「陽子と中性子って何が違うの?」
「核子って言葉、急に出てくるけど覚えにくい…」
「質量数と原子番号、どっちがどっちだっけ?」
――そんなふうに、原子核まわりの用語がゴチャゴチャして困っていませんか?
我々講師は簡単な分野と思いがちですが、意外と把握できていない学生も少なくありません。
この記事では、陽子・中性子・核子の関係がはっきりわかり、
さらに「質量数ってなに?」「同位体ってどんなもの?」といった疑問もスッキリ整理していきます!
自分の言葉で説明できるようになるのが目指すところです。
国家試験でも頻出のこのテーマを、よく混同しがちな用語を1つずつ丁寧に整理して解説していきます。
それではみていきましょう。
原子核ってどんな構造?
ご存知だと思いますが、基本的なところから確認していきましょう。
陽子と中性子をまとめて「核子」といいます。
原子核の中には、陽子(+の電荷を持つ)と中性子(電荷なし)がぎゅっと詰まっています。
この2つをひとまとめにして、「核子(かくし)」と呼びます。
ポイント:
「核子」はあくまで総称であり、陽子や中性子の“種類”を問わずに使える便利な言葉です。
そして、陽子と中性子の数を合計したものを「核子数」と呼びますが、
これは実質的に「質量数」と同じ意味になります。
核子数 = 質量数 = 陽子数+中性子数
国家試験では、「核子数を求めよ」「質量数を答えよ」といった問題がどちらの表現でも出るため、両者を同じものとして理解しておくことが大切です。
中性子の方がちょっとだけ重い
陽子と中性子は非常に似た質量を持っていますが、実は中性子の方がわずかに重いです。
| 粒子 | 電荷 | 相対質量(電子=1) | 質量 (原子質量単位:Da) |
|---|---|---|---|
| 陽子 | +1 | 約1836倍 | 約1.0073 Da |
| 中性子 | 0 | 約1839倍 | 約1.0087 Da |
| 軌道電子 | −1 | 1(基準) | 約0.00055 Da |
豆知識:
この「わずかな差」は、ベータ崩壊で中性子が陽子に変わるときのエネルギー差にも関係してきます。
国試では「中性子の方がわずかに重い」という表現そのものが選択肢で出ることも!
補足:
「Da(ダルトン)」は、近年「u(原子質量単位)」の代わりに使われることが増えてきた表記です。
試験ではどちらの表記も見かける可能性がありますが、意味は同じです。

電子の何倍の質量なのかって覚えておくと、意外と使えるんじゃよ。
中性原子では、陽子数=電子数になる!
「中性原子」とは、電気的にプラスマイナスがつり合った原子のこと。
つまり、陽子の数と電子(軌道電子)の数が等しいという状態です。
この陽子の数は「原子番号」と呼ばれ、元素の“種類”を決める超重要な数です。
例:酸素(O)の場合
原子番号:8 → 陽子が8個 → 電子も8個
陽子数+中性子数=質量数!
陽子数と中性子数を足した合計を「質量数」といいます。
これは「原子全体の重さの中心部分=原子核の重さ」をおおざっぱに表す数値になります。
- 原子番号(Z):陽子の数
- 質量数(A):陽子数+中性子数(=核子数)
国家試験ではこの2つを混同させるひっかけ問題も多いので、注意して整理しておきましょう!
原子核のバリエーションを知ろう
同位体とは?【isotope】

同じ元素(原子番号が等しい)でも、中性子の数が異なる原子核のことを「同位体(アイソトープ)」と呼びます。中性子の数が異なるので、質量数も異なります。
ポイントは、「陽子数=原子番号は同じ」であるという点です。
図を例にとってみてみましょう。
- ¹²C(陽子6個+中性子6個)
- ¹³C(陽子6個+中性子7個)
→ どちらも炭素(C)という同じ元素ですが、中性子数が違う=同位体!となります。
国家試験では「放射性同位体」と「安定同位体」の違いが問われることもあります。
- 安定同位体:放射線を出さず安定して存在する。
- 放射性同位体(RI):壊変(崩壊)して放射線を出す。
元素記号が同じだから分かりやすいですね。

同中性子体とは?【isotone】

「同中性子体(isotone/アイントーン)」とは、
中性子数が同じで、陽子数と質量数が異なる原子核のことをいいます。
図の3つの原子核を見てみましょう:
- ¹⁴₆C → 中性子数 = 14 − 6 = 8
- ¹⁵₇N → 中性子数 = 15 − 7 = 8
- ¹⁶₈O → 中性子数 = 16 − 8 = 8
ポイント:
パッと見た感じでは「バラバラな元素」に見えますが、
中性子数はすべて8個で統一されている=同中性子体となります。
同中性子体は、この一手間がイヤやねん。


