2026年6月6日に実施した放射線物理学Ⅱ中間試験の解説です。
試験の復習・定期試験対策に活用してください。
試験は説明問題6問、計算問題4問の合計10問で構成されています。
配点は説明も計算も1問10点です。
ただし、説明問題には「キーワードを含めること」という条件があります。
各問題につきキーワードを5つ指定しました。
キーワード1つにつき2点の配点です。
限られたスペースで、キーワードを含めながら、
いかに第三者に伝わる形で説明できるかがポイントになります。
つまり、「知っているか」ではなく、「理解しているか」を問う試験です。
明朗会計ならぬ、明朗採点です。
- 全体概要
- 採点基準について
- 問1 「α壊変」を説明しなさい。
- 問2 「 $ β^- $ 壊変」を説明しなさい。
- 問3 「ECと $ β^+ $ 壊変の違い」を説明しなさい。
- 問4 「消滅放射線の発生過程」を説明しなさい。
- 問5 「内部転換からオージェ電子の放出までの流れ」を説明しなさい。
- 問6 「誘導核分裂」を説明しなさい。
- 問7 半減期3時間の核種が20MBqある。6時間経過した後の放射能[MBq]を求めなさい。
- 問8 ある親核種 ${}^{100}\mathrm{X}$ がα壊変して娘核種 ${}^{96}\mathrm{Y}$ になった。壊変のQ値が 5.0MeV のときのα粒子の運動エネルギー[MeV]を求めなさい。
- 問9 とある核種 ${}^{234}_{90}\mathrm{X}$ が壊変を繰り返して ${}^{214}_{84}\mathrm{Y}$ になるまでに行う $ α $ 壊変と $β^{-}$ 壊変の回数をそれぞれ求めなさい。
- 問10 とある核種 ${}^{10}\mathrm{X}$ に重陽子( ${}^{2}\mathrm{d}$ )を照射したところ、核反応が起こった。この反応のQ値が -2.0MeVのとき、しきいエネルギー[MeV]を求めなさい。
- まとめ
- この記事を書いた人
全体概要
| 受験者数 | 76名 |
| 平均点 | 61.9点 |
| 最高点 | 95点 |
| 最低点 | 19点 |

| 問題 | 正答率 |
| 問1 | 66.4% |
| 問2 | 78.6% |
| 問3 | 60.5% |
| 問4 | 66.6% |
| 問5 | 73.7% |
| 問6 | 25.4% |
| 問7 | 93.4% |
| 問8 | 44.7% |
| 問9 | 75.0% |
| 問10 | 35.4% |
今回の平均点は61.9点でした。
得点分布は中央に集まる形となり、試験としては比較的バランスの良い結果でした。
一方で、「誘導核分裂」の説明や「吸熱反応のしきいエネルギー」の計算など、
苦戦した形跡が見て取れます。
今回は各問題の解説に加え、採点していて多かった誤答についても紹介していきます。
採点基準(クリックして開く)
採点基準について
採点基準は一言でいうと
「他人に伝わる形で表現できたか」
です。
何も知らない第三者に伝えることを念頭に置いて回答してください。
実際は色々と知っている私が採点しますが、基本理念としてお忘れなく。
説明問題
説明問題の採点基準は以下のポイントに基づきます。
- 現象・用語の肝になるキーワードが含まれているか
- キーワードが正しく使えているか
- 日本語が正しいか(表現・誤字・脱字)
- 図示の指示がある場合、図が正確か
現象・用語によってキーワードの数が異なりますので、
キーワード1個当たりの配点は問題ごとに変わります。
日本語も当然見ます。
接続語、主語と述語のマッチングあたりは結構細かく見ています。
物理なのに?
