A02 放射線物理に必要な物理単位まとめ|速度・圧力・電気など12個を簡単整理

ワークブック解答

先生…また”単位”って言葉が出てきました…

たまのすけ
たまのすけ

おれも高校のとき、”kg・m²/s³”とか出てきて泣いたわ

牛助
牛助
たなまる
たなまる

でもそれ、ちゃんと意味があるんだよ?理科界の美しさが詰まってる。
いや待てよ。牛助、高校行ってたんだね?

農業高校で育てられる側だけどね。

牛助
牛助
たなまる
たなまる

・・・

・・・

たまのすけ
たまのすけ
たなまる
たなまる

牛助の高校時代は置いといて。
今回は、物理の基本「単位」について、ふんわり整理していきます。

単位ってたくさんあるけど、どの単位を覚えたらよいか、どこから手を付けたらよいか悩ましいですよね。

私もかつてそうでした。
単位は大事だから覚えろ!覚えろ!覚えろ!・・・と言われ続けてきました。

このページではよく出てくる単位をリストアップしてあります。
一気に覚えられなくても大丈夫。
使いながら覚えていきましょう。

単位を理解することで、単位の問題で得点できるようになるだけでなく、計算問題の立式もできるようになります。

これまで600人以上の学生を診療放射線技師へと導いた経験から、わかりやすくお伝えしていきます。

さっそく解答例

「初学 放射線物理学 ワークブック」検索番号 A02 の穴埋め解答例と解説です。
先に自分で穴を埋めてみてからの答え合わせでも良いですし、解答例を写してから覚えていっても良いです。ご自分に合ったスタイルで取り組んでください。

物理量と対応する単位をまとめた一覧表と、エネルギーの単位「ジュール(J)」および「電子ボルト(eV)」に関する解説。表では速度(m/s)、加速度(m/s²)、力(N、kg·m/s²)、仕事(J、N·m)、仕事率(W、J/s)、エネルギー(J、eV)、熱量(J、cal)、圧力(Pa、N/m²)、体積(m³)、密度(g/cm³、kg/m³)、電荷(C)、電位差(V)、静電容量(F)、電流(A、C/s)、電力(W、J/s)、抵抗(Ω)などの単位が示されている。  下部にはエネルギーの計算式が2つ紹介されている。  1つ目はジュールで表す場合:エネルギーEは「E=|Q||V|」で表され、Qは電荷[C]、Vは電圧[V]。(単位:[J])  2つ目は電子ボルトで表す場合:電荷を電気素量の倍数で考え、式は「E=(|q|/e)·V」となり、単位は[eV]

解説

放物には様々は単位が出てきます。

その単位をむやみに覚えろって言われても、「いやいやいや、無理!」ってなってしまうのは仕方ありません。
パスタソースをかけずにパスタを食べるようなものです。

単位だけで覚えるのではなく、高校物理で習う「公式」に関連付けたり、「定義」を考えたりすると意外とスンナリ覚えられるはずです。
パスタはやっぱりソースをかけて食べましょう。

A01で示したSI単位に引き続き、放物でよく登場する単位 12種 を一気にご紹介します。

速度

速度の大きさを比較する図。左側に歩行中の人物が描かれており、右向きに「1メートル毎秒(1 m/s)」の矢印が示されている。右側には走っている人物が描かれ、右向きに「時速10キロメートル(10 km/h)」の矢印が付けられている。歩行と走行で速度が異なることを視覚的に表現している。

速度の単位は [m/s] です。

定義としては、

単位時間に進んだ距離

です。

距離」をかかった「時間」で「除す」ことで表現されています。

1[m/s]の場合、1秒間に1m進むことを意味します。
10[km/h]であれば、1時間に10km進むことを意味しています。

加速度

加速度を説明する図。左側に速度1メートル毎秒(1 m/s)で歩いている人物、右側に速度5メートル毎秒(5 m/s)で走っている人物が描かれている。2人の間には「2秒(2 s)」という時間を示す赤い両矢印があり、2秒のあいだに速度が1 m/sから5 m/sへと増加したことを表している。これは正の加速度の例を示している。

