2026年2月19日(木)に実施された第78回診療放射線技師国家試験の放射線物理学の問題を見ていきます。
厚労省の公式解答発表前です。
参考程度に留めて下さい。
AMを見ていきましょう
まずはAMの問題から見ていきましょう。
昨年、60問目からが放物の問題に変更になりましたね。
毎年、試験会場まで問題を取りに行くのですが、問題を渡してくれる学生の反応が国試のファーストインプレッションです。
学生のキャラにもよりますが、大抵は「今年は難しい!」と言って渡してきます。
「今年は簡単だ!」なんてセリフは聞いたことありません。
みんな自分の受けた問題が一番難しいんですよね。
ちなみに、私が受けたのは第58回です。
合格率を検索してみると・・・悲劇の年であることが伺えます。
さて、今年はどんな問題が出題されるのやら・・・
ドキドキの瞬間です。
AM60
第78回 2026年 AM60
エネルギーが 0.025 eV の中性子の速度 [m/s] に最も近いのはどれか。
ただし、中性子の質量を $1.7\times10^{-27} \mathrm{kg}$、 $1 \mathrm{eV}=1.6\times10^{-19} \mathrm{J}$ とする。
- $1.5\times10^3$
- $2.2\times10^3$
- $4.7\times10^6$
- $5.4\times10^{12}$
- $1.4\times10^{22}$
これは簡単ですね。
覚えていれば楽勝。2秒で選べる問題。
覚えていなくても力技で解けますね。
解説を見る。
答えは 2 ですね。
0.025eV というエネルギーから、この中性子は熱中性子だと判断できます。
熱中性子の速度の最頻値(最確値)は 2200 m/s です。
つまり、2.2×103 を選べばOKですね。
力技で解く場合は、以下のように解いていきます。
各文字を以下のように定義します。
- E:中性子のエネルギー
- m:中性子の質量
- v:中性子の速度
すると、高校物理で習うこの式が成立します。
$$E=\frac{1}{2}mv^2$$
では、実際の数値を入れて計算していきましょう。
$$
\begin{aligned}
E&=\frac{1}{2} mv^2\\[6pt]
0.025 \times 1.6 \times 10^{-19}&=\frac{1}{2} \times 1.7\times 10^{-27}v^2\\[6pt]
v^2&=\frac{0.025 \times 1.6 \times 10^{-19} \times 2}{1\times 1.7\times10^{-27}}\\[6pt]
v&=\sqrt{\frac{0.025 \times 1.6 \times 10^{-19} \times 2}{1\times 1.7\times10^{-27}}}\\[6pt]
&=2169.3 \mathrm{[m/s]}
\end{aligned}
$$
ということで、約2200m/s、つまり$2.2\times10^3$でOKです。
この値は計算で算出するより、覚えておいた方が良いと思いますね。
文章題の中の1枝としても出題されることが良くありますので。
AM61
第78回 2026年 AM61
同中性子体の関係にある組合せで正しいのはどれか。
- ${}^{12}\mathrm{C}$ と ${}^{16}\mathrm{O}$
- ${}^{13}\mathrm{C}$ と ${}^{14}\mathrm{C}$
- ${}^{14}\mathrm{N}$ と ${}^{14}\mathrm{C}$
- ${}^{15}\mathrm{N}$ と ${}^{16}\mathrm{O}$
- ${}^{16}\mathrm{O}$ と ${}^{16}\mathrm{N}$
これまた、優しい問題ですね。
若干放射化学の香りも感じますが、このくらいの難易度がベストだと思っています。
解説を見る。
答えは 4 ですね。
各元素の原子番号が明記されていませんが、炭素、窒素、酸素の3種類しか出ていませんから大丈夫でしょう。
ちなみに、それぞれの原子番号は6、7、8です。
それぞれの中性子数を求めて、比較すればOKです。
中性子数は質量数から原子番号を引けば求められますね。
- 6 と 8
- 7 と 8
- 7 と 8
- 8 と 8
- 8 と 9
AM62
第78回 2026年 AM62
特性X線で正しいのはどれか。2つ選べ。
- オージェ電子と競合して放出される。
- 原子番号が高いほど波長が短くなる。
- エネルギー分布は連続スペクトルである。
- 中性子と物質の相互作用によって発生する。
- 電子が原子核のクーロン力によって減速する過程で発生する。
