D02 放射能と壊変定数・半減期・平均寿命

放射性核種は時間とともに壊変していきますが、その壊変の速さや、原子核が壊変するまでの時間はどのように表すのでしょうか。

放射性核種の性質を知るうえで重要なのが、放射能、壊変定数、半減期、平均寿命の4つです。

今回は、それぞれの意味を確認しながら、これらの物理量の関係や、複数の壊変経路をもつ場合の考え方について学んでいきましょう。

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放射能

放射性核種は、時間とともに壊変して別の原子核へと変化していきます。
このとき、どれくらいの数の原子核が壊変しているのかを表すのが「放射能」です。

まずは、放射能の意味と単位を確認していきましょう。

放射能の定義と単位

物質の中には、たくさんの原子が存在しています。
その中に放射性核種が含まれている場合、それぞれの原子核は時間とともに壊変していきます。

しかし、どの原子核が、いつ壊変するのかを正確に予測することはできません。
放射性核種の壊変は、確率的に起こる現象だからです。

例えば、100個の放射性原子核があったとしても、次の1秒間にどの原子核が壊変するのか、何個壊変するのかを正確に当てることはできません。

一方、たくさんの原子核が集まっていれば、全体としてどのくらいの数が壊変するのかを平均値として予測できます。

このように、単位時間あたりに起こる壊変数の平均値を放射能といいます。

放射能の単位には、Bq(ベクレル)を使用します。
BqはSI単位で表すと、1/s となります。

例えば、1秒間に平均100個の原子核が壊変する場合、その放射能は100 Bqです。

ここで覚えておきたいのは、放射能は「放射線の数」ではなく、「原子核が壊変する数」を表しているということです。

放射線の数と壊変の数ってちゃうのか?

ここは私の出番ね。
1回の壊変で複数の放射線が放出されることもあるの。
だから、放射能の値と放出される放射線の数は必ずしも一致するわけじゃないのよ。

比放射能と放射能濃度

放射能は、物質の質量や液体・気体の体積を基準にして表すこともあります。

物質(固体)の単位質量あたりの放射能を比放射能といい、単位にはBq/gなどを使用します。

例えば、10 gの物質に500 Bqの放射能がある場合、比放射能は50 Bq/gとなります。

一方、液体や気体の単位体積あたりの放射能を放射能濃度といい、単位にはBq/mL、Bq/ccなどを使用します。

例えば、100 mLの液体に2,000 Bqの放射能が含まれている場合、放射能濃度は20 Bq/mLとなります。

また、単位物質量あたりの放射能を表す場合には、Bq/molという単位も使用します。

このように、物質全体の放射能が同じでも、質量や体積などが異なれば、比放射能や放射能濃度の値は変わります。

壊変定数

放射性核種の壊変は確率的に起こる現象ですが、その壊変の起こりやすさは核種によって異なります。

例えば、短い時間で次々と壊変する核種もあれば、長い時間が経過してもなかなか壊変しない核種もあります。

このような壊変の起こりやすさを表すのが「壊変定数」です。

壊変定数の定義

放射性核種の原子核が、単位時間あたりに壊変する確率を表す定数を壊変定数といい、ギリシャ文字のλ(ラムダ)で表します。

壊変定数の単位には 1/s (s-1) などを使用します。

壊変定数λが大きい核種ほど壊変しやすく、小さい核種ほど壊変しにくいという特徴があります。

例えば、壊変定数が0.1 s-1 の核種であれば、非常に短い時間で考えたとき、1秒あたり約10%の割合で壊変することを意味します。

放射能と壊変定数の関係

放射能は、放射性核種の原子核が単位時間あたりに壊変する数の平均値でしたね。

当然ですが、放射性原子核の数が多いほど、全体として壊変する数も多くなります。

また、同じ数の原子核が存在していても、壊変定数が大きい核種ほど多くの壊変が起こります。

つまり、放射能Aは放射性核種の数Nに比例し、そのときの比例定数が壊変定数λとなります。

この関係は、次の式で表されます。

$ A = λN $

  • A:放射能(Bq)
  • λ:壊変定数(s-1)
  • N:放射性核種の数(個)