確かに、パッと見では分からないからね。
でも、そういうときこそ、同中性子体の可能性があるね。
同重体とは?【isobar】

同重体(isobar)とは、
質量数(陽子数+中性子数)が同じで、中性子数・陽子数が異なる原子核を指します。
図の3つの原子核を見ていきましょう。
- それぞれ元素は異なり、陽子数・中性子数の組み合わせもバラバラです。
- しかし共通して、質量数が「56」で統一されています!
ポイント:
「同じ重さ(=核子数)でも、中身の構成は違う」
それが同重体の特徴です。
この“中身の違い”が、放射線の性質や壊変モードに大きく影響することもあります。
用語の由来:「iso(同じ)」+「baros(重さ)」=同じ重さ!
こりゃ、オレでもすぐに分かるで!

鏡像体(鏡像核)は同重体の“特別バージョン”

質量数は同じまま、陽子数と中性子数が入れ替わったような関係を「鏡像体(mirror nuclei)」と呼びます。
たとえばこちらの図を見てみましょう。
⁷₁₅Nと⁸₁₅Oは、どちらも質量数が15で共通しています。
ただし、陽子数と中性子数がそれぞれ 「7と8」↔「8と7」 で真逆になっているのが特徴です。
このように、陽子数と中性子数が“ちょうど逆”になっている同重体のことを、特別に鏡像体(きょうぞうたい)と呼びます。
※鏡像体は同重体の一種です。同重体の特別バージョンという感じです。

技師の国試には出題されたことはありませんが、主任者試験では見かけます。
核異性体は「中身は同じでも、エネルギー状態が違う核」

陽子数も中性子数も同じ(質量数も同じ)なのに、エネルギー準位が異なる核種を核異性体(isomer)と呼びます。
つまり、「まったく同じ核種に見えるけど、中のエネルギー状態だけが違う」という関係です。
たとえば図にある ⁹⁹ᵐTc と ⁹⁹Tc。
両方とも質量数99のテクネチウムですが、左の “m” 付きの方は「準安定状態」を示しており、高いエネルギー状態にあります。
🔍 ポイント
- 「m」は“metastable(準安定)”の略。
- エネルギー状態が高いぶん、崩壊して安定な状態へ移行しようとします。
- 医療分野では、99mTcは核医学検査において非常に重要な放射性核種です。
実際の過去問も見てみよう。
ご紹介するのは、第67回の国家試験「放射化学」分野で出題された1問。しかも午前1問目!
つまり、最初の問題を取れるかどうかの重要な1問です。
ここでつまずかないためにも、しっかり理解しておきましょう。
放物の問題ではないですが、原子核の構造という内容ですから、取り上げてみました。
第67回 2015年 AM1
核種群について正しいのはどれか。
- 同位体は中性子数が同一である。
- 同中性子体は陽子数が同一で中性子数が異なる。
- 放射性同位体は異なる元素の核種で質量数が同一である。
- 同重体は陽子数が同一で中性子数が異なり不安定で壊変する。
- 核異性体は原子番号と質量数が同一で、核のエネルギー準位が異なる。
答えは分かりましたか?
答を確認する。
答えは 5 です。
- 同位体は原子番号が同一であるもの。
- 同中性子体は陽子数が異なり、中性子数が同一なもの。
- 放射性同位体は同一の元素の核種で質量数が異なるもののうち、放射性であるもの。
- 同重体は質量数が同一なもの。放射性であるかどうかは問わない。
- OK
医療現場でこの知識がどう役立つの?

核種の分類は、診療放射線技師として働くうえでとても重要です。なぜなら、使う放射性核種がどのタイプに属するかによって、取り扱い方や安全管理、さらには検査や治療の設計そのものが変わってくるからです。
たとえば――
- 核異性体の例:⁹⁹ᵐTc(テクネチウム)
- 核医学検査で頻繁に使われる放射性同位体です。
- 「m」は準安定状態を示しています。
- 同位体の理解はPETでも重要
- ¹⁸F(フッ素)や¹¹C(炭素)など、陽電子を放出する同位体を使って体内の代謝活動を可視化します。
- これらの核種は「同位体」でありながら、99mTcとは性質の異なる放射線を出します。
- 同重体や鏡像体は研究分野で活躍
- 医療現場ではそれほど直接使われることは少ないですが、核種選定の研究では、安定性や崩壊パターンの理解に役立ちます。
まとめ
核種の分類は、「似ているようで異なる」微妙な違いを見抜く力が問われるテーマです。
同位体・同中性子体・同重体・核異性体・鏡像体など、定義の違いをきちんと整理しておけば、国試でも確実に得点源にできます。

名前がややこしいけど、出題されるのは“違い”を見極めるパターンがほとんど!
定義の違いを頭に入れて、選択肢で迷わないようにしておこう!
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