2026年9月24日に実施した放射線物理学Ⅰ期末試験の解説です。
試験の復習・定期試験対策に活用してください。
試験は説明問題6問、計算問題4問の合計10問で構成されています。
配点は説明も計算も1問10点です。
毎度、明朗会計ならぬ、明朗採点です。
- 全体概要
- 採点基準について
- 問1 「光電効果」を図と文章で説明しなさい。
- 問2 「コンプトン散乱」を図と文章で説明しなさい。
- 問3 「電子対生成」を図と文章で説明しなさい。
- 問4 「半価層」の定義を説明しなさい。
- 問5 「特性X線の発生過程」を説明しなさい。
- 問6 「管電圧の上昇に伴い、特性X線の相対強度比が上昇する理由」を説明しなさい。
- 問7 タングステンから発生する $ \mathrm{K_{α}X}$ 線のエネルギー[keV]はいくらか。タングステンの軌道電子の結合エネルギーはそれぞれ $ \mathrm{Φ_{K}}=70\mathrm{keV}$、$\mathrm{Φ_{L}}=10\mathrm{keV}$とする。
- 問8 1.022MeVの光子がコンプトン散乱を起こした。このとき散乱光子の最小エネルギーは入射光子のエネルギーの何倍か求めなさい。
- 問9 5.022MeVの光子が電子対生成を起こした。このとき、1.8MeVの陰電子が観測された場合、陽電子の運動エネルギー[MeV]はいくらか。
- 問10 0.6cmの厚さを通過すると25%に減弱する素材がある。この素材の線減弱係数[cm-1]を求めなさい。
- まとめ
全体概要
| 受験者数 | 78名 |
| 平均点 | 63.1点 |
| 最高点 | 100点 |
| 最低点 | 8点 |

| 問題 | 得点率 |
| 問1 | 78% |
| 問2 | 76% |
| 問3 | 62% |
| 問4 | 66% |
| 問5 | 77% |
| 問6 | 69% |
| 問7 | 83% |
| 問8 | 27% |
| 問9 | 70% |
| 問10 | 25% |
今年の放射線物理学Ⅰ 期末試験の平均点は63.1点でした。
説明問題は平均71%、計算問題は平均51%という結果でした。
全体としては、説明問題に比べて計算問題で苦戦する傾向が見られました。
問10に関してはチャレンジ要素を含む出題でしたので得点率は想定内です。
それに対して問8は授業中にも扱った内容だったのですがね・・・
そのあたりも含めて振り返っていきます。
今回も各問題の解説に加え、採点していて多かった誤答についても紹介していきます。
採点基準(クリックして開く)
採点基準について
採点基準は一言でいうと
「他人に伝わる形で表現できたか」
です。
何も知らない第三者に伝えることを念頭に置いて回答してください。
実際は色々と知っている私が採点しますが、基本理念としてお忘れなく。
説明問題
説明問題の採点基準は以下のポイントに基づきます。
- 現象・用語の肝になるキーワードが含まれているか
- キーワードが正しく使えているか
- 日本語が正しいか(表現・誤字・脱字)
- 図示の指示がある場合、図が正確か
現象・用語によってキーワードの数が異なりますので、
キーワード1個当たりの配点は問題ごとに変わります。
日本語も当然見ます。
接続語、主語と述語のマッチングあたりは結構細かく見ています。
物理なのに?