と、思うかもしれませんが、日本語は物理以前の問題です。
図も粒子線は直線、電磁波は波線で表記するといったことから、
何がどこに衝突しているか、曲がる方向は正確か、なども見ています。
「なんとなく意味が伝わる」ではなく、「定義として正しいか」を重視しています。
計算問題
計算問題も同様に採点基準を設けています。
- 求めるものを把握しているか
- 定義されていない文字を使っていないか
- 使用する関係式が合っているか
- 数値の代入ができているか
- 計算過程が合っているか
- 計算結果の数値が合っているか
- 単位が合ってるか
- 数式のルールに則って表記されているか
この辺りを見ています。
計算は「答えを出す作業」ではなく、「等式を用いて解法を説明する作業」です。
計算結果だけでなく、何を求めているのか第三者が追える形で記述してください。
一例を出しておきましょう。
例 A地点からB地点まで時速30kmで走行すると30分かかる。A地点からB地点までの距離[km]を求めなさい
求める距離を $x$ 、速度を $v$ 、時間を $t$ とすると、
$$
\begin{aligned}
x&=vt \\[6pt]
&=30 \times \frac{30}{60} \\[6pt]
&=15 \mathrm{[ km ]}
\end{aligned}
$$
こんな感じになります。
読んでいて、不明点が無いはずです。
初めて読む人が困ることなく読めるかどうかです。
2行目の$ x=vt $はカットして、いきなり$ x=30 \times \frac{30}{60} $ から始めても構いません。
そうすれば、冒頭の速度と時間の文字を定義する必要もありません。
慣れるまでは大変かもしれませんが、慣れておいた方が良いです。
親切な解答を心がけてください。
問1 「α壊変」を説明しなさい。
キーワード
- 質量数
- 原子番号
- ガイガー・ヌッタルの法則
- トンネル効果
- スペクトル
解答例
重い原子核が起こす壊変で、質量数は4減り、原子番号は2減る。
半減期が短いほど放出されるα線のエネルギーは高く、この関係はガイガー・ヌッタルの法則で示されている。
α線の運動エネルギーは原子核のクーロン障壁よりも低いが、トンネル効果によって原子核から放出され、線スペクトルを示す。
解説
正解率66.4%と最初の問題としては少々難しかったかもしれません。
おそらく、「ガイガー・ヌッタルの法則」と「トンネル効果」をキーワードに指定してしまったからだと思います。
「質量数」、「原子番号」、「スペクトル」に関しては、問題なく記載できていました。
散見された誤答例も見てみましょう。
誤1 半減期が短いほど起こりやすい
ガイガー・ヌッタルの法則の部分ですが、勘違いされたんだと思います。
半減期が短い核種は結果として短時間で多く壊変します。
そのため「起こりやすい」という表現を使いたくなる気持ちは分かります。
ですが、ガイガー・ヌッタルの法則は半減期が短い(壊変定数が大きい)ほど、
放出されるα粒子のエネルギーが大きいということを示した法則です。
壊変の起こりやすさを示したものではありません。
誤2 苦肉の策の解答
ガイガー・ヌッタルの法則とトンネル効果が分からん!
という方が書いたものと思う解答例がこちら。
「質量数が4、原子番号が2減少する。
ガイガー・ヌッタルの法則やトンネル効果が起きる。線スペクトル。」
キーワードを並べただけになってしまっていますね。
これだと理解していない場合も書けてしまいますので、
こういった内容のない解答は正解扱いしておりません。
ガイガー・ヌッタルの法則は「法則」であり、起きるものではありません。
また、トンネル効果も現象名を書いただけで、どのように関係するのかが説明されていません。
質量数と原子番号に関してはOKです。
スペクトルに関しては、「線」スペクトルと書かれていますので、その部分は正解です。
ただし、何が線スペクトルを示しているのかが明記されていません。
したがって、「スペクトル」というキーワードでは1点分の得点となります。
問2 「 $ β^- $ 壊変」を説明しなさい。
キーワード
- 質量数
- 原子番号
- スペクトル
- 中性子過剰核種
- ニュートリノ
解答例
中性子過剰核種が起こす壊変で、中性子が陽子に変わる。
その際に電子と反ニュートリノを放出する。
これらはの運動エネルギーは連続スペクトルを示す。
この壊変が起こると、質量数は変わらないが、原子番号が1増える。
解説
正答率78.6%と良く書けていました。
ポイントは3種類あるβ壊変系をしっかりと区別できているかです。
中性子が陽子に変わるのか?
陽子が中性子に変わるのか?
原子番号は減るのか?増えるのか?
質量数はどうだっけ?
スペクトルは?
