C13 相互作用の起こりやすさ(光子)

光子が物質の中を進むとき、すべての光子が同じように相互作用を起こすわけではありません。
その「相互作用の起こりやすさ」を数値で表すために使われるのが、断面積減弱係数です。
今回は、それぞれが何を表しているのか、単位にも注目しながら見ていきましょう。

断面積

〇〇断面積とか多過ぎや!
紛らわしくてかなわんわ!

大丈夫!
〇〇の起こりやすさって考えればいいんだよ。

光子と物質の相互作用を考えるとき、最初に知っておきたいのが断面積です。
断面積という名前から「何かの面積」を想像しやすいですが、ここでは実際の大きさではなく、相互作用の起こりやすさを表しています。

相互作用の起こりやすさを表す量

断面積は、光子1個と粒子1個の相互作用の起こりやすさを表す量です。
断面積が大きいほど相互作用は起こりやすく、断面積が小さいほど相互作用は起こりにくいと考えます。

断面積 $\sigma$ は、相互作用の確率 $P$ をフルエンス $\Phi$ で除した量として表されます。

$$\sigma=\frac{P}{\Phi}$$

相互作用の確率 $P$ には単位がなく、フルエンス $\Phi$ の単位は $m^{-2}$ です。
そのため、断面積のSI単位は $m^2$ になります。

「相互作用の起こりやすさなのに、なぜ単位が面積なの?」と思うかもしれませんが、式の単位を追ってみると納得できますね。

断面積の単位「b」

光子と原子などの相互作用で扱う断面積は非常に小さいため、$m^2$ のままでは数字が扱いにくくなります。
そこで、断面積ではbという特別な単位がよく使われます。

$$1b=10^{-28}m^2$$

$b$ は「バーン」と読みます。
また、$cm^2$ で表すと、

$$1b=10^{-24}cm^2$$

となります。

したがって、

$$1b=10^{-28}m^2=10^{-24}cm^2$$

という関係を押さえておきましょう。

線減弱係数

断面積は、光子1個と粒子1個の相互作用の起こりやすさを表す量でした。
一方、実際に光子が物質の中を進むときには、多数の光子からなる光子束として考えることが多くなります。
この光子束が物質中でどのくらい減弱しやすいかを表すのが線減弱係数です。

単位長さあたりの相互作用の起こりやすさ

光子束の相互作用の起こりやすさは、線減弱係数で表します。
線減弱係数は $\mu$ で表され、物質中を単位長さ進んだときに光子束がどの程度減弱するかを示す量です。

光子束が物質を通過すると、相互作用によって光子の数は少しずつ減少していきます。
物質に入射する光子の強度を $I_0$、厚さ $x$ の物質を通過した後の強度を $I$ とすると、次の式で表されます。

$$I=I_0e^{-\mu x}$$

指数部分の $\mu x$ には単位がありません。
$x$ の単位が $m$ なら、線減弱係数の単位は $m^{-1}$ になります。

つまり、線減弱係数は「単位長さあたりの減弱のしやすさ」を表していると考えることができます。

線減弱係数は密度によって変化する

同じ物質でも、線減弱係数は密度によって変化します。
これは、密度が大きくなるほど、光子の進む経路上に存在する原子や電子の数が多くなるためです。

たとえば、同じ種類の物質でも密度が大きければ、光子が相互作用する相手に出会う機会が増えます。
その結果、単位長さあたりでは相互作用が起こりやすくなり、線減弱係数も大きくなります。

このように、線減弱係数は物質そのものの性質だけではなく、その物質の密度にも影響される量です。
そこで、密度の影響を取り除いて物質どうしを比較するときに使われるのが、次に扱う質量減弱係数です。

質量減弱係数

線減弱係数は、単位長さあたりの光子束の減弱のしやすさを表す量でした。
ただし、線減弱係数は物質の密度によって変化するため、密度が異なる物質どうしをそのまま比較することはできません。
そこで、線減弱係数から密度の影響を取り除いた質量減弱係数を使います。

線減弱係数を密度で除した量

質量減弱係数は、線減弱係数 $\mu$ を物質の密度 $\rho$ で除した量です。

$$\frac{\mu}{\rho}$$

線減弱係数は密度が大きくなるほど大きくなります。
そこで密度で除すことで、単位質量あたりの減弱のしやすさとして表すことができます。

たとえば、同じ物質であれば密度が変化して線減弱係数が変わっても、質量減弱係数は基本的に同じ値として扱うことができます。
つまり、質量減弱係数は物質の密度に依存しない量です。