と、思うかもしれませんが、日本語は物理以前の問題です。
図も粒子線は直線、電磁波は波線で表記するといったことから、
何がどこに衝突しているか、曲がる方向は正確か、なども見ています。
「なんとなく意味が伝わる」ではなく、「定義として正しいか」を重視しています。
計算問題
計算問題も同様に採点基準を設けています。
- 求めるものを把握しているか
- 定義されていない文字を使っていないか
- 使用する関係式が合っているか
- 数値の代入ができているか
- 計算過程が合っているか
- 計算結果の数値が合っているか
- 単位が合ってるか
- 数式のルールに則って表記されているか
この辺りを見ています。
計算は「答えを出す作業」ではなく、「等式を用いて解法を説明する作業」です。
計算結果だけでなく、何を求めているのか第三者が追える形で記述してください。
一例を出しておきましょう。
例 A地点からB地点まで時速30kmで走行すると30分かかる。A地点からB地点までの距離[km]を求めなさい
求める距離を $x$ 、速度を $v$ 、時間を $t$ とすると、
$$
\begin{aligned}
x&=vt \\[6pt]
&=30 \times \frac{30}{60} \\[6pt]
&=15 \mathrm{[ km ]}
\end{aligned}
$$
こんな感じになります。
読んでいて、不明点が無いはずです。
初めて読む人が困ることなく読めるかどうかです。
2行目の$ x=vt $はカットして、いきなり$ x=30 \times \frac{30}{60} $ から始めても構いません。
そうすれば、冒頭の速度と時間の文字を定義する必要もありません。
慣れるまでは大変かもしれませんが、慣れておいた方が良いです。
親切な解答を心がけてください。
問1 「光電効果」を図と文章で説明しなさい。
解答例

入射光子は軌道電子にエネルギーの全てを与え、自身は消滅する。
エネルギーを得た軌道電子は、そのエネルギーの一部を結合エネルギーからの離脱に用い、残りを運動エネルギーとして原子外に飛び出す。
この電子を光電子といい、この現象を光電効果という。
解説
得点率78%と比較的できていました。
ポイントは
①相互作用の相手
②相互作用後、光子がどうなるか
③相互作用後の放出粒子は何か
この3点です。
とは言え、小テストでも出題しましたし、
試験前も「光子と物質の相互作用は3つ出す!」
と明言しておきましたので対策しやすかったのではないでしょうか?
そでれもこの問に空白の方がいたのには驚きましたが・・・
それはさておき、散見された誤答例も見てみましょう。
ここ問1に限らずですが、図で減点されているケースが目立ちました。
誤1 入射光子が~原子外に放出され・・・ん?
日本語って難しいですよね。
接続詞とか助動詞とか・・・
全文をご紹介しましょう。
入射光子が軌道電子にすべてのエネルギーを与えて、原子外に放出され、入射光子は消滅する現象のこと。
一見良さそうですよね。
しかし、要点の骨格を抜き出すと、
入射光子が~放出され~。
ここに違和感がありますね。
本来、放出させるのが光子で、放出させられるのは電子です。
この文章では光子が放出させられることになってしまいます。
細かいですが、こういった日本語もチェックしています。
就活の履歴書ではこういうところ、チェックされますからね。
誤2 電磁波と粒子が図中で描き分けられていない。
こちらはかなり多くの方が曖昧なまま使っていました。
光子などの電磁波は波線、電子などの粒子線は直線で書くというのが通例です。
放射線物理学Ⅰの講義でも、4月の冒頭にそう説明しました。
講義中も描き分けて板書していました。
それなのに・・・

こう来ましたか。
ツッコミどころ満載です。
まず、左側から入ってきているのは何でしょうか?
