A05 物理の『波』をわかりやすく解説|X線を理解するための波の基本

ワークブック解答

「波」って、まさか海でサーフィンですか?

たまのすけ
たまのすけ

オレ、波長が合わんからいつも波に巻かれるタイプや。

牛助
牛助
たなまる
たなまる

今回は安心して。物理の波だから、濡れません。

えっ、じゃあ…浮き輪返してきます。

たまのすけ
たまのすけ

その代わり、知識の波にのまれんようにな!
たなまる先生も腹の浮き輪返してきた方がええんちゃう?

牛助
牛助
たなまる
たなまる

返せるもんなら返したいわ!!
その代わり、今日は“波の基本”をしっかり押さえていくぞ!

こんにちは。たなまるです。

放物に限った話ではありませんが、放射線の勉強をしていくと、放射線にはいくつか種類があることが分かります。

α線、β線、γ線、X線・・・

その中でも我々が最も利用する放射線はX線です。

このX線を理解するためには、波と仲良くならなければいけません。

高校で物理学を学んだ方は何となく覚えている方も多いでしょう。

学んだけど、力学と違って好きじゃないんだよね・・・って方もいるでしょう。
(ワタクシ、たなまるはこのパターンでしたね。それが今は講師として皆さんにお伝えする側になっていることに「人生の面白さ」が詰まっている気がします。)

そもそも、物理取ってないんですけど・・・これまた最近の学生さんに多いパターン。
高校3年になってから放射線技師を目指した方たちには、科目選択の時点で物理は避けられてしまうケースが多いですね。悲しいけど、現実でしょうね。

そんな方はこちらの記事で波の基礎をカバーしていきましょう。

ん?波は苦手だったから不安だって?

大丈夫。高校の一般物理でやる「反射波」などは放物では触れませんので、新ジャンルの波のつもりで覗いていってください。

分かりやすくポイントを押さえてお伝えしていきます。

これまで600人以上の学生を診療放射線技師へと導いた経験から、わかりやすくお伝えしていきます。

さっそく解答例

「初学 放射線物理学 ワークブック」検索番号 A05 の穴埋め解答例と解説です。
先に自分で穴を埋めてみてからの答え合わせでも良いですし、解答例を写してから覚えていっても良いです。ご自分に合ったスタイルで取り組んでください。

波の基本的な性質を示す図。横軸を時間、縦軸を変位とした正弦波に対して、波長、周期、振幅、速度の概念が図解されている。式として、振動数 𝑓=1𝑇f= T1​ 、波の速度 𝑣=𝑓𝜆v=fλ、エネルギー 𝐸=ℎ𝜈=ℎ𝑐𝜆E=hν= λhc​ 、運動量 𝑝=𝐸𝑐=ℎ𝜆p= cE​ = λh​ などが記載されている。また、各用語(周期、波長、振幅、振動数、エネルギー、速度、プランク定数など)の説明も含まれる。

解説

ここでの大事なポイントは3つ。

  • 波特有の名称を把握しよう!
  • 速度、振動数、波長の関係性を認識しよう!
  • エネルギーと運動量の表し方をしっかりと覚えよう!

※各文字の定義はワークの画像を参照してください。

X線は横波?縦波? まずは波の種類を整理しよう

縦波と横波の図解。左側はバネが左右に圧縮・伸縮する縦波の様子。右側は子どもがロープを上下に振ってできる横波で、X線は横波であると説明している。

波には大きく分けて「縦波」と「横波」の2種類があります。
これは、“振動の向き”と“波の進む向き”の関係によって分類されます。

波の種類振動の向き波の進む向きとの関係主な例
縦波
(Longitudinal wave)
波の進む向きと同じ並行音波、地震のP波
横波
(Transverse wave)
波の進む向きと直角垂直光、X線、地震のS波、水面の波
表1 波の分類

例えば、エコー検査に用いる超音波は進行方向が空気分子の振動とおなじ前後方向なので縦波です。

一方、X線や光のような電磁波は、電場と磁場が進行方向と直角に振動しているため、横波に分類されます。

この超音波は縦波、X線は横波という部分は私が学生時代に良く国家試験に出題されました。
20年以上前に流行った定番の出題です。あぁ懐かしや。最近は見ませんな・・・

X線は横波なので、ここからは横波の解説をしていきます。

波特有の名称を把握しよう!

