C10 制動放射線の半価層と実効エネルギー

X線は、エネルギーが高いほど物質を透過しやすくなります。
そのため、X線の線質(透過力)を考えるうえでは、
どのくらいのエネルギーをもったX線なのかが重要です。

しかし、X線管から発生する制動放射線は、
さまざまなエネルギーのX線が混ざった連続スペクトルです。
そこで、このX線全体の透過力を一つのエネルギーで表したものが実効エネルギーです。

実効エネルギーはこの連続したエネルギーをあえて代表的な1つのエネルギーで表すとしたら?という概念です。

また、X線の透過力を調べる指標として半価層があり、実効エネルギーと密接な関係があります。

今回は、半価層と実効エネルギーの意味から、それぞれの関係、さらに実効エネルギーを変化させる因子まで見ていきましょう。

半価層とは

X線が物質の中を通過すると、一部のX線は吸収されたり散乱したりするため、通過後のX線の強度は小さくなります。
このとき、X線の強度をどのくらいまで減らせるかを吸収体の厚さで表したものの一つが半価層です。

強度ってなんやったっけ?
全エネルギーやったっけ?

近いけど、厳密にはエネルギーフルエンス率のことだよ。
単位面積当たり、単位時間当たりの概念が入ってくるんだ。

X線強度を半分にする吸収体の厚さ

半価層とは、X線の強度を1/2にするために必要な吸収体の厚さです。

たとえば、あるX線の強度を100%とします。
そのX線を吸収体に通し、強度が50%になるときの吸収体の厚さが半価層です。

つまり、

100% → 吸収体 → 50%

となるときの「吸収体の厚さ」を表しているわけですね。

半価層はX線の強度そのものを表しているのではなく、X線がどのくらい物質を透過しやすいかを調べるための指標として使われます。

エネルギーを下げても、数を減らしても
強度は落ちるのよね。

半価層とX線の透過力

半価層の厚さを見ると、X線の透過力を知ることができます。

透過力の弱いX線は、吸収体を少し通過しただけでも強度が大きく減ります。
そのため、X線強度を半分にするために必要な吸収体は薄くなり、半価層も小さくなります。

反対に、透過力の強いX線は、吸収体を通過してもなかなか強度が減りません。
X線強度を半分にするためには、より厚い吸収体が必要になるため、半価層も大きくなります。

つまり、

透過力が弱い → 半価層は薄い

透過力が強い → 半価層は厚い

という関係です。

そして、X線はエネルギーが高いほど透過力が強くなります。
この関係が、次に学ぶ実効エネルギーと半価層を結びつける重要なポイントになります。

実効エネルギーとは

X線管から発生する制動放射線は、さまざまなエネルギーをもつX線が混ざった連続スペクトルです。
そのため、制動放射線のエネルギーを「○○keV」と一つの値で表すことはできません。

そこで、連続スペクトルのX線を代表する一つのエネルギーとして表したものが実効エネルギーです。

連続スペクトルを一つのエネルギーで表す実効エネルギー

実効エネルギーは、連続スペクトルに含まれるX線のエネルギーを単純に平均したものではありません。

連続スペクトルのX線と同じ半価層をもつ単一エネルギーのX線を考え、そのX線がもつエネルギーを制動放射線の実効エネルギーといいます。

つまり、実効エネルギーとは、

「この連続スペクトルのX線と同じ透過力をもつ単一エネルギーのX線に置き換えると、何keVになるのか?」

を表したものです。

さまざまなエネルギーが混ざっている制動放射線を、あえて代表的な一つのエネルギーで表しているわけですね。

なんや良く分からんくなってきたで。

半価層をしっかりと勉強したらもう一回説明してあげるね。

※C26:半価層のグラフでもう一度勉強しましょうね。

実効電圧と実効波長

実効エネルギーは、エネルギー以外の形で表すこともできます。

実効エネルギーを電圧に対応させて表したものを実効電圧、波長に対応させて表したものを実効波長といいます。

X線のエネルギーと波長には、

エネルギーが高いほど波長は短い

という関係がありましたね。

そのため、

実効エネルギーが高い → 実効電圧は高い → 実効波長は短い

となります。

反対に、

実効エネルギーが低い → 実効電圧は低い → 実効波長は長い

となります。

実効エネルギーと半価層の関係

実効エネルギーと半価層には密接な関係があります。

実効エネルギーが低いX線は透過力が弱いため、少しの吸収体でもX線の強度を1/2まで減らすことができます。
そのため、実効エネルギーが低いほど半価層は薄くなります。

