A03 放物シリーズ完全対策!力学的エネルギーとその単位(J・eV)をわかりやすく解説

みなさん、こんにちは。

さて、放射線技師を目指すみなさんは

「エネルギー」

と聞いてどんな単位を思い浮かべますか?

高校で物理を学んだ方は [ J ] ですかね?
ダイエットの経験がある方は [Cal] でしょうか?
電気に明るい方は [Wh] を思い浮かべた方もいるのでは?
放物の勉強が進んできた方は [eV] が思い浮かぶでしょうか?

そう、一口に「エネルギー」と言われても、
「どれだ?」ってなってしまいますよね。

今回は放物で主に扱うエネルギーの単位2種類をご紹介するとともに、
答えるべき単位の見極め方を覚えていってもらいます。

これが分かると、
吸収線量や阻止能などエネルギーを代入する計算問題でも苦手意識がなくなり、
得点アップ間違いなしです。

J(ジュール)でエネルギーを計算してみよう

加速された粒子がどれだけのエネルギーを持つかは、
「電圧」と「電荷」から計算できます。

放射線の分野では、電子や原子核に高い電圧をかけて加速する場面がよく登場します。

そのときのエネルギーをジュール(J)で求めるためには、
「電荷 × 電圧」という公式が基本になります。

エネルギーの単位って何だっけ?という方は、
A02:放射線物理に必要な物理単位まとめ|速度・圧力・電気など16個を簡単整理
をご一読ください。

公式「電荷×電圧」を使う理由

エネルギーとは、「力 × 距離」で求められる量です。
しかし、電気的な場面では、
「電圧をかけて電荷を動かしたときに生じるエネルギー」
として考えられます。

このときに使う公式が以下の式です。

$$
E=\left|Q\right| \times V
$$

ここで

  • E:エネルギー(単位:J)
  • Q:電荷(単位:C)
  • V:電圧(単位:V)

となります。

数値を代入してJで求めてみよう

今回は、4He原子核(質量数4、原子番号2)を3 MVの電圧で加速したときのエネルギーを計算してみましょう。

問題では、He原子核の電荷が 3.2 × 10-19 C と与えられています。

このとき、エネルギーEは次のように求められます。

$$
\color{#B22222}{
\begin{aligned}
E&=\left|Q\right| \times V \\[6pt]
&=\left|3.2 \times 10^{-19}\right| \times 3 \times 10^6 \\[6pt]
&=9.6 \times 10^{-13} \,\mathrm{[ J ]}
\end{aligned}
}
$$

つまり、エネルギーは「9.6 × 10-13 J」になります。

このように、ジュール(J)で求めるときは、電荷と電圧をそのまま掛け算すればOKです。

電荷と電圧をそのまま掛けると J になるのね。

そうだね。
10の指数が出てくるけど、式の構造自体は簡単だね。

同じ問題をeVで解いてみよう

前のセクションでは、電荷と電圧を掛け算することで、
エネルギーをジュール(J)で求める方法を確認しました。

次は同じ問題を、エレクトロンボルト(eV)で解いてみましょう。

eVは、放射線のエネルギーや粒子の加速エネルギーを表すときによく使われる単位です。
特に医学や物理の分野では、JよりもeVやMeV(メガエレクトロンボルト)の方がよく登場します。

ジュールを「e」で割るとeVになるって?

エレクトロンボルト(eV)は、電子1個が1ボルトの電圧で加速されたときに得るエネルギーとして定義されます。

このとき基準になるのが、電子1個がもつ電気量の絶対値
すなわち電気素量(電気の最小単位)です。

電子の電荷は −1.6 × 10-19 C という負の値ですが、
エレクトロンボルトの定義に使われるのはその絶対値(電気素量)である1.6 × 10-19 C です。

eVで求めるときは、「粒子が何個分の電気素量を持っているか」を考えます。

今回のヘリウム原子核の電荷は 3.2 × 10-19 C ですから、電気素量の2個分に相当します。

それでは、エネルギーをエレクトロンボルトで求めてみましょう。
エネルギーは「電荷 ÷ 電気素量 × 電圧」で計算できます。

$$
\color{#B22222}{
\begin{aligned}
E &= \frac{\left| Q \right|}{e} \times V \\[6pt]
&= \frac{\left|3.2 \times 10^{-19}\right|}{1.6 \times 10^{-19}} \times 3 \times 10^6 \\[6pt]
&= 2 \times 3 \times 10^6 \\[6pt]
&= 6 \times 10^6 \, \mathrm{[eV]}\\[6pt]
&= 6 \, \mathrm{[MeV]}
\end{aligned}}
$$

つまり、エレクトロンボルトだと「6 × 106 eV」 という結果が得られます。

単位をMeVに換算しておこう

6 × 106 eV のように桁が大きいと、実際の問題では少し扱いにくく感じることがあります。
そこで、よりスマートに表記するために使われるのが、
MeV(メガエレクトロンボルト)という単位です。

1 MeV = 106 eV

ですので、

6 × 106 eV = 6 MeV

となります。

よって、エネルギーは「6 MeV」です。

これで、ジュール(J)でもエレクトロンボルト(eV)でも、
同じ物理量を違う単位で表すことができるようになりました。

どちらの単位も使いこなせるようになることが、
放物に限らず放射線の世界では大切になります。

ほんま紛らわしいわ~

eVと J を自由に行き来できるようになると
スッキリするよ。
計測学でも大事な知識だね。

1 eV = 1.6 × 10-19 J を覚える意味

エレクトロンボルトとジュールは、どちらもエネルギーを表す単位です。
この2つは、ただの「単位の違い」ではなく、
使われる場面やスケールの違いに意味があります。

放射線や原子レベルの現象では、
ジュールだと値が小さくなりすぎてしまい、扱いにくくなります。

一方、日常生活や機械的な運動の世界では、ジュールの方が一般的です。

そのため、1 eV = 1.6 × 10-19 J という換算式は、2つの世界(マクロとミクロ)をつなぐ橋渡しのような役割を果たしているのです。

マクロがデカい世界で
ミクロが小さい世界なや。

そう。
マクロだと J で
ミクロだと eV って感覚かな。

放射線の世界でなぜ頻出なのか?

