放射性物質の放射能は、時間の経過とともに減少していきます。
では、半減期が分かっていれば、一定時間が経過したあとの放射能を求めることはできるのでしょうか?
また、放射能と放射性物質の質量には、どのような関係があるのでしょうか?
今回は、半減期を使った放射能の計算方法と、放射能・質量・半減期の関係について学んでいきましょう。

かつては放射化学で良く出題されていたジャンルなんだけど、
科目編成が変わって以降、放物で出る可能性があるんだ。
半減期と放射能・質量の関係
放射性物質の放射能は、放射性原子の数と壊変定数によって決まります。
さらに、原子の数を質量に置き換えることで、放射能・質量・半減期の関係を1つの式で表すことができます。
まずは、それぞれの関係を確認していきましょう。

忘れちゃってたらコッチも見てみてね。
C02:放射能と壊変定数・半減期・平均寿命
放射能と原子数の関係
放射能とは、放射性原子が単位時間あたりに壊変する数のことです。
放射能Aは、壊変定数λと放射性原子の数Nを使って、次の式で表されます。
$$
A=\lambda N
$$
ここで、壊変定数λは、1個の放射性原子が単位時間あたりに壊変する確率を表す物理量です。
つまり、放射能は「原子1個あたりの壊変のしやすさ」と「放射性原子の数」の掛け算で求められるわけですね。
原子の数が多いほど、放射能も大きくなります。
放射能と質量の関係
放射能の計算では、放射性原子の数Nではなく、放射性物質の質量Wが与えられることもあります。
そこで、アボガドロ定数を使って原子の数を質量に置き換えてみましょう。
放射性原子の数Nは、次の式で求められます。
$$
N=\frac{W}{A_w} \cdot N_A
$$
各記号の意味は、次のとおりです。
W:放射性物質の質量[g]
Aw:原子量
NA:アボガドロ定数[mol⁻¹]
アボガドロ定数は、1 molあたりに含まれる粒子の数を表す定数で、約6.02×10²³ mol⁻¹です。
例えば、原子量が226のラジウム226は、226 gで1 molになります。
したがって、質量が226 gであれば、約6.02×10²³個の原子が存在することになります。
この関係を利用すれば、質量から原子数を求めることができます。
半減期を使った計算式
最後に、壊変定数λを半減期Tで表してみましょう。
壊変定数と半減期には、次の関係があります。
$$
\lambda = \frac{log_e 2}{T}
$$
この式と先ほどの原子数の式をA=λNに代入すると、放射能・質量・半減期を結びつける公式が得られます。
$$
\color{#B22222}{
A= \lambda N = \frac{log_e 2}{T} \cdot \frac{W}{A_w} \cdot N_A
}
$$
この公式を使えば、半減期Tと質量Wから放射能Aを求めることができます。
また、式を変形すれば、放射能Aと半減期Tから質量Wを求めることもできます。
ここで注意したいのが、単位の扱いです。
放射能の単位であるBqは、1秒間あたりの壊変数を表します。
そのため、放射能をBqで求める場合は、半減期Tを必ず秒[s]に換算してから計算しましょう。
また、この公式で求められる質量Wの単位はgです。
答えがmgで指定されている場合は、最後に単位を換算する必要があります。
それでは、実際の数値を使って計算してみましょう。
半減期の計算問題
半減期を使った計算には、時間が経過したあとの放射能を求める問題や、放射性物質の質量から放射能を求める問題などがあります。
ここでは、代表的な3つの計算問題に挑戦してみましょう。
時間経過後の放射能を求める計算
【問題1】
10 Bqのイリジウム192(半減期74日)が148日経過したときの放射能[Bq]を求めてみましょう。
この問題では、半減期74日に対して148日が経過しています。
つまり、半減期の2倍の時間が経過しているため、放射能は最初の1/4になります。
時間経過後の放射能は、次の公式で求められます。
$$
A=A_0 \left(\frac{1}{2} \right)^{\frac{t}{T}}
$$
ここで、A₀は最初の放射能、tは経過時間、Tは半減期です。
それぞれの数値を代入すると、次のようになります。
$$
\color{#B22222}{
\begin{aligned}
A&=A_0 \left(\frac{1}{2} \right)^{\frac{t}{T}} \\[6pt]
&=10 \left(\frac{1}{2} \right)^{\frac{148}{74}} \\[6pt]
&=10 \left(\frac{1}{2} \right)^2 \\[6pt]
&=2.5 \mathrm{[Bq]}
\end{aligned}}
$$
したがって、148日経過したあとの放射能は2.5 Bqです。
このように、経過時間が半減期の整数倍になっている場合は、放射能が何回半分になるのかを考えるだけでも答えを求められます。

コレはできそうやわ!
半減期と質量から放射能を求める計算
【問題2】
半減期1600年のラジウム226が1 mgあります。
このときの放射能[Bq]を求めてみましょう。
この問題では、半減期Tと質量Wが与えられているため、先ほど紹介した公式を使用します。
$$
A= \frac{log_e 2}{T} \cdot \frac{W}{A_w} \cdot N_A
$$
まずは、単位を確認しましょう。
半減期は1600年ですが、放射能をBqで求めるためには秒[s]に換算する必要があります。
また、質量は1 mgなので、gに換算してから代入します。
- 半減期T=1600×365.25×24×60×60[s]
- 質量W=1×10⁻³[g]
- 原子量Aw=226
- アボガドロ定数NA=6.02×10²³[mol⁻¹]
これらを公式に代入すると、次のようになります。
$$
\color{#B22222}{
\begin{aligned}
A &= \frac{log_e 2}{T} \cdot \frac{W}{A_w} \cdot N_A \\[6pt]
&=\frac{log_e 2}{1600 \times 365.25 \times 24 \times 60 \times 60} \cdot \frac{1 \times 10^{-3}}{226} \cdot 6.02 \times 10^{23} \\[6pt]
&=3.65 \times 10^7 \mathrm{[Bq]}
\end{aligned}}
$$
したがって、ラジウム226が1 mgあるときの放射能は約3.65×10⁷ Bqです。
この問題では、半減期を秒に換算することと、質量をgに換算することが重要です。
公式に代入する前に、単位をそろえる習慣をつけておきましょう。

もうアカンて!
式長いて!!

