光子は電子だけでなく、原子核とも相互作用することがあります。
その代表が「光核反応」です。
光核反応では、高いエネルギーをもつ光子が原子核にエネルギーを与え、中性子や陽子などの粒子が放出されます。
今回は、光核反応がどのように起こるのか、その特徴を見ていきましょう。
光核反応とは

光子は、軌道電子だけでなく原子核と相互作用することもあります。
高いエネルギーをもつ光子が原子核に吸収され、その結果として中性子や陽子などの粒子が放出される現象を「光核反応」といいます。
光核反応では、まず原子核が光子のエネルギーを受け取り、その後に粒子を放出するという流れで反応が進みます。
原子核が光子の全エネルギーを受け取る
光核反応では、入射した光子がもつ全エネルギーを原子核に与え、光子自身は消滅します。
光子からエネルギーを受け取った原子核は、通常よりも高いエネルギーをもつ励起状態になります。
つまり、光核反応の最初の段階は「光子のエネルギーを原子核が受け取って励起すること」です。
励起した原子核から粒子が放出される
励起した原子核はエネルギーが高く、不安定な状態です。
そこで、余分なエネルギーを外へ放出して、より安定な状態へ移ろうとします。
このとき、原子核から中性子や陽子などの粒子が放出されます。
どの粒子が放出されるかによって反応の表し方が変わり、中性子が放出される反応は(γ,n)反応、陽子が放出される反応は(γ,p)反応と表します。
光核反応にはしきい値がある
光核反応は、どのようなエネルギーの光子でも起こるわけではありません。
反応を起こすためには、光子が一定以上のエネルギーをもっている必要があります。
この反応が起こるために必要な最低限のエネルギーを「しきい値」といいます。
では、なぜしきい値は物質によって異なるのでしょうか。
A15:原子核の結合エネルギーと質量欠損で、原子核の中では陽子や中性子などの核子が結びついており、その結びつきの強さを「核子1個あたりの結合エネルギー」で表せることを学びました。
光核反応で中性子や陽子を原子核の外へ放出するためには、この核子同士の結びつきを切るだけのエネルギーが必要です。
実際に核子1個を原子核から取り出すために必要なエネルギーを「分離エネルギー」といいます。
分離エネルギーは核種によって異なるため、光核反応のしきい値も物質によって異なります。
つまり、原子核の中で核子がどのように結びついているかが、光核反応の起こりやすさにも関係しているということです。

ほな、その核子1個当たり結合エネルギーがしきい値になるんか?

