A05 物理の『波』をわかりやすく解説|X線を理解するための波の基本

みなさん、こんにちは。
たなまるです。

放射線の勉強をしていると、

α線、β線、γ線、X線、・・・

といったさまざまな放射線が登場します。

その中でも、私たち診療放射線技師がもっともよく扱うのが X線 です。

そして、このX線を理解するために欠かせないのが 「波」 という考え方。

高校で物理を学んだ方は、

「波長」
「振動数」
「周期」

といった言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。

一方で、

「波は苦手だったな……」
(ワタクシ、たなまるはこのタイプ)

という方や、

「そもそも高校で物理を選択していないんだけど……」

という方も多いでしょう。

でも大丈夫です。

この記事では、放射線物理で必要になる部分だけに絞って、波の基本を整理していきます。

高校物理で登場する反射や干渉などの難しい話は扱いません。

まずは、

振幅・波長・周期・振動数

という基本用語と、

X線との関係

を押さえていきましょう。

X線は横波?縦波? まずは波の種類を整理しよう

縦波と横波の図解。左側はバネが左右に圧縮・伸縮する縦波の様子。右側は子どもがロープを上下に振ってできる横波で、X線は横波であると説明している。

波には大きく分けて「縦波」と「横波」の2種類があります。
これは、“振動の向き”と“波の進む向き”の関係によって分類されます。

波の種類振動の向き波の進む向きとの関係主な例
縦波
(Longitudinal wave)
波の進む向きと同じ並行音波、地震のP波
横波
(Transverse wave)
波の進む向きと直角垂直光、X線、地震のS波、水面の波
表1 波の分類

えば、エコー検査に用いる超音波は、
波の進行方向と媒質の振動方向が同じ前後方向なので縦波です。

一方、X線や光のような電磁波は、
電場と磁場が進行方向と直角に振動しているため、横波に分類されます。

波には縦波と横波がありますが、放射線物理で主に扱うX線は横波です。

つまり、これから学ぶ振幅・波長・周期・振動数といった知識は、
X線を理解するための基礎になるということです。

この超音波は縦波、X線は横波という部分は
僕が学生時代に良く国家試験に出題されてました。
20年以上前に流行った定番の出題です。
あぁ懐かしや。最近は見ませんなぁ・・・

波って何?X線の理解に必要な「波の基本」

X線は、粒のような性質と同時に「波」としての性質も持っています。

つまり、X線の本質を理解するためには、
この「波」とは何かをしっかりと押さえておく必要があります。

まず最初に確認しておきたいのは、
「波」という現象がどのようなものかという基本的なイメージです。

ここでいう「波」は海の波のように見える現象だけではなく、
音や光、電波などさまざまな形で現れるものです。

X線もまた、波としての性質を持つ放射線の一つに含まれます。

この章では、そんな波の基礎を「見てわかる」「数式でつかめる」ように、
4つのポイントに分けて整理していきます。

ポイント① 「波」ってどんなもの?

波の基本構造を示す図。山と谷が繰り返される波形に対し、波長λ[m]、周期T[s]、振幅、進行速度v[m/s]が矢印や記号で示されている。横軸は時間または距離。

この図は、波が上下に揺れながら進んでいく様子を表しています。

上に盛り上がった部分を「山」、下にくぼんだ部分を「谷」と呼びます。

また、波には必ず進む方向があります。

波とは、このような揺れが空間を伝わっていく現象です。

ポイント② 波の3大要素:振幅・波長・周期

波の3大要素を説明していきます。

こういった基礎知識を疎かにしてしまうと、
それ以降の知識が入りにくくなりますから、
しっかりと抑えていきましょう。

振幅(しんぷく)

波の基本構造を示す図。山と谷が繰り返される波形に対して、波長λ[m]、周期T[s]、進行速度v[m/s]が記されている。特に振幅が赤色の矢印と文字で強調されている。

波の山の高さが、赤い矢印で示されています。これが振幅です。

振幅とは、波の基準線(中心)から山の頂点までの高さ、
または谷の底までの深さのことを指します。

つまり、どれくらい大きく揺れているかを表す値です。

振幅が大きい波ほど、“強さ”や“エネルギー”が大きくなります。
逆に、振幅が小さい波は揺れ幅が小さく、エネルギーも少ないということになります。

ちなみに、音の場合の振幅は
「音の大きさ」を表すんです。

さすが趣味がギターだけのことはありますわね。

波長(はちょう)

波の基本構造を示す図。山と谷が繰り返される波形に対して、波長λ[m]、周期T[s]、進行速度v[m/s]、振幅などが記されている。特に波長λ[m]と距離[m]が赤字と矢印で強調されている。

