国試 75 タイトル

毎年どんな問題が出題されるのか、受験生以上にドキドキしてます。

AM

さて、今年はどんな問題からスタートするんでしょうか。

AM70

第75回 2023年 AM70
重水素の質量欠損に等価なエネルギー[MeV]に最も近いのはどれか。
ただし、中性の重水素原子、陽子、中性子、電子の質量をそれぞれ
2.0141u、1.0073u、1.0087u、0.0005uとする。
また、uは統一原子質量単位で、1uと等価なエネルギーを931.5MeVとする。

1.1.1
2.2.2
3.3.3
4.4.4
5.5.5

いきなり計算問題からのスタートですね。
統一原子質量の計算問題です。

質量欠損を求めてから、エネルギーに換算する定番の問題。

これは必ず解けるようになっておく必要がありますね。

統一原子質量の計算問題は、質量欠損か核反応です。

解説を見る。

答えは 2 です。

まず、質量欠損⊿Mを算出し、その値をエネルギーに換算していきます。

エネルギーへの換算は質量エネルギーを利用します。

ΔM = (1.0073 + 1.0087 + 0.0005) − 2.0141
   = 0.0024 [u]
ΔMC² = 0.0024 × 931.5 × 10⁶
    = 2.2 [MeV]

どうでしょうか?

頻繁に出題される定型問題のようなものです。
必ず解けるように準備しましょう。

※2025年現在、統一原子質量の単位は [ u ] (読み:ユニット)から [ Da ](読み:ダルトン) に変更されました。意味合い的には同じです。表記の違いだけと捉えて問題ありません。

AM71

第75回 2023年 AM71
X線管から発生したエネルギースペクトルを図に示す。正しいのはどれか。

管電圧は100kVである。

付加フィルタの吸収端が観察される。

K特性X線とL特性X線が観察される。

タングステンターゲットから発生したX線である。

連続スペクトルより線スペクトルの発生した割合が多い。

右側にエネルギースペクトル図が示されており、横軸は「光子エネルギー[keV]」、縦軸は「相対光子数」。
グラフは滑らかな連続スペクトルに加え、60〜70 keV付近に複数の鋭いピーク(特性X線)が存在している。最大エネルギーは約100 keV。

近年グラフから読み取る出題が増えてきました。

特にX線のエネルギースペクトルのグラフはよく見かけます。

抑えておきましょう。

解説を見る。

答えは 4 ですね。

各枝を見ていきます。

  1. 管電圧はグラフの最右端です。下図を参照してください。つまり80kVであることが分かります。
  2. 付加フィルタによる波形の変化は観察できません。見られるのは固有フィルタによる変化です。また、付加フィルタの種類(材質)が指定されていないことから、どのエネルギー領域に変化が見られるのか見当がつきません。
  3. 2つ見られる特性X線のピークは両方ともK特性X線です。右側がKβ、左側がKαです。LX線が観測されるときは10keV付近です。
  4. 特性X線のエネルギーからターゲットの材質が特定できます。Kβが67.8keV、Kαが59keVのタングステンがターゲットに使われていることが分かります。
  5. 全体的に見ると、連続スペクトルの方が多いです。管電圧80kVでは特性X線は10%、制動放射線は90%程度となります。
X線エネルギースペクトルの模式図。
横軸は「光子エネルギー [keV]」、縦軸は「相対光子数」。
グラフには以下の要素が含まれる:

灰色の山形部分:制動放射線(連続スペクトル)

黒い鋭いピーク(60〜70 keV 付近):Kα線、Kβ線などの特性X線

エネルギー最大値(約85 keV)付近に赤矢印で「最大エネルギーの数字が管電圧の数字と等しくなる」と注記あり

左側(10〜30 keV付近)にオレンジで塗りつぶされた部分:「この削られた部分は、固有フィルタによるもの」と記載あり

図全体は、タングステンターゲットを用いたX線スペクトルを示しており、制動放射線+特性X線の構成になっている。

AM72

第75回 2023年 AM72
質量衝突阻止能が最も大きいのはどれか。

1. 1 MeV の α線
2. 2 MeV の α線
3. 2 MeV の 陽子線
4. 5 MeV の 陽子線
5. 10 MeV の 炭素線

こちらも定番の質量阻止能ですね。

解説を見る。

答えは 5 です。

質量阻止能の式を覚えていれば、簡単に比較できますね。

質量衝突阻止能が粒子の電荷数と速度に依存することを示す式。

各文字の定義はこちら。

  • (S/ρ)col 質量衝突阻止能
  • m 粒子の質量
  • zi 粒子の電荷数
  • E 粒子のエネルギー
  • v 粒子の速度

それぞれの質量衝突阻止能を算出していきましょう。

質量衝突阻止能の相対的な大きさを、粒子の質量・電荷数・エネルギーに基づいて計算した式とその値。α線、陽子線、炭素線の比較が示されている。

大きい順に並び替えると・・・

5>1>2>3>4

となります。

AM73

中性子が弾性散乱したときの原子核の反跳エネルギー式を問う選択問題。選択肢には E₀・4M/(M+1)²・cos²θ を含む。

具体的な数字は出ないものの、式だけは出題されるケースですね。
中性子の弾性散乱の式は、このパターンでの出題がありますね。

解説を見る。

答は 3 です。

シチュエーションを図で把握しましょう。

入射中性子が静止している標的核に衝突し、散乱中性子と反跳原子核に分かれる様子を示す図。入射中性子のエネルギーはE₀、反跳原子核のエネルギーEが求める対象として赤字で示されている。