例えば、放射性原子核が1,000個存在し、壊変定数が0.01 s-1 の場合、放射能は次のようになります。

$ A = 0.01 \times 1000 = 10 \ \mathrm{Bq} $

このように、放射能は「放射性原子核の数」と「壊変の起こりやすさ」の両方によって決まります。

また、壊変が進むと放射性原子核の数Nが減少するため、放射能Aも時間とともに減少していきます。

壊変定数が大きくても、原子数が多くても放射能が大きくなるんやな。

そうなのよ。

半減期と平均寿命

放射性核種は壊変によって数が減少していきますが、どのくらいの時間で減少するのかは核種によって異なります。

この時間的な特徴を表すのが「半減期」と「平均寿命」です。

どちらも壊変定数λと関係しているので、それぞれの意味と計算式を確認していきましょう。

半減期の定義と計算式

放射性核種の数が最初の半分になるまでの時間を半減期といい、記号Tで表します。

例えば、放射性原子核が1,000個存在している場合、平均的には半減期が1回経過すると500個、2回経過すると250個、3回経過すると125個に減少します。

つまり、半減期が1回経過するたびに、残っている放射性原子核の数が半分になるということです。

また、放射能Aは放射性原子核の数Nに比例するため、半減期が1回経過すると放射能も半分になります。

半減期Tと壊変定数λには、次の関係があります。

$$
t=\frac{log_e 2}{λ}=\frac{0.693}{λ}
$$

この式から、壊変定数が大きい核種ほど半減期は短く、壊変定数が小さい核種ほど半減期は長くなることが分かります。

なお、半減期の単位にはs、min、h、day、年などの時間の単位を使用します。

平均寿命の定義と計算式

放射性核種の壊変は確率的に起こるため、個々の原子核がいつ壊変するのかは予測できません。

ある原子核は短い時間で壊変しますが、別の原子核は長い時間が経過してから壊変することもあります。

そこで、放射性原子核が壊変するまでの時間を平均したものを平均寿命といい、記号$ \tau $(タウ)で表します。

また、平均寿命にはもう1つの捉え方があります。

それは、放射性核種の数が最初の1/eになるまでの時間というものです。

ここで、eは自然対数の底と呼ばれる数学定数で、約2.718です。

したがって、1/eは約0.368となり、平均寿命が1回経過すると、放射性原子核の数は最初の約36.8%になります。

この2つの説明は異なるものに見えますが、どちらも同じ時間を表しています。

平均寿命$ \tau $と壊変定数λには、次の関係があります。

$$
\tau =\frac{1}{λ}
$$

この式から、平均寿命も半減期と同様に、壊変定数が大きいほど短く、小さいほど長くなることが分かります。

半減期と平均寿命の関係

ここまで、半減期と平均寿命について確認してきました。

半減期は放射性原子核の数が最初の半分になるまでの時間、平均寿命は最初の1/eになるまでの時間でしたね。

どちらも壊変定数λを使って表せるため、半減期Tと平均寿命τには、次の関係があります。

$$
\tau = \frac{T}{log_e 2} = 1.44T
$$

つまり、平均寿命は半減期の約1.44倍となります。

例えば、半減期が10時間の放射性核種であれば、平均寿命は約14.4時間です。

このように、半減期と平均寿命は異なる時間を表していますが、どちらも壊変定数λによって決まるため、互いに換算することができます。

なんか、似たような関係があったような・・・
どこやったっけな?