曖昧な理解だと、得点に結びつきません。
こちらも誤答例を見ながら解説していきましょう。
誤1 質量数が変わり、原子番号は増える
これはβ壊変系を理解できていない典型例です。
さらに、曖昧に濁そうという意図が見え隠れしています。
まずβ壊変系では核内でどちらかの変化が起こります。
- 中性子が陽子に変わる。
- 陽子が中性子に変わる。
図で示すとこんな感じです。
実際に数えてみて下さい。

最初は陽子2個、中性子2個ですから、質量数は4ですね。
それがβ壊変(厳密には$ β^− $ 経変)を起こすと、1つの中性子が陽子に変わります。
すると、陽子が3個、中性子が1個という構成に変わります。
つまり、原子番号は1増えて、質量数に変化は生じません。
質量数は陽子数と中性子数の合計ですから、総数に変化はありません。
「同重変換」と言われる所以です。
さらに、「質量数が変わり」だと、
「増えた」のか「減った」のかも分かりません。
採点者側としては、「分からないから濁してきたのかな?」と勘ぐってしまいます。
そして、「原子番号が増える」という表現もマイナス1点です。
原子番号に変化がある場合は、「いくつ変化したのか」まで明記して下さい。
「原子番号が1増える」となっていないと正解にできません。
誤2 「中性子過剰核種」を「結果」として使ってしまう
「中性子過剰核種」というキーワードですが、
出題者のワタクシとしては、ヒントのつもりで入れました。
中性子が過剰(多い)なんだから、中性子が壊れる方の壊変方向だよ。というつもりで。
ところが、ここに引っ張られて、
「 $ β^- $ 壊変によって中性子過剰核種になる」
という使い方をしている方が何人かいました。
ヒントが罠になってしまいました。
すみません。
$ β^- $ 壊変は「中性子過剰核種が起こす」壊変です。
「壊変の結果として中性子過剰核種になる」ではありませんので、気を付けて下さい。
中性子過剰核種は「結果」ではなく「原因」です。
「中性子過剰核種になる」という「結果」の方向で書こうとすると、
整合性をとるために、「陽子が中性子に変わる」方向を向いてしまい、
$ β^+ $ 壊変や軌道電子捕獲(EC)に近い内容になってしまいます。
原因と結果を逆にしないよう注意してください。
問3 「ECと $ β^+ $ 壊変の違い」を説明しなさい。
キーワード
- スペクトル
- しきい値
- ニュートリノ
- 原子番号
- 陽電子
解答例
EC、β+壊変ともに陽子が中性子に変化するため、原子番号は1減り、質量数は変わらない。
相違点はしきい値の有無、放出粒子の種類とそのスペクトルである。
ECはしきい値が無く、ニュートリノを単独で放出するため、その運動エネルギーは線スペクトルを示す。
β+壊変は親核種の方がエネルギー換算で1.022MeV以上大きくないと起こらない。
つまり、1.022MeVというしきい値が存在する。
β+壊変はニュートリノと同時に陽電子が放出されるため、それらの運動エネルギーは連続スペクトルを示す。
解説
正答率60.5%とやや苦戦した問題でした。
ポイントはキーワードを共通点と相違点を踏まえて説明できているかどうか。
また、どんな風に違うのかを説明できたかです。
さらに、「スペクトル」は何のスペクトルなのかを理解しているかどうかです。
問題1、問題2にも「スペクトル」を指定しましたが、
問題3で改めて理解度を疑ってしまいました。
では、誤答例を見てみましょう。
誤1 ECは線スペクトルで $ β^+ $ 壊変は連続スペクトル
言いたいことは分かります。
分かるけど、正確ではないというか、
ツッコみたいというか、
〇にしたくないと言いましょうか・・・
線スペクトルなのは壊変ではなく、
壊変に伴って放出される粒子の運動エネルギーなのです。
つまり、「スペクトル」という言葉の対象は「壊変」ではなく、
「放出される粒子の運動エネルギー」なのです。
「ECは線スペクトルで」って書かれてしまうと、
壊変の何が線スペクトルなの?
って思ってしまいます。
ここは正確に、
「ECではニュートリノが単独で放出されるため、その運動エネルギーは線スペクトル」
という具合に、何のエネルギースペクトルなのか、さらにその理由も添えて書いて欲しいなと思います。
同じように、
「$ β^+ $ 壊変ではニュートリノと陽電子が同時に放出されるため、それらの運動エネルギーは連続スペクトル」
と書いて欲しいですね。
誤2 陽子が中性子に変化するため、原子番号が1増える?
