2026年度 放射線物理学Ⅰ 中間試験 解説

2026年6月10日に実施した放射線物理学Ⅰ中間試験の解説です。

試験の復習・定期試験対策に活用してください。

試験は説明問題6問、計算問題4問の合計10問で構成されています。
配点は説明も計算も1問10点です。

明朗会計ならぬ、明朗採点です。

  1. 全体概要
  2. 採点基準について
    1. 説明問題
    2. 計算問題
      1. 例 A地点からB地点まで時速30kmで走行すると30分かかる。A地点からB地点までの距離[km]を求めなさい
  3. 問1 「電離」を図と文章で説明しなさい。
    1. 解答例
    2. 解説
      1. 誤1 軌道電子が原子核外に放出される。
      2. 誤2 軌道電子が電子殻外に放出される。
  4. 問2 「パウリの排他原理」を説明しなさい。
    1. 解答例
    2. 解説
      1. 誤1 1つの原子において、4つの質量数がすべて一致する組み合わせの電子は2つ存在することはできない。
      2. 誤2 1つの原子において、4つの量子数がほぼ一致する組み合わせの電子は2つ存在することはできない。
  5. 問3 「後方散乱」を図と文章で説明しなさい。
    1. 解答例
    2. 解説
      1. 誤1 放射線が90°以上で反射したもの。
  6. 問4 「制動放射」を図と文章で説明しなさい。
    1. 解答例
    2. 解説
    3. 誤答例について
  7. 問5 「粒子と波動の二重性」を説明しなさい。
    1. 解答例
    2. 解説
      1. 誤1 粒子は粒子性だけでなく、波動性も併せ持つ。 又は 波は波動性だけでなく、粒子性も併せ持つ。のどちらか。
  8. 問6 「1eVの定義」を説明しなさい。
    1. 解答例
    2. 解説
      1. 誤1 電子1個が1Vの電位差で加速したときに得られる運動エネルギー。
  9. 問7 振動数 $ 6.0\times 10^{18} $ Hz の光子のエネルギー[ J ]を求めなさい。
    1. 解答例
    2. 解説
      1. 誤1 $ 39.6 \times 10^{-16} \mathrm{[ J ]}$
      2. 誤2 $ 3.96 \times 10^{-16} \mathrm{[ J ]}$
  10. 問8 波長 0.10 nm の光子のエネルギー [ J ] を求めなさい。
    1. 解答例
    2. 解説
      1. 誤1 $E=\frac{h}{λ}$ として計算する。
  11. 問9 $ 3.2 \times 10^{-19} $ C の電荷を持つ粒子を 2 MV の電圧で加速したときに得られるエネルギーを [ J ] と [MeV] の両方で求めなさい。
    1. 解答例
    2. 解説
      1. 誤1 2MVを $ 2 \times 10^{3} $ Vにしている。
      2. 誤2 Jを求めるときに $ E=\frac{q}{e} V $ の関係式を使用している。
  12. 問10 光速の60%の速度で運動している電子の全エネルギーは質量エネルギーの何倍か求めなさい。
    1. 解答例
    2. 解説
      1. 誤1 分数と平方根(ルート)の合わせ技で手を抜いた表記をするとこうなる。
  13. まとめ
  14. この記事を書いた人

全体概要

受験者数84名
平均点70.8点
最高点100点
最低点11点
2026年6月10日に実施した放射線物理学Ⅰ中間試験の得点分布。
問題正答率
問195%
問266%
問366%
問484%
問576%
問681%
問768%
問836%
問955%
問1081%

今年の放射線物理学Ⅰ中間試験の平均点は70.8点でした。
説明問題は平均78%でしたが、計算問題は平均60%にとどまりました。
特に計算問題の問2は正答率36%と苦戦した学生が多く見られました。

今回は各問題の解説に加え、採点していて多かった誤答についても紹介していきます。

採点基準(クリックして開く)