まぁまぁ落ち着いて。
長そうに見えるのは、1600年を秒に変換する部分だけだよ。
放射能と半減期から質量を求める計算
【問題3】
PET検査に用いるフッ素18(半減期110分)が1 GBqあります。
このときの質量[mg]を求めてみましょう。
今度は、放射能Aと半減期Tが与えられており、質量Wを求める問題です。
使用する公式は、問題2と同じものです。
$$
A= \frac{log_e 2}{T} \cdot \frac{W}{A_w} \cdot N_A
$$
まず、与えられた数値を確認しましょう。
- 放射能A=1×10⁹[Bq]
- 半減期T=110×60[s]
- 原子量Aw=18
- アボガドロ定数NA=6.02×10²³[mol⁻¹]
放射能の1 GBqは1×10⁹ Bqなので、単位を換算してから公式に代入します。
$$
\color{#B22222}{
\begin{aligned}
A &= \frac{log_e 2}{T} \cdot \frac{W}{A_w} \cdot N_A \\[6pt]
1 \times 10^9&=\frac{log_e 2}{110 \times 60} \cdot \frac{W}{18} \cdot 6.02 \times 10^{23} \\[6pt]
W&=2.84 \times 10^{-10} \mathrm{[g]} \\[6pt]
&=2.84 \times 10^{-7} \mathrm{[mg]}
\end{aligned}}
$$
したがって、フッ素18の質量は約2.84×10⁻⁷ mgです。
ここで注意したいのは、公式で求められる質量の単位がgであることです。
今回はmgで答える問題なので、計算結果を1000倍して単位を換算する必要があります。
また、フッ素18のように半減期が短い放射性核種は、非常に少ない質量でも大きな放射能を持つことが分かります。
このように、半減期・放射能・質量のうち、何が与えられているのかを確認し、求めたい物理量に合わせて公式を使い分けていきましょう。
実際の過去問を見てみよう
出題年は不明ですが、内容ピッタリの過去問をご紹介。
半減期2分で質量数15の放射性核種が1.8×10⁻¹² gある。
このときの放射能は何Bqか。ただし、$log_e 2=0.693$ 、アボガドロ数は6×10²³とする。
- 2.7×10³⁴
- 2.5×10¹⁰
- 8.7×10⁸
- 4.2×10⁸
- 1.2×10⁻³⁹
答えを確認する。
正解は 4 です。
できましたか?
$$
\begin{aligned}
A &= \frac{log_e 2}{T} \cdot \frac{W}{A_w} \cdot N_A \\[6pt]
&=\frac{log_e 2}{2 \times 60} \cdot \frac{1.8 \times 10^{-12}}{15} \cdot 6.02 \times 10^{23} \\[6pt]
&=4.158 \times 10^8 \mathrm{[Bq]}
\end{aligned}
$$
医療現場でのかかわり
核医学検査では、非常に少ない量の放射性物質を使って、体の中の状態を調べています。
例えば、PET検査で使用されるフッ素18(¹⁸F)について考えてみましょう。
先ほどの計算では、1 GBqの放射能を持つフッ素18の質量は、約2.84×10⁻⁷ mgでした。
これは、わずか0.000000284 mgという極めて小さな質量です。
普段の生活では想像もつかないほど少ない量ですが、これだけの放射性原子が存在すれば、1秒間に約10億回もの放射性壊変が起こります。
つまり、放射性物質は、質量が非常に小さくても大きな放射能を持つことがあるのです。
核医学検査では、放射性医薬品に含まれる放射性核種の質量ではなく、放射能を基準として投与量を管理しています。
放射能と質量の関係を知ることは、放射性医薬品がどれほど少ない量の放射性核種によって成り立っているのかを理解するうえでも重要なのです。
まとめ
今回は、半減期を使った放射能の計算と、放射能・質量・半減期の関係について学びました。
最後に、重要なポイントを振り返ってまとめていきましょう。
- 放射能Aは、壊変定数λと放射性原子の数Nの積で求められる。
- 放射性原子の数Nは、質量W、原子量Aw、アボガドロ定数NAから求められる。
- 半減期と壊変定数の関係を利用すると、放射能・質量・半減期を結びつける公式が得られる。
- 時間経過後の放射能は、経過時間が半減期の何倍に相当するかを考えて求める。
- 放射能をBqで求める場合は、半減期を秒[s]に換算する。
- 質量を求める場合は、計算結果の単位がgになるため、必要に応じてmgなどに換算する。

公式に数値を代入する前に、単位がそろっているか確認しよう!
特に半減期の秒への換算は忘れないでね。
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次はこの辺りも参考になるかもよ。
この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら
診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。
都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。
国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。
保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有


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