三対子生成は、光子と物質との相互作用のひとつで、電子対生成とよく似た現象です。
ただし、電子対生成とは相互作用する相手やしきい値が異なります。
三対子生成では、光子が軌道電子と相互作用して消滅し、電子・陽電子の対が生成されるとともに、軌道電子も反跳します。
ここでは、電子対生成との違いを意識しながら、三対子生成のしくみとしきい値を見ていきましょう。
三対子生成とは

三対子生成は、高エネルギーの光子が軌道電子と相互作用することで起こる現象です。
電子対生成とよく似ていますが、相互作用する相手が異なります。
電子対生成では原子核の近くで相互作用が起こるのに対して、三対子生成では軌道電子と相互作用します。
まずは、この違いを押さえておきましょう。

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軌道電子との相互作用
三対子生成では、入射した光子が軌道電子と相互作用します。
相互作用した光子は消滅し、そのエネルギーによって陰電子と陽電子の対が生成されます。
さらに、相互作用した軌道電子も反跳して原子外へ放出されます。
そのため、三対子生成では電子対生成で生じる陰電子と陽電子に加えて、反跳電子も飛び出すことになります。
光子は消滅して3つの電子が放出
三対子生成では、相互作用した光子はそのまま残るのではなく消滅します。
そして、陰電子と陽電子が生成され、さらに軌道電子が反跳電子として放出されます。
つまり、三対子生成では最終的に「陰電子・陽電子・反跳電子」の3つの電子が放出されます。
この「3つの電子」が、三対子生成という名前の由来です。
三対子生成のしきい値
三対子生成が起こるためには、入射光子が十分なエネルギーを持っている必要があります。
ここで注意したいのが、「電子が3つだから、0.511 MeVの3倍」と単純には考えられないことです。
三対子生成のしきい値は、2.044 MeVです。
しきい値は2.044 MeV
三対子生成では、陰電子と陽電子が生成されるとともに、相互作用した軌道電子も反跳します。
そのため、入射光子にはこれらに必要なエネルギーが求められます。
三対子生成が起こるための入射光子のエネルギーは、2.044 MeV以上です。
電子対生成のしきい値である1.022 MeVとの違いを区別できるようにしておきましょう。
1.533 MeVではない理由
電子1個の静止エネルギーは0.511 MeVです。
そのため、3つの電子を考えると、
0.511 MeV × 3 = 1.533 MeV
となり、「三対子生成のしきい値は1.533 MeVでは?」と思うかもしれません。
しかし、三対子生成ではエネルギー保存則だけでなく、運動量保存則も満たす必要があります。
相互作用した軌道電子が反跳するため、その運動に必要なエネルギーも考えなければなりません。
その結果、三対子生成のしきい値は1.533 MeVではなく、2.044 MeVとなります。
ここでは細かな導出よりも、「三対子生成のしきい値は2.044 MeV」と押さえておけば十分です。
実際の過去問を見てみよう
と思いましたが、三対子生成に特化した出題はありませんでした。
悲しいかな、ご紹介できません。

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医療現場でのかかわり
三対子生成は、診断用X線のエネルギーでは起こりません。
しきい値が2.044 MeVなので、一般撮影やCTなどで使われるX線では、この条件を満たさないためです。
一方、放射線治療で使われる高エネルギーX線には、2.044 MeVを超える光子が含まれています。
そのため、三対子生成が起こる条件を満たすことがあります。
ただし、医療現場で三対子生成だけを特別に意識する機会はほとんどありません。
まずは「2.044 MeV以上の光子が軌道電子と相互作用して起こる」という基本を押さえておきましょう。
まとめ
今回は、三対子生成について見てきました。
最後に、押さえておきたいポイントを振り返っておきましょう。
- 三対子生成は、高エネルギーの光子が軌道電子と相互作用することで起こる
- 相互作用した光子は消滅する
- 陰電子と陽電子の対が生成される
- 相互作用した軌道電子は反跳電子として放出される
- 三対子生成のしきい値は2.044 MeVである
- 電子3つ分の静止エネルギーである1.533 MeVがしきい値になるわけではない
- しきい値が2.044 MeVとなるのは、エネルギー保存則だけでなく運動量保存則も満たす必要があるため

三対子生成は、軌道電子・光子の消滅・2.044 MeV。この3つをまず押さえておこう!
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次はこの辺りも参考になるかもよ。
この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら
診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。
都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。
国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。
保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有


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