2023年2月16日(木)に実施された診療放射線技師国家試験の放物(放射線物理学)の問題を見ていきます。
毎年どんな問題が出題されるのか、受験生以上にドキドキしてます。
AMから見ていきましょう。
さて、今年はどんな問題からスタートするんでしょうか。
1問目が解けるか解けないかで難易度が左右される気がします。
気持ちの問題でしょうが、受ける側のモチベーションに影響ありますよね。
まぁ、例年放物は70問目からですが、私としては、70問目が1問目みたいなもんです。
ではさっそく行ってみましょう。
AM70
第75回 2023年 AM70 改
重水素の質量欠損に等価なエネルギー[MeV]に最も近いのはどれか。
ただし、中性の重水素原子、陽子、中性子、電子の質量をそれぞれ
2.0141Da、1.0073Da、1.0087Da、0.00055Da とする。
また、Da は統一原子質量単位で、1Da と等価なエネルギーを931.5MeVとする。
- 1.1
- 2.2
- 3.3
- 4.4
- 5.5
※改の理由
出題当時は統一原子質量単位は Da ではなく、u を用いていました。
現在の国家試験では Da が用いられていることから、この記事では出題当時のオリジナルの u を Da に置き換えて掲載しています。
いきなり計算問題からのスタートですね。
統一原子質量の計算問題です。
これは、質量欠損を求めてから、エネルギーに換算する定番の問題。
これは必ず解けるようになっておく必要がありますね。
統一原子質量の計算問題は、質量欠損か核反応です。
解説を見る。
答えは 2 です。
まず、質量欠損⊿Mを算出し、その値をエネルギーに換算していきます。
エネルギーへの換算は質量エネルギーを利用します。
$$
\begin{aligned}
⊿M&=(1.0073+1.0087+0.0005)-2.0141\\[6pt]
&=0.0024\:\mathrm{[Da]}\\[6pt]
⊿Mc^2&=0.0024 \times 931.5 \times 10^6\\[6pt]
&=2.2\:\mathrm{[MeV]}
\end{aligned}
$$
どうでしょうか?
統一原子質量単位の計算問題は、頻繁に出題される定型問題のようなものです。
必ず解けるように準備しておきましょう。
※2025年現在、統一原子質量の単位は [ u ] (読み:ユニット)から [ Da ](読み:ダルトン) に変更されました。意味合い的には同じです。表記の違いだけと捉えて問題ありません。
AM71
第75回 2023年 AM71
X線管から発生したエネルギースペクトルを図に示す。
正しいのはどれか。
![X線のエネルギースペクトルを示したグラフ。横軸は「光子エネルギー[keV]」、縦軸は「相対光子数」。グラフは30 keV付近に連続X線の最大値を持ち、60 keV前後に鋭いピークが複数存在する。これは制動放射と特性X線の両方を含んだ典型的なX線スペクトルを表している。](https://houbutsu.net/wp-content/uploads/2025/12/第75回-AM71図.png)
- 管電圧は100kVである。
- 付加フィルタの吸収端が観察される。
- K特性X線とL特性X線が観察される。
- タングステンターゲットから発生したX線である。
- 連続スペクトルより線スペクトルの発生した割合が多い。
近年グラフから読み取る出題が増えてきましたね。
特にX線のエネルギースペクトルのグラフは頻出です。
何回も復習して覚えちゃいましょう。
解説を見る。
答えは 4 ですね。
各枝を見ていきます。
- 誤り。管電圧はグラフの最右端です。下図を参照してください。つまり80kVであることが分かります。
- 誤り。付加フィルタによる波形の変化は観察できません。見られるのは固有フィルタによる変化です。また、付加フィルタの種類(材質)が指定されていないことから、どのエネルギー領域に変化が見られるのか見当がつきません。
- 誤り。2つ見られる特性X線のピークは両方ともK特性X線です。右側がKβ、左側がKαです。LX線が観測されるときは10keV付近です。
- 正解。特性X線のエネルギーからターゲットの材質が特定できます。Kβが67.8keV、Kαが59keVのタングステンがターゲットに使われていることが分かります。
- 誤り。全体的に見ると、連続スペクトルの方が多いです。管電圧80kVでは特性X線は10%、制動放射線は90%程度となります。
![X線エネルギースペクトルの模式図。