ウソだろ?
と思いますよね?
これが結構いたんです。
コチラが頭を抱えてしまいます。
「陽子が中性子に変わる」
ここは間違いないですね。
ただ、そのあとが良くありません。
原子番号=陽子数ですから、原子番号は
「1減る」としなければなりませんね。
単純な間違いか、ケアレスミスだと思いますが、
こういう基本的な部分を落としてしまうと、合格点が遠のいてしまいます。
問4 「消滅放射線の発生過程」を説明しなさい。
キーワード
- 対消滅
- スペクトル
- ポジトロニウム
- 0.511MeV
- 180°
解答例
陽電子は運動エネルギーが尽きると、付近の陰電子と結合し、ポジトロニウムとなり、対消滅を起こす。
その際、0.511MeVの線スペクトルの消滅放射線を互いに180°方向に放出する。
解説
正解率66.6%でした。
結構キーワードで誘導したつもりなのですが、斜め上を行かれました。
ここは「発生過程」を問うてますから、流れを説明しなくては行けません。
誤答例を見ながら説明していきましょう。
誤1 対消滅でポジトロニウムが生成される?
このパターン、多かったです。
対「消滅」するはずのポジトロニウムが「生成」される側で登場してしまっています。
となると、いったい何が対消滅したんでしょうか・・・
正しくは、「ポジトロニウムが対消滅して、消滅放射線が放出される」んでしたよね。
ついでと言っては何ですが、「ポジトロニウム」が何なのかも説明して欲しいところです。
陽電子と陰電子が結合した状態が「ポジトロニウム」でしたね。
誤2 消滅放射線が連続スペクトル?
これも多く見られた間違い方です。
「0.511MeVの消滅放射線が2本発生する。
2本発生するので連続スペクトルを示す。」
これは、僕にも原因があるんでしょうか?
僕はかねてから、
「1回の現象で単独発生するものは線スペクトル、
複数同時発生するものは連続スペクトル。
ただし、消滅放射線だけは例外で、0.511MeVで固定だから線スペクトル」
と講義で言いまくっています。
①ルールを覚えてから
②例外を覚える
という、作戦です。
例外の例として消滅放射線を毎回あげていたのですが・・・
「2本同時=連続スペクトル」
のルールに則ってしまっていますね。
問5 「内部転換からオージェ電子の放出までの流れ」を説明しなさい。
キーワード
- γ線
- 内部転換電子
- 空位
- 特性X線
- オージェ電子
解答例
励起状態の原子核は、γ線としてエネルギーを放出する代わりに、
軌道電子を放出してエネルギー準位を下げることがある。
この際放出される電子を内部転換電子といい、この現象を内部転換という。
内部転換は内殻軌道電子で起こりやすく、空位が生じるため、
特性X線もしくはオージェ電子の放出が起こる。
解説
正解率73.7%でした。
多くの方が流れを把握できていました。
ただし、理解度を疑わざるを得ない誤答例がありました。
誤1 空位が生じると、特性X線とオージェ電子が放出される。
この表現、結構いました。
特性X線とオージェ電子を「と」で繋いでしまうパターン。
これだと、空位があると、特性X線とオージェ電子の両方が放出されることになります。
正しくは、「か」で繋がないといけません。
「か」で繋げば、「どちから一方が放出される」という意味になります。
こんな感じ。
「空位が生じると、特性X線かオージェ電子が放出される。」
ね。正しい意味になるでしょ?