これまた基本に忠実な良問。
解説を見る。
答えは 1と2 です。
- 正解。特性X線かオージェ電子のどちらかしか放出されません。放物を代表する競合過程のひとつですね。
- 正解。原子番号が大きいと、外殻に電子が増えていきます。Kβに高いエネルギーが混じるようになります。これは遷移するエネルギー準位差が大きくなるからです。高エネルギーになるので、波長は短くなります。
- 誤り。エネルギースペクトルは単一です。
- 誤り。中性子は電荷を持たないので、原子核との相互作用が主になります。そのため、特性X線放出の原因となる空位を直接的に発生させません。
- 誤り。この説明文は制動放射の説明です。
AM63
第78回 2026年 AM63
電子と物質との相互作用はどれか。2つ選べ。
- 制動放射
- 光核反応
- 電子対生成
- コンプトン散乱
- Cherenkov<チェレンコフ>放射
これまた、最高。
放射線技師に求める物理はこのくらいがベストですよね。
今年の問題作成委員の先生、好き。
解説を見る。
答は 1と5 です。
- 正解。
- 誤り。これは光子と物質との相互作用です。
- 誤り。これは光子と物質との相互作用です。
- 誤り。これは光子と物質との相互作用です。
- 正解。
AM64
第78回 2026年 AM64
超音波の性質で正しいのはどれか。
- 空気中を伝播しやすい。
- 組織中を進むにつれて増幅される。
- 伝播速度は脂肪組織よりも水中の方が遅い。
- 音響インピーダンスの差が大きい境界面では反射が強くなる。
- ドプラ効果とは超音波が骨に当たって乱反射する現象である。
解説を見る。
答えは 4 です。
- 誤り。超音波は空気中をほとんど伝わりません。空気はインピーダンス差があり過ぎて、ほぼ反射してしまいます。
- 誤り。超音波は進むにつれて減衰します。
- 誤り。水中は1480m/s、脂肪中は1450m/sです。
- 正解。覚えましょう。よく出題される枝です。音響インピーダンス $Z=ρc$ の差が大きいほど、反射係数は大きくなります。
反射率 R は
$$R=\left(\frac{Z_2-Z_1}{Z_2+Z_1}\right)^2$$
と表します。
$Z_1$と$Z_2$の差が大きいほど反射率が大きくなりますよね。 - 誤り。ドプラ効果は周波数の変かを表す現象です。乱反射とは無関係です。
PMも見ていきましょう
AMは比較的やさしいラインナップでしたね。
PMもこんな感じが続いて欲しいところですね。
見ていきましょう!
PM60
第78回 2026年 PM60
${}^{235}\mathrm{U}$の核分裂生成物で収率が最も高いのはどれか。
- ${}^{12}\mathrm{C}$
- ${}^{40}\mathrm{K}$
- ${}^{137}\mathrm{Cs}$
- ${}^{177}\mathrm{Lu}$
- ${}^{226}\mathrm{Ra}$
これはAMの流れを汲む問題ですね。
お優しい。
解説を見る。
答えは 3 です。
核分裂収率を思い出してください。
こんなのありましたよね。

このグラフからも分かるように、質量数95前後と140前後の核種が生成されやすくなっています。
選択肢的にも迷うものはありませんね。
PM61
第78回 2026年 PM61
放射平衡の説明で正しいのはどれか。
- 親核種の半減期が娘核種より短いときに成立する。
- 親核種と娘核種の原子番号が等しくなることである。
- 親核種と娘核種の壊変率の比が一定となる状態である。
- 親核種の壊変は停止し、娘核種のみが放射線を放出する。
- 親核種と娘核種のエネルギー状態が等しくなることである。
少しクセのある枝がありますね。
初めて見る枝もありますが、本質が分かっていれば問題なく選べそうですね。
解説を見る。
答は 3 です。
- 誤り。親核種の半減期が長い方が放射平衡は成立しやすくなります。親核種がなかなか減らない方が成立するんです。
- 誤り。原子番号が等しくなることはありません。
- 正解。放射平衡の定義そのものです。覚えましょう。
- 誤り。親核種の壊変が停止することはないです。すべて壊変して無くなってしまうであれば、放射平衡は成立しないことになります。
- 誤り。エネルギー状態やエネルギー準位は関係なく、壊変率(放射能)で判断します。
PM62
第78回 2026年 PM62
光子の水に対する質量減弱係数(A)と質量エネルギー転移係数(B)のエネルギー依存性を図に示す。
水中で1 MeV光子がコンプトン反跳電子に付与する平均エネルギー[MeV]に最も近いのはどれか。

- 0.24
- 0.31
- 0.43
- 0.52
- 0.67
これはちょっと「うっ!」となる問題ですね。
解説を見る。
答えは 3 です。
