半価層は、X線の強さ(X線強度)を半分にするために必要な吸収体の厚さです。
グラフを見ると、第1半価層と第2半価層が同じ場合と、異なる場合があります。
この違いには、X線のエネルギー分布が関係しています。
今回は、半価層のグラフを見ながら、連続スペクトルと線スペクトルの違い、実効エネルギー、均等度まで確認していきましょう。
半価層のグラフ

半価層とは、X線強度を半分にするために必要な吸収体の厚さです。
上のグラフでは、縦軸に相対電離量、横軸にフィルタ厚をとっています。
このグラフでは、X線強度の変化を相対電離量で表しているため、相対電離量が0.5になることは、X線強度が最初の半分になったことを表します。
フィルタを厚くするほどX線は減弱するため、相対電離量も小さくなっていきます。
ここで注目したいのが、グラフ中の①と②です。
半価層は、X線強度が半分になるまでに必要な吸収体の厚さを表します。
第1半価層
相対電離量が1.0から0.5になるまでに必要なフィルタの厚さを第1半価層といい、H₁で表します。
グラフでは①の部分にあたります。
つまり、第1半価層は最初の相対電離量を半分にするために必要なフィルタ厚です。
第2半価層
相対電離量が0.5から0.25になるまでに必要なフィルタの厚さを第2半価層といい、H₂で表します。
グラフでは②の部分にあたります。
0.25は0.5の半分なので、第2半価層も相対電離量を半分にするために必要なフィルタ厚を表しています。
2半価層
第1半価層と第2半価層を合わせた厚さを2半価層といいます。
つまり、相対電離量が1.0から0.25になるまでに必要なフィルタ厚が2半価層です。
グラフを見ると、連続スペクトルでは①と②の長さが異なっていますが、線スペクトルでは①と②が同じ長さになっています。
次は、この違いがなぜ生じるのかを見ていきましょう。

紛らわしくてかなわんで!

二つ目の半価層が「第2半価層」
半価層二つ分が「2半価層」だよ。
連続スペクトルと線スペクトルの半価層
第1半価層と第2半価層の関係は、X線が連続スペクトルなのか、線スペクトルなのかによって異なります。
先ほどのグラフで①と②の長さに注目すると、その違いが見えてきます。
連続スペクトルでは第2半価層が厚くなる
連続スペクトルのX線では、第2半価層は第1半価層よりも厚くなります。
つまり、グラフでは②の方が①より長くなります。
連続スペクトルには、さまざまなエネルギーのX線が含まれています。
フィルタを通過すると、まず透過しにくい低エネルギー成分が多く減弱します。
その結果、フィルタを通過したX線では高エネルギー成分の割合が増え、X線は透過しやすくなります。
このように、低エネルギー成分が減少してX線の線質が硬くなることを線質硬化といいます。
そのため、相対電離量を1.0から0.5にするよりも、0.5から0.25にする方が厚いフィルタが必要になります。

透過力が増すと止めにくくなるからやな?

そういうこと。
止まらないから、半分にするには、それなりの厚みが必要ってことさ。
線スペクトルでは第1半価層と第2半価層が等しくなる
線スペクトルのX線では、第1半価層と第2半価層は等しくなります。
つまり、グラフでは①と②が同じ長さになります。
線スペクトルは単一のエネルギーをもつため、フィルタを通過しても連続スペクトルのように低エネルギー成分だけが先に減弱することはありません。
そのため、相対電離量を1.0から0.5にするために必要なフィルタ厚と、0.5から0.25にするために必要なフィルタ厚は同じになります。

こっちはみんな透過力が一緒だから差がつかんのやろ?

牛助、すごいじゃないか。
その通りだよ。
みんな一緒だから、減り方も均一なんだ。
半価層と線減弱係数の関係
半価層は、X線が物質中でどのくらい減弱しやすいかを表す線減弱係数μと関係しています。
線減弱係数μが大きいほどX線は減弱しやすく、少ないフィルタ厚で相対電離量が半分になります。
反対に、線減弱係数μが小さいほどX線は減弱しにくいため、相対電離量を半分にするには厚いフィルタが必要です。
つまり、半価層と線減弱係数μは反比例の関係にあります。
半価層を求める式
半価層HVLは、線減弱係数μを使って次の式で求められます。
(HVL:Half Value Layer)
$HVL=\frac{\log_e 2}{μ}$
logₑ2は約0.693なので、次のように表すこともできます。
$HVL=\frac{0.693}{μ}$
この式を見ると、線減弱係数μが大きくなるほど半価層HVLは小さくなり、μが小さくなるほどHVLは大きくなることが分かります。
単位にも注目してみましょう。
線減弱係数μの単位がmm-1であれば、半価層HVLの単位はmmになります。
半価層は「X線強度を半分にするために必要な厚さ」なので、最終的な単位が長さになることも覚えておきましょう。

$\log_e 2=0.693$
これはよく出てくるので覚えておきましょうね。
実効エネルギー
連続スペクトルのX線には、さまざまなエネルギーのX線が含まれています。
そのため、連続スペクトルのX線を「何keVのX線」と1つのエネルギーだけで表すことは難しいのです。
そこで、半価層を利用して連続スペクトルのX線を1つのエネルギーで表したものが実効エネルギーです。
連続スペクトルのX線を線スペクトルで表す考え方
連続スペクトルのX線と線スペクトルのX線で半価層が等しいとき、その線スペクトルのX線のエネルギーを、連続スペクトルのX線の実効エネルギーといいます。
たとえば、ある連続スペクトルのX線と50 keVの線スペクトルのX線の半価層が同じであれば、その連続スペクトルのX線の実効エネルギーは50 keVです。
実効エネルギーは、連続スペクトルに含まれるX線のエネルギーを平均した値ではありません。
「同じ半価層をもつ線スペクトルのX線なら何keVか」という考え方で決められるエネルギーです。
つまり、実効エネルギーは連続スペクトルのX線の線質を、1つのエネルギーとして表すための値です。

実効エネルギーは代表値って感じかいな?