速度のついでに覚えておきましょう。

加速度の単位は [m/s2] です。

加速度の概念は、

単位時間あたりの速度の変化率

です。

速度の変化量」を「時間」で「除す」ことで求められます。

図の場合、最初1m/sで歩いていて、3秒後に5m/sで走っています。

速度の変化量⊿vは ⊿v=5-1=4 m/s です。

それをかかった時間 t で除します。

すると加速度 a は a=⊿v/t=4/2=2 [m/s2] となります。

つまり、1秒間に2m/sずつ速度が変化していく状況であることが示されています。

質量のある物体を押すときに必要な力のイメージ図。質量m[kg]と書かれた大きな岩のような物体を、人物が「ぐおぉっ重い…」とつぶやきながら右向きに押している。オレンジ色の右向き矢印には「F[N]」と記されており、力の大きさをニュートンで表すことを示している。物体の質量とそれに作用する力の関係(F = ma)を視覚的に表している。

力の単位は [N] で、「ニュートン」と読みます。

この[N]に関しては覚えるしかないのですが、放射線取扱主任者試験では[N]をSI単位で表記したものも覚えていると単位の問題で優位になります。

[kgm/s2] です。

高校の物理でこんな公式が出てきたのを覚えていませんか?

F=ma

そう、運動方程式ですね。

これは m kg の物体に加速度 a m/s2 が加わると、力 F Nがかかりますよという式です。

この運動方程式を基にNをSI単位まで分解していきましょう。

分数の表記に限界がありますので、数式は画像で対応します。

力Fは、質量mと加速度aの積で表される。式は「F = ma」。また、ニュートン(N)の単位は「キログラム・メートル毎秒の2乗」であり、式で表すと「N = kg・m/s²」。

単位の問題の選択肢の1つとして出題される可能性がありますので、主任者を狙っている方は理解しておいてくださいね。

ちなみに、こんな感じの出題が予想されます。

予想:力の単位は次のうちどれか。2つ選べ。
[N]と[kgm/s2]を選ぶ。
誤りの枝にはエネルギーの単位 [kgm2/s2]だとか、運動量の単位 [kgm/s] なんかが出てくると思います。
似てますでしょ?
出題されると思いませんか?

こうやって出題者側に思いを馳せると、対策も打ちやすくなります。

エネルギー・仕事・熱量

エネルギーや仕事、熱量は物理量の名称こそ違えど、単位は同じものです。

その単位は [ J ] で、「ジュール」と読みます。

そのほか、 [ eV ] で「エレクトロンボルト」は放射線に特化したエネルギーの単位です。

それ以外にも、仕事の場合は [Nm] 、熱量の場合は [Cal] が用いられることもありますが、放物で登場する機会はあまり多くありません。
※ない訳ではありません。[Cal]は主任者試験で遭遇します。

この [ J ] をSI単位で表記した [kgm2/s2] が主任者試験でよく登場します。

こちらも先ほどの力のときと同様に有名な公式を基にSI単位化していきましょう。

今回利用する公式はこちら!

あまりにも有名な運動エネルギーの式ですね。

運動エネルギーを表す公式。エネルギーEは、質量mと速度vの2乗に1/2をかけたものに等しい。数式で表すと「E = 1/2・m・v²」。

文字の定義は以下の通り。

  • E 物体の運動エネルギー
  • m 物体の質量
  • v 物体の速度

では、公式を単位表記にしてみます。

運動エネルギーの公式と、ジュールの単位の展開過程。まず、エネルギーEは「E = 1/2・m・v²」で表される。次にジュールの単位Jについて、「J = kg・(m/s)²」と変形され、最終的に「J = kg・m²/s²」と表される。