横軸は「光子エネルギー [keV]」、縦軸は「相対光子数」。
グラフには以下の要素が含まれる: 灰色の山形部分:制動放射線(連続スペクトル) 黒い鋭いピーク(60〜70 keV 付近):Kα線、Kβ線などの特性X線 エネルギー最大値(約85 keV)付近に赤矢印で「最大エネルギーの数字が管電圧の数字と等しくなる」と注記あり 左側(10〜30 keV付近)にオレンジで塗りつぶされた部分:「この削られた部分は、固有フィルタによるもの」と記載あり 図全体は、タングステンターゲットを用いたX線スペクトルを示しており、制動放射線+特性X線の構成になっている。](https://houbutsu.net/wp-content/uploads/2025/04/第75回 AM71-グラフを読み取ると-1024x815.png)
AM72
第75回 2023年 AM72
質量衝突阻止能が最も大きいのはどれか。
- 1MeVのα線
- 2MeVのα線
- 2MeVの陽子線
- 5MeVの陽子線
- 10MeVの炭素線
こちらも定番の質量阻止能ですね。
いわゆる阻止能比で判断する問題ですね。
解説を見る。
答えは 5 です。
質量阻止能の式を覚えていれば、簡単に比較できますね。
$$
(\frac{S}{ρ})_{\text{col}} \propto \frac{m {z_i}^2}{E} \propto \frac{{z_i}^2}{v^2}
$$
各文字の定義はこちら。
- (S/ρ)col 質量衝突阻止能
- m 粒子の質量
- zi 粒子の電荷数
- E 粒子のエネルギー
- v 粒子の速度
それぞれの質量衝突阻止能を算出していきましょう。
今回はエネルギーが判明しているので、$\frac{m {z_i}^2}{E}$ で比較していきますよ。
- $(\frac{S_α}{ρ})_{\text{col}} = \frac{4 \times {2}^2}{1}=16$
- $(\frac{S_α}{ρ})_{\text{col}} = \frac{4 \times {2}^2}{2}=8$
- $(\frac{S_p}{ρ})_{\text{col}} = \frac{1 \times {1}^2}{2}=\frac{1}{2}$
- $(\frac{S_p}{ρ})_{\text{col}} = \frac{1 \times {1}^2}{5}=\frac{1}{5}$
- $(\frac{S_C}{ρ})_{\text{col}} = \frac{12 \times {6}^2}{10}=\frac{432}{10}$
大きい順に並び替えると・・・
5>1>2>3>4
つまり、質量衝突阻止能が最も大きいのは 5 となりますね。
粒子によって質量数とか覚えなきゃだめですか?


そうだね。
粒子ごとの質量数は覚えておいた方がいいね。
良く出てくる粒子の電荷数と質量数をまとめておこうか。
| 粒子 | 文字 | 電荷数 | 質量数 |
|---|---|---|---|
| 陽子 | ${}^{1}_{1}\mathrm{p}$ | 1 | 1 |
| 重陽子 | ${}^{2}_{1}\mathrm{d}$ | 1 | 2 |
| トリチウム | ${}^{3}_{1}\mathrm{t}$ | 1 | 3 |
| α粒子 | ${}^{4}_{2}\mathrm{α}$ | 2 | 4 |
| 炭素線 | ${}^{12}_{\,\,6}\mathrm{C}$ | 6 | 12 |
AM73
第75回 2023年 AM73
運動エネルギー $E_0$ の中性子が静止している質量 $M$ [u] の原子核と反跳角 $θ$ で弾性散乱したとき、原子核の反跳エネルギ―を表す式はどれか。
- $E_0 \frac{1}{(M+1)^2} \mathrm{cos}^2 θ$
- $E_0 \frac{M}{(M+1)^2} \mathrm{cos}^2 θ$
- $E_0 \frac{4M}{(M+1)^2} \mathrm{cos}^2 θ$
- $E_0 \frac{M}{(M-1)^2} \mathrm{cos}^2 θ$
- $E_0 \frac{4M}{(M-1)^2} \mathrm{cos}^2 θ$
具体的な数字は出ないものの、式だけ出題されるケースですね。
中性子の弾性散乱の式は、実際に数字を代入する場合もありますし、このパターンでの出題もありますね。
いずれにせよ、式の形を覚えていないと解けない問題です。
解説を見る。
答えは 3 です。
シチュエーションを図で把握しましょう。