反対に、実効エネルギーが高いX線は透過力が強いため、X線の強度を1/2まで減らすには、より厚い吸収体が必要です。
そのため、実効エネルギーが高いほど半価層は厚くなります。

つまり、

実効エネルギーが低い → 透過力が弱い → 半価層は薄い

実効エネルギーが高い → 透過力が強い → 半価層は厚い

という関係です。

半価層は単に「X線の強度を1/2にする厚さ」を表すだけではなく、制動放射線の実効エネルギー、つまりX線の線質を知るためにも使われる重要な指標です。

実効エネルギーを高くする因子

実効エネルギーは、X線の発生条件やろ過の状態によって変化します。
ここでは、実効エネルギーを高くする因子を見ていきましょう。

管電圧

管電圧を高くすると、実効エネルギーは高くなります。

管電圧を高くすると、陰極から飛び出した電子はより大きな運動エネルギーをもってターゲットへ衝突します。
その結果、発生する制動放射線も最大エネルギーが高くなり、高いエネルギーをもつX線が多くなり、スペクトル全体が高エネルギー側へ広がります。

したがって、

管電圧が高い → 実効エネルギーが高い → 透過力が強い → 半価層が厚い

という関係になります。

総ろ過と付加フィルタ

総ろ過を厚くすると、実効エネルギーは高くなります。

ろ過によって、透過力の弱い低エネルギーのX線が多く取り除かれるためです。
低エネルギー成分が減ると、残ったX線は相対的に高エネルギーの割合が多くなります。

このように、低エネルギー成分が取り除かれてX線の透過力が強くなることを線質硬化といいます。

また、付加フィルタの原子番号を高くすることでも、実効エネルギーは高くなります。

つまり、ろ過では、

総ろ過を厚くする → 実効エネルギーが高くなる

付加フィルタの原子番号を高くする → 実効エネルギーが高くなる

と覚えておきましょう。
ろ過によって低エネルギー成分が除かれ、X線の線質が変化することは、診断用X線における重要な特徴です。

ターゲットの原子番号とリプル百分率

ターゲットの原子番号を高くすると、実効エネルギーは高くなります。

ターゲットの原子番号も、発生するX線のエネルギー分布に影響する因子の一つです。

一方、リプル百分率については向きが逆になります。
図で示してみましょう。

リプル百分率を低くすると、実効エネルギーは高くなります。

そもそもリプル百分率とは何でしょうか。
管電圧の波形は限りなく一定に近付けていますが、一定ではありません。
多少なりとも変動しています。
その変動を脈動といい、リプル百分率は脈動率とも表されます。

つまり、リプル百分率とは、管電圧が時間とともにどのくらい変動しているかを表したものです。
リプル百分率が小さいほど管電圧の変動が少なく、高い管電圧を保った状態でX線を発生させることができます。

そのため、高エネルギーのX線の割合が多くなり、実効エネルギーも高くなります。

実効エネルギーを高くする条件をまとめると、

管電圧を高くする

総ろ過を厚くする

付加フィルタの原子番号を高くする

ターゲットの原子番号を高くする

リプル百分率を低くする

となります。

ここまで見てきたように、実効エネルギーを変化させる因子はいくつかあります。

実効エネルギーは平均エネルギーではありませんが、
実効エネルギーが高くなるか低くなるかを考えるときは、
平均エネルギーがどう変化するかを考えるとイメージしやすくなります。

平均エネルギーを高くする方法は、大きく分けると次の2つです。

① 最大エネルギーを高くする

管電圧を高くすると最大エネルギーが高くなり、高いエネルギーをもつX線が増え、平均エネルギーも高くなります。

② 低エネルギー成分をカットする

ろ過によって低エネルギー成分を取り除くと、残ったX線の平均エネルギーは高くなります。

つまり、実効エネルギーを高くする条件を考えるときは、

「最大エネルギーを高くする」

または、

「低エネルギー成分をカットする」

という2つの考え方を軸にすると整理しやすくなります。

何度も言うけど、「実効」は「平均」じゃないからね。
考えやすくするだけだよ。

実効エネルギーを変化させない因子

実効エネルギーは、X線のエネルギー分布によって決まります。
そのため、X線の本数だけを増減させても実効エネルギーは変化しません。

管電流と照射時間

管電流を変化させても、実効エネルギーは変化しません。

管電流を大きくすると、単位時間当たりにターゲットへ衝突する電子の数が増えるため、発生するX線の本数も増加します。
しかし、発生するX線のエネルギー分布そのものは変わりません。

