D01 原子核の壊変と核種の分類

原子核は普段、安定した状態を保っていますが、なかには放射線を放出して別の原子核に変わるものがあります。
この現象を「放射性壊変」といい、放射線物理学では欠かせない基礎知識のひとつです。

また、放射線を放出する核種には、自然界に存在するものや人工的につくられるものなど、さまざまな種類があります。
今回は、原子核が壊変する仕組みと、放射性核種の分類について学んでいきましょう。

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原子核の壊変

原子核は、陽子と中性子からできており、核力とクーロン力などのバランスによって安定した構造を保っています。
しかし、すべての原子核が安定しているわけではありません。
なかには、放射線を放出して別の原子核に変わるものもあります。

まずは、原子核が壊変する仕組みと、壊変前後の核種の関係について見ていきましょう。

放射性壊変とは

原子核のなかには、陽子と中性子の数や組み合わせによって、不安定な状態になっているものがあります。
このような原子核は、α粒子やβ粒子などを放出することによって、より安定した別の原子核に変わろうとします。

この現象を「放射性壊変」といい、単に「壊変」という場合もあります。

放射性壊変は、原子核が自発的に起こす現象です。
外部から熱を加えたり、何かをぶつけたりしなくても、不安定な原子核は一定の確率で壊変します。

一方、壊変を起こさない核種を「安定核種」といい、約300種類あります。
自然界に存在する核種のなかにも、安定核種と放射性壊変を起こす核種の両方があるのです。

単核種元素とは

安定核種が1種類しか存在しない元素を「単核種元素」といいます。
例えば、フッ素(¹⁹F)、ナトリウム(²³Na)、アルミニウム(²⁷Al)などが代表例です。

ちなみに、英語では次の2つの用語が使われています。

  • Monoisotopic element:安定核種が1種類だけの元素。
  • Mononuclidic element:天然に存在する核種が実質的に1種類だけの元素。

似た言葉ですが、安定核種の数に注目するのか、天然に存在する核種の数に注目するのかという違いがあります。

実は、これらの用語は歴史的に同じ意味で使われていたこともあります。
専門用語でも、定義や使われ方には注意が必要なんですね

日本では
「安定核種が1種類しか存在しない元素」
で大丈夫ですよ。

親核種と娘核種

放射性壊変では、壊変する前と後で核種が変わることがあります。
このとき、壊変前の核種を「親核種」、壊変後の核種を「娘核種」といいます。

例えば、ウラン238がα壊変すると、トリウム234に変わります。

この場合、ウラン238が親核種、トリウム234が娘核種です。

娘核種が必ず安定しているとは限りません。
娘核種も放射性核種であれば、さらに壊変して別の娘核種を生成します。
このように、壊変が繰り返されることもあります。

238とか234ってなんやったっけ?

それは質量数だよ。
忘れちゃってたらリンク先で確認してみて。

A11:原子の構造をみてみよう!
A12:原子核の構造と核子・質量数の違い

壊変前後の質量差

原子核が自発的に壊変するためには、壊変前後の質量にも条件があります。

壊変前後の質量差(壊変前-壊変後)が「正」でないと壊変は起こらないのです。

これは、質量とエネルギーが等価であることと関係しています。
壊変によって減少した質量に相当するエネルギーが、放出される粒子の運動エネルギーなどに変わります。

つまり、壊変前よりも壊変後の質量が小さくなることで、その差に相当するエネルギーを放出できるわけです。

なお、ここでいう壊変後の質量には、生成された娘核種だけでなく、放出された粒子の質量も含まれます。

放射性核種の分類

放射線を放出する核種を「放射性核種」、あるいは「放射性同位元素(RI)」といいます。

放射性核種には、自然界に存在するものもあれば、人間が人工的につくり出したものもあります。
また、どのようにして生まれたのかによって、さらに細かく分類することができます。

まずは、放射性核種の分類を図で確認してみましょう。

メッチャあるやん!
こういうのイヤやねん!

ひとつずつ覚えていきましょ。

天然放射性核種と人工放射性核種

放射性核種は、その起源によって「天然放射性核種」と「人工放射性核種」に大きく分けられます。

天然に存在する鉱物などで壊変するものを「天然放射性核種」といいます。
例えば、ウラン238やトリウム232、カリウム40などが代表的です。
これらは自然界に存在しており、私たちの身の回りでも放射線を放出しています。

一方、加速器や原子炉などで作ったものを「人工放射性核種」といいます。

人工放射性核種は、原子炉で生成される核種、サイクロトロンで生成される核種、ジェネレータで得られる核種などに分類されます。

例えば、医療現場で使用されるフッ素18は、サイクロトロンを利用して製造される人工放射性核種です。

一次放射性核種と二次放射性核種

天然放射性核種は、さらに「一次放射性核種」と「二次放射性核種」に分類されます。

地球創成期から存在する長半減期の核種を「一次放射性核種」といい、各壊変系列の親核種と壊変系列に属さないものがあります。

一次放射性核種には、ウラン238やトリウム232などがあります。
これらは非常に半減期が長いため、地球が誕生してから約46億年が経過した現在でも、自然界に残っているのです。