反跳原子核の運動エネルギーを求めれば良い訳ですが・・・
これは式を覚えておくしかないですね。
$$
\color{#B22222}{E=E_0 \frac{4M}{(M+1)^2} \mathrm{cos}^2 θ}
$$
AM74
第75回 2023年 AM74
核磁気共鳴現象を起こすのはどれか。
- ${}^{12}\mathrm{C}$
- ${}^{16}\mathrm{O}$
- ${}^{22}\mathrm{Ne}$
- ${}^{23}\mathrm{Na}$
- ${}^{40}\mathrm{Ca}$
解説を見る。
答えは 4 です。
医療物理につき、申し訳ありませんが解説できません。
悪しからず。
※Hint
偶々核じゃなければ良いんですよ~。
PMも見ていきましょう
AMはこれといって真新しい感じはしませんでしたね。
それでは、引き続き午後も見ていきましょう。
PM70
第75回 2023年 PM70
原子核の内部転換で正しいのはどれか。
- 原子番号が変化する。
- 最外殻の軌道電子が放出されやすい。
- 内部転換電子は線スペクトルである。
- 内部転換係数は核種に依存しない値である。
- 内部転換電子の放出に続いてニュートリノが放出される。
内部転換のみにスポットを当てた珍しい出題ですね。
とはいえ、内部転換自体は比較的よく出題されますので、皆さんなら大丈夫でしょう。
解説を見る。
答えは 3 です。
- 誤り。内部転換は原子核の励起エネルギーが電磁波の形で放出される代わりに、軌道電子を放出することで低エネルギー準位へと向かう現象です。原子核の内部構造に変化はありませんので、原子番号に変化はありません。
- 誤り。原子から飛び出やすい位置にある最外殻が放出されやすいかと思いきや、内殻ほど放出されやすいです。これは原子核から近いので、エネルギーをもらいやすいからと把握しておいてください。
- 正解。1回の現象でγ線もしくは内部転換電子のみしか放出されませんので、線スペクトルになります。※1回の現象で複数が同時放出されるものは連続スペクトルです(消滅放射線は例外)。
- 誤り。内部転換係数は内部転換の起こりやすさを示す指標です。内部転換係数は原子番号のほぼ3乗に比例しますので、核種に依存します。
- 誤り。ニュートリノはβ壊変系で登場する粒子です。内部転換とは関係ありません。
PM71
第75回 2023年 PM71
電子エネルギーに対する水の質量阻止能の関係を図に示す。
5MeV電子が水1cmを通過するときのエネルギー損失[MeV]に最も近いのはどれか。
![横軸に電子エネルギー[MeV]、縦軸に水の質量阻止能[MeV・cm²/g]を対数スケールで示したグラフ。0.1~100 MeVまでの範囲をカバーし、質量衝突阻止能は電子エネルギーが数MeV付近で最小値(約2 MeV・cm²/g)をとる。質量放射阻止能は右上がりで、10 MeV以上で質量衝突阻止能と交差。全質量阻止能は両者の和として示されている。](https://houbutsu.net/wp-content/uploads/2025/12/第75回-PM71図.png)
- 0.1
- 0.5
- 1.0
- 2.0
- 4.0
なんと、グラフの2問目ですね。
やはり増加傾向にありますね。
解説を見る。
答は 4 です。
5MeVの電子の質量阻止能をグラフから読み取りましょう。

グラフから、質量放射阻止能は影響しないことが分かりますね。
質量衝突阻止能だけ考えればOKです。
グラフを読み取ると、5MeVの電子の場合の質量衝突阻止能は 2 [MeV・cm2/g] であることが分かります。
問われているのは、エネルギー損失[MeV]ですから、まだ単位が合っていません。
マッチング(単位の整合性)をとっていきます。
質量衝突阻止能に密度 [ g/cm3 ] を乗じることで「線衝突阻止能 [ MeV/cm ] 」に変換します。
そこに水の厚さを乗じて「エネルギー損失 [ MeV ] 」を求めます。
単位的にはこういった変換になります。
$$
\frac{MeV \cdot cm^2}{g} \cdot \frac{g}{cm^3} \cdot cm
$$
では、実際に数字を入れて、質量衝突阻止能からエネルギー損失:E [ MeV ] を求めてみましょう。
※水の密度は 1 [ g/cm3 ] ですよ。
$$
\begin{aligned}
E&=2 \cdot 1 \cdot 1\\[6pt]
&=2\:\mathrm{[MeV]}
\end{aligned}
$$
いかがでしょう?
