C10:制動放射線の半価層と実効エネルギーで学んだ通り、X線は、管電圧や管電流、ろ過などの条件を変えることで、その性質も変化するんでしたよね。
では、それぞれの条件を変えると、最短波長や実効波長はどのように変化するのでしょうか。
今回は、X線の発生条件と波長の関係を整理しながら、エネルギーがどのように変化するのかまで見ていきましょう。
「最短」波長の変化なのか、「実効」波長の変化なのかで解答が変わります。
引っ掛かりやすいポイントにもなっています。
最短波長ではエネルギーと振動数が最大になる
X線の波長を考えるとき、まず押さえておきたいのが「波長が短いほど、エネルギーと振動数は大きくなる」という関係です。
連続X線にはさまざまな波長のX線が含まれていますが、その中で最も波長が短いものを最短波長といいます。
この最短波長に対応するX線は、エネルギーも振動数も最大になります。
最短波長と最大エネルギーの関係
X線のエネルギー $E$ と波長 $\lambda$ には、次の関係があります。
$E=\frac{hc}{\lambda}$
$h$ はプランク定数、$c$ は光の速さで、どちらも一定です。
そのため、波長が短くなるほどX線のエネルギーは大きくなります。
つまり、連続X線の中で最短波長のX線は、エネルギーが最大になります。
最短波長と最大振動数の関係
X線の波長 $\lambda$ と振動数 $\nu$ には、次の関係があります。
$c=\lambda\nu$
光の速さ $c$ は一定なので、波長が短くなるほど振動数は大きくなります。
したがって、連続X線の中で最短波長のX線は、振動数も最大になります。
最短波長、最大エネルギー、最大振動数は、すべて同じX線を表していると考えておきましょう。
管電圧を変えるとX線はどう変化する?
管電圧は、X線のエネルギーを決める重要な条件です。
管電圧を高くすると、陰極から飛び出した電子はより大きな運動エネルギーをもってターゲットへ衝突します。
その結果、発生するX線のエネルギーも高くなり、最短波長や実効波長が変化します。
管電圧を高くすると最短波長は短くなる
電子が管電圧 $V$ で加速されたときに得る最大の運動エネルギーは、$eV$ で表されます。
このエネルギーがすべて1個のX線光子のエネルギーに変わったとき、最もエネルギーの高いX線が発生します。
X線光子のエネルギーは、
$E=\frac{hc}{\lambda}$
なので、最短波長 $\lambda_{\min}$ については、
$eV=\frac{hc}{\lambda_{\min}}$
となります。
したがって、管電圧を高くすると最大エネルギーが大きくなり、最短波長は短くなります。
管電圧と最短波長は反比例の関係にあることを押さえておきましょう。
管電圧を高くすると実効波長も短くなる
管電圧を高くすると、最短波長だけでなくX線スペクトル全体も高エネルギー側へ変化します。
つまり、発生するX線全体としてもエネルギーが高くなります。
X線のエネルギーが高くなるほど波長は短くなるため、管電圧を高くすると実効波長も短くなります。
ここでは、管電圧を高くすると「最短波長も実効波長も短くなる」とセットで覚えておきましょう。
実効波長を変化させる因子
最短波長は管電圧によって決まりますが、実効波長はX線スペクトル全体の形によって変化します。
そのため、ターゲットの原子番号やろ過、管電圧のリプル百分率なども実効波長に影響します。
ここでは、それぞれの条件を変えたときに、最短波長と実効波長がどのように変化するのかを見ていきましょう。

パラメータありすぎやで・・・

牛助ちゃん、大丈夫よ。
一つずつ見ていきましょう。
ターゲットの原子番号を高くする
最短波長は、電子がもつ最大の運動エネルギーによって決まります。
その最大の運動エネルギーを決めているのは管電圧なので、ターゲットの原子番号を高くしても最短波長は変化しません。
一方、ターゲットの原子番号が高くなると、より高いエネルギーをもつ特性X線が発生するようになり、X線スペクトルの高エネルギー成分が強くなります。
ターゲットの原子番号が増えることで、ターゲット原子は外殻の軌道電子が増えますから、KβX線のエネルギーが上がることになります。

