D09 クォークで考えるβ壊変

β⁻壊変では中性子が陽子に変化し、β⁺壊変では陽子が中性子に変化します。
でも、陽子や中性子の内部では、いったい何が起こっているのでしょうか。

その答えを知るためには、陽子や中性子を構成する「クォーク」と、β壊変に関与する「ウィークボソン」の存在を知る必要があります。
今回は、β壊変の仕組みを素粒子の世界からもう少し掘り下げて見ていきましょう。

※この記事の内容は、執筆時の国家試験出題レベルを超えた内容です。
※難しい場合に読み飛ばしたとしても影響は大きくありません。

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陽子と中性子を構成するクォーク

β壊変では、原子核を構成する陽子と中性子が互いに変化します。
この仕組みを理解するためには、陽子や中性子の内部構造を知る必要があります。
まずは、陽子と中性子を構成するクォークについて確認していきましょう。

アップクォークとダウンクォーク

陽子や中性子は、それぞれ3個のクォークから構成されています。
クォークにはいくつかの種類がありますが、陽子と中性子を構成するのは、アップクォーク(u)とダウンクォーク(d)の2種類です。

アップクォークとダウンクォークは、どちらも電荷を持っています。
ただし、電子や陽子とは異なり、その電荷は整数ではありません。

  • アップクォーク(u):$\mathrm{+}\frac{2}{3}$
  • ダウンクォーク(d):$\mathrm{-}\frac{1}{3}$

このように、クォークは電気素量を基準として、分数の電荷を持っているのが特徴です。

クォークの基本的な性質については、こちらでも紹介しています。

A19:素粒子とクォークの基礎知識

クォークの電荷と核子の構成

陽子と中性子は、どちらも3個のクォークから構成されていますが、その組み合わせが異なります。

  • 陽子:アップクォーク2個+ダウンクォーク1個(uud)
  • 中性子:アップクォーク1個+ダウンクォーク2個(udd)

では、それぞれの電荷を計算してみましょう。

陽子の場合は、

$$
+\frac{2}{3}+\frac{2}{3}-\frac{1}{3}=+1
$$

となり、陽子の電荷が+1であることが確認できます。

一方、中性子の場合は、

$$
+\frac{2}{3}-\frac{1}{3}-\frac{1}{3}=0
$$

となり、中性子の電荷が0であることが確認できます。

つまり、陽子と中性子の電荷の違いは、内部を構成するクォークの組み合わせによって生じているのです。

この違いが、次に紹介するβ壊変の仕組みを理解するための重要なポイントになります。

β壊変とウィークボソン

β壊変では、陽子と中性子を構成するクォークの一部が変化します。
この変化には、ウィークボソンと呼ばれる素粒子が関係しています。

ウィークボソンは、弱い相互作用を伝える粒子の一種で、電荷が-1のW⁻と、電荷が+1のW⁺があります。

それでは、β⁻壊変とβ⁺壊変について、クォークの変化を順番に見ていきましょう。

β⁻壊変におけるクォークの変化

β⁻壊変では、原子核内の中性子が陽子に変化します。
このとき、中性子を構成するダウンクォーク(d)の1個が、アップクォーク(u)に変化しています。

ダウンクォークの電荷は$\mathrm{-}\frac{1}{3}$、アップクォークの電荷は$\mathrm{+}\frac{2}{3}$です。
つまり、クォークの電荷が1だけ増加することになります。

ここで登場するのが、電荷-1のウィークボソン(W⁻)です。

ダウンクォークがアップクォークに変化する際には、W⁻が関与することで電荷の合計が保存されます。
さらに、W⁻を介して電子と反ニュートリノが生成されます。

このように、中性子を構成するクォークがuddからuudに変化することで、陽子への変化が起こります。

β⁺壊変におけるクォークの変化

一方、β⁺壊変では、原子核内の陽子が中性子に変化します。
このとき、陽子を構成するアップクォーク(u)の1個が、ダウンクォーク(d)に変化しています。

アップクォークの電荷は$\mathrm{+}\frac{2}{3}$、ダウンクォークの電荷は$\mathrm{-}\frac{1}{3}$です。
つまり、クォークの電荷が1だけ減少することになります。

ここで登場するのが、電荷+1のウィークボソン(W⁺)です。

アップクォークがダウンクォークに変化する際には、W⁺が関与することで電荷の合計が保存されます。
さらに、W⁺を介して陽電子とニュートリノが生成されます。

このように、陽子を構成するクォークがuudからuddに変化することで、中性子への変化が起こります。

なお、これらの反応に登場するW⁻とW⁺は、原子核の外へ飛び出していく粒子ではありません。
β壊変の途中で一時的に関与する仮想粒子として考えます。

β⁺壊変とエネルギー

ここまで、β⁺壊変ではアップクォークがダウンクォークに変化することを紹介しました。
しかし、この変化には少し不思議な点があります。

それは、質量の小さい陽子が、質量の大きい中性子に変化するということです。
いったい、どのようにしてこの変化が起こるのでしょうか。

クォークの質量差とβ⁺壊変の成立条件

実は、ダウンクォークはアップクォークよりも質量が大きいことが知られています。

そのため、アップクォークがダウンクォークに変化するβ⁺壊変では、質量が大きくなる方向への変化が起こります。

ただし、β⁺壊変が起こるかどうかは、クォークの質量差だけで決まるわけではありません。

原子核の内部では、陽子や中性子が核力によって結びついており、その結びつきにもエネルギーが関係しています。
したがって、β⁺壊変が起こるかどうかを判断するには、原子核全体のエネルギー収支を考える必要があります。

実際に、単独の陽子はβ⁺壊変を起こしませんが、原子核の内部ではβ⁺壊変が起こる場合があります。

つまり、クォークの変化だけを見ると不思議に感じるβ⁺壊変も、原子核全体のエネルギーを考えることで、その成立条件を説明できるんです。

この辺、国試出ないらしいで!
流しとこ。

それでいいよ。

まとめ

今回は、β壊変が起こる仕組みを、クォークとウィークボソンの働きから見てきました。
陽子と中性子の内部で何が起こっているのか、要点を振り返っておきましょう。

  • 陽子はアップクォーク2個とダウンクォーク1個(uud)で構成される。
  • 中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個(udd)で構成される。
  • β⁻壊変では、ダウンクォークがアップクォークに変化し、W⁻を介して電子と反ニュートリノが生成される。
  • β⁺壊変では、アップクォークがダウンクォークに変化し、W⁺を介して陽電子とニュートリノが生成される。
  • β⁺壊変が起こるかどうかは、クォークの質量差だけでなく、原子核全体のエネルギー収支によって決まる。

ここまで理解できたら、β壊変の仕組みはバッチリだね!
でも、出題されることはないかな~。

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次はこの辺りも参考になるかもよ。

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

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