
オレなぁ、最近ちょっと思ててんけど……
「ダルトン」ってプロレスラーの名前ちゃうんか?

違いますよ! 微粒子の質量を表す単位です!


炭素12の質量を12で割った値。それが1ダルトン。
ほな、オレの体重もダルトンで言うたら、軽く見えるんちゃうか?

いや、ゼロの数がえらいことになるだけですよ。


むしろ重く見えるな……
先生にだけは言われたないわっ!

「微粒子の質量って小さすぎて、キログラムやグラムで表すとピンとこない……」
そんなふうに感じたことはありませんか?
大丈夫。それが正常な感覚です。
この記事では、原子や素粒子の質量を扱うときに使う「統一原子質量単位(ダルトン)」について、すっきり理解できるよう解説しています。
基本となる定義や換算値、よく出る粒子の質量、試験での出題パターンまで、必要なポイントをコンパクトに整理して解説します。
放射線技師国家試験に頻出のこの単元を、過去の出題傾向と物理の基本に基づいて、噛み砕いて紹介していきます。
これまで600人以上の学生を診療放射線技師へと導いた経験から、わかりやすくお伝えしていきます。
目次
さっそく解答例
「初学 放射線物理学 ワークブック」検索番号 A14 の穴埋め解答例と解説です。
先に自分で穴を埋めてみてからの答え合わせでも良いですし、解答例を写してから覚えていっても良いです。ご自分に合ったスタイルで取り組んでください。

解説
ここでは原子質量単位という考え方を見ていきましょう。
国試では、原子質量単位の定義や計算問題として出題されます。
統一原子質量単位とは?
名称から、質量を表す単位であろうことは分かるかと思います。
でも、わざわざ長ったらしい名称にしているってことは、単なる単位ではなさそうですね。
名称に「原子」が付いていることから、原子や原子核といった小さいものの質量を表すときに使うのが「統一原子質量単位:Da(ダルトン)」なのです。
質量を表すには小さすぎる微粒子たち
電子や陽子、中性子といった粒子は、とにかく小さくて軽い。
その質量を kg や g で表そうとすると、たとえば陽子の質量は 1.6726×10−27 kgとなります……
正直、ゼロが多すぎて直感的にわかりづらいですよね。
kgやgじゃなく、原子用の専用単位が必要
普通、質量の単位と言えば、[kg] や [g] ですよね?
統一原子質量単位では [kg] や [g] は使いません。
原子・原子核の質量を表すのに、[kg] や [g] では大きすぎてサイズ感がミスマッチです。
そんな超小型の粒子の質量を扱うために考え出されたのが、統一原子質量単位です。
記号は「Da(ダルトン)」と書きます。これは、化学者ジョン・ドルトンにちなんで名づけられたものです。
ちなみに、SI併用単位です。
1Daの定義と意味
炭素12の質量を12で割ったもの
「1Daって、どれくらいの重さなの?」という疑問には、こう答えましょう:
炭素12(C-12)原子の質量を12で割ったもの、それが1Da。
つまり、炭素原子12個分のうちの1個分に相当する質量、ということです。
このように定義することで、微粒子の質量を相対的にわかりやすく比較できるようになりました。
統一原子質量単位の基準は「質量数12の炭素原子の質量」です。
質量数12の炭素原子の質量を 12Da とし、その 1/12 を 1Da としています。
統一原子質量は12Cを基準とした相対的な質量と考えることができますね。
よく出る粒子の質量をDaで整理してみよう
主だったものをあげておきましょう。
粒子 | 統一原子質量 |
---|---|
電子 | 0.000548 Da |
陽子 | 1.007276 Da |
中性子 | 1.008665 Da |
重水素 | 2.014102 Da |
α粒子(4He) | 4.00260 Da |
12C | 12 Da |
Da表記なら、kgのように桁数が膨れあがることなく、質量の比較がずっとスムーズです。
他の単位との換算方法
kgに換算すると?
1Da をMKSA単位系の質量に置き換えると 1.6605×10-27 kg です。
国家試験ではこの値が問題文に記載されていることが多いので、暗記の必要はそこまで高くありません。
ただし計算問題で使うことがあるので、 「1Daはすごく小さいkg」という感覚だけは持っておきましょう。
※主任者試験では1Daが何kgなのかを問うものが出題されます。
1.6605×10-27 kgであることを知らない場合は詰むことになります。
1Daが931.5MeVであることを利用すれば求められますが、計算ですので時間がかかります。
931.5MeVを知らなかったら本当に詰みです。
例)第1種 放射線取扱主任者試験 66回(2021年)問2
エネルギー(MeV)に換算すると?
これをエネルギーに換算すると 931.5 MeV となります。
私が学生の頃は「暗記必須!」と言われていましたが、最近の出題では問題文に明記されることも増えており、以前ほど覚えなければならないプレッシャーはありません。
この値は「質量欠損」や「核分裂エネルギー」などの計算でよく使われるので、使い方は把握しておきましょう。
「u」と「Da」の違いは?
記号が変わっただけ。意味はほぼ同じ
昔の参考書や資料では、「u(ユニファイドマスやユニット)」という表記を見かけることがあります。
でも安心してください。1uと1Daは、数値も定義もまったく同じです。単に記号が違うだけです。
2019年から正式に「Da」推奨へ
2019年、国際的に「u」ではなく「Da」を用いることが正式に推奨されました。
国家試験でも「1Da」と表記されることが増えてきていますが、もし「u」が出てきても「Daと同じ」と思えばOKです。
国家試験でここが狙われる!
「931.5MeV」は出題頻度が高い
国家試験では、1Daがエネルギー換算で約931.5MeVになるという数値がよく問われます。
これは、質量とエネルギーが E = mc² の関係で結びついているからですね。
選択肢で問われることもあれば、計算問題の中で何気なく登場することもあります。
特に「質量欠損」や「核分裂で得られるエネルギー」を問う問題では、必ずと言っていいほど出てくるので、しっかり押さえておきましょう。