これで主任者の問題も怖くないですね。

エネルギーの単位 JとeV

エネルギーの単位を比較する図。大きな円に「Cal(カロリー)」、中くらいの円に「J(ジュール)」、小さな円に「eV(電子ボルト)」と書かれている。Calが最も大きく、Jが中程度、eVは非常に小さい単位であることを視覚的に表現している。図中には「放射線のエネルギーは主にこの領域」としてeVが示されている。

高校で物理学を履修していた方は、エネルギーの単位と言えば J を真っ先に思い浮かべるでしょう。
ダイエット経験がある方には、Cal がなじみ深いでしょう。

放射線業界で J や Cal を使っても間違っている訳ではありませんが、 J や Cal というのは比較的大きなエネルギーの概念です。

放射線のエネルギーはそこまで大きくありませんので、 J や Cal で示してしまうと、いささかミスマッチとなってしまいます。

そこで、放射線業界ではエネルギーの単位として eV をよく使います。
読みは「エレクトロンボルト」もしくは「電子ボルト」です。
※法令では「電子ボルト」と記載されることが多いです。

eV は放射線の非常に小さなエネルギーを表現するのに適したものです。

JとeVの違い

放射線を加速してエネルギーを得る場合、JとeVの両方で表すことができます。

A03の記事で詳しく説明しておりますので、ぜひご参照ください。

eV⇔Jの換算

eVとJの換算に戸惑う様子を描いたイラスト。疑問を浮かべる猫キャラと、「eV=?J」という問いかけが書かれている。

1eVをJに換算すると1.6×10-19Jとなります。 

たとえば、30 eV であれば、

30 × 1.6 × 10-19 = 4.8×10-18

になります。

この換算は放物でも計測学でもたびたび出てきますので、マスターしておきたいですね。

ちなみに余談ですが・・・

1 Cal = 4.2 J です。
主任者で過去に出題されたことがあります。

仕事率

仕事率の単位は [W] で、「ワット」と読みます。

これだけだとただ覚えなくてはなりませんので、意味合いを考えていきましょう。

「○○率」は「時間あたりの」という意味があります。

つまり、仕事率は

時間当たりの仕事

ということになります。

したがいまして、仕事率は [W] の他にも [J/s] が使われます。

この意味合い的な単位が分かっていると、計算問題でも役に立ちます。
「エネルギーを時間で割れば良い」これが分かっているだけで1問解けたりするもんです。

圧力

圧力の単位は [Pa] で、「パスカル」と読みます。

圧力は放物で見かけることはあまりありませんが、考え方の練習になるので見ていきましょう。

圧力の定義は

面積あたりにかかる力

です。これを表現すると [N/m2] となります。

[N] はさらに [kgm/s2] と表すこともできますので、圧力は [kg/ms2] と表記することもできます。

密度

密度の単位は [kg/m3][g/cm3] です。

密度の単位の登場機会はものすごく多いです。
特に線〇〇を質量〇〇に変換する際に使うのが多いですね。

ここは単位から意味合いを考えて印象付けておきましょう。

密度は「体積当たりの質量」です。

同じ体積で質量が大きいものは高密度、質量が小さければ低密度となります。

具体例で行きましょう。

ボーリングの球をイメージしてみて下さい。かなり重たいですよね。
それと同じ大きさで発泡スチロール製のものを想像してみて下さい。
ボーリングに比べると軽いですよね。

