みなさん、こんにちは。
たなまるです。
放射線の勉強をしていると、
α線、β線、γ線、X線、・・・
といったさまざまな放射線が登場します。
その中でも、私たち診療放射線技師がもっともよく扱うのが X線 です。
そして、このX線を理解するために欠かせないのが 「波」 という考え方。
高校で物理を学んだ方は、
「波長」
「振動数」
「周期」
といった言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。
一方で、
「波は苦手だったな……」
(ワタクシ、たなまるはこのタイプ)
という方や、
「そもそも高校で物理を選択していないんだけど……」
という方も多いでしょう。
でも大丈夫です。
この記事では、放射線物理で必要になる部分だけに絞って、波の基本を整理していきます。
高校物理で登場する反射や干渉などの難しい話は扱いません。
まずは、
振幅・波長・周期・振動数
という基本用語と、
X線との関係
を押さえていきましょう。
X線は横波?縦波? まずは波の種類を整理しよう

波には大きく分けて「縦波」と「横波」の2種類があります。
これは、“振動の向き”と“波の進む向き”の関係によって分類されます。
| 波の種類 | 振動の向き | 波の進む向きとの関係 | 主な例 |
|---|---|---|---|
| 縦波 (Longitudinal wave) | 波の進む向きと同じ | 並行 | 音波、地震のP波 |
| 横波 (Transverse wave) | 波の進む向きと直角 | 垂直 | 光、X線、地震のS波、水面の波 |
えば、エコー検査に用いる超音波は、
波の進行方向と媒質の振動方向が同じ前後方向なので縦波です。
一方、X線や光のような電磁波は、
電場と磁場が進行方向と直角に振動しているため、横波に分類されます。
波には縦波と横波がありますが、放射線物理で主に扱うX線は横波です。
つまり、これから学ぶ振幅・波長・周期・振動数といった知識は、
X線を理解するための基礎になるということです。

この超音波は縦波、X線は横波という部分は
僕が学生時代に良く国家試験に出題されてました。
20年以上前に流行った定番の出題です。
あぁ懐かしや。最近は見ませんなぁ・・・
波って何?X線の理解に必要な「波の基本」
X線は、粒のような性質と同時に「波」としての性質も持っています。
つまり、X線の本質を理解するためには、
この「波」とは何かをしっかりと押さえておく必要があります。
まず最初に確認しておきたいのは、
「波」という現象がどのようなものかという基本的なイメージです。
ここでいう「波」は海の波のように見える現象だけではなく、
音や光、電波などさまざまな形で現れるものです。
X線もまた、波としての性質を持つ放射線の一つに含まれます。
この章では、そんな波の基礎を「見てわかる」「数式でつかめる」ように、
4つのポイントに分けて整理していきます。
ポイント① 「波」ってどんなもの?
![波の基本構造を示す図。山と谷が繰り返される波形に対し、波長λ[m]、周期T[s]、振幅、進行速度v[m/s]が矢印や記号で示されている。横軸は時間または距離。](https://houbutsu.net/wp-content/uploads/2025/06/A05 波-1024x579.png)
この図は、波が上下に揺れながら進んでいく様子を表しています。
上に盛り上がった部分を「山」、下にくぼんだ部分を「谷」と呼びます。
また、波には必ず進む方向があります。
波とは、このような揺れが空間を伝わっていく現象です。
ポイント② 波の3大要素:振幅・波長・周期
波の3大要素を説明していきます。
こういった基礎知識を疎かにしてしまうと、
それ以降の知識が入りにくくなりますから、
しっかりと抑えていきましょう。
振幅(しんぷく)
![波の基本構造を示す図。山と谷が繰り返される波形に対して、波長λ[m]、周期T[s]、進行速度v[m/s]が記されている。特に振幅が赤色の矢印と文字で強調されている。](https://houbutsu.net/wp-content/uploads/2025/06/A05 波 振幅-1024x579.png)
波の山の高さが、赤い矢印で示されています。これが振幅です。
振幅とは、波の基準線(中心)から山の頂点までの高さ、
または谷の底までの深さのことを指します。
つまり、どれくらい大きく揺れているかを表す値です。
振幅が大きい波ほど、“強さ”や“エネルギー”が大きくなります。
逆に、振幅が小さい波は揺れ幅が小さく、エネルギーも少ないということになります。