ここは本当に良く出ます。
「質量欠損」単元ともつながる内容
この「931.5MeV」という数値は、単に暗記するのではなく、
- 「質量の減少分がエネルギーに変わった」
- 「1u(1Da)あたり931.5MeV分のエネルギーが出る」
というイメージで理解しておくと、質量欠損 → エネルギー変換の単元にもスムーズに繋がります。
別記事で紹介する【A17 質量欠損】や【D20 核反応】とも非常に関係が深いので、合わせて確認しておきたいところです。
実際に出題された国試問題を見てみよう

2004年に実施された第56回からの出題をご紹介しましょう。
いかがでしょうか?
解答を確認する。
答えは 1 です。
解説
かなり古いものですが、あっさり選べる問題ですね。
もはや、説明不要でしょう・・・
このくらいの難易度の出題があっても良いですよね。
最近の国試、ちょっと難しすぎない?と思う今日この頃です。
統一原子質量は「質量欠損」や「核反応のQ値」を求める問題としてよく登場します。
そちらはそれぞれ別の記事で細かく解説するとしましょう。
医療現場でこの知識がどう役立つの?
質量がわかると、エネルギーがわかる
放射線治療やPET検査など、医療現場で扱う放射線は、しばしば原子レベルの「質量」や「エネルギー」がカギになります。
ここで重要になるのが今回のテーマ「ダルトン(Da)」や「MeV」などの単位です。
質量をエネルギーに換算できる公式
E = mc²
この公式により、わずかな質量の変化でも莫大なエネルギーが得られることが知られています。
これはPETでの陽電子放出や、放射線治療の核反応にも関わっています。
質量欠損の概念にもつながる
核医学や放射線治療では、原子核内の質量がバラバラの陽子・中性子の合計より小さくなるという「質量欠損」の考え方が登場します。
このときも、質量の単位として「ダルトン」を使い、差分からエネルギーを計算するのが基本です。
つまりこの知識は、臨床での核反応の理解や、治療線量の設計にも密接に関わっているのです。
まとめ

統一原子質量単位は原子や分子などの小さなものの質量を表すのに使います。
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復習や先取りに使うと、放射線物理の理解がさらに深まるぞい!はこのあたりを見ておくとえぇぞい。

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他にも気になる記事があったら、検索窓に「A11」みたいな番号を入れて探すのがおススメじゃぞ。
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ここまで読んできた皆さんなら、もう一歩踏み込んだ知識に触れてみたくなるはずです。そんな方におすすめの外部リンクを紹介しますね。
Wikipedia|統一原子質量単位
→ 定義・由来・換算値・Daとuの関係など、基本から最新の情報がコンパクトにまとまっています。
日本化学会|単位・記号専門委員会
→ 2024年版資料に「ダルトン(Da)=1.660539×10⁻²⁷kg」と定義されており、公式SI併用単位として取り扱われています。