また、入射電子に対してもクーロン力が強く働くことになり、減速も大きくなり、その分の制動放射線の平均的なエネルギーも大きくなります。※最大エネルギーに変化はありませんよ。
その結果、特性X線も制動放射線も高エネルギー寄りに変化しますので、実効エネルギーは高くなり、実効波長は短くなります。
つまり、ターゲットの原子番号を高くすると「最短波長は変化せず、実効波長は短くなる」と覚えておきましょう。
総ろ過を厚くする
X線管から発生したX線には、エネルギーの低いX線も多く含まれています。
総ろ過を厚くすると、この低エネルギーのX線がより多く吸収されます。
その結果、X線全体に占める高エネルギー成分の割合が大きくなり、実効エネルギーは高くなります。
このようにX線の平均的なエネルギーが高くなることを「線質が硬くなる」と表現します。
したがって、総ろ過を厚くすると実効波長は短くなります。
ただし、ろ過によって最短波長を決める最大エネルギーそのものが変わるわけではありません。
そのため、最短波長は変化しません。
付加ろ過の原子番号を高くする
付加ろ過の原子番号を高くすると、低エネルギーのX線がより多く吸収されます。
その結果、透過したX線では高エネルギー成分の割合が大きくなり、実効エネルギーが高くなります。
したがって、付加ろ過の原子番号を高くすると実効波長は短くなります。
一方、最短波長を決めるのはX線管に加えられた管電圧です。
付加ろ過を変えても発生時の最大エネルギーは変わらないため、最短波長は変化しません。
管電圧のリプル百分率を高くする
管電圧は、常に一定の値を保っているとは限りません。
時間とともに管電圧がどれくらい変動しているかを表したものがリプル百分率です。
リプル百分率が高くなるほど管電圧の変動が大きくなり、最高管電圧よりも低い電圧でX線が発生している時間が長くなります。
そのため、発生するX線には低エネルギー成分が多くなり、実効エネルギーは低くなります。
エネルギーが低くなると波長は長くなるので、リプル百分率を高くすると実効波長は長くなります。
一方、最高管電圧が同じであれば発生できるX線の最大エネルギーは変わりません。
そのため、最短波長は変化しません。
管電流と照射時間では波長は変化しない
管電圧がX線のエネルギーに影響するのに対して、管電流と照射時間は主にX線の量に影響します。
どちらを変えても、電子1個あたりがもつ運動エネルギーは変わらないため、発生するX線の波長には影響しません。
ここは「エネルギーを変える条件なのか、X線の量を変える条件なのか」を区別して考えると覚えやすくなります。
管電流を高くしても波長は変化しない
管電流を高くすると、陰極から陽極へ移動する電子の数が増えます。
その結果、ターゲットに衝突する電子の数も増えるため、発生するX線の量は増加します。
しかし、電子1個あたりがもつ最大の運動エネルギーは管電圧によって決まります。
管電流を高くしても電子1個あたりのエネルギーは変わらないため、X線の最大エネルギーも変化しません。
したがって、管電流を高くしても最短波長は変化しません。
また、X線スペクトル全体のエネルギー分布も基本的には変化せず、X線の量が増えるだけなので、実効波長も変化しません。
つまり、管電流を高くすると「X線の量は増えるが、最短波長と実効波長は変化しない」と考えましょう。
照射時間を長くしても波長は変化しない
照射時間を長くすると、X線を発生させている時間そのものが長くなります。
そのため、発生するX線の総量は増加します。
しかし、照射している時間が長くなっても、電子1個あたりの運動エネルギーやX線スペクトルの形は変化しません。
したがって、照射時間を長くしても最短波長は変化しません。
また、実効波長も変化しません。
管電流と照射時間はどちらもX線の量に関係する条件です。
そのため、管電流と照射時間の積である「mAs」を大きくするとX線の量は増えますが、X線の波長には影響しないことを押さえておきましょう。
波長の変化をエネルギーの変化に読み替えよう
ここまでは、各種パラメータを変えたときに最短波長や実効波長がどう変化するのかを見てきました。
しかし、国家試験では「波長」ではなく「エネルギー」がどのように変化するのかを問われることもあります。
そんなときは、新しく覚え直す必要はありません。
波長とエネルギーの関係を使えば、そのまま読み替えることができます。
波長が短くなるとエネルギーは高くなる
X線のエネルギー $E$ と波長 $\lambda$ には、次の関係がありましたね。
$E=\frac{hc}{\lambda}$
$h$ と $c$ は一定なので、波長とエネルギーは反比例の関係になります。
つまり、波長が短くなるとエネルギーは高くなります。
たとえば、管電圧を高くすると最短波長と実効波長は短くなります。
これをエネルギーに読み替えると、最大エネルギーと実効エネルギーはどちらも高くなることが分かります。
波長が長くなるとエネルギーは低くなる
反対に、波長が長くなるとエネルギーは低くなります。
たとえば、管電圧のリプル百分率を高くすると実効波長は長くなりました。
したがって、実効エネルギーは低くなります。