考え方のベースではあるけど、厳密にはちょっと違うんだ。
核子1個を原子核から取り出すのに必要なのが「分離エネルギー」なんだ。
光核反応のしきい値は、この分離エネルギーをもとに決まり、核種ごとに違うんだ。
光中性子
光核反応によって原子核から放出される粒子には、中性子や陽子などがあります。
このうち、光核反応によって発生する中性子を光中性子といいます。
ここでは、光中性子がどのように発生し、その発生量やエネルギーが何によって変化するのかを見ていきましょう。
(γ,n)反応で発生する中性子
光子が原子核に吸収されて原子核が励起し、そこから中性子が放出される反応を(γ,n)反応といいます。
この反応では、入射した光子γが原子核にエネルギーを与え、その結果として中性子nが原子核の外へ放出されます。
このように、光核反応によって発生した中性子が「光中性子」です。
光中性子の発生量
光中性子の発生量は、入射する光子のエネルギーによって変化します。
一般に、光子のエネルギーが高くなるほど光中性子は多く発生します。
また、光中性子の発生量は原子核の種類によっても異なります。
一般に、原子番号の大きい物質ほど光中性子の発生量は多くなります。
そのため、高いエネルギーの光子と原子番号の大きい物質が組み合わさると、光中性子が発生しやすくなります。
光中性子のエネルギー
光中性子のエネルギーも、入射する光子のエネルギーによって変化します。
一般に、光子のエネルギーが高くなるほど、発生する光中性子のエネルギーも高くなります。
光子から原子核へ与えられたエネルギーの一部は、核子を原子核から分離するために使われ、残りは放出された中性子や残留核の運動エネルギーなどに分配されます。
そのため、しきい値を超えた後にさらに光子のエネルギーが高くなると、放出される中性子がより大きな運動エネルギーをもつことがあります。
リニアックと光中性子
光核反応は、放射線治療で使用されるリニアックでも関係してきます。
特に高いエネルギーのX線を発生させる場合には、装置を構成する物質との光核反応によって光中性子が発生することがあります。
10 MV以上のリニアックで発生する光中性子
リニアックでは、高エネルギーの電子をターゲットに衝突させることでX線を発生させます。
このX線が装置内部の金属などに入射し、光核反応のしきい値を超えると光中性子が発生します。
特に10 MV以上のリニアックでは、光中性子の発生が問題となります。
光中性子は治療に利用するX線とは別に発生する二次放射線であるため、放射線防護を考えるうえでも重要です。
光中性子による放射化
発生した光中性子は、装置や治療室を構成する物質の原子核と反応することがあります。
その結果、それまで安定だった原子核が放射性核種へ変化することを放射化といいます。
高エネルギーのリニアックでは、装置内部の金属などが放射化し、照射を停止した後にも放射線を放出する場合があります。
つまり、高エネルギーX線を利用するときには、X線そのものだけでなく、光核反応によって発生する光中性子や、それに伴う放射化にも注意する必要があります。
実際の過去問を見てみよう
2018年に実施された第70回国家試験からPM70のご紹介。
第70回 2018年 PM70
中性子について正しいのはどれか。
- β+壊変で陽子に変わる。
- 光核反応にしきいエネルギーはない。
- 速中性子の遮へいには鉛が有効である。
- 速度が大きいほど中性子捕獲反応が生じやすい。
- 熱中性子の最頻の運動エネルギーは約0.025eVである。
答えを確認する。
正解は 5 です。
できましたか?
今回の内容は選択肢2に関連しますね。
- 誤り
中性子はβ–壊変の際に陽子に変わります。 - 誤り
物質ごとに異なるしきい値ありましたね。 - 誤り
即中性子はまず減速材で減速させ、カドミウムやホウ素などの中性子捕獲断面積の大きな物質で吸収します。 - 誤り
熱中性子領域では、中性子捕獲断面積は速度に反比例します。 - 正解
最頻エネルギーは0.025eVです。速度で表すと約2,200m/sとなります。
良く問われますから覚えてしまいましょう。
医療現場でのかかわり
光核反応は、放射線治療で高エネルギーX線を使用するときに関係します。
リニアックで10 MV以上のX線を発生させると、装置内部の金属などで光核反応が起こり、光中性子が発生することがあります。
光中性子は治療に利用するX線とは別に発生する二次放射線です。
さらに、発生した中性子がリニアックを構成する金属などの原子核と反応すると、その原子核が放射性核種へ変化することがあります。
つまり、リニアックの構成部品そのものが放射化され、放射性物質になってしまうことがあるということです。
そのため、X線の照射を停止した後でも、放射化した部品から放射線が放出される場合があります。
高エネルギーX線を使用する放射線治療では、X線だけでなく、光中性子の発生や装置の放射化についても考える必要があります。
光核反応は原子核の中で起こる現象ですが、実際の放射線治療における放射線防護にもつながっているんですね。
まとめ
今回は、光核反応のしくみやしきい値、光中性子について見てきました。
最後に、今回のポイントを振り返ってまとめていきましょう。
- 光核反応では、光子が原子核に全エネルギーを与えて消滅する。
- エネルギーを受け取った原子核は励起し、中性子や陽子などの粒子を放出する。
- 光核反応が起こるために必要な最低限のエネルギーを「しきい値」という。
- 核子1個を原子核から取り出すために必要なエネルギーを「分離エネルギー」という。
- 分離エネルギーは核種によって異なるため、光核反応のしきい値も物質によって異なる。
- 光核反応によって発生する中性子を「光中性子」という。
- 中性子を放出する光核反応を(γ,n)反応という。
- 光中性子は、光子のエネルギーが高いほど多く発生する。
- 光中性子は、物質の原子番号が大きいほど多く発生する。
- 10 MV以上のリニアックでは、光中性子の発生に注意が必要になる。
- 発生した中性子によってリニアックの構成部品が放射化し、部品そのものが放射性物質になることがある。

光核反応は、原子核の結びつきからリニアックの放射化までつながっているんだね。
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次はこの辺りも参考になるかもよ。
この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら
診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。
都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。
国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。
保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有


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