。
これは、ニュートン力学に従う、非相対論領域のお話です。
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では、相対論領域だと速度の合成則はどうなるのか?
レーザーを出す装置(光源)をトラックの荷台に積んでレーザーを出しても、そのレーザー光の速度は3.0×108m/sで変わりません。
このように相対論領域では速度の合成則は単純な足し算では表せなくなります。
質量エネルギー
ここも賛否を呼ぶ解釈が含まれています。
ざっくりと簡単な解釈では、質量を有するものはエネルギーを有していると捉えてくれれば良いかと思います。
式としてはアインシュタイン博士のおっしゃったコレです。

mという質量を持つものは、真空中の光速度cの2乗を乗じることで、エネルギーに換算することができる。という内容です。
賛否を呼ぶ理由
これは「物体の速度が光速に近付くにしたがって質量が増加する」という説を是とするか非とするかです。
私が放物を教わった先生はこれを非とする側でした。
質量は変わることはない。20年以上前に証明されている。
質量は変わらないのだから、「静止質量」という言葉自体が可笑しなものだ!
と言うのです。
これに対し、KEKを見学した際の解説員さんはこう説明してくれました。
加速器でどんどん加速していくと、物体の速度は光速に近付いていく。
でもE=mc2という式より、光速を超えることはできないから、一定以上のエネルギーよりは加速できなくなるのか?
そんなことはなく、それ以上のエネルギーを上げることができる。
どうやるのか?
その場合は、質量が増していけば良いんだよ。と。
どちらが正しいのか?
まぁ、放射線技師には関係ないな。
物理屋さんが悩んでくれれば良いことです。
我々は求められる画像検査を提供し、診断に有用な写真を提供すれば良いのです。
それぞれの役割分担があろうに。
私は、「どっちでも良い」派です。
ローレンツ変換
またまた得意のwikiを見てみよう。
ローレンツ変換(ローレンツへんかん、英: Lorentz transformation)は、2 つの慣性系の間の座標(時間座標と空間座標)を結びつける線形変換で、電磁気学と古典力学間の矛盾を回避するために、アイルランドのジョセフ・ラーモア(1897年)とオランダのヘンドリック・ローレンツ(1899年、1904年)により提案された。
アルベルト・アインシュタインが特殊相対性理論(1905年)を構築したときには、慣性系間に許される変換公式として、理論の基礎を形成した。特殊相対性理論では全ての慣性系は同等なので、物理法則はローレンツ変換に対して不変な形、すなわち同じ変換性をもつ量の間のテンソル方程式として与えられなければならない。このことをローレンツ不変性(共変性)をもつという。
これで分かるか?
いや、分かりませんよね。
だいたい、3行以上の文章はちょっと読む気力が萎えます。
それに加えて内容が小難しいとどうも弱い・・・
私に限らず、そんな方も多いと予想するこのページです。
西臺先生はまたもや簡潔にまとめられています。
時間と空間を正しく記述するにはこのローレンツ変換であることを明らかにし、相対性理論を確立した。
西臺武弘先生の「放射線医学物理学 第3版 増補」より
前項の静止質量と相対論的質量の橋渡しとなるのが、ローレンツ変換であり、ローレンツ因子です。
電子の場合、全エネルギーは質量エネルギーと運動エネルギーの合計であるが、全エネルギーを質量エネルギーのみで表す(運動エネルギーを用いずに表す)際にローレンツ因子を用いる。

まとめ

電子のエネルギーを考えるときは、何エネルギーなのかまで意識すると理解が深まりますよ。
こちらもぜひ
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