また、一次放射性核種のなかには系列に属さないものがあり、特に有名なものにヒトの生命維持に欠かせないカリウム40(40K)があります。

一方、各壊変系列の放射性の娘核種を「二次放射性核種」といいます。

例えば、ウラン238が壊変すると、トリウム234が生成されます。
このトリウム234も放射性核種なので、さらに壊変して別の核種へと変わっていきます。

このように、親核種の壊変によって生まれる放射性の娘核種が、二次放射性核種に分類されます。

誘導放射性核種

天然放射性核種には、宇宙線によって生成されるものもあります。

宇宙から地球に降り注ぐ高エネルギーの粒子を「宇宙線」といいます。
宇宙線が大気中の原子核などと相互作用すると、新しい放射性核種が生成されることがあります。

このように、宇宙線により生成される放射性核種を「誘導放射性核種」といいます。

代表例は炭素14(¹⁴C)です。
炭素14は、宇宙線によって生じた中性子が大気中の窒素14と反応することで生成されます。

炭素14は生物にも取り込まれ、考古学などで用いられる放射性炭素年代測定にも利用されています。

つまり、天然放射性核種には、地球創成期から存在する核種、その壊変によって生成される核種、宇宙線によって生成される核種があるのです。

実際の過去問を見てみよう

2016年に実施された第68回国家試験からPM1のご紹介。

炭素の同位体で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 11Cは天然に存在する。
  2. 13Cは天然に存在する。
  3. 11Cは安定同位元素である。
  4. 13Cは放射性同位元素である。
  5. 14Cは年代測定に利用される。
答えを確認する。


正解は 2 と 5 です。

できましたか?

炭素の同位体には、¹¹C 、炭素 ¹²C 、炭素 ¹³C 、炭素 ¹⁴C などがあります。
まずは、代表的な炭素の同位体を確認しましょう。

核種安定性主な特徴
¹¹C放射性核種PET検査に利用される
¹²C安定核種天然炭素の約99%を占める
¹³C安定核種天然炭素の約1%を占める
¹⁴C放射性核種年代測定に利用される

各選択肢を見ていきましょう。

  1. 誤り
    ¹¹Cは、主にサイクロトロンで製造される人工放射性核種です。
    半減期は約20分と短く、PET検査などに利用されています。
  2. 正解
    ¹³Cは、天然に存在する安定核種です。
    天然炭素の約1%を占めています。
  3. 誤り
    ¹¹Cは、安定核種ではなく放射性核種です。
    陽電子を放出するβ⁺壊変によって、ホウ素11(¹¹B)に変わります。
  4. 誤り
    ¹³Cは放射性核種ではなく、安定核種です。
    放射性壊変を起こしません。
  5. 正解
    ¹⁴Cは、宇宙線によって生成される誘導放射性核種です。
    半減期は約5730年で、古い木材や遺跡などの年代を調べる「放射性炭素年代測定」に利用されています。

医療現場でのかかわり

医療現場では、人工的につくられた放射性核種が、病気の診断や治療に利用されています。
特に核医学検査では、放射性核種から放出される放射線を検出することで、体内の臓器の働きや病気の状態を調べています。

例えば、PET検査では、サイクロトロンで製造されたフッ素18(¹⁸F)や炭素11(¹¹C)などの人工放射性核種が使われています。
これらは陽電子を放出する放射性核種であり、陽電子が電子と対消滅する際に発生する消滅放射線を検出することで画像を作成します。

また、SPECT検査では、テクネチウム99m(⁹⁹ᵐTc)が広く利用されています。
テクネチウム99mは、モリブデン99(⁹⁹Mo)の壊変によって生成される核種で、医療現場ではジェネレータから取り出して使用することができます。

このように、放射性核種の種類や壊変の特徴を知ることは、核医学検査で使用する放射性医薬品を理解するための基礎となります。

まとめ

今回は、原子核の壊変と放射性核種の分類について学びました。
最後に、重要なポイントを振り返ってまとめていきましょう。

  • 不安定な原子核が自発的に放射線を放出して変化する現象を「放射性壊変」という。
  • 壊変前の核種を「親核種」、壊変後の核種を「娘核種」という。
  • 壊変前後の質量差(壊変前-壊変後)が正でないと壊変は起こらない。
  • 壊変を起こさない核種を「安定核種」という。
  • 放射性核種は、大きく「天然放射性核種」と「人工放射性核種」に分類される。
  • 地球創成期から存在する長半減期の核種を「一次放射性核種」という。代表例は²³⁸U、²³²Th、⁴⁰Kなど。
  • 各壊変系列の放射性の娘核種を「二次放射性核種」という。
  • 宇宙線によって生成される放射性核種を「誘導放射性核種」という。代表例は¹⁴C。

放射性核種は、どのように生まれたのかによって分類されるんだね。まずは、それぞれの特徴と代表的な核種を覚えておこう!

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次はこの辺りも参考になるかもよ。

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

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