反跳原子核の運動エネルギーを求めれば良い訳ですが・・・

これは式を覚えておくしかないですね。

AM74

医療物理につき、申し訳ありませんがパスです。
悪しからず。

PM

引き続き、午後も見ていきましょう。

PM70

原子核の内部転換に関する選択問題。選択肢には、原子番号の変化、最外殻電子の放出、線スペクトル、核種依存性、ニュートリノ放出に関する記述が含まれている。

内部転換のみにスポットを当てた珍しい出題ですね。

とはいえ、内部転換自体は比較的よく出題されますので、大丈夫でしょう。

解説を見る。

答えは 3 です。

  1. 内部転換は原子核の励起エネルギーが電磁波の形で放出される代わりに、軌道電子を放出することで低エネルギー準位へと向かう現象です。原子核の内部構造に変化はありませんので、原子番号に変化はありません
  2. 原子から飛び出やすい位置にある最外殻が放出されやすいかと思いきや、内殻ほど放出されやすいです。これは原子核から近いので、エネルギーをもらいやすいからと把握しておいてください。
  3. 正しいです。1回の現象でγ線もしくは内部転換電子のみしか放出されませんので、線スペクトルになります。※1回の現象で複数が同時放出されるものは連続スペクトルです。(消滅放射線は例外)
  4. 内部転換係数は内部転換の起こりやすさを示す指標です。内部転換係数は原子番号のほぼ3乗に比例しますので、核種に依存します。
  5. ニュートリノはβ壊変系で登場する粒子です。内部転換とは関係ありません。

PM71

電子エネルギーと水の質量阻止能の関係を示す対数グラフ付きの選択問題。5 MeVの電子が水を1 cm通過する際のエネルギー損失量を問う。縦軸は質量阻止能(MeV・cm²/g)、横軸は電子エネルギー(MeV)で、全質量阻止能・衝突阻止能・放射阻止能の3曲線が描かれている。選択肢は0.1〜4.0 MeV。

グラフ、2問目ですね。
やはり増加傾向にありますね。

解説を見る。

答は 4 です。

5MeVの電子の質量阻止能をグラフから読み取りましょう。

5 MeV電子の水中でのエネルギー損失が約2 MeVであることを示す図。

グラフから、質量放射阻止能は影響しないことが分かりますね。
質量衝突阻止能だけ考えればOKです。

グラフを読み取ると、5MeVの電子の場合の質量衝突阻止能は 2 [MeV・cm2/g] であることが分かります。

問われているのは、エネルギー損失[MeV]ですから、まだ単位が合っていません。

マッチング(単位の整合性)をとっていきます。

質量衝突阻止能に密度 [ g/cm3 ] を乗じることで「線衝突阻止能 [ MeV/cm ] 」に変換します。

そこに水の厚さを乗じて「エネルギー損失 [ MeV ] 」を求めます。

単位的にはこういった変換になります。

質量阻止能と密度および距離をかけたエネルギー損失の次元式(MeV)を示す式

では、実際に数字を入れて、質量衝突阻止能からエネルギー損失:E [ MeV ] を求めてみましょう。
※水の密度は 1 [ g/cm3 ] ですよ。

質量阻止能2、密度1、水の厚さ1 cmから、エネルギー損失Eが2 MeVと求まる計算式。

いかがでしょう?

グラフを読み取っただけでは正解とはなりません。

この問題は物質が1cmの水でしたので、厚さも密度も1となり、結果的にグラフの読み値と一致しただけです。

厚さや密度を変えられても解けるように準備しておきたいですね。

PM72

75keVの光子による光電効果で放出される光電子のエネルギーを問う問題。K殻の結合エネルギーは69.5keV。

ご馳走様!と言わんばかりのサービス問題ですね。
これは取りこぼしてはいけません。

解説を見る。

答えは 2 です。

やはり図で状況を確認しましょう。

75keVのX線がK殻電子に吸収され、69.5keVの結合エネルギーを超えて光電子が放出される様子を示した図。

光電子の運動エネルギー:Ee は入射光子のエネルギーと軌道電子の結合エネルギーとの差でしたね。

光電子のエネルギーを求める計算式:Ee = 75 − 69.5 = 5.5 [keV]

ケアレスミスさえしなければ、サービス問題でしたね。

PM73

医療物理にとき、申し訳ありませんがパスです。

悪しからず。

PM74

直接電離放射線に該当するものを選ぶ問題。選択肢はγ線、δ線、中性子線、特性X線、消滅放射線。

これは確実に得点したいですね。

解説を見る。

答えは 2 です。

直接電離放射線ということは、荷電粒子線であるδ線を選べばOKですね。

δ線:荷電粒子によって電離された二次電子のうち、電離能力を持つもの(電離できるくらいエネルギーの大きいもの)を指します。
※非荷電粒子線である光子によって電離された二次電子はδ線には該当しません。

第75回 放物 総評

いかがだったでしょうか。
今年は解きやすい出題が多く、悩ましい選択肢もなく、理想的な出題でしたね。

毎回こんな感じが良いですね。

最新国試の解説

第77回 国試

令和7年2月20日実施の最新国試の解説です。

By たなまる

1984年生まれの放射線技師です。 放射線技師養成校で核医学・物理・電気の講義を担当しています。 放射線技師の割に、不思議なことに現場科目より基礎科目の方を多く持っています。そのせいか、学生からは技師じゃないと思われている節があります。 専門知識よりは、学生が理解しやすい表現を心がけています。

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