もう少し放物っぽい表現にしたい場合は「もしくは」で繋いでみて下さい。
こんな感じになります。
「空位が生じると、特性X線もしくはオージェ電子が放出される。」
教科書に近付きましたね。
誤2 競合相手を取り違える。
少ないですがいましたね。
この現象では、競合過程のペアが2つ出てきます。
そのペアはもちろん、
- 「γ線」と「内部転換電子」
- 「特性X線」と「オージェ電子」
この2ペアです。
γ線が出るなら、内部転換電子は出てこない。
γ線が出ないなら、内部転換電子が出てくる。
特性X線が出るなら、オージェ電子は出てこない。
特性X線が出ないなら、オージェ電子が出てくる。
こういった関係性ですね。
一連の流れで、放出される放射線は2種類です。
「γ線か内部転換電子」と「特性X線かオージェ電子」ですね。
理解度を疑う例としては
「内部転換電子が放出されると、γ線によりオージェ電子が放出される。その結果、特性X線も放出される。」
競合する相手を取り違えると、全部放出されるような文章になってしまいます。
何なんでしょうか・・・
本来なら、2種類しか放出されない現象なのですが、4種類すべてが放出されていそうな表現です。
オールスター戦です。
ちゃんと理解して下さいね・・・泣
この回答の方、講義中、良く居眠りしている方です。
問6 「誘導核分裂」を説明しなさい。
キーワード
- 中性子
- 核分裂片
- 放出エネルギー
- β-壊変
- 質量数
解答例
235Uに熱中性子を照射すると、236Uという複合核が形成され、亜鈴型に引き伸ばされ分裂する。
分裂すると2つの核分裂片と2~3個の中性子が放出され、この中性子が次の核分裂を連鎖的に引き起こす。
核分裂片は、質量数140前後と95前後のものが多く、中性子過剰の状態のため、β–壊変を起こしやすい。
1回の核分裂の放出エネルギーは200MeV程度で、その80%は核分裂片に分配され、残りの20%は中性子やγ線や熱エネルギーなどとなり放出される。
このときの中性子は1つあたり2MeVのエネルギーを有する。
解説
正解率25.4%でした。
ちょっと想像以上の正解率に僕の方が引いています・・・
たしかに、最終講義での内容でしたけど、
無対策にもほどがあるでしょうに。笑
ここは誤答例を紹介
誤1 β壊変と競合!?
結構多かったのがコチラ。
「核分裂は β-壊変 の代わりに起こる現象で・・・」
いやいやいや。
キーワードを使うためにどうしようかと悩んだ結果なんだと思いますが、
核分裂は β-壊変 との競合現象ではありません。
百歩譲って、252Cf が起こす自発核分裂との競合の可能性も考えましたが、
そちらはα壊変との競合過程ですので、β-壊変の入り込む余地はありません。
核分裂によって生じた核分裂片は、中性子過剰の状態なので、その後β-壊変を起こしやすくなります。今回の「β-壊変」というキーワードは、この意味で使って欲しかったところです。
誤2 中性子照射で質量数が増えて $β^{-}$ 壊変が起こる?
こちらも多かった誤答です。
中性子を照射することで、その中性子が235Uに吸収され、
中性子を吸収した核は、中性子過剰になってβ-壊変を起こす。
※この「235U」を書けていない人も多かったです。
理論的には中性子が増えるんだから、中性子過剰。
それならβ-壊変だ!
と考えたんでしょう。
まぁ、言わんとするところは分かりますが、
これだと、「核分裂どこ行った?」となります。
その後の回答を読み進めると、
「β-壊変の後、核分裂する。」
と続きます。
続いちゃダメです。笑
現象の起こる順番が逆です。
核分裂する。
↓
核分裂片(中性子過剰)が生じる。
↓
中性子過剰だからβ-壊変する。
この順番ですので、お間違えなく。
問7 半減期3時間の核種が20MBqある。6時間経過した後の放射能[MBq]を求めなさい。
解答例
求める放射能Aとすると、
$$
\begin{aligned}
A&=A_0({\frac{1}{2}})^{\frac{t}{T}}\\[6pt]
&=20 \cdot ({\frac{1}{2}})^{\frac{6}{3}} \\[6pt]
&=20 \cdot \frac{1}{4} \\[6pt]
&=5 \mathrm{[ MBq ]}
\end{aligned}
$$
A0:初期放射能
t:経過時間
T:半減期
解説
計算問題は講義中にもやりましたね。
試験中の使用は認めていませんが、
講義中の演習では、電卓の使用を薦めています。
今はスマホでも事足りる時代ですが、ひとつ関数電卓を持っておくのもおススメです。
正解率は93.4%と、とても良くできていました。
ここは特に目立った誤答はありませんでした。
書いたか書けなかったか。解けたか解けなかったか。という印象です。
問8 ある親核種 ${}^{100}\mathrm{X}$ がα壊変して娘核種 ${}^{96}\mathrm{Y}$ になった。壊変のQ値が 5.0MeV のときのα粒子の運動エネルギー[MeV]を求めなさい。
解答例
求めるエネルギーをEαとすると、
$$
\begin{aligned}
E_α&=5 \cdot (\frac{96}{96+4})\\[6pt]
&=5 \cdot \frac{96}{100}\\[6pt]
&=4.8 \mathrm{[MeV]}
\end{aligned}
$$
解説
正答率は44.7%でした。
このQ値の分配問題は過去に何度も出題していて、
「試験に出すからね」と伝えていても、正答率はなかなか上がりませんね。
難しくはないと思うのですが、どうでしょうか?