採点基準について

採点基準は一言でいうと

「他人に伝わる形で表現できたか」

です。

何も知らない第三者に伝えることを念頭に置いて回答してください。

実際は色々と知っている私が採点しますが、基本理念としてお忘れなく。

説明問題

説明問題の採点基準は以下のポイントに基づきます。

  • 現象・用語の肝になるキーワードが含まれているか
  • キーワードが正しく使えているか
  • 日本語が正しいか(表現・誤字・脱字)
  • 図示の指示がある場合、図が正確か

現象・用語によってキーワードの数が異なりますので、
キーワード1個当たりの配点は問題ごとに変わります。

日本語も当然見ます。
接続語、主語と述語のマッチングあたりは結構細かく見ています。
物理なのに?
と、思うかもしれませんが、日本語は物理以前の問題です。

図も粒子線は直線、電磁波は波線で表記するといったことから、
何がどこに衝突しているか、曲がる方向は正確か、なども見ています。

「なんとなく意味が伝わる」ではなく、「定義として正しいか」を重視しています。

計算問題

計算問題も同様に採点基準を設けています。

  • 求めるものを把握しているか
  • 定義されていない文字を使っていないか
  • 使用する関係式が合っているか
  • 数値の代入ができているか
  • 計算過程が合っているか
  • 計算結果の数値が合っているか
  • 単位が合ってるか
  • 数式のルールに則って表記されているか

この辺りを見ています。

計算は「答えを出す作業」ではなく、「等式を用いて解法を説明する作業」です。
計算結果だけでなく、何を求めているのか第三者が追える形で記述してください。

一例を出しておきましょう。

例 A地点からB地点まで時速30kmで走行すると30分かかる。A地点からB地点までの距離[km]を求めなさい

求める距離を $x$ 、速度を $v$ 、時間を $t$ とすると、

$$
\begin{aligned}
x&=vt \\[6pt]
&=30 \times \frac{30}{60} \\[6pt]
&=15 \mathrm{[ km ]}
\end{aligned}
$$

こんな感じになります。

読んでいて、不明点が無いはずです。

初めて読む人が困ることなく読めるかどうかです。

2行目の$ x=vt $はカットして、いきなり$ x=30 \times \frac{30}{60} $ から始めても構いません。
そうすれば、冒頭の速度と時間の文字を定義する必要もありません。

慣れるまでは大変かもしれませんが、慣れておいた方が良いです。
親切な解答を心がけてください。

問1 「電離」を図と文章で説明しなさい。

解答例

入射光子による電離現象。入射光子がK殻軌道電子を原子外まで弾き飛ばしている。
光子による電離

説明は何パターンか掲載しておきます。

  • 軌道電子を原子外に放出する現象
  • 軌道電子が原子外に放出されること

解説

正解率95%と非常によくできていました。

電離の説明のポイントは「原子外」という部分です。

「電子」が原子から「離れる」から「電離」なんです。
だから、「原子外」まで行かないと電離になりません。

電離は放射線に限らず、様々な要因で起こります。
放射線による電離は、放射線のエネルギーが物質側に移ることで起こります。
こういった基礎的な現象は必ず覚えておきましょう。

散見された誤答例も見てみましょう。
一見正しそうに見える解答でも、用語の定義としては誤りになる場合があります。

誤1 軌道電子が原子核外に放出される。

軌道電子は元々原子核の外にあるものですから、
電離によって原子核の外に存在しているわけではありません。

この「核」の一文字があるかないかで
かなり意味が変わってしまいます。

この間違え方は、毎年一定数います。

誤2 軌道電子が電子殻外に放出される。

一見良さそうですが、電子殻の外となると、
現在の電子殻から外側の電子殻に移動することも含むことになります。

そうなると、この現象は「励起」となります。

励起と電離は似て非なるものですので、注意してください。

詳しくは電離と励起の違いもご参照ください。

問2 「パウリの排他原理」を説明しなさい。

解答例

1つの原子において、
4つの量子数がすべて一致する組み合わせの電子は2つ存在することはできない
という原理。

解説

正答率66%と苦戦した方が多い設問でした。

ポイントは「1つの原子内で考える」ことと、「量子数の組み合わせ」の部分です。

トランプで考えると分かりやすいです。
トランプは「マーク」と「数字」という量子数で構成されているようなものです。

1組のトランプを考えてみてください。
自分のトランプにはハートのAは1枚しか入っていないですよね?
でも、友人のトランプの中にもハートのAはありますよね?