波の基本構造を示す図。山と谷が繰り返される波形に対し、波長λ[m]、周期T[s]、振幅、進行速度v[m/s]が矢印や記号で示されている。横軸は時間または距離。

まずは理解の源、用語から見ていきましょう。
ここを正確に理解しないことには先に進めません。
進んだとしても、それは見せかけの理解になってしまうでしょう。

登場する用語を一覧にまとめておきます。

  • 振幅
  • 波長
  • 周期
  • 振動数(周波数)
  • 速度

では一つ一つ見ていきましょう。

振幅

波の基本構造を示す図。山と谷が繰り返される波形に対して、波長λ[m]、周期T[s]、進行速度v[m/s]が記されている。特に振幅が赤色の矢印と文字で強調されている。

振幅は山の高さや谷の深さのことで、波の「ふり幅」のことを指します。

たとえば、ギターの弦をピン!と弾くと、弦が左右にビヨンビヨン動くよね。その一番大きく動いた位置が「振幅」なんだ。

つまりどれだけ元気にゆれてるか、ってことですか?

そうそう!大きく揺れれば振幅は大きい、小さく揺れれば振幅は小さい、ってことなんだよ。

注意点もあるので、その辺りにも気を使いましょう。
できる大人の配慮ってやつです。

  • 波の中心から山の高さ(谷の深さ)が振幅です。山の高さと谷の深さの差ではないので注意です。
  • うっかりすると忘れがちな単位は[m]です。
  • 音の場合は振幅が大きいと音が大きくなるけど、放射線の場合は振幅が大きくてもエネルギーが高くはならないので注意です。

波長

波の基本構造を示す図。山と谷が繰り返される波形に対して、波長λ[m]、周期T[s]、進行速度v[m/s]、振幅などが記されている。特に波長λ[m]と距離[m]が赤字と矢印で強調されている。

波長は横軸を距離で考えたとき、波が「1回繰り返すのにかかる長さ」を指します。

波って、山があって谷があって、また山が来て……って形をしてるよね。
この「山から次の山まで」とか、「谷から次の谷まで」の長さが「波長」なんだ。

なるほど〜!じゃあ波の“1区切り分”ってことですか?

そう!波1セットぶんの長さ、それが「波長」なんだよ。

ここにも間違いやすい注意点があります。

  • 波長を表すときの横軸は「距離」の概念になる。
  • 距離なので単位は[m]です。
  • 山から谷までと勘違いしてしまう方が稀にいます。あくまで「山から次の山」や「谷から次の谷」までが波長ですので、お間違いなく。

周期

波の構造を説明する図。山と谷の繰り返しを通して、周期 T[s]、波長 λ[m]、振幅、変位、速度 v[m/s] が示されている。特に周期 T[s] と時間[s] のラベルが赤字で強調されている。

周期は横軸を時間で考えたとき、波が「1回繰り返すのにかかる時間」を指します。

さっき、波には山があって谷があって、また山が来て……って話をしたよね。
この「山から次の山まで」とか、「谷から次の谷まで」の時間が「周期」なんだ。

波長が“1区切りの長さ”なら、周期は“1区切りの時間”ってことですか?

大正解!「波1セット」にどれくらい時間がかかるか、それが周期なんだよ!