放射線のエネルギーは、たとえばX線で数十 keV、
陽子線や重粒子線では数百 MeVといった単位で語られます。

このような世界では、エレクトロンボルト単位の方がスケール的にちょうどいいのです。

一方で、エネルギーをジュールで扱う計算問題も登場するため、
両方の単位を理解しておくことが不可欠です。

試験では、問題文をよく読んで、
J で聞かれているのか eV で聞かれているのか
を判断しなければなりません。

JとeVを自由に行き来できるようにするために

単位換算を正確にできるようにするためには、1 eV = 1.6 × 10-19 J という関係を、
ただ「知っている」だけでなく、「使える」状態にしておくことが大切です。

この数値は覚えやすくはありませんが、何度か問題を解くうちに慣れてきます。
繰り返し出てくる公式なので、計算しなくても自然に手が動くくらいにしておきたいところです。

また、逆にジュールからeVに換算したいときは

$$
1 \:\mathrm{ J }=\frac{1}{1.6\times 10^{-19}} \:\mathrm{ eV } \simeq 6.25\times10^{18}\:\mathrm{ eV }
$$

このような逆方向の換算式も、余裕があれば見慣れておくとさらに理解が深まります。

ただし、国家試験では換算そのものよりも「どの単位で答えるべきか」を見極めることが重要です。

問題文で [J] と書かれていれば J で答える。
[eV]、[keV]、[MeV] と書かれていれば eV 系の単位で答える。

計算が合っていても、最後の単位を間違えると失点になってしまいます。

「今、自分はどの単位で計算しているのか?」

を意識しながら問題を解くようにしましょう。

実際の問題を見ていきましょう

2014年に実施された第66回からのご紹介。

第66回 2014年 問41

波長が 0.041 nm である光子のエネルギー [keV] はどれか。
ただし、プランク定数 = 6.6×10−34 [Js]、光速度 = 3.0×108 [m/s]、1 eV = 1.6×10−19 [J] とする。

  1. 4.8
  2. 12
  3. 20
  4. 30
  5. 48
解答を確認する。

正解は 4 です。

今回は J (ジュール)で表される式を使っていきます。
途中、1.6×10-19で割ることで、J → eV の換算を入れていきます。
この部分は赤文字で示しておきます。

$$
\begin{aligned}
E&=hν\\[6pt]
&=\frac{hc}{λ}\\[6pt]
&=\frac{6.6\times 10^{-34} \times 3.0 \times 10^8}{0.041 \times 10^{-9} \times \color{#B22222}{1.6 \times 10^{-19}}}\\[6pt]
&=30182.92 \:\mathrm{[eV]}\\[6pt]
&=30\:\mathrm{[keV]}
\end{aligned}
$$

いかがでしょう?
電卓が無いとしんどい計算ですが、実際に出題されています。

医療現場ではこの知識がどう役立つの?

放射線治療に用いられるリニアック(直線加速器)のイラスト。左側に丸みを帯びた大型のガントリ、右側に水色の寝台が配置されている。背景や周辺機器は省略され、装置本体と寝台のみが簡略化されたデフォルメスタイルで描かれている。

医療現場でJとeVを変換している状況ってなかなか想像しにくいですよね?

でもちゃんとあります。

それは、放射線治療です。

放射線治療では、X線は6MVや10MVといったMVの電圧呼称
電子線は6MeVや12MeVといったMeVのエネルギー呼称で照射する放射線を選択します。

どちらも放射線のエネルギーを表しているため、eV系の単位が使われています。

一方で、治療の結果として患者さんに与えられた線量は、
「本日の線量は2Gy」
というようにGyで記録されます。

Gy(グレイ)は

1 Gy = 1 J/kg

で定義される単位です。

つまり、放射線治療の現場では、
MeVで表される粒子や光子のエネルギーと、
Jで表される吸収線量の両方が登場しているのです。

実際にはコンピュータが自動的に計算してくれるため、
技師が毎回eVとJを変換することはありません。

しかし、その裏側では今回学んだ単位の考え方がしっかり使われています。

まとめ

エネルギーの計算には、ジュール(J)とエレクトロンボルト(eV)という2つの単位が使われることがあります。
ジュールは力学の基本単位として広く使われますが、放射線や粒子の世界ではeVの方がスケール的に扱いやすくなります。

今回の内容では、

  • エネルギーは E = |Q| × V の式で求める
  • 放射線分野では J(ジュール)eV(エレクトロンボルト) を使う
  • 計算結果は、1 eV = 1.6 × 10⁻¹⁹ J の換算式を使って変換できる

ということがわかりました。

ジュールとエレクトロンボルト、どちらの単位も使いこなせるようになれば、試験でも実務でも迷うことなくエネルギーを読み解けるようになります。

どちらの単位で聞かれても、
しっかり計算できるようにしておこう。

次に読むならコレ!レントゲン博士のおすすめ内部リンク

次はこの辺りも参考になるかもよ。

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

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