パウリの排他原理も同じです。

「同じ原子の中」で考える必要があります。
別の原子であれば、同じ量子数の組み合わせを持つ電子が存在しても問題ありません。

こちらも誤答例を見てみましょう。

誤1 1つの原子において、4つの質量数がすべて一致する組み合わせの電子は2つ存在することはできない。

油断して採点していると、見逃してしまいそうな部分です。

おそらく、本人は「量子数」と書いたつもりなのかも知れません。
うっかり「質量数」と書いてしまったんではないでしょうか。

と、フォローしておきます。

本来は、

  • 主量子数
  • 軌道量子数(方位量子数)
  • 磁気量子数
  • スピン量子数

の4つ量子数で性質が決まります。

電子には質量数はありませんからね。
そちらもお間違いなく。

誤2 1つの原子において、4つの量子数がほぼ一致する組み合わせの電子は2つ存在することはできない。

「すべて」ではなく、「ほぼ一致」ときましたか。笑

これもうっかり見落とすところでした。

さらに、これは僕の教員人生で初めて見る回答でした。
なのですが、数人いたんです。

と言うことは、誰かが間違ったまま仲間内に広めてしまったパターンですかね?

「ほぼ一致」はいけません。
「ほぼ一致」であれば、1つの原子内に存在することができます。

例えばこんな2つの電子。

主量子数軌道量子数磁気量子数スピン量子数
電子A32-21/2
電子B32-2-1/2

スピン量子数以外は同じなので、量子数は「ほぼ一致」していますが、
この2つの電子は明確に別物です。
したがって、1つの原子内に存在すことができます。

パウリの排他原理では、「すべて一致」は存在できないことが重要になります。

問3 「後方散乱」を図と文章で説明しなさい。

解答例

α線の後方散乱。α線が原子核のクーロン力の影響で90°以上の角度で散乱する現象。
α線による後方散乱。

放射線が元の進行方向に対して、90°以上の角度で散乱したもの。

※図はα線による後方散乱で、特別に「ラザフォード散乱」という別名称もある。

解説

問2に引き続き、正答率66%とやや苦戦した問題でした。

ポイントは角度に言及することです。
それから、図にもポイントがあります。

「90°未満」の場合は「側方散乱」となります。
しっかり「90°以上」と言及しましょう。

また、作図では、粒子放射線は直線で示します。
それに対し、電磁放射線(電磁波)は波線で示します。

ここではこんな誤答が見られました。

誤1 放射線が90°以上で反射したもの。

言いたいことは分かります。
実際に、「同じじゃん?」と思う方もいるかと思います。

ですが、「反射」と「散乱」は、まったく別の現象です。
いや、ちょっと似てはいるんですが・・・

「反射」は、
物質の境界面(表面)で跳ね返る現象です。

例えば、鏡に当たった光や超音波の反射などがあります。

それに対し「散乱」は、
物質の内部にある粒子や原子と相互作用して進行方向が変わる現象です。

例えば、コンプトン散乱、レイリー散乱などがあります。

つまり、向きが変わる場所が物質表面なのか、物質内部なのかという違いがあります。

問4 「制動放射」を図と文章で説明しなさい。

解答例

電子が原子核の近くを通ると、クーロン力の影響で進行方向が曲がり、制動放射線が発生する。
電子による制動放射

荷電粒子が原子核のクーロン力によって進行方向を曲げられて減速し、運動エネルギーの一部を失う。
失ったエネルギーが制動放射線となって原子外に放出される現象。

解説

制動放射は正解率84%でした。
安心しました。

我々放射線技師はこの現象のお世話になる職業です。
制動放射を説明できないようでは、放射線技師になる資格はありません。

ポイントは「荷電粒子」と「クーロン力」です。
図にも注意が必要です。

電場の影響で進行方向が曲がるには、放射線が電荷を持っていないといけません。
電荷のない粒子である中性子や、電磁波であるX線やγ線は電荷の影響を受けないので、
制動放射を起こすことはありません。