「質量数の逆比で分配される」
これがキーワードなんですが、聞き覚えないですか?
理解しないまま国試に臨むのだけは辞めて下さいね。
誤答例を紹介します。
誤1 割合だけ計算しちゃってる。
これ、非常に惜しいですよね。
もう、ほぼ分かっているのに、うっかり見落としちゃったんだと思います。
$$
\begin{aligned}
E_α&= (\frac{96}{96+4})\\[6pt]
&= \frac{96}{100}\\[6pt]
&=0.96 \mathrm{[MeV]}
\end{aligned}
$$
正解にしてあげたいのはやまやまですが、
「壊変のQ値を分配している」
という大切な部分が抜けているんですね。
この回答だと、「こういう比率で分配します」は分かっても、
「Q値を分配する」が抜けているという評価になります。
部分点、差し上げときます!
誤2 こちらは定番「比率が逆」パターン
もうこちらは典型例です。
Q値は「質量数の逆比で分配」なのに、質量数の比率(正比率)そのままに分配しちゃったパターン。
これの落とし穴は、正比率の数字も綺麗になること。
ダマされやすいです。
自分の計算した結果が綺麗な数字だと、
「あぁ、大丈夫そうだ。合ってる合ってる!」
そう思い込んでしまいがち。
まぁともかく数字見てみましょう。
$$
\begin{aligned}
E_α&=5 \cdot (\frac{4}{96+4})\\[6pt]
&=5 \cdot \frac{4}{100}\\[6pt]
&=0.2 \mathrm{[MeV]}
\end{aligned}
$$
うん、キレイ!
これは引っ掛かるかも。
こちらも部分点対応ですな。
是非、「質量数の逆比で分配」になっているかを確認する癖を付けて下さい。
問9 とある核種 ${}^{234}_{90}\mathrm{X}$ が壊変を繰り返して ${}^{214}_{84}\mathrm{Y}$ になるまでに行う $ α $ 壊変と $β^{-}$ 壊変の回数をそれぞれ求めなさい。
解答例
α壊変の回数をAとすると、
$$
\begin{aligned}
A&=\frac{234-214}{4} \\[6pt]
&=5 \mathrm{[ 回 ]}
\end{aligned}
$$
一方、β-壊変の回数をBとすると
$$
\begin{aligned}
90-2A+B&=84 \\[6pt]
90-2 \cdot 5+B&=84 \\[6pt]
B&=84-90+10 \\[6pt]
&=4 \mathrm{[ 回 ]}
\end{aligned}
$$
従って、α壊変が5回、β-壊変が4回。
解説
正答率は75.0%でした。
「絶対に出すからね!」と念を押しただけあって、良くできていました。
ただ、問7レベルの正答率(93.4%)を期待しておりましたが、そこまではいきませんでした。
なぜそこまでこの問題ができるようになって欲しいのか。
答えは単純です。
国試に良く出るから!
かつ
主任者でも出るから!
これに尽きます。
さて、解法の手順はこうなります。
- 質量数の変化からα壊変の回数を求める。
- α壊変の回数から、原子番号の変化量を求める。
- α壊変後の原子番号と、最終的な原子番号との差からβ-壊変の回数を求める。
この3ステップで求められます。
誤答という訳ではないですが、素直に〇としたくない例をご紹介します。
誤1 数式だけ書いてくる。
このパターン多いです。
どういう手順で、なぜそう計算したのか。
これを採点者側が想像しなければならないパターン。
何を言っているか分からないって?