波は、一定のリズムで繰り返す運動です。
この1回のくり返しに必要な時間が「周期」ということになります。

  • 周期は時間の概念なので単位は[s]です。
  • 波長と混同しないようにしましょう。
  • 波長との違いは波1つ分の「距離」なのか「時間」なのかです。

振動数(周波数)

水平軸を時間 [s] とし、1秒間に繰り返される波形を描いた図。1 [s] の区間に複数の波が含まれており、1秒あたりの波の数=振動数(周波数)を示している。ラベルは「振動数(周波数)」。

振動数は読んで字のごとく、振動する数を示しています。
周波数と表現する場合は周期的な波の数です。

ただ、ここで意識してもらいたいのは、「1秒間あたりに」という時間的な条件が付いているところ。

そう、1秒間あたりに振動する数が周波数です。
周波数の場合は、1秒間あたりの波の数です。

これは両方とも同じ意味です。振動するのは波ですからね。

振動数は波が「1秒間に何回くり返してるか」を表す数字だよ。

つまり、波の“1秒あたりの回数”ってことですか?

その通り!
1秒にたくさん波が来れば振動数が大きい
ゆっくりなら振動数が小さいってことなんだ。

振動数の単位には [Hz] (ヘルツ)という特別なものが使われています。

これだとイメージがつきにくいですよね。
そこで、お得意のSI単位化して考えてみましょう。
意味が分かると思いますよ。

振動数は1秒間あたりに波が振動する数ですから [1/s] という単位になります。

Hz=1/s です。

図も使って確認していきましょう。

上の図の状況なら、1秒間の間に5つの波が入ってます。

この場合、振動数は 5 [Hz] となります。​

また、単位から気付いた方もいると思いますが、振動数は周期の逆数になっています。

振動数 𝑓f の単位は [Hz] または [1/s] であり、「1秒間あたりの波の数」を意味する。数式としては 𝑓=1/T (周期の逆数)で表される。

この関係性も覚えておいてくださいね。

速度

横軸に「変位」、縦軸に「時間または距離」をとり、複数の波(黒・赤・緑・青)をずらして描くことで、波が右方向(正方向)に進んでいる様子を表している。右向きの矢印とともに「速度 𝑣v [m/s]」と記され、波の進行速度を示している。

波にも速度という概念があります。

少しイメージしにくいかもしれませんが、波も動いている以上、速度を持ちます。

波が「どれくらいのスピードで進んでいくか」が速度だよ。

波って、ただゆれてるだけじゃなくて、動いてるですか?

そう!たとえば水面にポチャンと石を落とすと、波紋が広がっていくよね?
あの“広がる速さ”が「波の速度」を表しているんだよ。

ここにも間違いやすいポイントがあります。

  • 「振幅が大きいと速い」は定番の勘違い。
  • 「波の高さ」じゃなくて「波のリズムと長さ」で決まるのが速度です。

本題とは少しズレますが、補足としまして。

黒い波を基準として、時間が経過すると波は  と  どちらの状態になると思いますか?

時間が経過した状況を考えるときは、波を右に動かしていけばOKです。
つまり  が正解ですね。
従って、波が広がっていく方向は右ということになります。

ちょっと難しいですかね?

でも大丈夫。放物ではこの辺りに触れられることはありません。

ちょっとイメージと違くて理解できなくてもスルーを決め込んで差し支えありませんよ。

速度、振動数、波長の関係性を認識しよう!

速度、振動数、波長の単位を思い出してみてください。
それぞれ、[m/s]、[Hz]、[m] でしたね。
[Hz] を [1/s] に変えると、[m/s]、[1/s]、[m]となります。
こうなれば、関係性が見えてきませんか?

波の速さ v は、振動数 f と波長 λ の積で表されるという公式「v = fλ」が示されている。その下に、単位の対応として「[m/s] = [1/s] × [m]」と記載されており、式の意味が単位換算でも表されている。

速度は振動数と波長の積になっているんです。

1秒で進む距離=1秒あたりの回数(振動数)× 1回ぶんの長さ(波長)

と言い換えることもできますね。

エネルギーと運動量の表し方をしっかりと覚えよう!