また、その荷電粒子を曲げる力はクーロン力です。
放物では「〇〇力」という用語が多く登場します。
クーロン力、ローレンツ力、交換力、核力、弱い力、強い力・・・
その中から正確に「クーロン力」を選ばなくてなりません。

図では、荷電粒子が曲がる方向に気を付けてください。
原子核は正の電荷(+の電荷)を持っています。
負の電荷(-の電荷)を持つ電子の場合は、原子核に近付く方向に曲がります。
その結果、運動エネルギーの一部を失います。

誤答例について

今回は特に目立った誤答は見られませんでした。

多くの方が「荷電粒子」「クーロン力」「減速」というポイントを押さえて解答できていました。

制動放射は我々にとって非常に重要な現象です。
今後も確実に説明できるようにしておきましょう。


問5 「粒子と波動の二重性」を説明しなさい。

解答例

粒子は粒子性だけでなく、波動性も併せ持つ。
波もまた波動性だけでなく、粒子性も併せ持つ。

解説

正解率76%でした。

少々切り口が難しかったようです。

誤答というほどではないのですが・・・
多かった例をご紹介しておきます。

誤1 粒子は粒子性だけでなく、波動性も併せ持つ。 又は 波は波動性だけでなく、粒子性も併せ持つ。のどちらか。

片方しか書いていないケースが多くみられました。

粒子も波も両方とも二重性を示します。

粒子と波動の二重性は量子力学の基本的な考え方です。

例えば電子は粒子として振る舞う一方で、
電子線回折のように波としての性質も示します。

また、X線は電磁波ですが、
光電効果では粒子(光子)として振る舞います。

問6 「1eVの定義」を説明しなさい。

解答例

電子1個を1Vの電位差で加速したときに得られる運動エネルギー。

解説

正解率81%でした。
例年、もう少し正解率は悪いのですが、今年は板書した甲斐がありました。

この定義が分かっていると、問9の計算問題の理解が深まります。
問6が書けなかった場合は、よく復習しておきましょう。

ここは特徴的な誤答が1つあります。
物理的な指摘ではないのですが・・・

誤1 電子1個が1Vの電位差で加速したときに得られる運動エネルギー。

日本語をよく読んでみてください。

スムーズに読めますか?
意味が正確に把握できますか?

「電子1個が」は主語です。
対応する述語は「運動エネルギー」です。
すると、
「電子1個が運動エネルギー」
となってしまい、意味が通りません。

「電子1個が」を活かすのであれば、
「電子1個が1Vの電位差で加速されたときに得られる運動エネルギー。」
としなければなりません。
これなら大丈夫です。

書いた文章はもう一度読み直して確認しましょう。
自分の文章は、思った以上に間違っているもんです。笑

問7 振動数 $ 6.0\times 10^{18} $ Hz の光子のエネルギー[ J ]を求めなさい。

解答例

求めるエネルギーをEとすると、

$$
\begin{aligned}
E&=hν\\[6pt]
&=6.6\times 10^{-34} \times 6.0 \times 10^{18} \\[6pt]
&=3.96 \times 10^{-15} \mathrm{[ J ]}
\end{aligned}
$$