グラフを読み取っただけでは正解とはなりません。
この問題は物質が1cmの水でしたので、厚さも密度も1となり、結果的にグラフの読み値と一致しただけです。
厚さや密度を変えられても解けるように準備しておきたいですね。
PM72
第75回 2023年 PM72
75 keVの光子がタングステンのK殻軌道電子との光電効果を起こしたとき放出された光電子のエネルギー[keV]に最も近いのはどれか。
ただし、タングステンのK殻軌道電子の結合エネルギーは69.5 keVとする。
- 1.1
- 5.5
- 69.5
- 144.5
- 511.0
ご馳走様!と言わんばかりのサービス問題ですね。
これは取りこぼしてはいけません。
解説を見る。
答えは 2 です。
やはり図で状況を確認しましょう。

光電子の運動エネルギー:Ee は入射光子のエネルギーと軌道電子の結合エネルギーとの差でしたね。
$$
\begin{aligned}
E_e&=75-69.5\\[6pt]
&=5.5 \:\mathrm{[keV]}
\end{aligned}
$$
ケアレスミスさえしなければ、サービス問題でしたね。
PM73
第75回 2023年 PM73
超音波の伝播速度が遅い順に並んでいるのはどれか。
(遅い ←――――――――→ 速い)
- 空気 ― 骨 ― 脂肪 ― 筋肉
- 空気 ― 脂肪 ― 筋肉 ― 骨
- 空気 ― 脂肪 ― 骨 ― 筋肉
- 脂肪 ― 筋肉 ― 骨 ― 空気
- 脂肪 ― 骨 ― 空気 ― 筋肉
解説を見る。
答は 2 です。
医療物理につき、申し訳ありませんがパスです。
悪しからず。
※Hint
超音波のような縦波の伝播速度は密度と弾性係数の関数になっています。
PM74
第75回 2023年 PM74
直接電離放射線はどれか。
- $γ$ 線
- $δ$ 線
- 中性子線
- 特性X線
- 消滅放射線
これは確実に得点したいですね。
解説を見る。
答えは 2 です。
直接電離放射線ということは、荷電粒子線であるδ線を選べばOKですね。
$δ$ 線:荷電粒子によって電離された二次電子のうち、電離能力を持つもの(電離できるくらいエネルギーの大きいもの)を指します。
※非荷電粒子線である光子によって電離された二次電子は$δ$ 線には該当しません。
第75回 放物 総評
いかがだったでしょうか。
今年は解きやすい出題が多く、悩ましい選択肢もなく、理想的な出題でしたね。
図を読み取る設問もありましたが、基本をおさえていれば十分対応できたと思います。
毎回こんな感じが良いですね。
まとめ
この記事では、第75回放射線物理の出題全体を振り返り、難易度や出題傾向について整理しました。
ポイントを確認しながら、次回の対策に役立てていきましょう。
- 今年は全体的に素直で取り組みやすい出題が多い回だった
- 出題テーマ自体は標準的で、悩ましい選択肢も少なかった
- グラフ読解問題の出題が増えてきている傾向があった
- 医療物理分野(CT・MRI・超音波など)からの出題もバランス良く配置されていた
- 基本をきちんと押さえた受験生が報われる出題構成だったといえる

ことしの放物は、まさに王道!
「丁寧に勉強してきた人が点を取れる内容」でしたね。
こういう回が続くといいですね。
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