図の赤い矢印が示しているのが、波長です。
山から次の山まで、あるいは谷から次の谷まで――この「同じ形の位置」同士の間隔を波長と呼びます。

つまり波長とは、波が1回ぶん揺れ終わるまでに進む距離のことです。
波が空間にどのように広がっているかを表す量で、単位はメートル(m)で表します。

波長が長ければ、それだけ波の「山と山の間」が広く、
波長が短ければ、山と山の間がキュッと詰まっている――そんなイメージでOKです。

単位は「 m 」とはいうものの、
放射線は10-9 m 程度と非常に短いんだ。

nm (ナノメートル)の世界ね。

もう見えんのとちゃう?

周期(しゅうき)

波の構造を説明する図。山と谷の繰り返しを通して、周期 T[s]、波長 λ[m]、振幅、変位、速度 v[m/s] が示されている。特に周期 T[s] と時間[s] のラベルが赤字で強調されている。

図の赤い矢印で示されているのが、周期です。
これは、波が1回ぶんの揺れを終えるのにかかる時間のことを表しています。

たとえば、山から次の山まで進むのに1秒かかったとすれば、その波の周期は「1秒」です。
単位は「秒(s)」で表します。

この周期は、波がどれくらい速いペースで振動しているかの指標になります。
短い周期なら、波は細かく速く振動していますし、周期が長いと、ゆっくり大きく揺れている波になります。

簡単に言うと、
波が1回ゆれるのに何秒かかるか
ってことだよ。

ポイント③ 振動数とHzの意味もおさえよう

水平軸を時間 [s] とし、1秒間に繰り返される波形を描いた図。1 [s] の区間に複数の波が含まれており、1秒あたりの波の数=振動数(周波数)を示している。ラベルは「振動数(周波数)」。

波が1回振動するのにかかる時間を「周期」といいましたが、
逆に1秒間に何回振動するかを「振動数」といいます。

この2つの関係は、次の式で表されます。

$$
f=\frac{1}{T}
$$

周期の単位は「秒(s)」であり、振動数の単位は「ヘルツ(Hz)」です。
これは「1秒間に○回振動する」という意味であり、「1/s」と表すこともあります。

式からも分かる通り、
周期が短いほど振動数は大きくなるんだ。

ポイント④ 波の速さと「v=fλ」の関係

波の速さは、次の式で表されます。

$$
v=fλ
$$

ここで
$v$ は波の速さ(単位は「m/s」)、
$f$ は振動数(単位は「Hz(ヘルツ)」=「1/s」)、
$λ$ は波長(単位は「m」)
です。

では、この式がどう成り立つのか、単位の視点から見てみましょう。

振動数 $f$ は「1秒間に何回波が来るか」を表します。
波長 $λ$ は「波1回分の長さ」です。

つまり、1秒間にくる波の数×1波あたり〇メートルなので、1秒間で進む距離が求められます。

$$
\begin{aligned}
v&=fλ\\[6pt]
[\frac{m}{s}]&=[\frac{1}{s}]\times [m]
\end{aligned}
$$

結果として、波の速さ $v$ の単位 m/s と一致します。
式の意味だけでなく、単位を見てもこの関係が自然であることがわかりますね。

エネルギーと運動量の式をマスターしよう

波には、振動するという性質のほかに、
「エネルギーを運ぶ」という重要な特徴があります。

X線のような電磁波も、目に見えませんがエネルギーを持っていて、
それが物質に当たることでいろいろな反応を引き起こします。

ここからは、波のエネルギーや運動量を表す式も見ていきましょう。

プランク定数とエネルギーの関係式

X線やγ線などの電磁波は、「波」であると同時に「粒」としての性質も持っています。

X線やγ線を粒として考えるとき、その粒を「光子(こうし)」と呼びます。

光子が持つエネルギーはプランク定数振動数の積で表されます。

$$
E=hν
$$

$$
\begin{aligned}
{E} & : \text{エネルギー[ J ]} \\
{h} & : \text{プランク定数[ Js ]} \\
{ν} & : \text{振動数[ 1/s ]}
\end{aligned}
$$

この関係式は、光子1個あたりのエネルギーが、振動数に比例することを示しています。
つまり、振動数が高いほど、エネルギーも大きくなるということです。

また、電磁波の速さ $c$ と振動数・波長の関係 $c=νλ$ を使うと、エネルギーは波長からも求められます。

$$
E=hν=\frac{hc}{λ}
$$

ここで、波長 $λ$ の単位は m なので、式の単位も併せて確認しておきましょう。

$$
\begin{aligned}
E&=\frac{hc}{λ}\\[6pt]
[J]&=[\frac{Js \times \frac{m}{s}}{ m }]
\end{aligned}
$$