つまり、

管電流を大きくする → X線の本数は増える → 実効エネルギーは変わらない

という関係です。

また、照射時間を変化させても、実効エネルギーは変化しません。

照射時間を長くすると、その分だけ発生するX線の総数は増えます。
しかし、やはりX線のエネルギー分布そのものは変わりません。

そのため、

照射時間を長くする → X線の総数は増える → 実効エネルギーは変わらない

となります。

管電流と照射時間は、どちらもX線の量を変化させる因子です。
一方、実効エネルギーはX線の線質を表すものなので、X線の本数だけが変化しても実効エネルギーは変化しないと考えましょう。

実際の過去問を見てみよう

ちょっと古いですが、実効エネルギーが問われたものがあります。
2016年2月に実施された第68回PM71を見てみましょう。

制動X線で正しいのはどれか。

  1. 第1半価層は第2半価層より厚い。
  2. 実効エネルギーは線質表示に用いられる。
  3. 最短波長はターゲットの原子番号で決まる。
  4. 発生効率はターゲットの原子番号に反比例する。
  5. エネルギー分布はMoseley<モーズレー>の法則に従う。
答えを確認する。

正解は 2 です。

半価層や発生効率に交じって実効エネルギーも出題されていますね。
できましたか?

  1. 誤り
    第2半価層の方が厚くなります。
    それは低エネルギー成分が第1半価層で除去されていますので、第2半価層に到達する制動X線はエネルギーの高い成分が多いからです。
    第2半価層に到達する制動X線の方が実効エネルギーが高くなっているのです。
  2. 正解
    覚えておきましょう。
  3. 誤り
    最短波長は管電圧で決まります。デュエンハントの法則ですね。
  4. 誤り
    発生効率はターゲットの原子番号に比例します。
  5. 誤り
    モーズレーの法則は特性X線に関係する法則です。
    制動X線には関係ありません。

医療現場でのかかわり

半価層や実効エネルギーは、X線の線質(透過力)を知るために重要な指標です。
医療現場では、同じX線量であっても線質が異なれば、患者さんの体内でのX線の吸収や透過のしかたも変わってきます。

たとえば、実効エネルギーが低いX線は透過力が弱いため、患者さんの体内で吸収されやすくなります。
反対に、実効エネルギーが高いX線は透過力が強くなり、より深部まで到達しやすくなります。

そのため、X線撮影では管電圧やろ過を適切に設定し、撮影する部位に合った線質のX線を使用することが大切です。

また、X線装置から発生するX線の線質を確認するときには、半価層が利用されます。
半価層を測定することで、その装置から発生しているX線がどのくらいの透過力をもっているのかを確認することができます。

半価層や実効エネルギーは単なる物理学の用語ではなく、患者さんに照射するX線の性質を知るための大切な知識なんですね。

まとめ

今回は、制動放射線の半価層実効エネルギーについて見てきました。
最後に、重要なポイントを振り返ってまとめていきましょう。

  • 半価層とは、X線の強度を1/2にするために必要な吸収体の厚さ
  • 透過力が強いX線ほど、半価層は厚くなる
  • 実効エネルギーとは、連続スペクトルのX線と同じ半価層をもつ単一エネルギーX線のエネルギー
  • 実効エネルギーが高いほど、透過力は強くなり、半価層は厚くなる
  • 実効エネルギーを電圧で表したものを実効電圧、波長で表したものを実効波長という
  • 管電圧を高くすると、実効エネルギーは高くなる
  • 総ろ過を厚くすると、実効エネルギーは高くなる
  • 付加フィルタやターゲットの原子番号を高くすると、実効エネルギーは高くなる
  • リプル百分率を低くすると、実効エネルギーは高くなる
  • 管電流や照射時間を変えても、実効エネルギーは変化しない
  • 実効エネルギーの変化は、最大エネルギーを高くする、または低エネルギー成分をカットすると考えるとイメージしやすい

半価層と実効エネルギーは、X線の透過力を考えるうえでセットで覚えておこう!

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次はこの辺りも参考になるかもよ。

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

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