解説

正解率は68%とソコソコでした。

光子のエネルギーを問う定番の問題であると同時に、
指数の理解も確認できるものです。

誤答ではありませんが、多かった例をご紹介します。

誤1 $ 39.6 \times 10^{-16} \mathrm{[ J ]}$

これ、多かったですね。

確かに間違いではありません。
間違いではないんですが、素直に正解にしたくないと言いましょうか・・・

数値表記のルールに、
$\times10^x$ の前は1.0以上、10未満の数字にする
と言うのがあります。

39.6ですと、その表記ルールを守れていないことになります。

細かいかもしれませんが、厳密にいくとこうなります。

今回は$ 39.6 \times 10^{-16} \mathrm{[ J ]}$も
10点満点をプレゼントしております。

ちなみに、原点例もあります。

誤2 $ 3.96 \times 10^{-16} \mathrm{[ J ]}$

これは先ほどとは事情が異なります。

数字があっているように感じますが、指数が異なりますので、
数値としては違う数値として扱います。

正解とは10倍の違いがありますから。

100円と1,000円では訳が違うでしょう。
1,000円のラーメンなら許せるけど、10,000円のラーメンはぼったくりでしょう?

そういうことです。

こういった、指数の部分だけ間違えちゃったパターンは
-1点もしくは-2点しています。
※この違いは途中式の流れで理解度を見て判断しています。

問8 波長 0.10 nm の光子のエネルギー [ J ] を求めなさい。

解答例

求めるエネルギーをEとすると、

$$
\begin{aligned}
E&=hν\\[6pt]
&=\frac{hc}{λ}\\[6pt]
&=\frac{6.6\times 10^{-34} \times 3.0 \times 10^8}{0.10 \times 10^{-9}} \\[6pt]
&=1.98 \times 10^{-15} \mathrm{[ J ]}
\end{aligned}
$$

解説

正答率は36%でした。
今回の試験で最も低い正答率です。

問7と同様に光子のエネルギーを問うものですが、
振動数ではなく、波長を用いた関係式を用いるのがポイントですね。

答案を見てみると、$ E=\frac{hc}{λ} $を思い出せない方も多かったですが、
もっとも多かったのは別です。

誤答例を紹介します。

誤1 $E=\frac{h}{λ}$ として計算する。

本来、$E=\frac{h}{λ}$ こういう関係式はありません。
正しくは、$p=\frac{h}{λ}$ です。

つまり、エネルギーを求めているつもりで、運動量を求めてしまっているパターンです。

この運動量パターンの方、かなり多かったです。

問9 $ 3.2 \times 10^{-19} $ C の電荷を持つ粒子を 2 MV の電圧で加速したときに得られるエネルギーを [ J ] と [MeV] の両方で求めなさい。

解答例

まずは J から求めます。

求めるエネルギーをEとすると、

$$
\begin{aligned}
E&=qV\\[6pt]
&=3.2\times 10^{-19} \times 2.0 \times 10^{6} \\[6pt]
&=6.4 \times 10^{-13} \mathrm{[ J ]}
\end{aligned}
$$

一方、MeVでは、

$$
\begin{aligned}
E&=\frac{q}{e} V \\[6pt]
&=\frac{3.2\times 10^{-19}}{1.6\times 10^{-19}} \times 2.0 \times 10^{6}\\[6pt]
&=4 \times 10^{6} \mathrm{[eV]} \\[6pt]
&=4 \mathrm{[MeV]}
\end{aligned}
$$

解説

正答率は55%でした。

今度は同じエネルギーでも粒子のエネルギーを2種類の単位で求める問題です。

加速粒子の電荷をどう表現するかで単位が変わります。
電荷 C をそのまま使うと J 単位のエネルギーが求められ、
電荷を電気素量(素電荷量)の何倍かという表現にすると eV 単位のエネルギーが求められます。

散見された誤答例を紹介しておきます。

誤1 2MVを $ 2 \times 10^{3} $ Vにしている。

少数ですが、何人かいました。

$$
\begin{aligned}
E&=qV\\[6pt]
&=3.2\times 10^{-19} \times 2.0 \times 10^{3} \\[6pt]
&=6.4 \times 10^{-16} \mathrm{[ J ]}
\end{aligned}
$$