光電効果は「光子と物質の相互作用」ですから、光子(X線やγ線)は入ってこないといません。
つまり、波線が入ってきていないといけません。
さらに、光子は実体のない放射線ですから、白丸の粒子のようなものを書いてはいけません。
そして、電子が放出されているようですが、放出粒子も白丸で書いてしまうと、何の粒子か分かりません。
今回は入射放射線も白丸、放出粒子も白丸。
もう何が何だか分からないまま書いていたんでしょう。
区別もへったくれもありゃしません。
書けている方はこんな感じです。

少々補正しましたが、こういう回答が良いですね。
まぁ、これはこれで軌道電子がおかしいのですが、光電効果の図としては許容できます。
問2 「コンプトン散乱」を図と文章で説明しなさい。
解答例

入射光子が軌道電子にエネルギーの一部を与え、電離する。
電離された電子は反跳電子として放出される。
光子自身は進行方向を変えて散乱する現象。
解説
正答率76%と光電効果同様、比較的得点できたと思われる設問でした。
これまたポイントは
①相互作用の相手
②相互作用後、光子がどうなるか
③相互作用後の放出粒子は何か
この3点です。
光電効果の際に指摘した、直線・波線の混同は見受けられましたが、図に関しては光電効果より良かったかと思います。
電子の放出(電離)と光子の散乱が抑えられているかがポイントです。
こちらも誤答例を見てみましょう。
誤1 散乱するものと反跳するものがゴチャ混ぜ。
この間違い、結構多かったです。
入射光子が軌道電子とぶつかり散乱する。
エネルギーを受けた軌道電子は散乱しながら原子外に飛び出す。
やはり違和感を覚えます。
散乱するのは光子です。
電子は反跳するのです。
細かいところですが、散乱と反跳は別の現象ですので。
誤2 相互作用の相手が違うんですけど・・・
少数でしたが、同じ間違い方をしているものがありましたので、こちらもご紹介。
物質に入射した光子は原子核に当たり、入射した光子は消滅し、原子核は電離する。
これは・・・
なかなかすごい現象ですね。
まるでコンプトンとは違う気がします。
指摘事項は3つですね。
①光子の相互作用の相手は軌道電子です。原子核ではありません。
②光子は相互作用後に散乱します。消滅しませんよ。
③電離するのは電子です。原子核がどこかに行ってしまったら、大変です。
この方、図は軌道電子に対して光子が入ってきていました。
ですが、その軌道電子に対して、「←原子核」ってなっていました。
軌道電子と原子核の区別が曖昧だったようです。
問3 「電子対生成」を図と文章で説明しなさい。
解答例

入射光子が原子核近傍を通過する際、原子核の電場の作用を受け消滅する。
その際に正負一対の電子対を生成する現象。
解説
得点率62%と光電効果・コンプトン散乱に比べると、やや苦戦した問題でした。
相互作用3種の中では、ちょっと難しかったんですかね?
ポイントはここでもやはり
①相互作用の相手
②相互作用後、光子がどうなるか
③相互作用後の放出粒子は何か
この3点です。
そこに加えて、電子対生成ではしきい値があります。
しきい値も抑えておいて欲しいですね。
それでは、誤答例から学んでいきましょう
誤1 ちょっと惜しい
言いたいことは分かります。
似てはいるんですが・・・
見てみて下さい。
入射光子が1.022MeV以上のときに起こり、原子核の磁場により入射光子が消滅し、陽電子と陰電子が生成される現生。
先にツッコんでおきましょう。
現生ではなく、現象ですね。
まぁ、それは良いとして、指摘したいのはそこではなく。
磁場ではなくて、電場の作用で消滅します。
似てますので、気を付けなければならない部分ですね。
国家試験で問われたことはありませんが、いざ問われたときに間違えそうな部分です。
今度、模擬試験のネタにしてみようかな・・・
マジで。
誤2 相互作用の相手が違う
結構多かったのがこのパターン。
光子が軌道電子とぶつかったとき、電子が陰電子と陽電子に分かれること。
これは二重に間違えている感じです。
まず、相互作用の相手は原子核です。
正しくは原子核の電場。
軌道電子だと三対子生成になってしまいます。
さらに、陰電子と陽電子の電子対になるのは、入射光子の方です。ぶつかられた軌道電子ではありません。
1つの電子が2つの電子に別れたら、エネルギー的に不思議な現象になってしまいます。
アンパンで例えるなら
半分に切ったのに、フルサイズのアンパンが2個になった。
こんな現象と同じです。
・・・嬉しいじゃないか。
問4 「半価層」の定義を説明しなさい。
解答例
X線強度を $\frac{1}{2}$(半分)にするのに要する吸収体の厚さ。
解説
得点率66%と予想外に伸びませんでした。
今回の試験で最もシンプル、最も簡単な設問だと思っていたので、ビックリしています。
ポイントは誤答例を使って解説していきましょう。
誤1 半分にするのは強度
今回多く見られた誤答例の2大巨頭をまとめてご紹介しましょう。
X線の量を半分にする~
X線のエネルギーを半分にする~
両方とも言いたいことは分かりますし、ニュアンスも間違っていないんですけどね。
これだと不十分なんです。
半価層は誤答例をミックスしたものです。
つまり、「X線強度」を半分にしないといけません。
「強度」はざっくり言えば、平均光子エネルギー×光子数のようなイメージです。
つまりトータルエネルギーに近い概念です。
量を半分にしても、エネルギーを半分にしても強度は半分になります。
でもどちらか一方だけを見るのではなく、X線全体としての強度を最初の半分にするって考えます。
誤2 強度を半分にするのは何?