今年の問題で初めて悩みました。
ですが、考え方に気付いてしまえば大丈夫です。
まずは光子エネルギーが1MeVとなっていることから、どんな物質でもコンプトン効果が主に起こる現象です。水であればなおさら。
ということで、他の現象は寄与率が小さいので、コンプトン効果だけが起こるものとして考えていきます。
第76回のPM71の解説も参考になります。あわせてどうぞ。
あとは質量減弱係数$\frac{\mu}{ρ}$と質量エネルギー転移係数$\frac{\mu_{tr}}{ρ}$の関係性がカギになります。
$$\frac{\mu_{tr}}{ρ}=\frac{\mu}{ρ} \times \frac{E_e}{E_{\gamma}}$$
ここで$E_e$はコンプトン電子のエネルギー、$E_{\gamma}$は入射光子のエネルギーです。
この式を変形していくとこうなります。
$\frac{E_e}{E_{\gamma}}$がコンプトン反跳電子に付与する平均エネルギー(付与率とでも言いましょうか・・・)を表しています。
$$
\begin{aligned}
\frac{\mu_{tr}}{ρ}&=\frac{\mu}{ρ} \times \frac{E_e}{E_{\gamma}}\\[6pt]
\frac{E_e}{E_{\gamma}}&=\frac{\frac{\mu_{tr}}{ρ}}{\frac{\mu}{ρ}}\\[6pt]
&=\frac{B}{A}\\[6pt]
&=\frac{0.03}{0.07}\\[6pt]
&=0.428\\[6pt]
&=0.43
\end{aligned}
$$
これ、良い問題ですね。
PM63
第78回 2026年 PM63
中性子で正しいのはどれか。
- 光電効果に伴い発生する。
- 静止質量は電子よりも小さい。
- 中性子源として ${}^{241}\mathrm{Am}$ の自発核分裂を利用する。
- 熱中性子と物質の相互作用は捕獲反応が支配的である。
- 核分裂で発生する即発中性子の平均エネルギーは約 10 keV である。
これはちょっと、もの申したい。
解説を見る。
答えは おそらく4 です。
- 誤り。光電効果は中性子と関係ありません。
- 誤り。中性子の質量は電子の1839倍です。
- 誤り。AmはAm-Beの(α,n)反応で中性子を出しますが、これは自発核分裂ではなく核反応です。
- 正解とは言い難いが、これしか選べない。中性子は熱中性子に限らず、どんなエネルギー領域でも弾性散乱が支配的です。ただ、熱中性子かつ物質がBやCdなどの捕獲断面積の高い素材のときだけ中性子捕獲反応が支配的になります。水や水素の場合は熱中性子でも弾性散乱の方が圧倒的に支配的です。
この問題は物質側が特定されていません。判断できかねる設問です。 - 誤り。即発中性子の平均エネルギーは 約 2 MeV です。
モヤモヤが消えませんね。
厚労省の公式見解が楽しみです。
PM64
第78回 2026年 PM64
核磁気共鳴で正しいのはどれか。
- T1緩和時間はT2緩和時間よりも短い。
- 核スピンの励起にはマイクロ波を使用する。
- Larmor<ラーモア>周波数は外部磁場の強さに比例する。
- 陽子と中性子の両方が偶数個の原子核が観測対象である。
- 外部磁場中におかれた水素原子の殻スピンは4つのエネルギー準位に分かれる。
解説を見る。
答えは 3 です。
- 誤り。一般的に逆です。
- 誤り。RF波(ラジオ波)を使います。
- 正解。$ω=\gamma B$
- 誤り。いわゆる偶々核は信号が取れません。
- 誤り。2準位に分裂します。
第78回 放物 総評
いかがだったでしょうか。
今年は比較的やさしい出題が続きましたね。
このくらいが、放射線技師に求める物理として、ちょうどいいレベルだと思います。
まとめ
この記事では、第78回放射線物理の出題全体を振り返り、難易度や出題傾向について整理しました。
改めてポイントを振り返って、今後の学習につなげていきましょう。
- 計算問題では、式の丸暗記ではなく、係数の意味や比の解釈まで問われた
- 中性子・相互作用など、“一般論として正しいか”を見極める設問が目立った
- グラフ読解では、値を読むだけでなく、概念と結びつける力が必要だった
- 細かな言い回しの違いで正誤が分かれる、選択肢の精査力が重要な回だった
- 分野横断的に基礎を押さえているかどうかが得点差につながった

今年は比較的やさしい問題が続きましたね。
ただ、グラフの問題は新規性が髙かったように思います。
今後もグラフ読み取りの問題は出るでしょうね。
減弱係数に関する問題が多い印象です。
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