まぁ、簡単に言えばそんなもんだね。
1つの値で表すとしたら?って感じだね。
均等度と不均等度
第1半価層と第2半価層の関係から、連続スペクトルのX線がどの程度均一なエネルギー分布をもっているかを表すことができます。
その指標として使われるのが、均等度と不均等度です。
均等度
均等度は、第1半価層H1を第2半価層H2で割った値です。
均等度=H1/H2
連続スペクトルのX線では第2半価層の方が厚くなるため、均等度は1より小さくなります。
一方、線スペクトルでは第1半価層と第2半価層が等しいため、均等度は1になります。
つまり、均等度が1に近いほど、X線のエネルギーがそろっていることを表します。
不均等度
不均等度は、第2半価層H2を第1半価層H1で割った値です。
不均等度=H2/H1
均等度とは分子と分母が逆になっているため、連続スペクトルのX線では不均等度は1より大きくなります。
線スペクトルでは第1半価層と第2半価層が等しいため、不均等度は1になります。
つまり、不均等度が1に近いほどX線のエネルギーがそろっており、1から大きく離れるほどエネルギーのばらつきが大きいことを表します。
実際の過去問を見てみよう
1998年に実施された第50回国家試験から問19のご紹介。
ん?どっかからか古すぎじゃないかって声が聞こえますね・・・
えぇ。
無視します。笑
半価層について正しいのはどれか。
- 物質中の吸収線量の測定によって求められる。
- 照射野は出来るだけ大きくして測定する。
- 制動放射エックス線の場合、第1半価層は第2半価層より大きい。
- 特性エックス線の場合、均質係数(均等度)は1に近い。
- 散乱線の寄与も測定値に含まれるよう考慮して決定する。
答えを確認する。
正解は 4 です。
できましたか?
- 誤り。
半価層は吸収線量を測定して求めるものではなく、空気カーマもしくは空気カーマ率を測定します。 - 誤り。
散乱線の影響を避けるため、照射野はできるだけ小さくして測定する必要があります。 - 誤り。
制動放射X線は連続スペクトルなので、第2半価層 > 第1半価層となります。制動放射X線は連続スペクトルをもち、フィルタを通過すると低エネルギー成分が先に多く減弱します。その結果、X線の線質が硬くなるため、第2半価層は第1半価層より厚くなります。 - 正解。
特性X線は線スペクトルなので、第1半価層と第2半価層が等しくなり、均等度は1に近くなります。 - 誤り。
半価層測定では散乱線の影響をできるだけ除くようにします。散乱線が検出器に入ると、吸収体を透過したX線量を実際より多く測定してしまい、正しい半価層を求めることができません。そのため、照射野を小さくするなどして散乱線の影響を抑えます。
医療現場でのかかわり
半価層は、X線装置から出ているX線の線質を確認するために使われます。
半価層が大きいほど透過力の高いX線であり、半価層が小さいほど透過力の低いX線であることを表します。
診断用X線では、患者の体内まで届きにくい低エネルギーのX線は画像形成への寄与が小さい一方で、患者の皮膚などに吸収されやすくなります。
つまり被ばくだけはしっかりとしてしまうのです。
そのため、フィルタを用いて低エネルギー成分を除去し、必要な線質に整えています。
このとき、X線の線質が適切かどうかを確認する指標の1つが半価層です。
半価層を測定することで、フィルタが適切に機能しているか、X線装置から適切な線質のX線が出ているかを確認できます。
半価層は、X線装置の品質管理や患者の被ばく低減にも関係する重要な値です。
診療放射線技師にとって半価層は、単に計算で求める値ではなく、「この装置からどのようなX線が出ているのか」を確認するための指標の1つなのです。
まとめ
今回は、半価層のグラフから第1半価層、第2半価層、2半価層の関係を確認しました。
最後に、半価層と線質の関係を振り返ってまとめていきましょう。
- 半価層とは、X線強度を半分にするために必要な吸収体の厚さ
- 第1半価層は、X線強度を最初の1/2にするために必要な厚さ
- 第2半価層は、1/2になったX線強度をさらに1/2にするために必要な厚さ
- 第1半価層と第2半価層を合わせた厚さを2半価層という
- 連続スペクトルでは線質硬化が起こるため、第2半価層は第1半価層より厚くなる
- 線スペクトルでは第1半価層と第2半価層が等しくなる
- 半価層HVLは、HVL=logₑ2/μで求められる
- 連続スペクトルのX線と同じ半価層をもつ線スペクトルのエネルギーを実効エネルギーという
- 均等度は第1半価層/第2半価層、不均等度は第2半価層/第1半価層で表す
- 半価層は、X線の線質や装置の状態を確認するためにも利用される

半価層は、グラフの①と②を見比べるところから始めると整理しやすいですよ。
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次はこの辺りも参考になるかもよ。
この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら
診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。
都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。
国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。
保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有



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