B01 放射線の定義

「放射線」とは聞くけど、結局はなんなの?
…そんな疑問を持っている人、多いんじゃないでしょうか?

ここでは、放射線の基本的な定義と、その大まかな分け方をシンプルに解説していきます。

エネルギーを運ぶ存在としての放射線を「波」と「粒子」という二つの視点から整理し、どういう仲間がいるのかをざっくり確認します。

これは教科書的に整理された基礎知識であり、医療や放射線技術を学ぶ上での出発点になります。
まずはこの土台をしっかり押さえておきましょう。

放射線とは何か?

「放射線」という言葉を聞くと、多くの人はちょっと構えてしまいますよね。
医療関連のニュースや原発関連の話題でもよく登場するので、なんとなく怖いイメージを持ってしまうことも少なくありません。

でも、皆さんは放射線で仕事をしようとしています。
なんとなくのイメージではなく、正確な知識を要求されてしまいます。

では、そもそも放射線とは何でしょうか?
シンプルに言えば、「エネルギーを運ぶ波や粒子」のことを指します。

放射線そのものは人間の目で直接見ることはできません。
しかし、物質にぶつかると光を出したり、化学変化や電気的な変化を起こしたりするため、私たちはその影響を通して放射線の存在を知ることができます。

つまり、見えなくても確かに存在し、物質を通過したり物質と作用したりします。
――それが放射線の特徴です。

ここでいう「放射線」は医療で扱う放射線を指します。
物理的な「放射線」とは定義が異なりますのでご了承を。

まずは定義の確認

放射線という言葉は、いろいろな教科書で説明のしかたが微妙に異なります。
ですが、本質はどれも同じで、次の2つの能力に集約されます。

  1. 放射線は、空間や物質を通してエネルギーを伝える能力をもつ。
  2. 放射線は、物質を電離させる能力をもつ。

この2つがそろって初めて我々が扱う「放射線」と呼ぶことができます。
つまり、放射線とは「エネルギーを運びながら、物質を変化させる力をもつ存在」なのです。

たとえば、光や電波もエネルギーを伝えていますが、電離を起こすほど強くはありません。
電子をはじき飛ばしたり、原子に変化を与えたりすることができないため、これらは放射線とは呼びません。
※エネルギーが低すぎると、電離の能力が失われます。こうなると、我々の業界では放射線として扱わなくなります。

逆に、医療で扱うX線やγ線、または粒子線のように、物質中の電子を飛ばす力をもつものこそが、
放射線の仲間ということになります。

※物理的には「放射線」でも、我々の分野では電離を起こせるものだけが「放射線」として扱われます。

なんでエネルギーが低いと、
放射線として扱わないんや?

良い質問だね。
エネルギーが低いと電離が起こらないんだ。
つまり被ばくしないってこと。

危険性が低いから放射線として扱わないのね。

放射線を構成する2つのタイプ

「放射線は、空間や物質を通してエネルギーを伝える能力をもつ。」
この定義から、放射線とは電磁波および運動エネルギーを持った粒子線をいいます。

放射線にはいくつかの種類がありますが、この定義からもわかるように、
放射線とは波としての放射線(電磁波)と、粒としての放射線(粒子線)の両方を含む言葉です。

たとえば、X線やγ線は電磁波の仲間、α線やβ線・中性子線は粒子線の仲間です。
この2つの姿を押さえておくことが、放射線の理解を深める第一歩になります。

放射線と物質の相互作用

放射線が物質に入ると、ただ通り抜けるわけではありません。
途中で電子をはじき飛ばしたり、軌道を変えたり、エネルギーを失ったりと、
さまざまな変化を引き起こします。

こうした現象をまとめて「放射線と物質の相互作用」と呼びます。
ここでは、放射線が物質に及ぼす4つの主要な作用を順に見ていきましょう。

放射線と物質の大まかな相互作用の一覧図。

① 電離

放射線が原子に衝突して、軌道電子を原子外へ放出する現象です。
放出された電子を電離電子といい、この現象が起こることで物質は電離した状態になります。
医療分野では、この電離作用こそが放射線の影響や効果の中心にあります。

② 励起

放射線のエネルギーが電子に伝わり、電子が外側の軌道へ移動する現象です。
電子が飛び出すほどではないため電離は起こりませんが、
物質内部での化学的変化や発光などのきっかけとなります。

③ 反跳

放射線が原子核に衝突して、核を動かす現象です。
粒子線のように質量をもつ放射線では、この反跳が特に顕著に現れます。
反跳によって生じた運動エネルギーは、物質内でさらなる変化を引き起こします。

④ 制動放射

荷電粒子が原子核のそばを通過するとき、
そのクーロン力によって進む方向が曲げられ、運動エネルギーの一部を失います。
このとき失われたエネルギーが制動放射線として放出される現象です。

医療分野では、X線がこの制動放射によって生み出されていることを学びます。
放射線の発生原理を理解するうえで、欠かせない現象の一つです。

まとめ

今回は、放射線の定義や種類、そして物質との相互作用について見てきました。
ここで学んだ内容は、この後の放射線物理学を理解するための土台になります。
最後にポイントを振り返っておきましょう。

  • 放射線とは、エネルギーを伝える能力物質を電離する能力をもつ。
  • 医療で扱う放射線は、電磁波粒子線の2つに大きく分けられる。
  • 放射線が物質と相互作用すると、電離励起反跳制動放射が起こる。
  • 電離作用は、医療で利用される放射線の性質を理解するうえで特に重要である。

まずは、この4つの名前と特徴をセットで覚えてしまいましょう!

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次はこの辺りも参考になるかもよ。

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

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