こういう回答も多かったです。
X線強度を半分にするもの。
ふむ。
最近の若者の省略文化が炸裂したような解答ですね。
何によって強度が半分になるのか不明確ですよね。
これだと厚さなのか、時間なのか分かりません。
試験などでは、明確にX線強度を半分にする厚さと書かないといけません。
問5 「特性X線の発生過程」を説明しなさい。
解答例
電子軌道上に空位が生じると、エネルギー準位の高い電子が遷移する。
そのエネルギー準位差に相当するエネルギーを電磁波の形で放出したものが特性X線である。
解説
得点率77%でした。
苦労するかなと思いましたが、よく書けていました。
それでも誤答例は存在するものでして・・・
しかも何故か同じような回答がみられるものでして・・・
ご紹介しましょう。
誤1 勘違いだとは思うんですけど。
勘違いだと思います。
勘違いであって欲しいと願っています。
まぁ、見て下さい。
電子が原子核の近くを通るとき、クーロン力を受けて減速する。
その際に減少したエネルギーがX線として放出されたもの。
もうお気付きでしょう。
これは制動放射の説明ですよね。
これが一人や二人じゃないのが悲しいところです。
問題をよく読みましょうね。
もしかして、特性X線の発生過程が分からなかったから制動放射の説明を書いたんじゃ・・・
ないですよね?
残念ながら、題意とは全く異なるので、得点率は0と判定しました。
問6 「管電圧の上昇に伴い、特性X線の相対強度比が上昇する理由」を説明しなさい。
解答例
管電圧が高くなると、より内殻に空位を生じさせることが可能になる。
そのため、遷移が連続して起こるようになり、特性X線の発生数が増える。
管電圧の上昇に伴い、制動放射線の発生効率も上昇するが、特性X線の増加量の方が制動放射線の増加量よりも顕著なため特性X線の相対強度比は上昇する。
※採点時は青文字部分が記載されていれば10点満点としています。
解説
得点率69%でした。
ちょっと難しかったかな?
典型的な誤答例は見られませんでしたが、気を付けて欲しいポイントがありましたのでご紹介します。
誤1 管電圧に直接左右されるのはどのエネルギー?