この性質によって、密度の異なる物質でも光子の減弱のしやすさを比較できます。

質量減弱係数の単位

質量減弱係数の単位は、線減弱係数と密度の単位から考えることができます。

線減弱係数 $\mu$ の単位を $m^{-1}$、密度 $\rho$ の単位を $kg/m^3$ とすると、

$$\frac{m^{-1}}{kg/m^3}=\frac{m^2}{kg}$$

となります。

したがって、質量減弱係数のSI単位は$m^2/kg$です。
また、放射線物理学では$cm^2/g$もよく使われます。

線減弱係数が「単位長さあたり」であるのに対して、質量減弱係数は「単位質量あたり」で考えた量です。
単位に注目すると、それぞれの違いも見えてきますね。

電子断面積と原子断面積

断面積は、光子1個と粒子1個の相互作用の起こりやすさを表す量でした。
では、その「粒子」を電子1個や原子1個として考えるとどうなるのでしょうか。
ここでは、質量減弱係数から電子断面積原子断面積を求める関係を見ていきます。

電子1個あたりの電子断面積

電子断面積は、電子1個あたりの相互作用の起こりやすさを表す断面積です。

電子断面積を $\sigma_e$、単位質量あたりの電子数を $N_e$ とすると、次の式で表されます。

$$\sigma_e=\frac{\mu}{\rho}\frac{1}{N_e}$$

質量減弱係数 $\mu/\rho$ は、単位質量あたりの光子の減弱のしやすさを表しています。
これを単位質量あたりの電子数 $N_e$ で除すことで、電子1個あたりの断面積に変換できます。

つまり、電子断面積は電子1個を基準にした相互作用の起こりやすさです。

原子1個あたりの原子断面積

原子断面積は、原子1個あたりの相互作用の起こりやすさを表す断面積です。

原子断面積を $\sigma_a$、原子番号を $Z$ とすると、

$$\sigma_a=\frac{\mu}{\rho}\frac{Z}{N_e}$$

で表されます。

原子番号 $Z$ は、中性原子がもつ電子の数でもあります。
そのため、電子1個あたりの電子断面積 $\sigma_e$ に $Z$ を掛けると、原子1個あたりの原子断面積になります。

$$\sigma_a=Z\sigma_e$$

電子断面積が「電子1個あたり」、原子断面積が「原子1個あたり」という違いを押さえておきましょう。

減弱係数と断面積の関係

ここまでに登場した量は、基準にしているものがそれぞれ異なります。

線減弱係数は単位長さあたり、質量減弱係数は単位質量あたり、電子断面積は電子1個あたり、原子断面積は原子1個あたりの相互作用の起こりやすさを表します。

名前や式だけを別々に覚えると混乱しやすいところですが、「何を基準にしている量なのか」に注目すると整理しやすくなります。

このあと光電効果やコンプトン散乱など、それぞれの相互作用を学ぶときにも断面積や減弱係数が登場します。
まずは、それぞれが何を表す量なのかを押さえておきましょう。

実際の過去問を見てみよう

と思いましたが、前提知識ですので、他の過去問と絡めて、別でご紹介しましょう。
ここでは割愛します。

医療現場でのかかわり

X線画像は、体内の組織によってX線の減弱の程度が異なることを利用して作られています。
骨、軟部組織、空気などでは線減弱係数が異なるため、透過するX線の量に差が生じ、それが画像の濃淡につながります。

CTでも、線減弱係数は重要な役割をもっています。
CTでは体内の各位置におけるX線の減弱を測定し、その違いから画像を再構成します。
さらに、得られた線減弱係数を水と比較して数値化したものがCT値です。

断面積や減弱係数そのものを医療現場で計算する機会は多くありませんが、「X線が物質とどのくらい相互作用するか」という考え方は、一般撮影やCTなどの画像形成を理解する土台になります。
このあと学ぶ光電効果やコンプトン散乱も、この「相互作用の起こりやすさ」とつながってきます。

まとめ

今回は、光子の相互作用の起こりやすさを表す断面積や減弱係数について学びました。
最後に、重要なポイントを振り返ってまとめていきましょう。

  • 断面積は、光子1個と粒子1個の相互作用の起こりやすさを表す
  • 断面積の単位には**b(バーン)**が使われ、$1,b=10^{-28},m^2=10^{-24},cm^2$である
  • 線減弱係数は、光子束の単位長さあたりの減弱のしやすさを表す
  • 線減弱係数の単位は**$m^{-1}$で、物質の密度に依存する**
  • 質量減弱係数は、線減弱係数を密度で除した量である
  • 質量減弱係数の単位は**$m^2/kg$$cm^2/g$**で、物質の密度に依存しない
  • 電子断面積は電子1個あたり、原子断面積は原子1個あたりの相互作用の起こりやすさを表す

それぞれの式を丸暗記するより、『何を基準にした相互作用の起こりやすさなのか』を意識して覚えておこう!

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次はこの辺りも参考になるかもよ。

この記事を書いた人

たなまる
詳しいプロフィールはこちら

診療放射線技師・医療系専門学校専任教員。

都内大学病院で9年間勤務後、
2015年より医療系専門学校の専任教員として
放射線物理学・核医学・医用工学・放射線計測学・放射化学
などの講義を担当しています。

国家試験対策用ワークブックの制作や学習支援サイト「勉強嫌いの放物」の運営を行っています。

保有資格:
・診療放射線技師
・第1種放射線取扱主任者
・作業環境測定士
・衛生工学衛生管理者
ほか、放射線関連国家資格を保有

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