当然、eVの方も間違うことになります。

原因は接頭語のM(メガ)に認識ミス。
Mは106です。
103はk(キロ)ですね。

誤2 Jを求めるときに $ E=\frac{q}{e} V $ の関係式を使用している。

こちらも多くはありませんでしたが、数名いました。

$$
\begin{aligned}
E&=\frac{q}{e} V \\[6pt]
&=\frac{3.2\times 10^{-19}}{1.6\times 10^{-19}} \times 2.0 \times 10^{6}\\[6pt]
&=4 \times 10^{6} \mathrm{[J]} \\[6pt]
&=4 \mathrm{[MJ]}
\end{aligned}
$$

となりますから、eVにするには、これを電気素量で除すことになります。
すると、

$$
\begin{aligned}
E&=\frac{4 \times 10^{6} }{1.6\times 10^{-19}} V \\[6pt]
&= 2.5 \times 10^{13} \mathrm{[eV]} \\[6pt]
&=2.5 \times 10^7 \mathrm{[MeV]}
\end{aligned}
$$

となってしまい、
1個の粒子に与えたエネルギーとしては、とんでもなく大きい数字になってしまいます。

問10 光速の60%の速度で運動している電子の全エネルギーは質量エネルギーの何倍か求めなさい。

解答例

全エネルギーをE、質量エネルギーをmc2とすると、求める倍数は$ \frac{E}{mc^2}$と表現でき、ローレンツ因子 $ γ $ と等しくなる。

$$
\begin{aligned}
\frac{E}{mc^2} &= \gamma \\[12pt]
&=\frac{1}{\sqrt{1 – \left( \frac{v}{c} \right)^2}} \\[12pt]
&= \frac{1}{\sqrt{1 – \left( \frac{0.6c}{c} \right)^2}} \\[12pt]
&= \frac{1}{\sqrt{1 – 0.36}} \\[12pt]
&= \frac{1}{\sqrt{0.64}} \\[12pt]
&= \frac{1}{0.8} \\[12pt]
&= 1.25
\end{aligned}
$$

したがって、1.25倍となる。

解説

正答率は81%でした。
これは例年になく高い正答率です。

講義でも演習しましたし、小テストにも形を変えて出しましたから
刷り込み学習の効果とでも言いましょうか。

でも、安心できません。

ウソだろ?
と思うほどパターン化した誤答例がありましたので、ご紹介します。

誤1 分数と平方根(ルート)の合わせ技で手を抜いた表記をするとこうなる。

$$
\begin{aligned}
\frac{E}{mc^2} &= \gamma \\[12pt]
&=\frac{1}{\sqrt{1 – \left( \frac{v}{c} \right)^2}} \\[12pt]
&= \frac{1}{\sqrt{1 – \left( \frac{0.6c}{c} \right)^2}} \\[12pt]
&= \sqrt{1 – 0.36} \\[12pt]
&= \sqrt{0.64} \\[12pt]
&= 0.8
\end{aligned}
$$

どこからおかしくなったか分かりますか?

こういうデジタル表記だと気付くと思いますが、
手書きの答案だと、間違いに気付きにくいものです。

本来分母側にあるはずの平方根がいつの間にか分子側に来てしまっているんです。
おそらく、式変形が長くて、〇分の1の1を書くのが面倒になって、
省略したんだと思います。

それで、本来分母だった平方根の部分だけを書いているうちに、
分母だったことを忘れたんだと思います。

僕が出題でひっかけようと思わなくても、
皆さん自らの字の汚さ・表記の汚さで勝手につまづきます。

問題なのは、これが1名ではないこと。
何人かいました。

まとめ

今回の中間試験では、

  • 用語の定義
  • 現象の理解
  • 単位
  • 数式の扱い方

などを確認しました。

正答率の高い問題もありましたが、思わぬところで失点しているケースも多く見られました。

試験は「できた・できなかった」を確認するだけでなく、自分の弱点を見つけるためのものでもあります。

今回の解説を参考に、期末試験へ向けて復習しておきましょう。

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

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