まずは見てみて下さい。
$$
\begin{aligned}
234-214&=20\\[6pt]
20÷4&=5 \\[6pt]
90-2 \times5 &=80 \\[6pt]
84-80&=4
\end{aligned}
$$
とだけ書いてあります。
何の数字が何のことやら?
となってしまいませんか?
確かにα壊変が5回、β-壊変が4回が正解ですが、
この書き方だと、どっちの数字が何壊変なのかも明記されていません。
単位もありません。
どの部分が解答なのかも分かりません。
自分では解けているつもりでしょうが、
人に伝えるということができていません。
試験の答案は他人に伝わるかを意識して欲しいと思います。
誤2 α壊変の回数だけ合っている
このα壊変の回数だけ合っているというパターンは結構多くいました。
しかし、β-壊変の間違い方が多種多様過ぎて、法則性というものは見受けられませんでした。
例としてはこんな感じ。
- α壊変5回、β-壊変3回
- α壊変5回、β-壊変6回
- α壊変5回、β-壊変10回
- α壊変5回、β-壊変20回
3回や6回なら、数え間違えたかな?
と思えるのですが、
10回や20回となると、なぜだ?
ってなります。
普通に考えて、α壊変5回に対して、β-壊変20回って、
バランス悪く思わないんでしょうかね?
計算ができたら、そのまま終わりにせず、
「この答えは現実的かな?」と考える癖を付けてみて下さい。
もし、「アレ?おかしいかも」と思ったら、大体おかしいです。
この感覚は問題をたくさん解いて慣れていって欲しいと思います。
問10 とある核種 ${}^{10}\mathrm{X}$ に重陽子( ${}^{2}\mathrm{d}$ )を照射したところ、核反応が起こった。この反応のQ値が -2.0MeVのとき、しきいエネルギー[MeV]を求めなさい。
解答例
求めるしきいエネルギーをEdとすると、
$$
\begin{aligned}
E_d&= (1+\frac{2}{10}) \times |-2.0| \\[6pt]
&=2.4 \mathrm{[MeV]}
\end{aligned}
$$
解説
正答率は35.4%でした。
国試でも中々出題されることのない計算問題ですので、
正答率はこの数字でも良いかと思ってしまいます。
ただ、やはり解けている人は解けています。
解けている人を確認すると、
「細かいところまでやりこんでいる」人たちでしたね。
普段のイメージ通りのメンバーでした。
さて、そんな中、1パターンですが、法則性のありそうな誤答例を紹介しましょう。
誤1 「+」が「-」になっている。
$$
\begin{aligned}
E_d&= (1-\frac{2}{10}) \times |-2.0| \\[6pt]
&=1.6 \mathrm{[MeV]}
\end{aligned}
$$
間違っていても数値が出てしまうことが厄介なところです。
自分の間違いに自らで気付くというのは容易なことではありません。
ただ、現象をよく考えてみて下さい。
しきい値がQ値を下回るってどういう状況でしょうか?
Q値の分のエネルギーを補うためには、
入射粒子はそれ以上の運動エネルギーを持っている必要があります。
そうじゃないとおかしいですよね?
100円のお釣りをもらうためには100円以上の金額を会計時に出す必要があります。
会計時に50円しか出していないのに、100円のお釣りが来たら儲かっちゃいますよね?
そんなことはない訳です。
エネルギーもそれと同じ考え方です。
まとめ
今回の中間試験では、知識そのものよりも、
「なぜそうなるのか」を理解できているかを重視した問題にしました。
正解にたどり着くことも大切ですが、
それ以上に、現象を理解し、自分の言葉で説明できることを目標にして欲しいと思います。
今回の試験で特に意識して欲しいポイントをまとめます。
- 用語は意味まで理解する。
- 現象は原因と結果を意識する。
- 計算問題は手順を理解して解く。
- 答えが出たら「本当にこの値で合っているか?」を確認する。
- 答案は採点者に伝わるように書く。
今回紹介した誤答例は、実際に皆さんが書いた答案をもとにしています。
今回の解説を参考に、期末試験へ向けて復習しておきましょう。
この記事を書いた人

たなまる
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診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。
都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。
国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。
保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有


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