それは半価層と平均自由行程じゃないかな?
良かったら、こっちの記事も覗いてみて。

C27:半価層と平均自由工程

分岐壊変

放射性核種の壊変には、1つの核種が複数の壊変方式をもつ場合があります。

例えば、ある核種がβ⁻壊変と電子捕獲の両方を起こす場合、それぞれの壊変が起こる確率は異なります。

このように、1つの核種が2種類以上の壊変方式をもつことを「分岐壊変」といいます。

ここでは、分岐壊変における壊変定数と半減期の関係を確認していきましょう。

部分壊変定数

壊変定数λは、放射性核種が単位時間あたりに壊変する確率を表す定数でしたね。

では、1つの核種が2種類の壊変を起こす場合、壊変定数はどうなるのでしょうか。

この場合、それぞれの壊変方式に対応する壊変定数λ1、λ2を部分壊変定数といいます。

そして、全体の壊変定数λは、それぞれの部分壊変定数の和となります。

この関係は、次の式で表されます。

$$
\lambda=\lambda_1 + \lambda_2
$$

例えば、ある核種が2種類の壊変を起こし、それぞれの部分壊変定数が0.02 s⁻¹、0.03 s⁻¹だったとします。

この場合、全体の壊変定数は0.05 s⁻¹となります。

つまり、複数の壊変方式がある場合には、それぞれの壊変の起こりやすさを足し合わせることで、全体の壊変定数が求められるということです。

部分半減期

半減期Tは、放射性核種の数が最初の半分になるまでの時間でしたね。

分岐壊変では、それぞれの壊変方式に対応する半減期を考えることができます。

このとき、全体の半減期Tに対して、それぞれの壊変方式に対応する半減期T₁、T₂を部分半減期といいます。

部分半減期とは、ある1つの壊変方式だけが起こると仮定した場合に、放射性核種の数が半分になるまでの時間のことです。

全体の半減期Tと部分半減期T₁、T₂には、次の関係があります。

$$
\frac{1}{T}=\frac{1}{T_1}+\frac{1}{T_2}
$$

例えば、2種類の壊変方式に対応する部分半減期が10時間と20時間だったとします。

この場合、全体の半減期Tは次のように求められます。

$$
\begin{aligned}
\frac{1}{T}&=\frac{1}{10}+\frac{1}{20} \\[6pt]
&=\frac{3}{20} \\[6pt]
T&=\frac{20}{3} \\[6pt]
&\fallingdotseq6.67\ \mathrm{h}
\end{aligned}
$$

計算結果を見ると、全体の半減期は約6.67時間となり、どちらの部分半減期よりも短くなっています。

これは、2種類の壊変が並行して起こるため、どちらか一方の壊変だけが起こる場合よりも、放射性原子核の数が速く減少するからです。

ここで覚えておきたいのは、壊変定数と半減期では計算方法が異なるということです。

壊変定数は、それぞれの部分壊変定数をそのまま足し合わせます。

一方、半減期は、それぞれの部分半減期の逆数を足し合わせます。

分岐壊変では、この2つの関係を区別して覚えておきましょう。

国試では部分壊変定数で計算するものが多いかな。
計算がシンプルになりますからね。
まずは壊変定数方向からのアプローチを検討しましょう。

実際の過去問を見てみよう

2007年に実施された第59回国家試験から問45のご紹介。

半減期8日の放射性核種がある。この核の原子数が1/eに減衰するのは約何日後か。ただし、eは自然対数の底とする。

  1. 2
  2. 4
  3. 6
  4. 8
  5. 12
答えを確認する。


正解は 5 です。

できましたか?

問題文の「核の原子数が1/eに減衰する」から、平均寿命を問われていることが分かります。
平均寿命と半減期の関係性を思い出せばOKですね。

$$
\begin{aligned}
\tau &= 1.44T \\[6pt]
&=1.44 \times 8 \\[6pt]
&=11.52 \mathrm{[日]}
\end{aligned}
$$

従って、12日となります。

医療現場でのかかわり

放射能や半減期の知識は、核医学検査で放射性医薬品を取り扱う際に役立ちます。

核医学検査では、放射性核種を含む医薬品を患者さんに投与し、体内から放出される放射線を検出して画像を作ります。

例えば、SPECT検査でよく使用されるテクネチウム99m(⁹⁹ᵐTc)の物理的半減期は約6時間です。

そのため、放射性医薬品の放射能が600 MBqだった場合、6時間後には約300 MBq、12時間後には約150 MBqに減少します。

また、PET検査で使用されるフッ素18(¹⁸F)の物理的半減期は約110分です。

このように、放射性核種によって半減期が異なるため、放射性医薬品の準備や投与時刻を考える際には、時間経過による放射能の減少を把握する必要があります。

さらに、放射能の単位であるBqは、患者さんに投与する放射性医薬品の放射能を表す際にも使用されます。

核医学検査では、投与する放射能や検査までの時間を適切に管理することが、良好な画像を得るためにも重要です。

放射能と半減期の関係は、こうした核医学検査の基本となる知識なんです。

まとめ

今回は、放射能、壊変定数、半減期、平均寿命について学びました。
それぞれの意味と関係式を振り返ってまとめていきましょう。

  • 放射能とは、単位時間あたりに起こる壊変数の平均値のことで、単位にはBq(ベクレル)を使用する。
  • 比放射能とは、単位質量あたりの放射能のことで、単位にはBq/gなどを使用する。
  • 放射能濃度とは、単位体積あたりの放射能のことで、単位にはBq/mLなどを使用する。
  • 壊変定数λとは、単位時間あたりに壊変する確率を表す定数で、放射能Aとの間には A=λN の関係がある。
  • 半減期Tとは、放射性核種の数が最初の半分になるまでの時間で、T=0.693/λ の関係がある。
  • 平均寿命τとは、原子核が壊変するまでの時間の平均値であり、放射性核種の数が最初の1/eになるまでの時間でもある。
  • 半減期と平均寿命には、τ=1/λ=1.44T の関係がある。
  • 部分壊変定数は、それぞれの値を足し合わせることで全体の壊変定数が求められる。
  • 部分半減期は、それぞれの逆数を足し合わせることで全体の半減期の逆数が求められる。

壊変定数は足し算、部分半減期は逆数の足し算!この違いもしっかり覚えておこう!

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次はこの辺りも参考になるかもよ。

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

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