良く書けているので、一見すると間違っている部分が分からないかと思います。
管電圧を上昇させることにより、光子のエネルギーが上がり、より内側の軌道電子にも作用させることができるようになるから。
X線の発生過程を正確に把握できていないのではないかと疑っています。
管電圧を上昇に伴って上昇するのは、ターゲットに入射する熱電子の運動エネルギーです。
まだ光子が発生する前の段階なので、光子のエネルギーとしてはいけませんね。
まぁ、光子のエネルギーも上昇するので勘違いしてしまう気持ちも分かりますけどね。
問7 タングステンから発生する $ \mathrm{K_{α}X}$ 線のエネルギー[keV]はいくらか。タングステンの軌道電子の結合エネルギーはそれぞれ $ \mathrm{Φ_{K}}=70\mathrm{keV}$、$\mathrm{Φ_{L}}=10\mathrm{keV}$とする。
解答例
求めるエネルギーをEとすると、
$$
\begin{aligned}
K_{α}X&=Φ_{\mathrm{K}}-Φ_{\mathrm{L}}\\[6pt]
&=70-10 \\[6pt]
&=60 \mathrm{[ keV ]}
\end{aligned}
$$
解説
得点率は83%でした。
計算問題での得点率としては非常に高い数字です。
特性X線のエネルギーは遷移元のエネルギー準位から遷移先のエネルギー準位を引く。
もしくは、遷移先の結合エネルギーから遷移元の接合エネルギーを引くことで求められます。
今回の問題は結合エネルギーが与えられていますから、後者ですね。
そして、$K_α$なので、L殻からK殻に遷移した際に放出される特性X線です。
つまり、遷移先であるK殻の結合エネルギー70keVから遷移元であるL殻の結合エネルギー10keVを引けばOKです。
計算問題としては非常に高い得点率でしたが・・・
授業や小テストでも扱った内容だったので、個人的にはもう少し取ってほしかった問題です。
100%じゃない以上、誤答例が存在しますので、ご紹介しておきます。
誤1 結局、計算問題ができない方は数式が書けない・・・
この問題に限ったことではありませんが、数式の記載ルールに則っていない方が多いです。
試験は解けりゃいいってもんじゃなんです。
採点者に伝わるかどうかです。
どのように考えて、どういった式を立てて、どのように解いたか。
その筋道を示さないといけません。
最悪の場合、答えだけ書いてあるものもありました。
減点しておきました。
ちゃんと計算したのか、横を見てカンニングしたのか区別がつきませんから。
一例を見て下さい。
$$
60\times70\times6.6\times10^{-34}=4200\times6.6\times10^{-34}=27720\times10^{-34}=2.77\times10^{-30}
$$
どうでしょうか?
ズラズラと式が続いてしまって、見にくくないですか?
※この回答は式自体も間違っています。
本来は、
左辺=右辺
の形で記載しないといけません。
そして、左辺は求めたいものですね。
さらに縦方向で「=」の位置を揃えて書くのが決まりです。
解答例を参照してください。
そのように記載してありますよね。
筋道の分からない数式は、推理小説の章をバラバラに読んでいくようなものです。
答しか書いていない答案は、犯人の名前しか書いていないようなもの。
面白くないし、訳分からないですよね。
誤2 何を思ったか、発生効率を求めてないかい?
材質をタングステンにしたせいか、中間試験の記憶が残っていたせいか・・・
なぜか発生効率を求めてしまったパターンです。
管電圧や比例定数kの値はどこにも掲載していないんですけどね。
こんな感じです。
$$
\begin{aligned}
70\times10^{-3}\times74\times10\times10^{-3}\\[6pt]
&=51800\\[6pt]
&=5180000\\[6pt]
&=5.18\times10^6\mathrm{[ keV ]}
\end{aligned}
$$
本人の数式がおかしすぎて、完全再現はできませんでした。
式中に使う数字には複数のパターンがありましたが、
式中に「74」という数字があった場合、高確率で発生効率を求めようとしたと思われます。
タングステンの原子番号ですからね。
そこはよく覚えていたなと思いますが、今回は発生効率なんて聞いていません。
問題文をよく読んで、何を問われているのか把握して下さい。
問8 1.022MeVの光子がコンプトン散乱を起こした。このとき散乱光子の最小エネルギーは入射光子のエネルギーの何倍か求めなさい。
解答例
入射光子のエネルギーを $E_γ$ 、散乱光子のエネルギーを $E’_γ$ とすると、求める倍率は $\frac{E’_γ}{E_γ}$ と表せる。
$$
\begin{aligned}
