Home » ワークブック解答 » A12 原子核の構造と核子・質量数の違いをやさしく解説【原子番号・同位体も整理】

はじめまして!ぼく、原子くんです!
外は電子、内側には夢と核子が詰まってます!

原子
原子

夢て……いや詰まっとるんは陽子と中性子やろ。
夢ちゃうやろ。

牛助
牛助

陽子と中性子の間には、“核力”という名の愛があるんですよ…!

原子くん
原子くん

……なんか、核の中に詩人がいますね…

たまのすけ
たまのすけ
たなまる
たなまる

はい、じゃあ今回は、その原子くんの“中身”――
つまり原子核の構造について解説していこうか。

「陽子と中性子って何が違うの?」
「核子って言葉、急に出てくるけど覚えにくい…」
「質量数と原子番号、どっちがどっちだっけ?」
――そんなふうに、原子核まわりの用語がゴチャゴチャして困っていませんか?
我々講師は簡単な分野と思いがちですが、意外と把握できていない学生も少なくありません。

この記事を読めば、陽子・中性子・核子の関係がはっきりわかり、
さらに「質量数ってなに?」「同位体ってどんなもの?」といった疑問もスッキリ整理できます!
自分の言葉で説明できるようになるのが目指すところです。

国家試験でも頻出のこのテーマを、
図や表を使ってわかりやすく解説します。
さらに、新キャラ「原子くん」と一緒に、原子核の中までのぞいてみましょう!

このページでは、ワークの内容をベースに、
よく混同しがちな用語を1つずつ丁寧に整理していきます。
国試で問われるポイントも明示するので、試験対策にも直結!

これまで600人以上の学生を診療放射線技師へと導いた経験から、わかりやすくお伝えしていきます。

さっそく解答例

 「初学 放射線物理学 ワークブック」検索番号 A12 の穴埋め解答例と解説です。
 先に自分で穴を埋めてみてからの答え合わせでも良いですし、解答例を写してから覚えていっても良いです。ご自分に合ったスタイルで取り組んでください。

原子核の種類

解説

核子や核種など新しい用語も出てきましたね。
それぞれ見ていきましょう。

原子核ってどんな構造?

陽子と中性子をまとめて「核子」っていうよ

原子核の中には、陽子(+の電荷を持つ)と中性子(電荷なし)がぎゅっと詰まっています。
この2つをひとまとめにして、「核子(かくし)」と呼びます。

ポイント:
「核子」はあくまで総称であり、陽子や中性子の“種類”を問わずに使える便利な言葉です。

そして、陽子と中性子の数を合計したものを「核子数」と呼びますが、
これは実質的に「質量数」と同じ意味になります。

核子数 = 質量数 = 陽子数+中性子数

国家試験では、「核子数を求めよ」「質量数を答えよ」といった問題がどちらの表現でも出るため、両者を同じものとして理解しておくのが大切です。

中性子の方がちょっとだけ重い

陽子と中性子は非常に似た質量を持っていますが、実は中性子の方がわずかに重いです。

粒子電荷相対質量(電子=1)質量
(原子質量単位:Da)
陽子+1約1836倍約1.0073 Da
中性子0約1839倍約1.0087 Da
軌道電子−11(基準)約0.00055 Da

豆知識:
この「わずかな差」は、ベータ崩壊で中性子が陽子に変わるときのエネルギー差にも関係してきます。
国試では「中性子の方がわずかに重い」という表現そのものが選択肢で出ることも!

補足:
「Da(ダルトン)」は、近年「u(原子質量単位)」の代わりに使われることが増えてきた表記です。
試験ではどちらの表記も見かける可能性がありますが、意味は同じです。

中性原子では、陽子数=電子数になる!

「中性原子」とは、電気的にプラスマイナスがつり合った原子のこと。
つまり、陽子の数と電子の数が等しいという状態です。

この陽子の数は「原子番号」と呼ばれ、元素の“種類”を決める超重要な数です。

例:酸素(O)の場合
原子番号:8 → 陽子が8個 → 電子も8個

陽子数+中性子数=質量数!

「質量数」とは、陽子数と中性子数を足した合計のことです。
これは「原子全体の重さの中心部分=原子核の重さ」をおおざっぱに表す数値になります。

  • 原子番号(Z):陽子の数
  • 質量数(A):陽子数+中性子数(=核子数)

国家試験ではこの2つを混同させるひっかけ問題も多いので、注意して整理しておきましょう!