こちらもエネルギーの単位「ジュール」になります。

波の運動量と光子の性質

光子は質量を持ちませんが、運動量を持っています。
この運動量は、エネルギーや波長と関係のある式で表すことができます。

$$
p=\frac{E}{c}
$$

$$
\begin{aligned}
{p} & : \text{光子の運動量[ kg・m/s ]} \\
{E} & : \text{エネルギー[ J ]} \\
{c} & : \text{光速度[ m/s ]}
\end{aligned}
$$

エネルギーの式 $E = hν$ を代入すると、次のように表せます。

$$
p=\frac{E}{c}=\frac{hν}{c}
$$

さらに、$c = νλ$ の関係を使うと、波長との関係も次のように表せます。

$$
p=\frac{E}{c}=\frac{hν}{c}=\frac{h}{λ}
$$

この式の単位を見てみましょう。

プランク定数 h の単位は「J・s」、波長 λ の単位は「m」なので、

$$
\begin{aligned}
p&=\frac{h}{λ}\\[6pt]
[kg\cdot \frac{m}{s}]&=[\frac{Js}{m}]\\[6pt]
&=[\frac{kg \cdot \frac{m^2}{s^2}\cdot s}{m}]\\[6pt]
&=[kg \cdot \frac{m}{s}]
\end{aligned}
$$

これは運動量の単位と一致します。

運動量はエネルギーを速度で除すことで求めることができます。
その結果、プランク定数を波長で除したものと等しくなります。

ここでは、エネルギーの単位 J を SI 基本単位に分解するテクニックを使いました。
この J の分解は結構便利ですので、
忘れてしまった方はA04:主任者試験対策:SI単位の「分解」パターン4選【ジュールも解説】も併せてご参照ください。

実際の問題を見ていきましょう。

元ネタが第48回(1996年)と古いので、少しカスタマイズしております。
練習問題として捉えて下さい。

練習問題
次の記述で正しいのはどれか。2つ選べ。
ただし、プランク定数を $h$ 、光速度を $c$ とする。

  1. 波長 $λ$ の光子の運動量は $\frac{h}{λ}$ である。
  2. 運動量 $p$ を持つ粒子の波長は $\frac{h}{p}$ である。
  3. 振動数 $ν$ の光子のエネルギーは $\frac{h}{ν}$ である。
  4. 波長 $λ$ の光子のエネルギーは $\frac{hλ}{c}$ である。
  5. 速度 $v$ 、質量 $m$ の粒子の全エネルギーは $\frac{mc^2}{\sqrt{1-(\frac{c}{v})^2}}$ である。
解答を確認する。


答えは 1と2 です。

解説

元ネタは第48回(1996年)とかなり昔の問題です。
かなり古いのですが、基本要素がたくさん詰まってますので、採用してみました。

  1. 波(光子)の運動量と波長の関係性を聞かれています。覚えましょう。正しい記述です。
  2. 1に似ていますが、粒子の場合を聞かれています。ただ、関係性は波の場合と同様に考えてOKです。覚えましょう。正しい記述です。
  3. 光子のエネルギーと振動数の関係性を聞いています。E=hνです。
  4. 光子のエネルギーと波長の関係性を聞いています。E=hc/λです。
  5. ローレンツ因子を用いた粒子のエネルギーの表し方を聞いています。分母のルート内にあるvとcの位置関係が逆になっています。c/vとなっていますが、正しくはv/cです。

まとめ

この記事では、X線を理解するために必要な波の基本について見てきました。

最後にポイントを振り返ってみましょう。

  • X線は横波に分類される
  • 波の基本要素は「振幅・波長・周期・振動数」
  • 周期と振動数には $ f =​ \frac{1}{T}$ の関係がある
  • 波の速さは $v = fλ$ で表される
  • 電磁波の速さの場合は $c = νλ$となる
  • 光子のエネルギーは $E = hν = \frac{hc}{λ}$​
  • 光子の運動量は $p = \frac{E}{c} = \frac{hν}{c} = \frac{h}{λ}$​


X線の吸収や散乱を学ぶときにも必ず出てきますので、
ここでしっかり土台を作っておきましょう。

波って難しく感じるかもしれませんが、
まずは今回出てきた式と用語を整理できれば十分です。

次に読むならコレ!レントゲン博士のおすすめ内部リンク

次はこの辺りも参考になるかもよ。

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

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