\frac{E’_γ}{E_γ}&=\frac{1}{1+\frac{E_γ}{m_ec^2}(1-\mathrm{cos}180°)}\\[6pt]
&=\frac{1}{1+\frac{1.022}{0.511}(1-(-1))}\\[6pt]
&=\frac{1}{1+4} \\[6pt]
&=\frac{1}{5}\mathrm{[ 倍 ]}
\end{aligned}
$$
解説
得点率は27%でした。
今回の試験の中ではかなり低い数字です。
講義や小テストで散乱光子のエネルギーを求める問題を扱ったので大丈夫かなと思ったのですが、少しひねってしまったが故に、伸び悩みましたね。
応用はまだ早かったようです。
とはいえ、国試や主任者試験では出題される問われ方。
難易度とは関係ないところで誤答のパターンがありましたのでご紹介しましょう。
誤1 三角関数が分からない
このパターン、大勢いました。
ひとまず、見てみましょう。
$$
\begin{aligned}
\frac{E’_γ}{E_γ}&=\frac{1}{1+\frac{E_γ}{m_ec^2}(1-\mathrm{cos}180°)}\\[6pt]
&=\frac{1}{1+\frac{1.022}{0.511}(1-0)}\\[6pt]
&=\frac{1}{1+2} \\[6pt]
&=\frac{1}{3}\mathrm{[ 倍 ]}
\end{aligned}
$$
問題文から、散乱光子が最小エネルギーになるシチュエーションは散乱角180°というのを読み取らなければなりません。
その点に関しては、大体できていました。
問題はその先です。
cos180°=-1
これが分からない方が大勢いました。
ご紹介したパターンはcos180°=0としたものです。
他にもcos180°=1とした方、cos180°=1/2にした方、
酷いのは分からなさ過ぎて次の行でcos180°を丸ごと消したものもありました。
放射線物理学以前に、数学からやり直さないといけませんね。
ちなみに、コサインカーブはこんなのです。
画像中央が180°のときです。

問9 5.022MeVの光子が電子対生成を起こした。このとき、1.8MeVの陰電子が観測された場合、陽電子の運動エネルギー[MeV]はいくらか。
解答例
求める陽電子のエネルギーを$E_{e^+}$とすると、
$$
\begin{aligned}
E_γ&=2m_ec^2+E_{e^-}+E_{e^+}\\[6pt]
5.022&=1.022+1.8+E_{e^+} \\[6pt]
E_{e^+}&=5.022-1.022-1.8 \\[6pt]
&=2.2\mathrm{[ MeV ]}
\end{aligned}
$$
解説
得点率は70%でした。
この問題はよくできていましたね。
それにしても、計算問題はできる・できないがハッキリしています。
ポイントとしては、電子対を生成するのにエネルギーを要することです。
何もないところに電子対という物質を作り出すので、質量が生まれます。
その質量エネルギーをどう調達するかを数値で表現しなくてはなりません。
1つ0.511MeVという質量エネルギーを持つ電子を2つ作り出すので、1.022MeVというエネルギーが必要なんです。
散見された誤答例を紹介しておきます。
誤1 $m_ec^2$ の扱い方
少数ですが、何人かいましたので、パターンとしてご紹介しましょう。
$$
\begin{aligned}
E_e^{+}&=5.022-1.8\\[6pt]
&=3.222 \mathrm{[ MeV ]}
\end{aligned}
$$
$m_ec^2$ を無視しちゃったパターンですね。
その他にも、こんなのもありました。
$$
\begin{aligned}
E_e^{+}&=5.022+1.022+1.8\\[6pt]
&=7.844 \mathrm{[ MeV ]}
\end{aligned}
$$
相互作用起きれるのにエネルギー増えちゃってるよ・・・
自然の摂理を完全に無視したパターンですね。
誤2 四則演算ができないのは大問題!
こちらも多くはありませんでしたが、数名いました。
$$
\begin{aligned}
E_e^{+}&=5.022-1.8\times1.6\times10^{-19} \\[6pt]
&=3.222\times1.6\times10^{-19}
\end{aligned}
$$
どこに重大ミスが隠れているか分かりますか?
これは四則演算ができない証拠ですね。
本来なら、5.022から1.8を引く前に、1.8と1.6を掛けなければいけませんね。
使う式も違いますし、四則演算のルールも間違っています。
四則演算は小学生の頃に習う数学/算数の超基本的ルールですが、大人になるにしたがって抜けていくものなのかもしれませんね・・・
私のオフクロも怪しいかもしれませんし・・・
ただ、国試をパスするまでは忘れてはいけません!