原子核のバリエーションを知ろう

同位体とは?【isotope】

同位体(isotope)の例として、炭素12(¹²C)、炭素13(¹³C)、炭素14(¹⁴C)の3つの原子が並んでおり、それぞれに「元素記号が同じ」という赤い矢印が向けられている。上部には「陽子数が同じ(原子番号が同じ=同じ元素)で中性子数が異なる核種」と説明されている。

同じ元素でも、中性子の数が異なる原子のことを「同位体(アイソトープ)」と呼びます。
ポイントは、「陽子数=原子番号は同じ」であるという点です。

例:

  • ¹²C(陽子6個+中性子6個)
  • ¹³C(陽子6個+中性子7個)
    → どちらも**炭素(C)**という同じ元素だが、中性子数が違う=同位体!

国家試験では「放射性同位体」と「安定同位体」の違いが問われることもあります。

  • 安定同位体:放射線を出さず安定して存在する
  • 放射性同位体(RI):壊変(崩壊)して放射線を出す

同中性子体とは?【isotone】

同中性子体(isotone)の例として、炭素14(¹⁴₆C)、窒素15(¹⁵₇N)、酸素16(¹⁶₈O)の3つの原子が並び、それぞれに「中性子数が8で共通している」ことを赤い矢印と計算式(例:14−6=8)で示している。下には「パッと見、同じ要素はないが中性子数は8で統一されている」との解説がある。

同中性子体(isotone/アイントーン)」とは、
中性子数が同じで、陽子数と質量数が異なる原子核のことをいいます。

たとえば、以下の3つの原子核を見てみましょう:

📷【画像:同中性子体(C, N, O)】

  • ¹⁴₆C → 中性子数 = 14 − 6 = 8
  • ¹⁵₇N → 中性子数 = 15 − 7 = 8
  • ¹⁶₈O → 中性子数 = 16 − 8 = 8

ポイント:
パッと見た感じでは「バラバラな元素」に見えますが、
中性子数はすべて8個で統一されている=同中性子体となります。

同重体とは?【isobar】

同重体(isobar)の例として、マンガン56(⁵⁶Mn)、鉄56(⁵⁶Fe)、コバルト56(⁵⁶Co)の3つの原子が並び、赤い矢印で「質量数が56で共通している」ことを示している。上部の解説では「陽子数および中性子数が異なり、質量数が同じ核種」と説明されている。

同重体(isobar)とは、
質量数(陽子数+中性子数)が同じで、中性子数・陽子数が異なる原子核を指します。

⁵⁶Mn・⁵⁶Fe・⁵⁶Coの3つの原子核が描かれています。

  • それぞれ元素は異なり、陽子数・中性子数の組み合わせもバラバラです。
  • しかし共通して、質量数が「56」で統一されています!

ポイント:
「同じ重さ(=核子数)でも、中身の構成は違う」
それが同重体の特徴です。
この“中身の違い”が、放射線の性質や壊変モードに大きく影響することもあります。

用語の由来:「iso(同じ)」+「baros(重さ)」=同じ重さ!

鏡像体(鏡像核)は同重体の“特別バージョン”

鏡像体(または鏡像核)の例として、質量数15の窒素(¹⁵₇N)と酸素(¹⁵₈O)が並び、赤と青の矢印でそれぞれの陽子数と中性子数が入れ替わっていることを示している。両者とも質量数は15で同じだが、窒素は陽子7・中性子8、酸素は陽子8・中性子7となっている。下部には「陽子数と中性子数が入れ替わっていても質量数は変わらず、同重体の特別な状態」と説明されている。

質量数は同じまま、陽子数と中性子数が入れ替わったような関係を「鏡像体(mirror nuclei)」と呼びます。

たとえばこちらの図を見てみましょう。
⁷₁₅N⁸₁₅Oは、どちらも質量数が15で共通しています。
ただし、陽子数と中性子数がそれぞれ 「7と8」↔「8と7」 で真逆になっているのが特徴です。

このように、陽子数と中性子数が“ちょうど逆”になっている同重体のことを、特別に鏡像体(きょうぞうたい)と呼びます。

※鏡像体は同重体の一種です。

核異性体は「中身は同じでも、エネルギー状態が違う核」

核異性体の例として、質量数99のテクネチウム(⁹⁹ᵐTc)と通常の⁹⁹Tcが比較されている。両者は陽子数・中性子数ともに同じであるが、⁹⁹ᵐTcの質量数に付いた「m」は準安定状態(metastable)を示し、エネルギー準位が高い状態を意味する。矢印と注釈で「mがあるとエネルギー準位が高く、崩壊状態が比較的長く続く」と説明されている。