「波長が短いほど高エネルギー、波長が長いほど低エネルギー」という関係を押さえておけば、波長の変化を問われてもエネルギーの変化を問われても対応できます。
各種パラメータによる変化を整理しよう
ここまで見てきた内容を、最短波長と実効波長の変化に注目して整理しておきましょう。
ポイントは、「最大エネルギーを変えるのか」「X線スペクトルの形を変えるのか」「X線の量だけを変えるのか」を区別することです。
| 変化させるパラメータ | 最短波長 | 実効波長 |
|---|---|---|
| 管電圧を高くする | 短くなる | 短くなる |
| 管電流を高くする | 変化しない | 変化しない |
| ターゲットの原子番号を高くする | 変化しない | 短くなる |
| 照射時間を長くする | 変化しない | 変化しない |
| 管電圧のリプル百分率を高くする | 変化しない | 長くなる |
| 総ろ過を厚くする | 変化しない | 短くなる |
| 付加ろ過の原子番号を高くする | 変化しない | 短くなる |
最短波長を変化させるのは、この中では管電圧です。
最大エネルギーを決めるのが管電圧だからですね。
一方、ターゲットの原子番号やろ過、リプル百分率は、最大エネルギーを変えずにX線スペクトルの形を変化させます。
そのため、最短波長は変化しませんが、実効波長は変化します。
そして管電流と照射時間は、主にX線の量を変化させる条件です。
X線のエネルギー分布には影響しないため、最短波長も実効波長も変化しません。
この表をそのまま暗記するのではなく、「何が変わった結果、波長が変化するのか」まで考えられるようにしておきましょう。
実際に出題された過去問を見てみよう
と思いましたが、放物ではこの辺りの知識がそのまま出題されているものが見当たりませんでした。
機器学での出題がありそうですが、私ではすべてを解説しきれませんので、今回は割愛致します。
医療現場でのかかわり
一般撮影では、管電圧や管電流、照射時間、ろ過などを調整しながらX線撮影を行います。
これらは単に装置の設定値を変えているだけではなく、発生するX線の「量」や「エネルギー」に直接かかわっています。
たとえば、管電圧を高くするとX線のエネルギーが高くなり、被写体を透過しやすくなります。
一方、管電流や照射時間を増やすとX線の量は増えますが、X線のエネルギーそのものは変化しません。
また、ろ過は低エネルギーのX線を取り除くことで、患者さんの被ばく低減にも役立っています。
低エネルギーのX線は体内で吸収されやすく、画像形成への寄与が小さいためです。
さらに、X線高電圧装置のリプル百分率もX線の実効エネルギーに影響します。
同じ最高管電圧であっても、リプル百分率が大きいほど低い管電圧でX線が発生する時間が増えるため、発生するX線の実効エネルギーは低くなります。
撮影条件を考えるときは、「何を変えるとX線の量が変わるのか」「何を変えるとX線のエネルギーが変わるのか」を区別して考えることが大切です。
今回学んだ内容は、実際の撮影条件を理解するための基礎にもなっています。
まとめ
今回は、管電圧や管電流、ターゲットの原子番号、ろ過などを変化させたときに、X線の最短波長や実効波長がどのように変化するのかを見てきました。
最後に、今回のポイントを振り返ってまとめていきましょう。
- 最短波長のX線は、エネルギーが最大、振動数が最大になる
- 管電圧を高くすると、最短波長は短く、実効波長も短くなる
- 管電流を高くしても、最短波長と実効波長は変化しない
- ターゲットの原子番号を高くすると、最短波長は変化せず、実効波長は短くなる
- 照射時間を長くしても、最短波長と実効波長は変化しない
- 管電圧のリプル百分率を高くすると、最短波長は変化せず、実効波長は長くなる
- 総ろ過を厚くすると、最短波長は変化せず、実効波長は短くなる
- 付加ろ過の原子番号を高くすると、最短波長は変化せず、実効波長は短くなる
- 波長が短くなるとエネルギーは高くなり、波長が長くなるとエネルギーは低くなる

表だけを覚えるのではなく、『X線の量が変わるのか、エネルギーが変わるのか』まで考えられるようにしておこう!
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次はこの辺りも参考になるかもよ。
この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら
診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。
都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。
国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。
保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有



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