数学の超基本的なルールですから、しっかりと復習しておきましょう。
問10 0.6cmの厚さを通過すると25%に減弱する素材がある。この素材の線減弱係数[cm-1]を求めなさい。
解答例
$$
\begin{aligned}
\frac{I}{I_0} &= \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{x}{HVL}} \\[6pt]
\frac{25}{100}&=\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{0.6}{HVL}} \\[6pt]
\left(\frac{1}{2}\right)^2&=\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{0.6}{HVL}} \\[6pt]
2&= \frac{0.6}{HVL} \\[6pt]
HVL&= 0.3 \mathrm{[ cm ]}\\[6pt]
μ&= \frac{log_e 2}{HVL} \\[6pt]
&= \frac{0.693}{0.3} \\[6pt]
&=2.31 \mathrm{[ cm^{-1} ]}
\end{aligned}
$$
解説
得点率は25%でした。
100点阻止問題としてひねりを加えた出題でしたので、想定内です。
透過率と半価層の関係性から半価層を算出し、その値で線減弱係数を求めるといった2段構えです。
国試でも結構こういった二段構えの解法を使います。
半価層の問題以外でも見られる傾向ですので、慣れておきましょう。
誤答としては「書けていない」が多いんですが、その他にも多かったものを紹介しましょう。
誤1 指数が逆になっている
$$
\begin{aligned}
\frac{I}{I_0} &= \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{HVL}{x}} \\[6pt]
\frac{25}{100}&=\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{HVL}{0.6}} \\[6pt]
\left(\frac{1}{2}\right)^2&=\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{HVL}{0.6}} \\[6pt]
2&= \frac{HVL}{0.6} \\[6pt]
HVL&= 1.2 \mathrm{[ cm ]}\\[6pt]
μ&= \frac{log_e 2}{HVL} \\[6pt]
&= \frac{0.693}{1.2} \\[6pt]
&=0.58 \mathrm{[ cm^{-1} ]}
\end{aligned}
$$
どこからおかしくなったか分かりますか?
良さそうな流れだし、数字もそこまで汚くないので、最後まで到達しやすいです。
そして、そこが罠。
この場合、右辺の指数部分の分母・分子が逆になっています。
この部分は、「この厚さは半価層何回分か」を表しています。
つまりその回数だけX線強度が半分になるということ。
ただ、気付くこともできます。
半価層を求めた時点で、1.2cm。
そして、素材の厚さは0.6cm。
半価層1回分にも満たない厚みです。
それなのに、X線強度は25%に減弱・・・
おかしくない?
解いた後に満足せずにもう一度問題文を読み返して、自分の数値の信憑性を確認すれば簡単におかしいなと気付くはずです。
誤2 途中なのよね~
これも結構多かったパターン。
燃え尽き症候群か?
さっそく見てみて。
$$
\begin{aligned}
\frac{I}{I_0} &= \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{x}{HVL}} \\[6pt]
\frac{25}{100}&=\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{0.6}{HVL}} \\[6pt]
\left(\frac{1}{2}\right)^2&=\left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{0.6}{HVL}} \\[6pt]
2&= \frac{0.6}{HVL} \\[6pt]
HVL&= 0.3 \mathrm{[ cm ]}
\end{aligned}
$$
いや、分かるけどね。
綺麗な数字出てるし、求めたいものも出てるから。
でも、今問われているのは線減弱係数。
ここまでで求まったのは半価層・・・
途中なんだよね。
誤1同様に、解いた後もう一度問題文を見返して、確認して欲しいですね。
単位の確認をするだけでも間違いに気付けると思いますよ。
問われているものの単位を問題文で確認する。
求まったものの単位を確認する。
今回はそれだけでも防げたはずですね。
まとめ
今回の期末試験では、
- 相互作用の整理
- 用語の定義
- 図の描き分け
- 数式の扱い
- 基礎数学
- 単位の確認
などを確認しました。
得点率の高い問題もありましたが、ちょっとひねられただけで解けなくなるケースが多く見られました。
暗記ではなく、意味も理解して欲しいと思います。


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