密度のイメージはこれと同じです。

同じ大きさで重ければ高密度、軽ければ低密度とイメージして覚えて下さい。

電荷・電気量

電荷の単位は [C] です。「クーロン」と読みます。

これは覚えるしかないです。

電荷は連続的な値ではなく、最小単位の倍数という離散的な値になっています。

その最小単位は電子や陽子の電荷の大きさとなっています。

その電荷の最小単位を 素電荷量(電気素量) といいます。

素電荷量は 1.6×10-19 [C] です。

電子の電荷は-1.6×10-19 [C]、陽子の電荷は1.6×10-19 [C]、α線の電荷は3.2×10-19 [C] といった具合です。

この離散的な関係性はお金と同じです。
お金の最小単位は1円ですよね。

1円のつぎは2円、2円の次は3円です。1.5円や2.5円ってのはありませんよね。

電荷も同様で、1.6×10-19 [C]の次は3.2×10-19 [C]です。2.0×10-19 [C]はあり得ません。

電圧

電圧は電気を押し出す力を指します。
定義としては、2点間の電位差となっております。
※この2点間の電位差という定義は医用工学の分野で役立ちます。

電圧の単位は [V] で、「ボルト」と読みます。

竹の水鉄砲がイメージに近いかと思います。

持ち手を押す力が電圧で、飛び出す水が電気です。
電気の量が次のセンテンスの電流に相当します。

電流

電流とは、電荷が流れ続ける現象のことです。

その単位は [A] で、「アンペア」と読みます。

電流は [A] を [C/s] に変換して津y買うことがよくあります。
この単位の変換は必ず覚えておきましょう。

A =C/s

電流の単位はA(アンペア)が有名ですが、電流の定義を考えるとC/sと等価であることが理解できると思います。

電流の定義は

単位時間あたりに流れる電荷

です。つまり、電荷の単位を時間で除せばよいのです。

ということで、C/sも電流を表す単位ということが言えますね。

静電容量

静電容量は導体が蓄えられる電荷量です。

その単位は [F] で、「ファラッド」と読みます。

静電容量は、

単位電圧あたりに蓄えられた電荷

として定義されていることから、[F] の他に [C/V] も静電容量を表す単位となります。

電力

電力とは、

単位時間当たりの電気的な仕事

を指します。

単位は [W] で、「ワット」と読みます。

これ以外にも、定義から [J/s] も電力を表す単位です。

また、電力をP、電圧をV、電流をIとすると P=VI という関係性にあることから単位を組み立ててみると・・・

電力Pの定義と、ワット(W)の単位の展開を示す数式。電力は「P = V・I」で表され、ワットの単位は、ボルト[V]とアンペア[I]の積から始まり、[I]を「クーロン毎秒(C/s)」と考えると、[V] × [C/s] = [VC/s]、電圧V × 電荷Qはエネルギー[J]に等しいため、最終的にワットの単位は「ジュール毎秒(J/s)」になる。

このことから、電圧と電荷の積はエネルギーになることが分かります。
この知識は放物・医用工学・計測で応用できますから、覚えておくと便利です。

実際の問題を見ていきましょう

第61回(2016年)診療放射線技師国家試験・問23。問題文は「量と単位に関する次の組合せで正しいのはどれか」。  選択肢は以下の通り:  1.等価線量:m²·kg⁻¹·s⁻¹  2.線減弱係数:m  3.衝突断面積:m⁻²  4.粒子フルエンス:m⁻²·s⁻¹  5.質量エネルギー吸収係数:m²·kg⁻¹

今回は第1種放射線取扱主任者試験からの1題です。

2016年に実施された第61回から。

解答を確認する。

正解は 5 です。

  1. 等価線量の単位は [Sv] もしくは [J/kg] です。JをSI単位で置き換えると [m2/s2] となります。
  2. 線減弱係数の単位は [1/m] です。
  3. 衝突断面積の単位は [m2] です。
  4. 粒子フルエンスの単位は [1/m2] です。
  5. 正しいです。

医療現場での関わり

今回ご紹介した単位の中では、ダントツで電圧をよく見かけるでしょう。

そう、X線管球にかける高電圧である、管電圧です。

体厚のある部位や、骨の多い部位では管電圧は高めに設定し、指などの小さな部位やコントラストを明確につけたいマンモグラフィでは、低管電圧設定で撮影します。

まとめ

たなまる
たなまる

・単位は公式や定義を利用して覚えていきましょう。
・運動量やエネルギーなどはSI単位まで細かく分解できるようになりましょう。
・複数の単位がある場合、両方とも扱えるようになりましょう。
・複数選択の問題や計算問題で効果を発揮しますよ。

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