陽子数も中性子数も同じなのに、エネルギー準位が異なる核種を核異性体(isomer)と呼びます。
つまり、「まったく同じ核種に見えるけど、中のエネルギー状態だけが違う」という関係です。

たとえば図にある ⁹⁹ᵐTc⁹⁹Tc
両方とも質量数99のテクネチウムですが、左の “m” 付きの方は「準安定状態」を示しており、高いエネルギー状態にあります。

🔍 ポイント

  • 「m」は“metastable(準安定)”の略。
  • エネルギー状態が高いぶん、崩壊して安定な状態へ移行しようとします。
  • 医療分野では、99mTcは核医学検査において非常に重要な放射性核種です。

実際の過去問も見てみよう。

第67回 2015年 AMI

核種群について正しいのはどれか。

1.同位体は中性子数が同一である。
2.同中性子体は陽子数が同一で中性子数が異なる。
3.放射性同位体は異なる元素の核種で質量数が同一である。
4.同重体は陽子数が同一で中性子数が異なり不安定で壊変する。
5.核異性体は原子番号と質量数が同一で、核のエネルギー準位が異なる。

この問題は第67回の国家試験「放射化学」分野で出題されたものです。しかも午前1問目

つまり、最初の問題を取れるかどうかで勢いがつく重要な1問です。
ここでつまずかないためにも、しっかり理解しておきましょう。

放物の問題ではないですが、原子核の構造という内容ですから、取り上げてみました。

答えは分かりましたか?

答を確認する。

答えは 5 です。

  1. 同位体は原子番号が同一であるもの。
  2. 同中性子体は陽子数が異なり、中性子数が同一なもの。
  3. 放射性同位体は同一の元素の核種で質量数が異なるもののうち、放射性であるもの。
  4. 同重体は質量数が同一なもの。放射性であるかどうかは問わない。
  5. OK

医療現場でこの知識がどう役立つの?

検査用ベッドに横たわる患者が、ガントリー型の医療機器(PETやSPECT装置を想定)に入っており、放射線マークが機器上部に表示されている。手前では白衣を着た医療従事者が、パソコン画面に表示された人体画像と原子のマークを見ながら操作している。

核種の分類は、診療放射線技師として働くうえでとても重要です。なぜなら、使う放射性核種がどのタイプに属するかによって、取り扱い方や安全管理、さらには検査や治療の設計そのものが変わってくるからです。

たとえば――

  • 核異性体の例:⁹⁹ᵐTc(テクネチウム)
    • 核医学検査で頻繁に使われる放射性同位体です。
    • 「m」は準安定状態を示し、これがあることで比較的長時間のガンマ線放出が可能になり、撮影に適しています。
  • 同位体の理解はPETでも重要
    • ¹⁸F(フッ素)や¹¹C(炭素)など、陽電子を放出する同位体を使って体内の代謝活動を可視化します。
    • これらの核種は「同位体」でありながら、放出される粒子の違いが診断精度に影響します。
  • 同重体や鏡像体は研究分野で活躍
    • 医療現場ではそれほど直接使われることは少ないですが、放射線治療計画や核種選定の研究では、安定性や崩壊パターンの理解に役立ちます。

まとめ

たなまる
たなまる

核種の分類は、毎年のように狙われる頻出テーマ!
「同位体・同重体・核異性体」のちがいを確実に押さえて、
サクッと見分けられるようにしておきましょう!

お願い

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電爺
電爺

ほれ、ここまで読んだんなら、次はこのあたりを見ておくとえぇぞい。

ほれ、「原子」と「原子核」をごっちゃにしとる若者が多いんじゃよ。ここで一度、頭ん中を整理しとくとスッキリするぞい。

エネルギーってのは、力を生む“タネ”じゃ。
ジュール? 電圧? よく分からん?
ならA03で、エネルギーの正体を一緒に探ってみようぞ。

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たまのすけ
たまのすけ

核種の分類について、もう少し深掘りしたい人は、以下のリンクが参考になりますよ!

原子核の安定性と核種の種類(Atomica)
日本原子力研究開発機構が運営する「ATOMICA」の信頼性の高い情報です。同位体・同重体・核異性体の違いについてもしっかり書かれています!

Wikipedia:同位体(Isotope)
基礎的な知識をサクッと確認したいときはWikipediaも便利です。図も多くてわかりやすい構成になっています。

By たなまる

1984年生まれの放射線技師です。 放射線技師養成校で核医学・物理・電気の講義を担当しています。 放射線技師の割に、不思議なことに現場科目より基礎科目の方を多く持っています。そのせいか、学生からは技師じゃないと思われている節があります。 専門知識よりは、学生が理解しやすい表現を心がけています。

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