ちなみに、音の場合の振幅は
「音の大きさ」を表すんです。

さすが趣味がギターだけのことはありますわね。
波長(はちょう)
![波の基本構造を示す図。山と谷が繰り返される波形に対して、波長λ[m]、周期T[s]、進行速度v[m/s]、振幅などが記されている。特に波長λ[m]と距離[m]が赤字と矢印で強調されている。](https://houbutsu.net/wp-content/uploads/2025/06/A05 波 波長-1024x579.png)
図の赤い矢印が示しているのが、波長です。
山から次の山まで、あるいは谷から次の谷まで――この「同じ形の位置」同士の間隔を波長と呼びます。
つまり波長とは、波が1回ぶん揺れ終わるまでに進む距離のことです。
波が空間にどのように広がっているかを表す量で、単位はメートル(m)で表します。
波長が長ければ、それだけ波の「山と山の間」が広く、
波長が短ければ、山と山の間がキュッと詰まっている――そんなイメージでOKです。

単位は「 m 」とはいうものの、
放射線は10-9 m 程度と非常に短いんだ。

nm (ナノメートル)の世界ね。

もう見えんのとちゃう?
周期(しゅうき)
![波の構造を説明する図。山と谷の繰り返しを通して、周期 T[s]、波長 λ[m]、振幅、変位、速度 v[m/s] が示されている。特に周期 T[s] と時間[s] のラベルが赤字で強調されている。](https://houbutsu.net/wp-content/uploads/2025/06/A05 波 周期-1024x579.png)
図の赤い矢印で示されているのが、周期です。
これは、波が1回ぶんの揺れを終えるのにかかる時間のことを表しています。
たとえば、山から次の山まで進むのに1秒かかったとすれば、その波の周期は「1秒」です。
単位は「秒(s)」で表します。
この周期は、波がどれくらい速いペースで振動しているかの指標になります。
短い周期なら、波は細かく速く振動していますし、周期が長いと、ゆっくり大きく揺れている波になります。

簡単に言うと、
波が1回ゆれるのに何秒かかるか
ってことだよ。
ポイント③ 振動数とHzの意味もおさえよう
![水平軸を時間 [s] とし、1秒間に繰り返される波形を描いた図。1 [s] の区間に複数の波が含まれており、1秒あたりの波の数=振動数(周波数)を示している。ラベルは「振動数(周波数)」。](https://houbutsu.net/wp-content/uploads/2025/06/A05 波 振動数-1024x430.png)
波が1回振動するのにかかる時間を「周期」といいましたが、
逆に1秒間に何回振動するかを「振動数」といいます。
この2つの関係は、次の式で表されます。
$$
f=\frac{1}{T}
$$
周期の単位は「秒(s)」であり、振動数の単位は「ヘルツ(Hz)」です。
これは「1秒間に○回振動する」という意味であり、「1/s」と表すこともあります。