光子のエネルギーはプランク定数と振動数の積です。
これは必ず覚えましょう。必須知識です。
さらに、振動数を速度と波長に置き換えてみましょう。
※光子の速度は光の速度ですので、文字はcを使います。

エネルギーは「プランク定数 × 振動数」で表されることを示した式。「E = hν」から始まり、振動数 ν を「c / λ」で置き換えて「E = h・c / λ」、最終的に「E = hc / λ」と変形している。

エネルギーを復習するならコチラ

もう一つは運動量です。
高校物理を履修していない方はピンとこないかも知れませんが、運動量とエネルギーにはある関係性があります。
そこから簡単に紐解いていくことができます。
難しくありませんから、読んでみてください。

運動量はエネルギーを速度で除せば求めることができます。
これだけです。
では、式変形を見ていきましょう。

運動量は「エネルギー ÷ 速度」で表されることを示した式。「p = E / c」から始まり、「E = hν」を代入して「p = hν / c」、さらに「ν = c / λ」を使って「p = hc / λc」、最後に約分して「p = h / λ」と整理されている。

最終的に、運動量はプランク定数を波長で除したものになります。

運動量は単位も出題されます。
高校物理を履修されていた方は運動量=質量×速度から求めることができます。
先ほどのプランク定数を用いた関係性からも求められます。
エネルギーとの関係性からも求められます。
3種類で紹介しておきましょう。

運動量の3つの表し方とその単位の導出を比較した図。  左:運動量 = 質量 × 速度 → p = mv → [kg] × [m/s] = [kg・m/s]  中央:運動量 = プランク定数 ÷ 波長 → p = h / λ → [Js/m] = [kg・m²/s²]・[s]/[m/s] = [kg・m/s]  右:運動量 = エネルギー ÷ 速度 → p = E / c → [J]/[m/s] = [kg・m²/s²]/[m/s] = [kg・m/s]  どの式でも最終的に「運動量の単位は kg・m/s」で一致することが示されている。

単位で悩んだらこちらもおススメです。

医療現場での関わり

図10:医療現場での波の利用イメージ。  左側には、妊婦のお腹にプローブをあてて超音波検査を行っている女性医療従事者が描かれている。画面にはエコー画像が表示されている。  右側には、男の子と男性(父親と思われる)がレントゲン装置の前に立ち、後方のモニターには胸部X線写真が表示されている。  この図は、医療現場における波の活用(超音波やX線など)の具体的な例を示している。

医療現場で波?と思うかもしれませんが、我々の扱う超音波やX線も波の一種です。

つまり、波を使った検査なんです。

波の特性を理解してX線を適切に利用できるようにならなければなりませんね。

我々の領域以外でも心電図や脳波なんかは波形で示されます。

やはり波と医療には深い関係があるんですね。

実際の問題を見ていきましょう。

とはいえ、少しカスタマイズしておりますので、練習問題としましょう。

練習問題  正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、プランク定数を h、光速度を c とする。  1. 波長 λ の光子の運動量は h / λ である。2. 運動量 p を持つ粒子の波長は h / p である。3. 振動数 ν の光子のエネルギーは h / ν である。4. 波長 λ の光子のエネルギーは h λ / c である。5. 速度 v、質量 m の粒子の全エネルギーは   mc² / √(1 − (v/c)²)  である。

いかがでしょうか?

解答を確認す
る。

答えは 1と2 です。

解説

元ネタは第48回(1996年)とかなり昔の問題です。
かなり古いのですが、基本要素がたくさん詰まってますので、採用してみました。

  1. 波(光子)の運動量と波長の関係性を聞かれています。覚えましょう。正しい記述です。
  2. 1に似ていますが、粒子の場合を聞かれています。ただ、関係性は波の場合と同様に考えてOKです。覚えましょう。正しい記述です。
  3. 光子のエネルギーと振動数の関係性を聞いています。E=hνです。
  4. 光子のエネルギーと波長の関係性を聞いています。E=hc/λです。
  5. ローレンツ因子を用いた粒子のエネルギーの表し方を聞いています。分母のルート内にあるvとcの位置関係が逆になっています。c/vとなっていますが、正しくはv/cです。

まとめ

・波の基本的な用語の意味と単位を理解しましょう。
・速度、振動数、波長の関係性を理解しましょう。
・エネルギーや運動量の表し方をマスターしましょう。

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