式からも分かる通り、
周期が短いほど振動数は大きくなるんだ。
ポイント④ 波の速さと「v=fλ」の関係
波の速さは、次の式で表されます。
$$
v=fλ
$$
ここで
$v$ は波の速さ(単位は「m/s」)、
$f$ は振動数(単位は「Hz(ヘルツ)」=「1/s」)、
$λ$ は波長(単位は「m」)
です。
では、この式がどう成り立つのか、単位の視点から見てみましょう。
振動数 $f$ は「1秒間に何回波が来るか」を表します。
波長 $λ$ は「波1回分の長さ」です。
つまり、1秒間にくる波の数×1波あたり〇メートルなので、1秒間で進む距離が求められます。
$$
\begin{aligned}
v&=fλ\\[6pt]
[\frac{m}{s}]&=[\frac{1}{s}]\times [m]
\end{aligned}
$$
結果として、波の速さ $v$ の単位 m/s と一致します。
式の意味だけでなく、単位を見てもこの関係が自然であることがわかりますね。
エネルギーと運動量の式をマスターしよう
波には、振動するという性質のほかに、
「エネルギーを運ぶ」という重要な特徴があります。
X線のような電磁波も、目に見えませんがエネルギーを持っていて、
それが物質に当たることでいろいろな反応を引き起こします。
ここからは、波のエネルギーや運動量を表す式も見ていきましょう。
プランク定数とエネルギーの関係式
X線やγ線などの電磁波は、「波」であると同時に「粒」としての性質も持っています。
X線やγ線を粒として考えるとき、その粒を「光子(こうし)」と呼びます。
光子が持つエネルギーはプランク定数と振動数の積で表されます。
$$
E=hν
$$
$$
\begin{aligned}
{E} & : \text{エネルギー[ J ]} \\
{h} & : \text{プランク定数[ Js ]} \\
{ν} & : \text{振動数[ 1/s ]}
\end{aligned}
$$
この関係式は、光子1個あたりのエネルギーが、振動数に比例することを示しています。
つまり、振動数が高いほど、エネルギーも大きくなるということです。
また、電磁波の速さ $c$ と振動数・波長の関係 $c=νλ$ を使うと、エネルギーは波長からも求められます。
$$
E=hν=\frac{hc}{λ}
$$
ここで、波長 $λ$ の単位は m なので、式の単位も併せて確認しておきましょう。
$$
\begin{aligned}
E&=\frac{hc}{λ}\\[6pt]
[J]&=[\frac{Js \times \frac{m}{s}}{ m }]
\end{aligned}
$$
こちらもエネルギーの単位「ジュール」になります。
波の運動量と光子の性質
光子は質量を持ちませんが、運動量を持っています。
この運動量は、エネルギーや波長と関係のある式で表すことができます。
$$
p=\frac{E}{c}
$$
$$
\begin{aligned}
{p} & : \text{光子の運動量[ kg・m/s ]} \\
{E} & : \text{エネルギー[ J ]} \\
{c} & : \text{光速度[ m/s ]}
\end{aligned}
$$
エネルギーの式 $E = hν$ を代入すると、次のように表せます。
$$
p=\frac{E}{c}=\frac{hν}{c}
$$
さらに、$c = νλ$ の関係を使うと、波長との関係も次のように表せます。
$$
p=\frac{E}{c}=\frac{hν}{c}=\frac{h}{λ}
$$
この式の単位を見てみましょう。
プランク定数 h の単位は「J・s」、波長 λ の単位は「m」なので、
$$
\begin{aligned}
p&=\frac{h}{λ}\\[6pt]
[kg\cdot \frac{m}{s}]&=[\frac{Js}{m}]\\[6pt]
&=[\frac{kg \cdot \frac{m^2}{s^2}\cdot s}{m}]\\[6pt]
&=[kg \cdot \frac{m}{s}]
\end{aligned}
$$
これは運動量の単位と一致します。
運動量はエネルギーを速度で除すことで求めることができます。
その結果、プランク定数を波長で除したものと等しくなります。
ここでは、エネルギーの単位 J を SI 基本単位に分解するテクニックを使いました。
この J の分解は結構便利ですので、
忘れてしまった方はA04:主任者試験対策:SI単位の「分解」パターン4選【ジュールも解説】も併せてご参照ください。
実際の問題を見ていきましょう。
元ネタが第48回(1996年)と古いので、少しカスタマイズしております。
練習問題として捉えて下さい。
練習問題
次の記述で正しいのはどれか。2つ選べ。
ただし、プランク定数を $h$ 、光速度を $c$ とする。
- 波長 $λ$ の光子の運動量は $\frac{h}{λ}$ である。
- 運動量 $p$ を持つ粒子の波長は $\frac{h}{p}$ である。
- 振動数 $ν$ の光子のエネルギーは $\frac{h}{ν}$ である。
- 波長 $λ$ の光子のエネルギーは $\frac{hλ}{c}$ である。
- 速度 $v$ 、質量 $m$ の粒子の全エネルギーは $\frac{mc^2}{\sqrt{1-(\frac{c}{v})^2}}$ である。
解答を確認する。
答えは 1と2 です。
解説
元ネタは第48回(1996年)とかなり昔の問題です。
かなり古いのですが、基本要素がたくさん詰まってますので、採用してみました。
- 波(光子)の運動量と波長の関係性を聞かれています。覚えましょう。正しい記述です。
- 1に似ていますが、粒子の場合を聞かれています。ただ、関係性は波の場合と同様に考えてOKです。覚えましょう。正しい記述です。
- 光子のエネルギーと振動数の関係性を聞いています。E=hνです。
- 光子のエネルギーと波長の関係性を聞いています。E=hc/λです。
- ローレンツ因子を用いた粒子のエネルギーの表し方を聞いています。分母のルート内にあるvとcの位置関係が逆になっています。c/vとなっていますが、正しくはv/cです。
まとめ
この記事では、X線を理解するために必要な波の基本について見てきました。
最後にポイントを振り返ってみましょう。
- X線は横波に分類される
- 波の基本要素は「振幅・波長・周期・振動数」
- 周期と振動数には $ f = \frac{1}{T}$ の関係がある
- 波の速さは $v = fλ$ で表される
- 電磁波の速さの場合は $c = νλ$となる
- 光子のエネルギーは $E = hν = \frac{hc}{λ}$
- 光子の運動量は $p = \frac{E}{c} = \frac{hν}{c} = \frac{h}{λ}$
X線の吸収や散乱を学ぶときにも必ず出てきますので、
ここでしっかり土台を作っておきましょう。

波って難しく感じるかもしれませんが、
まずは今回出てきた式と用語を整理できれば十分です。
次に読むならコレ!レントゲン博士のおすすめ内部リンク

次はこの辺りも参考になるかもよ。
この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら
診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。
都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。
国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。
保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有



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